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現代日本では卵は生食できる食品として認知されている。日本以外の国では[[韓国]]の[[ユッケ]]および[[ヨーロッパ]]の[[タルタルステーキ]]で生卵と生肉や他の具材をかき混ぜる料理、あるいは食材の一部([[フランス]]の[[ミルクセーキ]]など)としての他は、生食する食習慣は独特とされる。ほかに、薬用として卵が生食される<ref name="ex20080808">[http://www.excite.co.jp/News/bit/E1218099932080.html 365日、たまごかけごはんが食べたい!?] [[エキサイト|エキサイトニュース]]、2008年8月8日</ref>ことがある。
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世界各地域では、卵を食す場合は完全に火を通した調理法が一般的である。日本では出荷前後に衛生面にかなり神経質と言って良いほど気を使っており、鳥の糞に含まれる[[サルモネラ菌]]は存在しない。殻に鳥の糞がついたまま出荷する事が普通であり、衛生面的に「生で食べたらお腹を壊すどころの騒ぎじゃない」と考えている海外ではそのまま日本以外の文化圏で育った人にとって、生卵を食する習慣は[[カルチャーショック]]であり、時には[[ゲテモノ]]食と映る可能性もある。海外では基本的に「肉体や精神を究極に鍛えている人が生で食べる(いわゆる[[マッチョ]])」というイメージであり、[[アメリカ映画]]の『[[ロッキー_(映画)|ロッキー]]』では主人公が複数の生卵を飲み干す[[シーン]]があるが、日本人と日本人以外では受け止め方が異なる可能性がある。また、[[香港映画]]の『[[少林サッカー]]』では、ぼろ靴の上で潰れた生卵を吸うシーンでいじましさの演出に利用されたりしている。
世界各地域では、卵を食す場合は完全に火を通した調理法が一般的である。日本以外の文化圏で育った人にとって、生卵を食する習慣は[[カルチャーショック]]であり、時には[[ゲテモノ]]食と映る可能性もある。[[アメリカ映画]]の『[[ロッキー_(映画)|ロッキー]]』では主人公が複数の生卵を飲み干す[[シーン]]があるが、日本人と日本人以外では受け止め方が異なる可能性がある。また、[[香港映画]]の『[[少林サッカー]]』では、ぼろ靴の上で潰れた生卵を吸うシーンでいじましさの演出に利用されたりしている。


=== 日本における卵の流通 ===
=== 日本における卵の流通 ===

2018年1月15日 (月) 08:02時点における版

卵かけご飯
卵かけご飯と漬物
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卵かけご飯(たまごかけごはん・卵掛け御飯)は、に非加熱の鶏卵を掛けた飯料理である。調味料として醤油などが使用される[1][2][3]。卵を生のまま用いる。「卵ぶっかけご飯」、「卵ご飯」、「卵かっか」、「卵かけ」、「たまご飯」、「たまつる」、「ぼっかけご飯」、「T.K.G. (Tamago Kake Gohan)[2][4][5]などとも呼ばれる。

歴史

古来より日本人が食する動物性の食品は、魚介類が中心であった。仏教不殺生戒の影響(ただし誤解もある)と、の神聖視によって肉が穢れとみなされたことの影響によって、獣肉や鳥肉の摂取は稀であった。家畜化されたニワトリは弥生時代ブタとともに日本列島へ伝来するが、天武天皇聖武天皇の代にはニワトリをはじめとする殺生禁断令の詔が発せられ、ニワトリの卵も避けるべきとされた[6]

戦国時代から江戸時代にかけて西洋人が来航した西日本では肉食とともに卵を食する文化が伝来し、カステラボーロなど鶏卵を使用した南蛮菓子も伝来した[7]

江戸後期の天保9年(1838年)には鍋島藩の『御次日記』において、客人に饗応された献立のなかに「御丼 生玉子」が見られる[8]

