容疑者Xの献身
容疑者Xの献身 | ||
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著者 | 東野圭吾 | |
発行日 | 2005年8月29日 | |
発行元 | 文藝春秋 | |
ジャンル | ミステリ、推理小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製カバー装 | |
ページ数 | 360 | |
前作 | 予知夢 | |
次作 |
ガリレオの苦悩 聖女の救済(同時刊行) | |
公式サイト | 容疑者Xの献身 文藝春秋 | |
コード |
ISBN 4163238603 ISBN 4167110121(文庫本) | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『容疑者Xの献身』(ようぎしゃエックスのけんしん)は、東野圭吾の推理小説。ガリレオシリーズ第3弾。2003年から文芸誌『オール讀物』に連載され、2005年8月に文藝春秋より出版された。2008年8月には文春文庫より文庫化された。
第6回本格ミステリ大賞、第134回直木三十五賞受賞作。また、国内の主要ミステリランキングである『本格ミステリ・ベスト10 2006年版』『このミステリーがすごい!2006』『2005年「週刊文春」ミステリベスト10』においてそれぞれ1位を獲得し、三冠と称された(のちに前出の2賞を取り、最終的に五冠となった)。
あらすじ
花岡靖子は娘・美里とアパートで二人で暮らしていた。そのアパートへ靖子の元夫、富樫慎二が彼女の居所を突き止め訪ねてきた。どこに引っ越しても疫病神のように現れ、暴力を振るう富樫を靖子と美里は大喧嘩の末、殺してしまう。今後の成り行きを想像し呆然とする母子に救いの手を差し伸べたのは、隣人の天才数学者・石神だった。彼は自らの論理的思考によって二人に指示を出す。
そして3月11日、旧江戸川で死体が発見される。警察は遺体を富樫と断定し、花岡母子のアリバイを聞いて目をつけるが、捜査が進むにつれ、あと1歩といったところでことごとくズレが生ずることに気づく。困り果てた草薙刑事は、友人の天才物理学者、湯川に相談を持ちかける。
すると、驚いたことに石神と湯川は大学時代の友人だった。湯川は当初傍観を通していたが、やがて石神が犯行に絡んでいることを知り、独自に解明に乗り出していく。
登場人物
湯川学、および捜査一課の登場人物についてはガリレオシリーズ#登場人物を参照
- 石神哲哉
- 高校数学教師。丸顔で髪も薄いため老け顔であるが、湯川・草薙とは帝都大学の同期。花岡靖子と同じアパートで隣室に住んでいる。大学時代は「ダルマの石神」の異名をとり、湯川に「天才」と言わしめるほどの才能の持ち主。数学の研究者になりたかったが家庭の事情により断念。数学の機微を理解できない高校生達に数学を教えるしかない人生に鬱屈していたが、最近ひそかに靖子に恋心を抱いている。
- 原作では元柔道部という設定があり、映画版では登山を趣味にしている設定がある。
- 花岡靖子
- 赤坂でホステスをしていたが、転職し「べんてん亭」の従業員に(映画版では弁当屋「みさと」店長)。最初の結婚に失敗し、二度目の夫の富樫と離婚後も付きまとわれ住居を転々としていた。事件後石神により窮地を脱するが、その難解な指図や自分への思いに戸惑いを隠せない。いつも美里を不幸に追い込んでしまうことを、申し訳なく思っている。工藤はホステス時代からの友人であった。
- 花岡美里
- 靖子の最初の夫との一人娘で中学生。バドミントン部所属。従順な一面もあるが、富樫を銅製の花瓶(映画版ではスノーグローブ)で殴打するなど芯の強い性格である。彼女が犯罪に関わってしまったため靖子は石神の計画に乗ってしまう。
- 石神の母への気持ちには気づいており、母と工藤の仲を快く思っていない。
- 富樫慎二
- 靖子の二度目の夫。そのため美里と血縁関係はない。元サラリーマンでその頃は紳士的であったが、会社の金を使い込んだことが原因で解雇された後は本性をあらわす(映画版ではこの辺りの事情は明らかにされていない)。靖子には離婚後も何かにつけ付きまとう。
- 工藤邦明
- 靖子の元勤め先「まりあん」の常連客。靖子に好意的で、富樫との離婚についても便宜を図ってくれた(映画版ではこの辺りの事情は明らかにされていない)。近頃、靖子が「べんてん亭」に勤めていることを知り、靖子に近づく。そのため石神から嫉妬の情を受けるが…。
