ドラえもん のび太の海底鬼岩城
ドラえもん のび太の海底鬼岩城 | |
---|---|
監督 | 芝山努 |
脚本 | 藤子不二雄 |
原作 | 藤子不二雄 |
製作 | シンエイ動画、テレビ朝日、小学館 |
出演者 |
レギュラー 大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 たてかべ和也 肝付兼太 ゲスト 喜多道枝 三ツ矢雄二 富田耕生 |
音楽 | 菊池俊輔 |
主題歌 | 岩渕まこと「海はぼくらと」 |
撮影 | 小池彰 |
編集 | 井上和夫、鶴巻のり子 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1983年3月12日 |
上映時間 | 94分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 10億円 |
前作 | ドラえもん のび太の大魔境 |
次作 | ドラえもん のび太の魔界大冒険 |
『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』(ドラえもん のびたのかいていきがんじょう)は藤子・F・不二雄によって執筆され、『月刊コロコロコミック』1982年8月号から1983年2月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の作品。および、この作品を元に1983年3月12日に公開されたドラえもん映画作品。大長編、映画ともにシリーズ第4作。
同時上映は『忍者ハットリくん・ニンニンふるさと大作戦の巻』『パーマン・バードマンがやってきた!!』。
解説
雑誌『月刊コロコロコミック』に連載された「大長編ドラえもん」シリーズの第4作。ムー大陸、アトランティス大陸の両者を冷戦時の2大超大国に見立てた物語に、バミューダトライアングルの要素や日本海溝、マリアナ海溝など海底に関する情報が盛り込まれた作品。話中盤で出てくるトリエステ号の記録、生物の進化論やクジラの話なども実際の自然科学に基づいたものとなっている。また、本作の直前に1982年を現在とした短編作品「竜宮城の八日間」が執筆されており、この作品でも竜宮はムー大陸にあった国という設定であった。しかしながら本作品は、2年前に公開された映画「復活の日」の内容に酷似する部分が存在し(ポセイドンとARSの類似性の他、アラスカにおける地震と海底火山の噴火等シナリオの一致)一部では著作権侵害の懸念がなされた。
連載当初のタイトルは『のび太の海底城』だったが、連載4回目に現行のタイトルとなる。本作は「大長編ドラえもん」シリーズで最初に単行本化された作品である(第1作の『のび太の恐竜』は1983年12月発行で、この作品は1983年6月発行)。そのため、映画原作の単行本で恒例となっている「映画の主題歌が表記された見開きの加筆ページ」がてんとう虫コミックス版にはない(藤子不二雄ランド版や映画大全集にはある)。単行本にある最初の2ページは連載時のものを全く同じ内容で再度描き直したものである。
前回までの3作品でしずかはのび太のことを「のび太君」と呼んでいたが、本作からは「のび太さん」と呼ぶようになる。この呼び方が後に原作にも逆輸入されることとなり、それまでのび太の呼び方が一定ではなかった原作のしずかも一貫して「のび太さん」と呼ぶようになる。
本作ではのび太が『のび太の恐竜』、『のび太の宇宙開拓史』、『のび太の大魔境』の話を回想する場面及びチャミーとペコ(クンタック王子)が登場しているが、映画版ではこのシーンはない。
映画版は本作から監督が芝山努になり、『のび太のワンニャン時空伝』までの22作品を監督した。また本作で初めてオープニング前のアバンタイトルが始まるようになる。
1995年にはミュージカル化され、1997年には香港でも上演された。
あらすじ
夏休み、大西洋で金塊を積んでいた沈没船発見のニュースが流れる中、物語はのび太としずかが山へ、ジャイアンとスネ夫が海へキャンプに行きたいと議論するところから始まる[1]。結局海に行きながら山に登ろうじゃないかというドラえもんの提案で海底山へ行くこととなる。海底山キャンプに出かけたのび太たちは、そこで海底人のエルたちに出会った。
そしてのび太たちは、海底火山の活動の影響で、数千年前に滅亡した海底国家アトランティスに残された自動報復装置ポセイドンが活動を再開したことを知る。ポセイドンによって鬼角弾が発射されれば海底ばかりか全地球上に甚大な被害が及び全ての生物が死に絶えてしまうという。
のび太たちは鬼角弾の発射を阻止するため、アトランティスのあるバミューダ海域へ向かう。
舞台
- 海底山
- ドラえもんがキャンプ地に選んだ、ハワイ近くの太平洋海底の山。ドラえもんのひみつ道具『テキオー灯』により、のび太たちは海底でも地上と変わりなく行動できる。
- ムー連邦
- マリアナ海溝の底に存在する海底人の連邦国家。1万年も前から高度な文明を築き上げていた。テキオー灯も独自に開発・保持しており、高い科学力がある。七つの海を統べるナバラの神を信仰する独自の宗教が存在する。
