エネルギー療法

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エネルギー療法(エネルギーりょうほう、Energy medicine)は電気療法磁気療法手当て療法、遠隔ヒーリングなど、エネルギーを用いた補完・代替医療の一分野である。鍼治療気功などの伝統医療も、エネルギー療法とされることがある。扱われる「エネルギー」は、科学的に存在が証明されるもの、非科学的なもの、伝統的概念がある。エネルギー医学Energy medicine)、エネルギー医療Energy therapy)とも呼ぶ。「エネルギー療法(Energy medicine)」という語は、1980年代の非営利機関「国際サトルエネルギー&エネルギー医学学会」[1] 設立から使用され、各種の著作が発表されている[2][3]

患者に手を当てる「手当て」、患者に接触しない「手かざし」、治療者が患者と同じ場所にいない「遠隔治療」などがある。治療者(ヒーラー)が患者にエネルギーを伝え、それによって患者にポジティブな変化をもたらすという主張は、疑似科学と非難されることも少なくない。エネルギー療法の初期の研究はあいまいなものであり、さらなる研究が必要であるが[4] [5]、最近の研究では、臨床における有効性を示す証拠はないと結論付けている[6][7] [8] [9] [10][11]ホメオパシーアロマテラピーも、使用されるレメディ精油といった薬剤の効果をエネルギーによるとする解釈があり、エネルギー療法とされる場合がある。

電気療法・磁気療法[編集]

病気の治療に電気を使った記録は古代エジプトに遡る。磁力を使う治療はアフリカに古くからあり、古代から癒しや儀式の場として赤い鉄の鉱山が使われている。磁鉄鉱を治療に使った記録は古代エジプト、古代中国、古代ギリシャにも見られる[12]。エネルギー療法の著作を持つドナ・イーデンは、電気は「すべてのエネルギー・システムを繋ぎ合わせる橋のような働きをしている」と述べている[13]

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はもっとも古くから伝わる治療法のひとつ。『黄帝内経』(こうていだいけい)は鍼医学の最古のテキストで、その原型は紀元前2700年頃に成立している。イエズス会宣教師が中国にも派遣され、彼らが鍼を刺し入れて治療する方法をヨーロッパに持ち帰った。清朝の皇帝(道光帝)が王宮内での鍼治療を禁じたため一時は冷遇されていたが、毛沢東の目にとまって以後、欠かすことの出来ない治療法としての位置を確立した[14]

手当て療法[編集]

新約聖書マルコによる福音書に、信仰のある人は手当てによって病を癒すことが可能であると書かれ[15]、信仰療法をエネルギー療法としてとらえる場合、古代の中近東で一種のエネルギー療法が行われていたことを示す証拠であるとされる。

また紀元前168年ごろとされる中国の馬王堆(まおうたい)3号墓から出土した帛書(はくしょ)には気功の図や経絡の走行図が含まれる。気の概念をエネルギーとする立場では、これは古代中国でエネルギー療法がおこなわれた証拠であるとしている。

掌を当てるだけの手当て療法は世界に広く見られ、近現代ではセラピューティック・タッチヒーリング・タッチレイキ、極性療法(ポラリティ・セラピー)などが新しく作られた。セラピューティック・タッチ[16]は、アメリカの看護学校や病院で補完療法として導入しているところがあるが[17]、エビデンスがないため、治療の一環として行うことの正統性が議論の的になっている。中国で気功が広く医療に取り入れられいる。エネルギー療法は、過去においては国立補完代替医療センター(現・アメリカ国立補完統合衛生センター)で取り上げられていた[18]

研究史[編集]

