ドラえもん のび太の恐竜
ドラえもん のび太の恐竜 | |
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監督 | 福冨博 |
脚本 | 藤子・F・不二雄、松岡清治 |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
製作 | シンエイ動画、小学館 |
出演者 |
レギュラー 大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 たてかべ和也 肝付兼太 ゲスト 横沢啓子 加藤精三 島宇志夫 |
音楽 | 菊池俊輔、コロムビアレコード、小学館プロダクション |
主題歌 | 大山のぶ代、ヤングフレッシュ「ポケットの中に」 |
撮影 | 小池彰、高橋明彦 |
編集 | 井上和夫、森田清次 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1980年3月15日 |
上映時間 | 92分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 15.6億円 |
次作 | ドラえもん のび太の宇宙開拓史 |
『ドラえもん のび太の恐竜』(ドラえもん のびたのきょうりゅう)は藤子・F・不二雄のSF漫画『ドラえもん』中のエピソードのひとつ。およびそれに大幅に加筆修正し、月刊コロコロコミック1980年1月号から1980年3月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の作品と、この作品を元に1980年3月15日に公開されたドラえもん映画作品。大長編・映画ともに第1作。
第2回ゴールデングロス賞最優秀金賞受賞作品。
また、2006年に本作のリメイク作品である『ドラえもん のび太の恐竜2006』が公開された。
解説
ジョイ・アダムソンの小説『野生のエルザ』をモチーフに[1]、白亜紀にあたる1億年前の北米西海岸を舞台としてのび太と恐竜ピー助との交流を描いた作品。1975年に短編として執筆され「増刊少年サンデー」に掲載、てんとう虫コミックス10巻に収録された。その後、小学館とシンエイ動画の楠部三吉郎が藤子にドラえもんの長編映画化を持ちかけた。「僕は短編作家」と断る藤子・F・不二雄に、楠部が「のび太の恐竜」の続きを描くことを提案して了承され、映画化がスタートした[2]。この短編に大幅な加筆修正を行うかたちで1979年12月発売の『コロコロコミック』1月号から3月号までの連載となる長編作品が執筆され、これが「大長編ドラえもん」の第1作となった。なお、楠部によると当初東映まんがまつりの1作として『ドラえもん』のテレビシリーズを上映する話が持ち込まれたが、藤子がこれを断ったことで小学館から長編映画製作の提案が持ち上がったという[2]。
てんとう虫コミックスに収録する際、雑誌連載版に35ページもの加筆とその他各所の修正が行われた。その後の作品でもこの単行本収録時の加筆・修正は行なわれたが、それが最も顕著だったのはこの作品である。雑誌連載版では、「1億年という時間に関するドラえもんの説明」「食べ物探し中の爬虫類・哺乳類の解説」「自分の想像で気絶するスネ夫としずかを思いやるのび太」などの場面は存在しない。逆に雑誌連載版にあった恐竜ハンターの母船の登場場面は、単行本では小型艇に差し替えられている。また、セリフのみの修正も何か所か見受けられ、例えば火口湖でティラノサウルスに襲われる恐竜の名前は雑誌連載版および単行本の初期の版では「ブロントサウルス」であったが、現在の単行本では近年の恐竜研究に基づき「アパトサウルス」と改められている[3]。この雑誌連載版は、2006年に発行された「ぴっかぴかコミックススペシャル カラー版 ドラえもん のび太の恐竜」で確認することができる。