近代に入った1877年頃、日本初の従軍記者として活躍し、その後も数々の先駆的な業績を残した岸田吟香1833年 - 1905年)が卵かけご飯を食べた日本で初めての人物とされ、周囲に卵かけご飯を勧めたとされている[9][10]。その後の第二次世界大戦後の食糧難の時期は鶏卵は希少品となったものの、昭和30年以降卵が庶民の味となってからは、味や栄養面で注目され、食卓の人気者となったという[10]

卵の生食

現代日本では卵は生食できる食品として認知されている。日本以外の国では韓国ユッケおよびヨーロッパタルタルステーキで生卵と生肉や他の具材をかき混ぜる料理、あるいは食材の一部(フランスミルクセーキなど)としての他は、生食する食習慣は独特とされる。ほかに、薬用として卵が生食される[11]ことがある。

世界各地域では、卵を食す場合は完全に火を通した調理法が一般的である。日本以外の文化圏で育った人にとって、生卵を食する習慣はカルチャーショックであり、時にはゲテモノ食と映る可能性もある。アメリカ映画の『ロッキー』では主人公が複数の生卵を飲み干すシーンがあるが、日本人と日本人以外では受け止め方が異なる可能性がある。また、香港映画の『少林サッカー』では、ぼろ靴の上で潰れた生卵を吸うシーンでいじましさの演出に利用されたりしている。

日本における卵の流通

日本の国内産の鶏卵は通常、厚生労働省の定める「衛生管理要領」に基づき殺菌剤で洗浄を行うなど病原体の付着を防ぐ安全のための措置が講じられ、卵選別包装施設でパック詰めされる。日本卵業協会によると、パック後2週間(14日)程度を年間を通して賞味期限としている所が多い。このような流通上の努力によりサルモネラ菌に感染する卵を減らす努力をしている。こういった流通体制を整えていない国での卵の生食や卵かけご飯は避けた方が良い。

サルモネラ菌

元来、生卵はサルモネラ食中毒などを起こしやすく、安全に食べられる地域は日本など一部に限られている。日本国外では卵の生食で食あたりする日本人が毎年発生するが、生食を前提にしている日本では鶏卵農家などによる卵の完全洗浄といった衛生管理全般が行き届いており、サルモネラ食中毒は2000年代以降に減少傾向を示している。

サルモネラ属菌はニワトリの腸管に存在していることが多く、産卵後に糞便などから卵殻に付着する。日本では、GPセンター(Grading〈選別〉・Packing〈パック詰め〉を行う工場)での選別時に次亜塩素酸ソーダによる殺菌処理を入れることもある[12]。生卵を食べる場合、ひび割れた卵[13]や割れた卵、割ってから時間の経った卵を使用するのは危険である。ただし、産卵後の汚染以外にも、菌を保持している親鶏から卵巣や卵管を経由して菌が卵内に侵入するという感染経路もある。

アメリカ食品医薬品局 (FDA) [14]は食中毒を避けるための提唱として、生卵の入手の際には殻が割れていないことを確認することや、調理の際には十分に加熱することを挙げている。

タンパク質の吸収性

タンパク質の生体利用率は生卵で51%、加熱された卵では91%であり、生卵のタンパク質の吸収率は、加熱された卵のタンパク質と比較して半分近く吸収率が低い[15]

卵白の摂取による影響

卵白には卵黄に多く含まれているコレステロールを抑制する作用があるとする研究発表がある[16]

一方、生卵白に含まれるアビジンにはビオチンの吸収を阻害する性質があり、生卵白を長期間にわたり継続して大量に摂取することによりビオチン欠乏症を発症する危険性があることを指摘する研究発表も出されている[17]

日本の食文化の中での位置づけ

現代の料理として

料理研究家栗原はるみは、2004年に発刊した外国人向けの料理書『ジャパニーズ・クッキング』で、卵かけご飯を紹介している。このように、調理を施すか、複雑な調理方法を用いるか否かによる「料理 (Cooking)」の定義は定かではない。