その科学的研究が始まったのは新しく、ハンガリーノーベル賞医学者アルベルト・セントジェルジに始まる[19]。セントジェルジは生体組織が半導体の性質を持つことを1941年の論文で明らかにした。ロバート・ベッカーは神経周辺の組織が磁気の影響を受けやすいことを示した。ハーバート・フローリッヒは1968年の論文で生物の筋膜・腱などに見られるコラーゲンなどの細胞外マトリックスコヒーレント振動をしていることを示唆した。エネルギー医学に関する論文を著したジェームズ・オシュマンは「コヒーレント振動によって伝わる情報が、成長、損傷の修復、防御反応といった機能や1個の生物としての活動をまとめあげていると考えられる」と述べている[20]

分類[編集]

アメリカ合衆国国立衛生研究所国立補完代替医薬センター(NCCAM、現アメリカ国立補完統合衛生センター)の研究活動の対象[21] となり、補完・代替医療のひとつとして研究されていた。しかし、代替医療としての数々の研究の成果は思わしいものではなかったため、研究領域と目的は大きく変更された。現在アメリカ国立補完統合衛生センターホームページの「補完的健康アプローチ」(補完療法)を紹介するページComplementary, Alternative, or Integrative Health: What’s In a Name? では、鍼や気功といった中国伝統医学と、補助的に用いられるヒーリングタッチを除き、エネルギー療法に分類されてきた療法は取り上げられていない[22]

存在が科学的に証明されているエネルギーを扱うエネルギー療法(Veritable Energy Medicine)
存在が科学的に証明されていないエネルギーを扱うエネルギー療法(Putative Energy Medicine)、伝統医学、信仰療法英語版を含む[23]

脚注[編集]