また、本作では恐竜狩りを重大な悪事(航時法違反)として描いているが、原作の別エピソードではドラえもん達が娯楽として恐竜狩りを楽しむ話(「恐竜ハンター」てんとう虫コミックス2巻収録)や、恐竜を現代に無理やり連れてくる話(「小学一年生」1970年6月号掲載話(無題)、藤子・F・不二雄大全集3巻収録「きょうりゅうが来た」)などが存在する[4]。これは藤子が、本作をよく理解していないことから発生した矛盾だと、藤子不二雄Aと宮崎駿との鼎談で語っており[5]、「『矛盾しているじゃないか』という投書がきましたよ(笑)」とも振り返っていた。テレビアニメ第2作第2期『恐竜ハンター』(2015年2月6日放送)では、恐竜を捕まえる行為は「恐竜ハンティング」と呼ばれていて、捕まえた後ハンティングセンターの人達が元の世界、場所に戻すとドラえもんが説明している[6]。
当初のシナリオ第一稿には出木杉が登場しており、1億年前での冒険にも参加していたが、完成した映画では、出木杉は一切登場することはなかった。なお、このシナリオで出木杉は「タケコプターの電池の持たせ方」「ブロントサウルスの解説」「日本へ陸伝いに帰る」「ラジコンで恐竜ハンターたちを出し抜く」など、作中で重要な解説をしたり、アイディアを出したりしている(完成版では、それらの役割はドラえもん・のび太・スネ夫に置き換えられた)。
次回作『のび太の宇宙開拓史』のオープニングシーンでは、ティラノサウルスやプテラノドンが一瞬だけ登場している。
一部ではスティーヴン・スピルバーグが来日中に同時上映の『モスラ対ゴジラ』目当てで入った映画館で本作を見て、『E.T.』などの作品に影響を与えたといわれ、小学館発行の『藤子・F・不二雄の世界』(1997年)などで言及されている。
映画化の際には『野生のエルザ』のほか、『駅馬車』(1939年、ジョン・フォード監督映画)、『恐竜100万年』(1966年、ドン・チャフィ監督映画)も参考にされた[7]。
映画のビデオソフト化は1980年に小学館ビデオからVHSカセット版とβカセット版で発売。最初のリリースではモノラル音声であったが、1990年からのリニューアル・廉価版(VHSカセット・LD。ともに絶版)以降はステレオ収録に変更された。
映画ドラえもん史上では唯一クレジットで「製作」と表記されており、本作以降の作品では一貫して「制作」表記となっている。声優・スタッフ交代後の映画シリーズでは製作委員会方式となっているが、こちらも「制作委員会」と呼称されている。
なお、生物学的には「恐竜」とは中生代に繁栄した大型爬虫類のうち陸生のもののみを指し、海竜・魚竜・翼竜はこれに含まれない。従ってフタバスズキリュウを指して「恐竜」と呼ぶ本作のタイトルは厳密には誤りである。しかし本作ではフタバスズキリュウ以外のいわゆる「恐竜」も多数登場しているため、これらを含めて「恐竜」と呼ぶのであれば必ずしも間違いではない。また、学術的には誤りであるがこの時代に生息した大型爬虫類を大雑把に「恐竜」と呼ぶのはよくあることであり、そのような用法で使用しているとみなすこともできる。
略歴
- 1975年、短編作品として「増刊少年サンデー」に掲載。この短編はピー助を白亜紀の日本に返したところで終了している。
- 1979年10月、コロコロコミック誌上で最初の映画製作発表。
- 1979年12月、コロコロコミック1月号から最初の短編に大幅なページ増加をした大長編を3ヶ月に分けて発表。
- 1980年3月15日「大長編ドラえもんシリーズ」の映画第1作目公開。配給収入15億6000万円、観客動員数320万人。併映作品は『モスラ対ゴジラ』(1964年公開作品のリバイバル上映)。
- 1983年、大長編原作連載にさらに改ページを加えたものをてんとう虫コミックス単行本として発売[8]。
- 1994年、ミュージカル化して上演。香港やマレーシアでも上演された。
- 2006年、『ドラえもん のび太の恐竜2006』としてリメイクされて公開。また、「ぴっかぴかコミックス」にて、カラー版コミックスが発売された。ぴっかぴかコミックス版はてんとう虫コミックス版と細かい違いがある。
- 2008年、外務省「アニメ文化大使」にドラえもんが就任したことに伴い、『ドラえもん のび太の恐竜2006』に4ヶ国語(英仏中西)の字幕を付け各国の大使館などで上映している。
あらすじ
ティラノサウルスの爪の化石を自慢するスネ夫に対抗し、のび太は「恐竜の化石を一匹分丸ごと見つけてみせる!」と、突拍子もない宣言をしてしまう。