- 太平洋を治めておりかつては太平洋のムー、大西洋のアトランチスとして海を二分して地上の冷戦のように軍拡競争で争っていた。
- バミューダ三角海域(アトランティス連邦)
- ムー連邦と敵対していた海底人の国であるアトランティス連邦が存在した海域。上空までをもカバーする強力なバリアーで囲まれており、永遠の闇が支配する世界としてムー連邦の人々に恐れられている。
- かつてアトランティス連邦はムー連邦と敵対して、鬼角弾(地上で言えば核ミサイルに相当する)をもってムー連邦を屈服させることを目論んだ。同時にアトランティス本国をバリアーで覆う事で自国の絶対的優位を得ようとし、強力なバリアーも開発された。バリアーには放射性物質や放射線などを遮る機能を持たせておいた為、鬼角弾を用いても自国は安泰であるはずだった。しかしバリアー完成直後のおよそ7000年前に核実験に失敗し、国中に核分裂生成物が広がって汚染されてしまった。この時バリアーの機能が裏目に出て汚染は拡散せず、結果アトランティス連邦だけが滅びてしまった。
- アトランティス連邦が滅びて7000年経過した現在でもバリアーは存在していて、この海域を通過しようとした艦船や航空機はそのバリアーに触れるがために行方不明(沈没・墜落)となるケースが少なくないと作中では言われている。少なくともバリアー内部の海底には、船や航空機の残骸が多数存在していた。現在アトランチスの街並みはほぼ失われており、わずかに遺跡となった都市の痕跡が残るのみとなったがバリアー以外にも鬼岩城と自動報復システム、さらにそれが管理する鬼角弾が多数現存している。この他、鬼岩城などを守るロボット兵士なども稼動し続けている。
- いつ報復システムによって鬼角弾が発射されるか分からないこの危険な状態を打破すべく7000年間、何百人もの勇者がポセイドンの破壊を試みたが全て失敗している。
声の出演
- ドラえもん - 大山のぶ代
- のび太 - 小原乃梨子
- しずか - 野村道子
- ジャイアン - たてかべ和也
- スネ夫 - 肝付兼太
- のび太のママ - 千々松幸子
- のび太のパパ - 加藤正之
- しずかのママ - 松原雅子
- ジャイアンのママ - 青木和代
- スネ夫のママ - 鳳芳野
ゲストキャラクター
- エル
- 声 - 喜多道枝
- ムー連邦の勇敢な少年兵士。ムーから逃亡したのび太たちを捕らえるため追跡していたが、アトランティス連邦の残存兵器である巨大魚型ロボットのバトルフィッシュから攻撃を受けてしまう。その際、逃亡中にもかかわらず自分達を助けた5人に感銘を受け、裁判ではエルだけが皆を庇った。鬼岩城が活動を開始した際には、ドラえもんらと共にアトランティスに乗り込むことになる。
- なお原作では黒髪であるのに対し、映画では金髪である。
- 水中バギー
- 声 - 三ツ矢雄二
- ドラえもんのひみつ道具の1つで、海底キャンプの足として出した水陸両用のバギーカー。内蔵コンピュータにより人間同様に会話ができる。
- ドラえもん本人は最新のコンピューターといっているものの、機械らしく融通の効かない性質をしている。更に命令を無視してしまうこともあり、ドラえもんを出し抜いてバギーでキャンプを抜け出したジャイアンたちがテキオー灯切れに気づいて引き返せと命令したにも拘らず無視して走り続け危機に晒してしまった。一方で悪口を言うと逆上して襲い掛かったり、大事な時に恐怖のあまり身を隠したりと、やけに人間臭い部分も持ち合わせている。
- 他のメンバーからは「バギー」と呼び捨てにされるが、しずかには「バギーちゃん」とちゃん付けで親しまれており、本人も唯一優しく接してくれるしずかにだけは心を開き懐いている。
- 鬼岩城に向かう道中、恐怖に怯えてドラえもんのポケットに隠れてしまうが、全滅寸前に追い込まれた所で外に飛び出し、生贄にされようとしていたしずかを守るべくポセイドンに特攻して自爆した[2]。
- 大山のぶ代ら声優陣はドラえもんで一番印象に残ったキャラクターとしてバギーを挙げている。
- ムー連邦首相
- 声 - 大宮悌二
- ムー連邦の首相。当初、地上世界に海底人の存在を知らせまいとのび太たちを軟禁した。地上人たちの闘争の歴史を見つづけてきた(海底人もム-とアトランチスに別れて争ってはいたが)こともあってムーから逃亡したのび太たちを敵視していたが、鬼岩城が活動を開始した際、エルに説得されドラえもんらにアトランティス潜入を依頼する。
- 物語の当初、地上人が発見したバミューダ近海の幽霊船を隠し移動させたのはポセイドンを刺激することを恐れた彼の指示である。
- バトルフィッシュ
- 魚のような外貌をした鬼岩城の自律型巨大ロボット。光線を放つ。最初の1体はスネ夫とジャイアンを狙うが、2度目はのび太を襲ったが、3度目はムー連邦から脱走したドラえもん達を追跡していたエルを背後から不意打ちし追い詰めるが、スモールライトで小さくされ金魚鉢に入れられた(その後、囮用に使われた)。
- 監視および戦闘用に大量に製造されており、アトランティス滅亡後も海中を彷徨い続けている。
- 鉄騎隊