『容疑者Xの献身』をめぐる「本格」論争
2005年末、『容疑者Xの献身』が「本格ミステリ」として評価され、同年の『本格ミステリ・ベスト10』にて1位を獲得したことに、推理作家の二階堂黎人が自身のウェブサイトで疑問を呈した[1]ことに始まる問題。
二階堂の主張は、「『容疑者Xの献身』は、作者が推理の手がかりを意図的に伏せて書いており、本格推理小説としての条件を完全には満たしていない(そのため、『本格ミステリ・ベスト10』の1位にふさわしくない)」というものであった。このことに関して二階堂のウェブサイトや『ミステリマガジン』誌上などに多くの作家や評論家が意見を寄せたため、本格的な論争となった[2]。その過程で二階堂の説における矛盾や見当違いも指摘されたが、二階堂は自説を曲げなかった。
最終的には笠井潔などの有力者の多くが「『容疑者Xの献身』は本格である」という立場につき、さらには2006年5月に同作品が第6回本格ミステリ大賞を受賞したこともあり、現在では二階堂の意見は否定された形で議論が収束している。ただし、笠井は本作を「標準的な出来栄えの初心者向け本格」とした上で「探偵小説の精神的核心が無い」と批評し、ミステリ関係者が絶賛したことに手厳しい批判を向けている。同時に、メインの犯行とは別個の、道義的には遥かに悪質な行為がトリックの手段として淡々と描かれながら「感動的なラスト」と評されたことについても議論となった[3]が、これについては北村薫が、ミステリあるいは小説を道徳論で論ずるべきでないとの立場を示している[4]。
作者本人は、一貫して「本格であるか否かは、読者一人一人が判断することである」というスタンスである[5]。
作品にまつわる話
- 『オール讀物』連載当時は「容疑者X」という題名だったが、出版に向けて改題された。
- 作者である東野圭吾は過去5回直木賞候補になっており、ようやくの直木賞獲得となった。
- 2012年エドガー賞最優秀小説賞の候補作に選ばれた。[6]
映画
容疑者Xの献身 | |
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監督 | 西谷弘 |
脚本 | 福田靖 |
製作 | 亀山千広 |
出演者 |
福山雅治 柴咲コウ 北村一輝 松雪泰子 堤真一 |
音楽 |
福山雅治 菅野祐悟 |
主題歌 | KOH+「最愛」 |
撮影 | 山本英夫 |
編集 | 山本正明 |
配給 | 東宝 |
公開 |
2008年10月4日 2008年12月24日 |
上映時間 | 128分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 49.2億円 |
前作 |
テレビドラマ 『ガリレオ』(第1シリーズ) |
次作 |
テレビドラマ 『ガリレオ』(第2シリーズ) |
ガリレオシリーズの短編『探偵ガリレオ』『予知夢』を原作としたテレビドラマ『ガリレオ』の劇場版として本作を同ドラマのキャスト・スタッフにより映画化。2008年10月4日に公開。
月9枠のドラマの映画化は『西遊記』『HERO』に続き3作目となる。2008年初旬に撮入し、映画公開初日には、フジテレビ系で『ガリレオΦ』が放送された。
福山雅治にとって『ほんの5g』以来20年ぶりの本格的な映画出演になり、映画主演は初めてである。
なお、2009年に死去した伊藤隆大の最後の出演映画でもある。
基本的なストーリーは原作に沿ったものとなっており、ドラマの劇場版という位置づけながらもドラマからのオリジナルキャラクターの出番が少なく、石神と花岡が話の軸となっている。湯川が数式を書いて推理を整理するシーンがないといったドラマのパターンを踏襲しない展開を見せている。また原作との相違点として湯川と石神が雪山に登り、その雪山で対峙するシーンが挿入されている。
2009年12月29日に『ガリレオΦ』と連動した「二夜連続ガリレオスペシャル」を銘打って、地上波で初放送された(視聴率17.3%)。
キャスト
- 湯川学 - 福山雅治
- 内海薫 - 柴咲コウ
- 草薙俊平 - 北村一輝
- 栗林宏美 - 渡辺いっけい
- 弓削志郎 - 品川祐
- 城ノ内桜子 - 真矢みき
- 工藤邦明 - ダンカン
- 富樫慎二 - 長塚圭史
- 花岡美里 - 金澤美穂
- 村瀬健介 - 林剛史
- 小淵沢隆史 - 福井博章
- 森英太 - 伊藤隆大
- 渡辺美雪 - 高山都
- 谷口紗江子 - 葵
- 平原瑤子 - 小松彩夏
