笠井潔

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笠井 潔
誕生 1948年11月18日(63歳)
日本の旗 日本 東京都
職業 小説家
国籍 日本の旗 日本
活動期間 1979年 -
ジャンル 推理小説SF
代表作 ヴァンパイヤー戦争
主な受賞歴 第6回角川小説賞
第3回本格ミステリ大賞
処女作 バイバイ、エンジェル
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笠井 潔(かさい きよし、1948年11月18日 - )は、東京都生まれの小説家推理作家SF作家文芸評論家和光大学除籍。

中央公論社の編集者で思想家の笠井雅洋(ペンネーム矢代梓)は兄。

目次

[編集] 来歴・人物

学生運動に関わり、構造改革派系の共産主義労働者党の学生組織であるプロレタリア学生同盟のイデオローグだった。 当時の筆名は「黒木龍思」(「黒木」はルカーチ主義者の福本和夫日本共産党内で用いていた変名に由来)。だが、連合赤軍事件はじめ、新左翼各派が内ゲバに転じていくのに失望し思想的に転向する。

1974年から2年間のパリ滞在を経て、その期間中に草稿を書いた『バイバイ、エンジェル』を1979年に発表し角川小説賞を受賞、小説家としてデビューする。小説執筆と平行して、SFミステリー小説への評論活動を行う一方、『ユリイカ』などへの寄稿でも知られる。

小説家としての仕事と平行して思想家・哲学者としての仕事も旺盛に展開する。『テロルの現象学』でマルクス主義と完全に決別し、以後、 「マルクスに依拠しない左翼思想」を模索しつづけ、思想史には「マルクス葬送派」(小阪修平長崎浩)と呼ばれる思潮に属する。この思潮を発展させ、1995年の『国家民営化論』で、反資本主義ではなく、逆に資本主義を徹底化させて国家を解体させるというアナルコ・キャピタリズムの思想を明確に打ち出した。また1990年代から「純文学の終焉」を唱え、これに反対する笙野頼子の反発を招いた。1980年代のポストモダン思潮の中心人物であった蓮實重彦の物語批判論を厳しく批判したことでも知られる。

新本格ミステリ勃興後は、その運動に共鳴して「本格ミステリ第3の波」と呼び、高く評価。また、それと平行して本格ミステリ評論活動を活発に行い、「本格ミステリの大量死体験理論」(本格ミステリが発生するには、その国が、直前に人間性を無視した、総力戦による『大量死』を経験する必要がある、という理論)を提唱する。また、当時ライトノベルを中心に書いていた米澤穂信桜庭一樹らを、新本格派ミステリー作家を多く輩出する東京創元社に紹介するなど、後進の育成にも取り組んでいる。

美少女ゲームにも関心があり、シナリオライターである奈須きのこの小説『空の境界』の解説を手がけたほか、『ヴァンパイヤー戦争』・『サイキック戦争』の講談社文庫版のイラストはどちらも美少女ゲームのイラストレーター(武内崇中央東口)が描いている。

また、若手の本格ミステリ評論家たちと「探偵小説研究会」を結成していたが、『容疑者Xの献身』を巡る論争で、笠井自身は「標準的な出来栄えの初心者向け本格」と評する同作を高く評価する他の評論家たちを批判。また、同会による2007年の「探偵小説評論賞」優秀作に、山本悠『「戦後」探偵小説論批判』が選ばれたことに抗議して、同会を退会。かわって、ジャンルを超えた若手批評家たちとの「限界小説研究会」に参加している。

[編集] 略歴

[編集] 文学賞選考委員歴

[編集] 作品・評論

推理小説としては、現象学を駆使する哲学者的な探偵矢吹駆(やぶき かける)が登場する『哲学者の密室』、『サマー・アポカリプス』、『オイディプス症候群』(第3回本格ミステリ大賞を受賞)などが著名。

笠井の推理小説の書き方は、フョードル・ドストエフスキーの小説における、人物間の思想的な対話のように、推理する探偵と真犯人との対決の中に思想を盛り込ませるものである。その哲学・思想的饒舌は同シリーズの推理小説的結構の均衡を崩しかねない過剰なもので、同時に彼の批評活動と不可分の命題を扱っていることが多い。また、各作品には実在の思想家をモデルとした人物が現れ、それらモデル人物と矢吹の対話を通して、モデルとなった哲学者の言説に作者流の批判を加える体裁をとっている。実際にモデルとなった人物は永田洋子ら連合赤軍の論客(ある意味では彼女達が論理的主柱としたカール・マルクスらも含まれる)、シモーヌ・ヴェイユジョルジュ・バタイユマルティン・ハイデガーミシェル・フーコージャック・ラカンジュリア・クリステヴァなど。ちなみに番外編的な『熾天使の夏』は笠井の自己批判的側面を持ち得ており、著者自身の言によれば埴谷雄高の『死靈』の影響もあるという。

