人間性回復運動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

人間性回復運動(にんげんせいかいふくうんどう)、または、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメント(Human Potential Movement、HPM)とは、1960年代アメリカ合衆国、それも主として心理学分野において生じたムーブメント。 「幸福」「創造性」「自己実現」の主体である人間の「人間性」や「人間の潜在能力」を、回復・発展させることを旨とする。

ただし、自己啓発セミナーのルーツの1つとしても知られているとおり、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントという呼称は、自己啓発セミナーやマルチ商法系の人脈によって広められた面が否めず、一般的にはサイケデリックの実験もしくはムーブメントと大差ないものとして理解されている。

概要[編集]

人間性回復運動の時代背景としては、アブラハム・マズローが心理学の「第三勢力」であるとした人間性心理学と連動したムーブメントがあり、エンカウンターグループゲシュタルト心理学などをとおして、俗に「第四勢力」としてのトランスパーソナル心理学へとつながる基盤となったとされることがある。一方で、ドラッグ・カルチャーヒッピーとの繋がりが強く、ニヒリスティックカウンター・カルチャーの基盤ともなっていった。

トランスパーソナル心理学の信奉者などが、「変性意識」とか「超越体験」としてひと括りで呼称する体験は[1]幻聴幻覚体験と至高・至福体験とに分けられる。前者はLSDなどによって引き起こされるものであり、後者は大掛かりなイベントやグループワークまたは自己啓発セミナー、古くは夜通し行われるような祭事踊念仏滝行を始めとした短期間の居士修行などによる場合が多い。

ただし、サイエントロジーのような一部の技法を長期間続けると幻聴・幻覚体験にいたる場合があることが報告されている(詳細は「サイエントロジーと精神医学」を参照)。これは、過酷な行を長期間課す修験道やオウム真理教のようなカルト宗教も同じである。また、禅の修業僧の中にもまれに狂奔にいたる場合があるとのことだが、宗門内で隠蔽されるようである。

マズローは、至高・至福体験は生涯に何らかの形で経験する者が多いと報告しているが、この体験をして自分は深浅の違いがあるだけで釈迦と同様の悟りに至ったと思うものが常に存在してきた。それが新たな自己啓発やカルトの指導者を生み出す土壌となり、また人間性回復運動の推進力となってきた。今日では、この体験は「エンドルフィン・ハイ」と呼ばれ、ストレス回避のために脳内麻薬物質が過剰に分泌されることによって引き起こされるとする説が一般化している。

関連項目[編集]

脚注[編集]