  1. ^ International Society for the Study of Subtle Energies and Energy Medicine
  2. ^ イーデン『エネルギー・メディスン』
  3. ^ オシュマン『エネルギー医学の原理――その科学的根拠』
  4. ^ Astin, J.; et. al (2000). "The Efficacy of "Distant Healing: A Systematic Review of Randomized Trials". Annals of Internal Medicine 132 (11): 903–910. doi:10.7326/0003-4819-132-11-200006060-00009. PMID 10836918. 
  5. ^ Ernst, Edzard (2001). "A primer of complementary and alternative medicine commonly used by cancer patients". Medical Journal of Australia 174 (2): 88–92. PMID 11245510. 
  6. ^ Abbot, NC; Harkness, EF; Stevinson, C; Marshall, FP; Conn, DA; Ernst, E (2001). "Spiritual healing as a therapy for chronic pain: a randomized, clinical trial". Pain 91 (1–2): 79–89. doi:10.1016/S0304-3959(00)00421-8. PMID 11240080. 
  7. ^ Ernst E. (2003-04-30). "Distant healing—an update of a systematic review". Wien Klin. Wochenschr. 115 (7–8): 241–245. doi:10.1007/BF03040322. PMID 12778776. "Since th、e publication of our previous systematic review in 2000, several rigorous new studies have emerged. Collectively they shift the weight of the evidence against the notion that distant healing is more than a placebo." 
  8. ^ Ernst E. (Nov 2006). "Spiritual healing: more than meets the eye". J Pain Symptom Manage. 32 (5): 393–5. doi:10.1016/j.jpainsymman.2006.07.010. PMID 17085260. 
  9. ^ Pittler, MH; Ernst, E (2008). "Complementary Therapies for Neuropathic and Neuralgic Pain: Systematic Review". Clinical Journal of Pain. 24 (8): 731–733. doi:10.1097/AJP.0b013e3181759231. PMID 18806539. 
  10. ^ Trick or Treatment. Corgi. (2008). p. 388. 
  11. ^ So PS, Jiang Y, Qin Y (2008). "Touch therapies for pain relief in adults". In So, Pui Shan. Cochrane Database of Systematic Reviews (Online) (4): CD006535. doi:10.1002/14651858.CD006535.pub2. PMID 18843720. 
  12. ^ オシュマン 2000年 p.5
  13. ^ イーデン 1998年 p.291
  14. ^ ガーバー 1988年、p214。
  15. ^ マルコによる福音書16章17-18節 「信じる人々には次のようなしるしが伴います。すなわち、わたしの名によって悪霊を追い出し、新しいことばを語り、蛇をもつかみ、たとい毒を飲んでも決して害を受けず、また、病人に手を置けば病人はいやされます。」
  16. ^ クリーガー 1979年
  17. ^ オシュマン 2000年 p.5
  18. ^ NCCAM の分類
  19. ^ オシュマン 2000年 p.59
  20. ^ オシュマン 2000年 p.59-68
  21. ^ NCCAM の分類
  22. ^ Complementary, Alternative, or Integrative Health: What’s In a Name?”. NCCIH (2014年7月). 2015年3月閲覧。
  23. ^ 信仰療法は宗教の中で行われ、エネルギー療法と区別される場合も多い。
  24. ^ Reiki Practice”. Nccam.nih.gov. 2010年9月20日閲覧。
  25. ^ What is healing? ("The Healing Trust).
  26. ^ Edzard Ernst (2001). "A primer of complementary and alternative medicine commonly used by cancer patients". Medical Journal of Australia (174): 88–92. 
  27. ^ Warber, S. L., Straughn, J., Kile, G. (December 2004). "Biofield Energy Healing from the Inside". The Journal of Alternative and Complementary Medicine 10 (6): 1107–1113. 
  28. ^ http://www.mdanderson.org/publications/network/issues/2007-fall/network-fall-2007-energy-medicines-will-east-meet-west-.html Energy Medicines: Will East Meet West?, Network newsletter, MD Anderson Cancer Center
  29. ^ http://www.springerlink.com/content/n772q20j61180nj0/ Biofield Therapies: Helpful or Full of Hype?, 2007年、International Journal of Behavioral Medicine (Volume 17, Number 1, 1-16)
  30. ^ Sarah Glazer (2000). "Postmodern nursing". National Affairs. 
  31. ^ Hammer, Owen; James Underdown (November/December 2009). "State-Sponsored Quackery: Feng Shui and Snake Oil for California Nurses". Skeptical Inquirer (Committee for Skeptical Inquiry) 33 (6): 53–56. 
  32. ^ Junkfood Science Special: Trusting nurses with our lives by Sandy Szwarc, BSN, RN, CCP. July 6, 2007.
  33. ^ Therapeutic Touch”. Cancer.org (2008年6月2日). 2010年9月20日閲覧。
  34. ^ アントワーヌ・フェーブル 著 『エゾテリスム思想 西洋隠秘学の系譜』 田中義廣 訳、白水社〈文庫クセジュ〉、1995年
  35. ^ セオドア・ローザク 著 『意識と進化と神秘主義』 志村正雄 訳、鎌田東二 解説、紀伊国屋出版社、1978年
  36. ^ Daulby, Martin; Mathison, Caroline (1996). Guide to Spiritual Healing. Brockhampton Press. p. 89. ISBN 1-86019-370-6. 
  37. ^ Benor, Daniel J. Spiritual Healing: Scientific Validation of a Healing Revolution (Wholistic Healing Publications, 2006) pp. 139-149.

参考文献[編集]

  • セオドア・ローザク 著 『意識と進化と神秘主義』 志村正雄 訳、鎌田東二 解説、紀伊国屋出版社、1978年

関連文献[編集]

  • ドロレス・クリーガー『セラピューティック・タッチ』春秋社、1999年(原著1979年)
  • リチャード ガーバー『バイブレーショナル・メディスン―いのちを癒す「エネルギー医学」の全体像』日本教文社、2000年(原著1988年、第3版2001年)
  • ドナ・イーデン『エネルギー・メディスン』ナチュラル・スピリット、2012年(原著 Donna Eden (1998). Energy Medicine)
  • ジェームズ・オシュマン『エネルギー医学の原理―その科学的根拠』エンタプライズ、2004年(原著 Oschman, J. (2000). Energy Medicine: The Scientific Basis)
  • ジェームズ・オシュマン『エネルギー療法と潜在能力』エンタプライズ、2005年(原著2003年)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]