その他の評論に、『<戯れ>という制度』、『秘儀としての文学』、『テロルの現象学』、『機械じかけの夢』、『探偵小説論序説』、(第3回本格ミステリ大賞を受賞)などがある。『文芸評論家・東浩紀との対談『動物化する世界の中で―全共闘以降の日本、ポストモダン以降の批評』が近年話題となった。

藤田宜永はフランス滞在中からの友人であり、笠井は藤田に『バイバイ、エンジェル』の草稿を見せている。

[編集] 作品リスト

[編集] 矢吹駆シリーズ

  • 1 バイバイ、エンジェル (角川書店、1979年7月 / 角川文庫、1984年3月 / 創元推理文庫東京創元社)、1995年5月)
  • 2 サマー・アポカリプス (角川書店、1981年10月 / 角川文庫、1984年6月(改題『アポカリプス殺人事件』) / 創元推理文庫、1996年3月)
  • 3 薔薇の女 (角川書店、1983年3月 / 角川文庫、1987年12月 / 創元推理文庫、1996年6月)
    • 天使 / 黙示 / 薔薇 (作品社、1990年12月 上記三作まとめて収録したもの)
  • 4 哲学者の密室 (光文社、1992年8月 / カッパノベルス(光文社)、1996年7月 / 光文社文庫、1999年3月 / 創元推理文庫、2002年4月)
  • 0 熾天使の夏 (講談社、1997年7月 / 講談社文庫、2000年12月 / 創元推理文庫、2008年10月)
    • シリーズ第0作という位置づけ
  • 5 オイディプス症候群 (光文社、2002年3月 / カッパノベルス、2006年10月 / 光文社文庫、2008年11月)
  • 6 吸血鬼と精神分析 (光文社、2011年10月)
    • 連載時タイトルは「吸血鬼精神分析」(「ジャーロ」13号(2003年9月) - 2008年)。
  • 7 煉獄の時 (連載終了。単行本未刊。別冊文藝春秋 2008年9月号(2008年8月) - 2010年5月号(2010年4月) )
  • 8 夜と霧の誘拐 (連載終了。単行本未刊。メフィスト」2010年Vol.1(2010年4月) - 2010年Vol.3(2010年12月))
  • 9 魔の山の殺人(仮) (2011年12月~連載中。「ミステリーズ!」Vol.50~)
  • 青銅の悲劇 瀕死の王 (講談社、2008年) - 日本篇。初出:「メフィスト」連載

[編集] コムレ・サーガ

[編集] ヴァンパイヤー戦争

  • ヴァンパイヤー戦争(1)吸血神ヴァーオゥの復活 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2004年6月)
  • ヴァンパイヤー戦争(2)月のマジックミラー (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2004年6月)
  • ヴァンパイヤー戦争(3)妖僧スペシネフの陰謀 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2004年9月)
  • ヴァンパイヤー戦争(4)魔獣ドゥゴンの跳梁 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2004年10月)
  • ヴァンパイヤー戦争(5)謀略の礼部クーデター (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2004年11月)
  • ヴァンパイヤー戦争(6)秘境アフリカの女王 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2004年12月)
  • ヴァンパイヤー戦争(7)蛮族トゥトゥインガの逆襲 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2005年1月)
  • ヴァンパイヤー戦争(8)ブドゥールの黒人王国 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2005年2月)
  • ヴァンパイヤー戦争(9)ルビヤンカ監獄大襲撃 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2005年3月)
  • ヴァンパイヤー戦争(10)魔神ネヴセシブの覚醒 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2005年4月)
  • ヴァンパイヤー戦争(11)地球霊ガイ・ムーの聖婚 (カドカワノベルズ / 講談社文庫、2005年5月)
  • ヴァンパイヤ - 血風録 九鬼鴻三郎の冒険1 (カドカワノベルズ、1989年6月 / 講談社文庫)
  • ヴァンパイヤ - 風雲録 九鬼鴻三郎の冒険2 (カドカワノベルズ、1990年1月 / 講談社文庫)
  • ヴァンパイヤ - 疾風録 九鬼鴻三郎の冒険3 (カドカワノベルズ、1990年9月 / 講談社文庫)

[編集] 巨人伝説

  • 巨人伝説 I 復活編 (トクマノベルズ、1983年/徳間文庫、1988年)
  • 巨人伝説 II 崩壊編 (トクマノベルズ、1983年/徳間文庫、1988年)
  • 巨人伝説 III 遍歴編 (トクマノベルズ、1987年/徳間文庫、1989年)

[編集] サイキック戦争

  • サイキック戦争 (講談社ノベルズ、1986年)
  • サイキック戦争2 (講談社ノベルズ、1987年)
  • サイキック戦争 (講談社文庫、1993年) - 上記ノベルズ版2冊を合わせたものに加筆した完全版。これを大幅に加筆・修正し分冊したものが下記の2冊。
  • 新版 サイキック戦争I 紅蓮の海 (講談社文庫、2006年)
  • 新版 サイキック戦争II 虐殺の森 (講談社文庫、2006年)

