パラダイムシフト
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パラダイムシフト(英: paradigm shift)とは、その時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいう。パラダイムチェンジともいう。
科学史家トーマス・クーンが科学革命で提唱したパラダイム概念の説明で用いられたものが拡大解釈されて一般化したものである。
概要[編集]
一般用語としてのパラダイムは「規範」や「範例」を意味する単語であるが、科学史家トーマス・クーンの科学革命で提唱したパラダイム概念が、その意図からは誤解となるほどに拡大解釈されて一般化されて用いられ始めた。拡大解釈された「パラダイム」は「認識のしかた」や「考え方」、「常識」、「支配的な解釈」、「旧態依然とした考え方」などの意味合いで使われている。
広義でのパラダイムシフトはこの過度な拡大解釈に基づいて都合よく用いられるため、厳密な定義は特になく「発想の転換」や「見方を変える」、「固定観念を捨てろ」、「常識を疑え」などから始まり「斬新なアイディアにより時代が大きく動くこと」まで、さまざまな意味で使われている。
人類は歴史上常に何らかの問題を抱えているため、常に解決が求められている。その解決をもたらす手段としての「パラダイムシフト」は、インパクトが強く印象的で、わかりやすい説得力を持ち一般に広まったものである。(→パラダイム#パラダイム概念の周辺) このパラダイムシフトについて、ベストセラー書籍『7つの習慣』では、隠し絵『妻と義母』を引用し分かりやすく説明している。
狭義には、その時代や分野において主流だった(問題を抱えている)古い考え方に代わり(その問題を解決できる)新しい考え方が主流となることを指す。一個人や単体の組織による物の見方が変わることは指さない。
要因と事例[編集]
パラダイムシフトの例として、まず旧パラダイム(例:天動説)が支配的な時代は、多くの人(科学者)がその前提の下に問題解決(研究)を行い、一定の成果を上げるが、その前提では解決できない例外的な問題(惑星の動きがおかしい)が登場する。このような問題が累積すると、異端とされる考え方の中に問題解決のために有効なものが現れ、解決事例が増えていくことになる。そしてある時期に、新パラダイム(地動説)を拠り所にする人(科学者)の数が増えて、それを前提にした問題解決(研究)が多く行われるようになる。以後、以上の動きが繰り返される。
自然科学におけるパラダイムシフト[編集]
- ファブリカ - アンドレアス・ヴェサリウスによる。
- ケプラーの法則 - ケプラーによる。
- 万有引力の法則 - ニュートンによる。
- 地動説 - コペルニクスとガリレオによる。
- プレートテクトニクス - A.ヴェーゲナー、A.ホームズ、H.H.ヘス・R.ディーツ、T.ウィルソンらによる。
- 相対性理論 - アインシュタインによる。
- 量子力学
人文学におけるパラダイムシフト[編集]
- インド・ヨーロッパ祖語の喉音理論 - ソシュールによる[1]。
複合システムと組織におけるパラダイムシフトに関する例[編集]
政治[編集]
日本
- 大化の改新による、豪族中心の政治から天皇中心の政治への移行、年号の導入。
- 平安時代末期の軍事貴族の台頭による平氏政権・鎌倉幕府の成立、貴族政治から武家政治への移行。
- 後醍醐天皇による鎌倉幕府の打倒、建武の新政による親政への転換と失敗、室町幕府の成立、南北朝体制への移行。
- 織豊政権・江戸幕府による、武士の在地領主から大名直属の軍団・官僚への転換。
- ペリーの来航(砲艦外交)による、江戸幕府の鎖国から開国への方針転換、西洋方式の軍隊幕府陸軍の創設、幕末の動乱と大政奉還。
- 明治維新による王政復古、産業革命導入による西洋式の社会的再構築(文明開化)、大日本帝国憲法の制定、多岐に渡るインフラの近代化。
- 太平洋戦争の敗戦・GHQにより大日本帝国憲法が日本国憲法に全面改訂されたことによる大日本帝国の体制消滅と日本国の成立、天皇を「日本国民統合の象徴」とした象徴天皇制への転換。
海外
- 国家間の戦争による敗戦国の消滅と新国家の成立、侵略国による併合・植民地支配・衛星国化、それらによる民俗文化の変容。
- イギリスの産業革命による労働者階級の成立、中流階級の成長、および地主貴族階級の成熟による三階級構造の確立や消費社会の定着など。
- フランス革命やロシア革命などにみられる市民革命、君主制から共和制への移行、社会主義国の成立。
- 第二次世界大戦の戦勝国であるアメリカとソ連の二大国による冷戦体制への移行。
- ソ連における、ニキータ・フルシチョフによるスターリン批判、ミハイル・ゴルバチョフによるペレストロイカとグラスノスチ。
- 中華人民共和国における、毛沢東による文化大革命の断行、鄧小平による改革開放と一人っ子政策。
- カンボジアでの植民地支配からの原始共産主義への転換と、その失敗。
- 東欧革命やソ連崩壊などにみられる社会主義国の社会主義の放棄と資本主義への転換、冷戦体制の終結。
宗教[編集]
日本
- 日本への仏教伝来、日本土着の神祇信仰(神道)と仏教信仰が融合した神仏習合の成立。
- 室町時代以降の吉田神道の台頭。
- 明治維新後の国家神道の成立、神仏判然令による神仏分離と、それによる廃仏毀釈運動。
- 太平洋戦争敗戦後、GHQの神道指令による国家神道の廃止、神祇院の解体など、政教分離の実施。
海外
- ローマ帝国における、テオドシウス1世によるキリスト教の国教化、ギリシア・ローマの神々など既存宗教(多神教)への礼拝の禁止。
- 社会主義国や独裁政権成立などの政変による宗教の否定。
- 宗教多元主義 - ジョン・ヒックによる。[2][3]
脚注[編集]
- ^ James Clackson. Indo European Linguistics: An Introduction. Cambridge University. p. 53. ISBN 9780511808616
- ^ ジョン・ヒック『もうひとつのキリスト教-多元主義的宗教理解』日本基督教団
- ^ ジョン・ヒック『神は多くの名前をもつ-新しい宗教的多元論』
参考文献[編集]
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関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- MIT 6.933J - The Structure of Engineering Revolutions. From MIT OpenCourseWare, course materials (graduate level) for a course on the history of technology through a Kuhnian lens.
- [1] From Puzzles with a Purpose, A Kuhnian illustration of a worrisome implication for technology.
- [2] Boiling Stumbling Mind Model - a possible paradigm shift in psychiatry. Part of the Paradigm Shift Project by Jan Ott m.sc. (Amsterdam).