その後、偶然にも首長竜の卵の化石を発掘したのび太は、タイムふろしきを使って卵を化石になる前の状態に戻し、孵化させる。のび太は孵化した首長竜の子供をピー助と名づけて可愛がり、ピー助ものび太を慕って育つ。だが成長するにつれてピー助を匿うのが困難になってくる。ピー助の本当の幸せを願い、のび太はタイムマシンで白亜紀の世界へ帰してやる(ここまでが短編作品のあらすじ)。
しかしその後、ピー助を白亜紀へ連れ帰ったときに恐竜ハンターの攻撃を受けたことによりタイムマシンの空間移動機能が故障しており(時間移動機能はダメージを受けておらず、作動する)、ピー助を本来の棲息地である日本近海ではなく、北アメリカ(エラスモサウルスの生息域)へ置いて来てしまったことが判明する。ドラえもんとのび太はタイムマシンで再びピー助のもとへ行こうとするが、ジャイアン・スネ夫・しずかが無理やり同乗して定員オーバーで暴走した[9]ためにタイムマシンの空間移動機能が完全に壊れてしまい、日本の、正確にいえば1億年後にのび太の机が置かれることになる場所にタイムマシンを置かない限り元の時代へ戻れなくなってしまう。さらに未来から来た恐竜ハンターがピー助をつけ狙う。ピー助を元の住処へ戻すべく、そして無事に20世紀に帰るべく、白亜紀を舞台にのび太達の冒険が始まる。
声の出演
- ドラえもん - 大山のぶ代
- のび太 - 小原乃梨子
- しずか - 野村道子
- ジャイアン - たてかべ和也
- スネ夫 - 肝付兼太
- のび太のママ - 千々松幸子
- のび太のパパ - 加藤正之
- ジャイアンのママ - 青木和代
- スネ夫のママ - 加川三起
ゲストキャラクター
- ピー助
- 声 - 横沢啓子
- のび太が孵化させて育て上げたフタバスズキリュウ。性格は温和で甘えん坊。刷り込み効果の上、のび太に育てられたため、彼を実の親のように慕っている。
- 厳密にはフタバスズキリュウは海生爬虫類の首長竜であり、恐竜ではない。また、2011年には妊娠している状態の首長竜の化石が確認されたことから、実際の首長竜は胎生もしくは卵胎生であり、卵を生むことはなかったと考えられている。
- ガケシタさん
- 声 - 加藤正之
- 化石発掘中ののび太に庭や車を汚された男性。のび太とピー助との奇蹟的な出会いのきっかけともなった。名前の初出は書籍「(コロコロコミックデラックス)映画アニメドラえもん のび太とアニマル惑星」に掲載の記事「映画アニメドラえもん大事典 THE ENCYCLOPEDIA OF"DORAEMON"THE MOVIE」。
- 黒い男(ハンボス)
- 声 - 加藤精三
- 恐竜を不法に捕らえて売ろうとする未来世界の密猟者、恐竜ハンター。ドルマンに恐竜を渡して金をもらっている。なお、彼のタイムマシン「スコルピオン」は、その名の通りサソリを模した形状になっている。
- なお、映画及び漫画の名前は「黒い男」とされていたが、ミュージカル版にて「ハンボス」と言う名前に変更された。
- ドルマンスタン(ドルマンスタイン)
- 声 - 島宇志夫
- 24世紀(2314年)のメガロポリスに住む大富豪。恐竜のコレクションが趣味で、目的のためには手段を選ばない冷酷な悪人。人間に飼い馴らされた珍しい恐竜であるピー助を手に入れるために恐竜ハンター、黒い男を雇う。通称ドルマン(書籍「(コロコロコミックデラックス)映画アニメドラえもん」)。アニメ版(『ドラえもん のび太の恐竜』、『2112年 ドラえもん誕生』、『ドラえもん のび太の恐竜2006』)では「ドルマンスタイン」で、原作単行本でも途中の版から「ドルマンスタイン」となった。
- タイムパトロール隊
- 声 - 加藤正之(隊長)、井上和彦(隊員)、宮村義人(隊員)
- 時空犯罪を取り締まる部隊。24世紀のメガロポリスに本部を置く。巡視船「タイムマリン」で、時間や場所を問わず常に巡回活動をしている。違法な恐竜狩りを繰り返しているドルマン一味を追っている。
登場する古代生物
※ナウマンゾウは名前のみ。
※大富豪ドルマンスタインのコレクションにはブラキオサウルスやスティラコサウルスと思われる恐竜の首やステゴサウルスの全身の剥製も含まれている。
登場ひみつ道具
※付は原作のみ登場。
- タイムふろしき
- 成長促進剤
- スモールライト
- タイムマシン
- タイムテレビ
- 着せかえカメラ
- 海底ハイキングセット(エラチューブ、深海クリーム 原作ではコンクフードが追加)
- タケコプター