2008年には、岡山県久米郡美咲町に、卵かけご飯を中心のメニューとした定食店が開店した[9][18]。美咲町は卵かけご飯を日本で最初に食べたとされる岸田吟香の出生地でもある[9][18]

2009年10月10日には東京都日比谷(行政地名としては有楽町一丁目)に卵かけご飯専門店が開店した[19][20][21]

2000年代後半には、卵の生食習慣がない香港に向けて日本の食文化である「卵かけご飯」の市場開拓を目指す動きがある[22]

生卵は冷凍保存できないことから長期間の保存が難しい。南極観測隊では補給物資として半年振りに振舞われた生卵で卵かけご飯を作る隊員もいる[23]

卵かけご飯専用醤油

ファイル:おたまはん関東風.JPG
「卵かけご飯専用醤油」の一例(おたまはん関東風)

卵かけご飯に最適化するように調味されており、醤油をベースに昆布鰹節のうま味を加え、卵との調和を向上させるために甘味を加えた「卵かけご飯専用醤油」が開発され、2000年代以降に数十社から商品化・市販され、メーカーによっては「関東風」「関西風」など細分化されている[24]

などが販売されている。

卵かけご飯専用調味材

卵かけご飯に合うように、または独自の風味を出すように調合された調味材も存在している。

関連イベント

  • 《第1回》日本たまごかけごはんシンポジウム(2005年10月28日・29日・30日)
    • 島根県雲南市において卵かけご飯の魅力を語り合うシンポジウムが開かれた。これは卵かけ専用の醤油「おたまはん」を同市の第三セクター「吉田ふるさと村」が開発したことに起因するものである。
    • シンポジウムの内容は歴史や魅力について語り合うものであり、卵かけご飯にまつわる思い出や料理法が募集された。その中で「卵かけご飯の日」が10月30日に制定された。
    • 現在でも毎年開催されており、2009年10月25日には島根県雲南市で「《第5回》日本たまごかけごはんシンポジウム」が開催された。
  • アスパムたまごかけご飯フェア(2009年4月25日 - 5月6日、9月19日 - 23日)

関連資料・作品

  • 『365日たまごかけごはんの本』(読売連合広告社、2007年)では365種類の卵かけご飯を紹介している。その中で「T.K.G.」をたまごかけごはんの呼称(「醤油T.K.G.」や「チーズサンシャインT.K.G.」など)として使用している。T.K.G.とはもともと著者の一人である森田明雄が、編集作業の簡素化のために生み出した言葉で、この本ではごはんに生卵をかけた一般的なたまごかけごはんではなく、本文で掲げられている「おきて」に則った自分オリジナルの創作たまごかけごはんのことを「T.K.G.」と呼んでいる[4]。著・編集はT.K.G.プロジェクト。
  • 司馬遼太郎の小説『翔ぶが如く』には、西郷隆盛が卵かけご飯を好み、明治維新以降、夕食事にしばしば食したという旨の記述があるが、史実では無く司馬の創作と推測される。
  • 携帯電話のゲームにも登場している。Mobage(旧称: モバゲータウン)で提供されているビストロワールドは、世界の料理を調理して提供するソーシャルゲームであるが、2011年12月にイベント料理として「TKG」が登場している。