[編集] その他

  • エディプスの市 (短編集)(講談社、1987年/ハヤカワ文庫JA(早川書房)、1993年)
  • 黄昏の館 (徳間書店、1989年)
  • ノヴァ、ノヴァ (トクマノベルズ、1991年)

[編集] 私立探偵飛鳥井の事件簿

  • 三匹の猿 (長編) (ベネッセコーポレーション、1995年3月 / 講談社文庫、1999年8月)
  • 道―ジェルソミーナ (短編集) (集英社、1996年10月 / 集英社文庫、1999年10月)
  • 魔 (中編集。「追跡の魔」「痩身の魔」収録) (文藝春秋、2003年9月)
  • 壷中の魔 (「別冊文藝春秋」2002年5月号(239号)~7月号(240号)、未完。「追跡の魔」「痩身の魔」とともに三部作となる予定だった。構想が大きくなったため、前二作のみで「魔」として刊行され、「魔」の後書きで本作が長編となることが発表された。しかしその後続報はない)

[編集] 天啓シリーズ

  • 天啓の宴 (双葉社、1996年11月 / 双葉文庫、2001年6月 / 創元推理文庫、2007年)
  • 天啓の器 (双葉社、1998年2月 / 双葉文庫、2002年7月 / 創元推理文庫、2007年)
  • 天啓の虚 (双葉社小説推理 連載終了、単行本未刊)

[編集] スキー探偵大鳥安寿シリーズ

  • 天使は探偵―スキー探偵大鳥安寿 (集英社、2001年) - 短編集。
  • 黄泉屋敷事件(「e-NOVELS」2000/10/10号~2000/12/26号、「週刊アスキー」2000/10/24~2001/01/09・16合併特大号。「e-NOVELS」版の方には、「週刊アスキー」では掲載されなかった部分あり。長編化されて原書房から刊行予定と発表されたが続報なし。)

[編集] その他

  • 復讐の白き荒野 (講談社、1988年)
  • 梟の巨なる黄昏 (廣済堂出版、1993年)
  • 群衆の悪魔 デュパン第四の事件 (講談社、1996年)
  • 無底の王 (早川書房「SFマガジン」1995年2月号~1996年2月号(全13回)、単行本未刊)

[編集] 評論

  • 機械じかけの夢 (講談社、1982年)のちちくま学芸文庫
  • テロルの現象学 (作品社、1984年)のちちくま学芸文庫
  • 象徴としてのフリーウェイ (新時代社、1985年)
  • 〈戯れ〉という制度 (作品社、1985年)
  • 近代を裏返す 魔術的世界からSFまで (河合文化教育出版、1985年) - 講演記録集
  • 秘儀としての文学 テクストの現象学へ(作品社、1987年)
  • 物語のウロボロス 日本幻想作家論(筑摩書房、1988年)のち学芸文庫
  • 外部の思考・思考の外部 (作品社、1988年)
  • ユートピアの冒険 毎日新聞社 1990
  • 終焉の終り 1991文学的考察(福武書店、1992年)
  • 黙示録的情熱と死 作品社 1994
  • 球体と亀裂 情況出版 1995
  • 国家民営化論 「完全自由社会」をめざすアナルコ・キャピタリズム (光文社、1995年)のち知恵の森文庫
  • スキー的思考 光文社 1998
  • 探偵小説論1 氾濫の形式(東京創元社、1998年)
  • 探偵小説論2 虚空の螺旋(東京創元社、1998年)
  • 物語の世紀末 エンターテインメント批評宣言 集英社 1999
  • ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか? 探偵小説の再定義(早川書房、2001年)
  • 探偵小説論序説 光文社 2002
  • 徴候としての妄想的暴力 新世紀小説論(平凡社、2003年)
  • 探偵小説と二〇世紀精神 ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?(東京創元社、2005年)
  • 探偵小説と記号的人物 ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?(東京創元社、2006年)
  • 探偵小説論3 昭和の死(東京創元社、2008年)
  • 探偵小説は「セカイ」と遭遇した(南雲堂、2008年)
  • 例外社会 神的暴力と階級/文化/群集(朝日新聞出版、2009年)
  • 人間の消失・小説の変貌(東京創元社、2009年)

[編集] 共編著

  • 闇の都市、血と交換 経済人類学講義(レクチャーブックス)栗本慎一郎対談 朝日出版社 1985
  • 柄谷行人ポスト・モダニズム批判 拠点から虚点へ 柄谷対談 作品社 1985
  • SFとは何か (日本放送出版協会、1986年)- 新戸雅章志賀隆生との共著
  • 日本型悪平等起源論 「もの言わぬ民」の深層を推理する 島田荘司対談 光文社カッパ・サイエンス 1994 のち文庫
  • 本格ミステリの現在(編)国書刊行会 1997
  • 動物化する世界の中で 全共闘以降の日本、ポストモダン以降の批評 東浩紀対談 集英社新書 2003
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