- どこでもドア※ - 道具名のみ。白亜紀の地図がインプットされていないので使えない。
- ビッグライト
- 万能加工ミニ工場※
- キャンピングカプセル
- 桃太郎印のきびだんご - 検索時には誤って「きび太郎印のももだんご」と呼んでいた。
- ラジコン粘土
- 立体コピー紙※
- 交通安全お守り※
- 即席エレベーター※
- 通りぬけフープ
- ひらりマント
スタッフ
- 製作 - シンエイ動画、小学館
- 原作 - 藤子・F・不二雄
- 製作協力 - テレビ朝日、旭通信社
- 脚本 - 藤子・F・不二雄、松岡清治
- 作画監督 - 本多敏行
- レイアウト - 芝山努
- 美術監督 - 川本征平
- 撮影監督 - 三沢勝治(J.S.C)
- 録音監督 - 浦上靖夫、大熊昭
- 特殊効果 - 土井通明
- 美術補 - 工藤剛一
- 音楽 - 菊池俊輔、コロムビアレコード、小学館プロダクション
- 編集 - 井上和夫、森田清次
- 音響制作 - オーディオ・プランニング・ユー
- 録音スタジオ - 東宝スタジオ
- 効果 - 柏原満
- 動画チェック - 小林正義
- 色指定 - 野中幸子
- 音楽ディレクター - 池田久雄
- 演出助手 - 安藤敏彦
- 製作担当 - 佐久間晴夫
- 製作進行 - 田村正司、塚田庄英、藤沢一夫、井上修、木村和市、志水貴美子
- 製作事務 - 山本有子、小沢一枝、千葉朝美、別紙博行、真田芳房
- 監修 - 楠部大吉郎
- プロデューサー - 楠部三吉郎、別紙壮一
- 監督 - 福冨博
主題歌
- オープニングテーマ「ぼくドラえもん」
- 作詞 - 藤子・F・不二雄 / 作曲・編曲 - 菊池俊輔 / うた - 大山のぶ代、こおろぎ'73
- エンディングテーマ「ポケットの中に」
- 作詞 - 武田鉄矢 / 作曲・編曲 - 菊池俊輔 / うた - 大山のぶ代、ヤング・フレッシュ
- 次作の「のび太の宇宙開拓史」のエンディングテーマにも使われ(主題歌の「心をゆらして」はエンディングの直前で流れる)、本作品のミュージカル版では挿入歌として使用された。
- 挿入歌
脚注・出典
- ^ DORAEMON THE MOVIE 25th_gallery - 「作者のことば」参照。2008年2月11日閲覧
- ^ a b 楠部三吉郎『「ドラえもん」への感謝状』小学館、2014年、pp.74 - 79
- ^ 連載当時「ブロントサウルス」とされていた恐竜はアパトサウルスと同一種だったことが判明し、ブロントサウルスという名称は使用されなくなった。詳細は「アパトサウルス#ブロントサウルスの名称問題」を参照
- ^ 『ドラえもん深読みガイド』(2006年)では、専用の道具を使って捕獲していたことに目を付け、ドラえもんは釣り堀のような合法的な施設を利用したのではないかと結論付けている。
- ^ 「アニメージュ 1984年2月号」より
- ^ 彼によると、「恐竜ハンティング」はスポーツの一種であり、大昔の時代で捕まえた恐竜を生きたまま未来のハンティングセンターに渡せば、恐竜メダルというものに交換でき、このメダルをたくさん貯めるとハンティンググッズと交換できるという。
- ^ 「QuickJapan」64号、太田出版、2006年
- ^ この単行本では源静香ののび太に対する呼称が「のび太さん」に変更されている(劇場映画版での呼称は「のび太くん」である。)。
- ^ 当時のタイムマシンの定員は3人だった。タイムマシンの項を参照
- ^ 藤子・F・不二雄 『大長編ドラえもん 1 のび太の恐竜』 小学館〈小学館コロコロ文庫〉、1995年、73頁。
- ^ DORAEMON THE MOVIE 25th_Film History_1st - サイドメニューより「ひみつ道具」参照。2008年2月11日閲覧
関連項目
受賞歴
- 第2回ゴールデングロス賞最優秀金賞
外部リンク
- 漫 - 原作漫画、大長編漫画等の執筆者の頭の1文字または略記号。藤=藤子不二雄。F=藤子・F・不二雄。1987年の独立前のみ「藤」と記載した(ただし『ドラえもん』は連載開始時から藤本単独作)。FP=藤子プロ。それ以外は作画者を記載。括弧付きは藤本以外が執筆した外伝、短編など。詳細は大長編ドラえもん#作品一覧(併映作品は各作品のページ)を参照。