喉音理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
この項目には、一部のコンピュータや閲覧ソフトで表示できない文字が含まれています詳細

喉音理論(こうおんりろん、: laryngeal theory)は、インド・ヨーロッパ祖語に喉音(hに近い音)が3種類あったという理論である。1879年フェルディナン・ド・ソシュールが言及したがしばらく省みられず、ヒッタイト語の研究の進展により20世紀になって現在の形になった。

内容[編集]

三種類を数字をつけて表す慣習になっている。

  • h1
  • h2
  • h3
  1. ギリシア語ではh1 > e、h2 > a、h3 > oと変化し、
  2. インド・イラン語派ではh1、h2、h3 > iと変化し、
  3. それ以外の語派では語頭以外でh1、h2、h3 > aと変化した。

これにより以下のような例につじつまがあう。

また*h2e- > *a-(ヒッタイト語ではhを保つ)、*h3e- > *o- (ヒッタイト語ではある位置ではhを保つ)となることから、何らかの母音を変えるような性質があったとされる。

女性形の -ā[編集]

印欧祖語の古期には女性形の語尾は*-āでなく*-eh2であったという説がある。h2の影響でeがaに変わり代償延長がおきて*-āとなったというものである。

母音交替[編集]

喉音を仮定することによって語根に起きる母音交替の記述を簡略化することができる。

  • ê/ô/ə < eh1/oh1/h1;
  • â/ô/ə < eh2/oh2/h2;
  • ô/ô/ə < eh3/oh3/h3

参考文献[編集]

  • Beekes, Robert S. P. (1969). The Development of Proto-Indo-European Laningeals in Greek. The Hague: Mouton. no ISBN - Doctoral dissertation at the University of Leiden.
  • Beekes, Robert S. P. (1995). Comparative Indo-European Linguistics: An Introduction. Amsterdam: John Benjamins. ISBN 90-272-2150-2 (Europe), ISBN 1-55619-504-4 (U.S.).
  • Koivulehto, Jorma (2001). “The earliest contacts between Indo-European and Uralic speakers in the light of lexical loans”, C.Carpelan, A.Parpola P.Koskikallio (ed.) The earliest contacts between Uralic and Indo-European: Linguistic and Archeological Considerations. Helsinki: Mémoires de la societé Finno-Ougrienne 242, pp. 235–263. ISBN 952-5150-59-3.
  • Lindeman, Dr Frederik Otto (1970). Einführung in die Laryngaltheorie. Berlin: Walter de Gruyter & Co. no ISBN - Sammlung Göschen.
  • Möller, Hermann (1911 reprint 1970). Vergleichendes indogermanisch-semitisches Wörterbuch. Göttingen: Vandenhoek & Ruprecht. no ISBN.