- 半魚人のような外貌をした鬼岩城防衛用のロボット兵士。音に敏感。三叉槍型の武器を装備し、そこから光線も放つ。イルカのような形の水中メカにまたがり高速で移動する事も可能。上述のバトルフィッシュと共にアトランティス亡き後もポセイドンの尖兵として活動している。自律型のバトルフィッシュと異なり、ポセイドンの直接操作下にある。ポセイドンが破壊された後は機能が停止した(原作ではドラえもんが「ただの鉄くず」と評していたが、映画ではジャイアンが「銅像みたいに固まった」と評していた)。
- ポセイドン
- 声 - 富田耕生
- アトランティスの鬼岩城の自動報復システムを司るコンピュータ。アトランティス滅亡後も未だに鬼岩城に鎮座しており、海底火山の活動を自国への攻撃と受け取り、報復を開始する。「復讐の神」を自称していた。また、レーザービームなども発射可能で、これでバギーを攻撃した[3]。ドラえもん達主要人物5人全員を戦闘不能まで追い込み優位に立つが最後は、バギーの特攻により内部から爆破され破壊された。鬼岩城もコントロールを失い海底火山の噴火に飲み込まれ、アトランティスは完全に滅亡した。
- なお、あまり知られていないが富田は初のTVアニメ版で初代ドラえもん(2代目は野沢雅子で大山は3代目)を演じており、新旧ドラえもんの競演となった。
- 映画ではエルに「このコンピュータはあまり優秀ではない」と評されており、実際アトランティスの滅亡を認識できておらず、敵国の攻撃と自然災害の区別をつけることもできていない。
- アナウンサー
- 声 - 郷田穂積
- バミューダ近海での幽霊船についてのニュースを読んだアナウンサー。
- 隊員
- 声 - 松岡文雄、佐藤正治、戸谷公次、塩屋浩三、橋本晃一
- ムー連邦の巡視隊員。
- 大イカ
- ドラえもんたちのテントアパートを襲撃し、バギーを除く全員を捕らえるものの、海底人によって撃退された。
登場ひみつ道具
- 水中バギー
- テキオー灯
- どこでもドア
- 深海用海草胞子と魚の卵各種詰め合わせ
- テントアパート
- 海底クッキングマシーン
- 消光電球
- 水中キャンプファイヤー
- とりよせバッグ
- ほんやくコンニャク
- 水上もうせん
- スモールライト
- 通りぬけフープ
- カメレオン帽子
- パクパクパーク(ジェットモグラ)
- ムードもりあげ楽団
- タケコプター
- ショックガン
- 水圧砲
- ひらりマント
- スモールライト、ショックガン、水圧砲、ひらりマントは鉄騎隊との戦いで使用されたが、映画ではアクシデント(武器のエネルギー切れ、破損、紛失)が原因で鉄騎隊に襲われてしまった(エルも自分の剣で戦ったが、戦いの最中で折れてしまった)。
- 四次元ポケット
- 四次元ポケットは、ドラえもんたちがムー連邦からの脱走を図った末に逮捕された際、一度没収された。
スタッフ
- 原作・脚本 - 藤子不二雄
- 作画監督 - 富永貞義
- レイアウト - 本多敏行
- 美術監督 - 工藤剛一
- 美術設定 - 川本征平
- 撮影監督 - 小池彰
- 録音監督 - 浦上靖夫
- 音楽 - 菊池俊輔
- 監修 - 楠部大吉郎
- プロデューサー - 別紙壮一、菅野哲夫
- 監督・絵コンテ - 芝山努
- 演出助手 - 森脇真琴、生嶋真人
- 動画チェック - 小林幸
- 色設計 - 野中幸子
- 仕上検査 - 代田千秋、夏田優子
- 特殊効果 - 土井通明
- 編集 - 井上和夫、鶴巻のり子
- 効果 - 柏原満
- 文芸 - 水出弘一
- 制作進行 - 田中敦、吉岡大
- 制作デスク - 山田俊秀
- 制作担当 - 田村正司
- 制作協力 - 藤子スタジオ、旭通信社
- 制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
主題歌
- オープニングテーマ「ドラえもんのうた」
- 作詞 - 楠部工 / 作曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 大杉久美子(コロムビアレコード)
- エンディングテーマ「海はぼくらと」
- 作詞 - 武田鉄矢 / 作曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 岩渕まこと(コロムビアレコード)
- この歌も『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』の主題歌『心をゆらして』と同様、TVの感動系やスペシャルの話でも、アレンジされてBGMとして使われた。
脚注
関連項目
- ドラえもん映画作品
- アニメーション映画
- ドラえもん (ファミコン) - 本作はこのゲームの中の「海底編」にあたる。
外部リンク
- 漫 - 原作漫画、大長編漫画等の執筆者の頭の1文字または略記号。藤=藤子不二雄。F=藤子・F・不二雄。1987年の独立前のみ「藤」と記載した(ただし『ドラえもん』は連載開始時から藤本単独作)。FP=藤子プロ。それ以外は作画者を記載。括弧付きは藤本以外が執筆した外伝、短編など。詳細は大長編ドラえもん#作品一覧(併映作品は各作品のページ)を参照。