脚注

  1. ^ イセ食品株式会社、全国のたまごかけごはん
  2. ^ a b T.K.G.プロジェクト (2007)
  3. ^ 味の素KK、AjiPanda、We love たまごかけご飯
  4. ^ a b 『365日たまごかけごはんの本』、T.K.G.ってなぁに?
  5. ^ J-CASTニュース (2009)
  6. ^ 江後 (2011) p.169
  7. ^ 江後 (2011) pp.169-170
  8. ^ 江後 (2011) p.171
  9. ^ a b c "たまごかけごはん"の店「食堂かめっち。」ホームページ
  10. ^ a b 原 (2010) p.86
  11. ^ 365日、たまごかけごはんが食べたい!? エキサイトニュース、2008年8月8日
  12. ^ 畜産ZOO鑑、GPセンター
  13. ^ 卵による食中毒を家庭でも予防しましょう オホーツク総合振興局保健環境部
  14. ^ Playing it Safe With Eggs, FDA(2010.1.16収載)
  15. ^ Evenepoel, P., Geypens, B., Luypaerts, A., Hiele, M., Ghoos, Y., & Rutgeerts, P. (1998). Digestibility of Cooked and Raw Egg Protein in Humans as Assessed by Stable Isotope Techniques. The Journal of Nutrition, 128 (10), 1,716-1,722. 要約
  16. ^ 奥浦朋子・木村守・小田裕昭「卵白タンパク質による高コレステロール血症改善効果のメカニズム」 (PDF)
  17. ^ 柴田克己 他 「成人におけるビオチンの目安量についての検討」『日本人の食事摂取基準(栄養所要量)の策定に関する基礎的研究 平成16年度~18年度 総合研究報告書』 (PDF)
  18. ^ a b 岸田吟香にあやかった卵かけご飯の店オープン 岡山・美咲町 MSN産経ニュース、2008年1月23日 Archived 2008年9月2日, at the Wayback Machine.
  19. ^ 日比谷に卵かけご飯専門店―夜は305円均一の居酒屋に業態転換 銀座経済新聞、2009年10月24日
  20. ^ たまごかけごはん専門店『たまごん家(ち)』で朝ごはんしてきた! ロケットニュース24、2009年11月3日
  21. ^ 全品305円の"卵かけごはん居酒屋"、朝食スポットとしても外朝族に人気 マイコミジャーナル、2009年12月28日
  22. ^ 『卵かけご飯』香港参上 養鶏会社(高岡)が試食販売 好評 中日新聞、2009年6月22日
  23. ^ 山口東京理科大学 南極昭和基地からの手紙、「第50次南極地域観測隊が到着」
  24. ^ 「玉子かけご飯」から「アイスクリーム」専用まで “個性派醤油”50本を総チェック!〔3〕 日経トレンディネット 2007年12月28日
  25. ^ :::卵かけご飯には「おたまはん」!おにぎり食べるなら「おにぎりみそ」!ご飯を美味しく食べるなら!【吉田ふるさと村 だんだん市場】
  26. ^ 寺岡家の有機醤油
  27. ^ 濱田醤油株式会社、醤油加工品
  28. ^ “たまごかけご飯”や“刺身”をおいしく食べる専用しょうゆ「ヒゲタ たまごかけご飯にどうぞ!」「ヒゲタ さしみ醤油」新発売! キッコーマン ニュースリリース 2008年2月1日
  29. ^ 丸美屋、卵かけごはん専用のふりかけを発売 日経トレンディネット、2009年1月19日
  30. ^ ふりたま(卵かけご飯専用ふりかけ)
  31. ^ 「おうちで 牛丼風 たまごかけご飯130g」 MSN産経ニュース 2010年1月28日
  32. ^ おうちで 牛丼風 たまごかけご飯(ブルドックソース)

参考文献

書籍

  • 魚柄仁之助『食べかた上手だった日本人―よみがえる昭和モダン時代の知恵』2008年 ISBN 9784000237796
  • 江後迪子『長崎奉行のお献立―南蛮食べもの百科』吉川弘文館、2011年
  • 杉浦正著『岸田吟香―資料から見たその一生』汲古書院、1996年 ISBN 9784762950193
  • 原康明他編『調味料の基礎知識』エイ出版社〈食の教科書〉、2010年 ISBN 978-4-7779-1685-6
  • 松本仲子『江戸時代の料理本にみるたまご料理について』1992年、日本家政学会誌、pp.903-913
  • T.K.G.プロジェクト『365日たまごかけごはんの本』読売連合広告社、2007年 ISBN 9784990378806

関連項目

外部リンク