- 「扇屋」の女将 - 福井裕子
- 草野球の監督 - リリー・フランキー(友情出演)
- 八木亜希子 - 八木亜希子
- 有薗文雄 - 石坂浩二(特別出演)
- 葛城修二郎 - 益岡徹
- 柿本純一 - 林泰文
- 花岡靖子 - 松雪泰子
- 石神哲哉 - 堤真一
スタッフ
- 製作 - 亀山千広
- 企画 - 大多亮
- 脚本 - 福田靖
- 音楽 - 福山雅治、菅野祐悟
- 監督 - 西谷弘
- エグゼクティブプロデューサー - 清水賢治、畠中達郎、細野義朗
- プロデュース - 鈴木吉弘、臼井裕詞
- プロデューサー - 牧野正、和田倉和利
- プロデューサー補 - 大西洋志、菊地裕幸
- 撮影 - 山本英夫
- 照明 - 小野晃
- 美術 - 部谷京子
- 整音 - 瀬川徹夫
- 録音 - 藤丸和徳
- 編集 - 山本正明
- 製作委員会 - フジテレビジョン、アミューズ、SDP、FNS27社
- 制作プロダクション - シネバザール
- 映像制作 - 東宝映像美術
- 配給 - 東宝
楽曲
- 主題歌 - KOH+「最愛」(作詞・作曲:福山雅治/編曲:福山雅治、井上鑑) (NAYUTAWAVE RECORDS)
- 劇中歌 - 福山雅治「99」(作曲:福山雅治/編曲:福山雅治、井上鑑) (UNIVERSAL J)
プロモーション
本作品の宣伝として、公開直前の2008年9月28日OA(9月22日収録)のTalking F.M.で、制作のフジテレビ及びFNS27局の女子アナウンサー28人が、女子アナならぬ助手アナとして出演した。なお、助手アナは白衣を着用していた。
舞台
2009年に演劇集団キャラメルボックスによって舞台化。脚本・演出を成井豊が手がけた。2009年4月18日から4月26日に新神戸オリエンタル劇場で、同年4月30日から5月24日にサンシャイン劇場で上演された。翌2010年には成井豊脚本のままで上海の現地製作会社が『嫌疑人X的献身』と言うタイトルで二週間上演した。
2012年には同劇団で再演。5月12日から6月3日にサンシャイン劇場(東京・池袋公演)で、6月7日から6月12日にシアター・ドラマシティ(大阪公演)で、6月15・16日にシアター1010(東京・北千住公演)で上演された。脚本は初演に引き続き成井豊が担当し、演出は成井豊と真柴あずきが手がけている[7]。
出演
- 湯川学 - 岡田達也(2009年版・2012年版)
- 石神哲哉 - 西川浩幸(2009年版)/近江谷太朗[8](2012年版)
- 草薙俊平 - 斎藤歩(2009年版)/小林正寛(2012年版)
- 間宮刑事 - 川原和久(2009年版・2012年版)
- 花岡靖子 - 西牟田恵(2009年版・2012年版)
- 米沢小代子 - 大森美紀子(2009年版)/坂口理恵(2012年版)
- 金子芹香/山辺曜子 - 前田綾(2009年版・2012年版)
- 工藤邦明 - 三浦剛(2009年版・2012年版)
- 岸谷由紀夫 - 筒井俊作(2009年版・2012年版)
- 花岡美里 - 実川貴美子(2009年版・2012年版)
- 富樫慎二/学生 - 石原善暢(2009年版・2012年版)
- ホームレス - 小林春世/市川草太/鈴木秀明(2012年版)
関連項目
脚注
- ^ 不定期日記(過去ログ)2005年07月~12月 11月28日以降の記述を参照。
- ^ X論争黙示録 - *the long fish*
- ^ 本格ミステリとの関係性から「純愛」を読み解く - X論争黙示録
- ^ 第6回本格ミステリ大賞選評
- ^ 『たぶん最後の御挨拶』(文藝春秋刊)における自作解説や、本格ミステリ大賞の受賞コメント[1]でその旨を述べている。
- ^ 東野圭吾さん「容疑者x…」は受賞逃す 米エドガー賞
- ^ キャラメルボックスの12年ラインアップが発表に 『トリツカレ男』『容疑者Xの献身』の再演、有川浩原作の新作などを上演(シアターガイド、2011年8月10日)
- ^ 後にテレビドラマ版『ガリレオ 第2シーズン』にもゲストとして出演した。
外部リンク
- 文藝春秋による紹介ページ
- 文藝春秋による原作公式サイト
- 舞台版公式サイト
- エラー: subst: がありません。Movielink ではなく subst:Movielink としてください。
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