ねこまんま

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ねこまんま(猫飯)とは、次のいずれかを指す俗語である[1]

  1. に具材を直接に加えた御飯。猫(ねこ)まんま、ねこめし、にゃんこめし、しーしーまんま、とも呼ばれる。飯に鰹節をかけて混ぜ込んだものを言う場合と、飯に味噌汁をかけたものを言う場合がある。
  1. 字義通りの。鰹節に限らず魚の食べ残し(特にダシをとった煮干の残り物)を御飯に乗せたものなど。この場合は人の食物としては扱われず、一説には、こちらが本義[要出典]とされる。

人が食する「ねこまんま」[編集]

「まんま」とは「飯」の幼児語であり、「ねこまんま」は、に与える残飯を連想するような簡便な混ぜご飯を指す。以下のいずれも、犬猫に与えるような簡単な餌、残飯の様相を呈していることから、人の食する簡便な食事として「ねこまんま」と呼ばれている。

鰹節をかけた飯[編集]

鰹節をかけた飯

飯に鰹節をかけて混ぜ込んだものをねこまんまと呼ぶ地方は、主に東日本に見られる[要出典]。かけた鰹節の上に醤油をかけるかかけないかも文化や各人の嗜好などによって異なる。 一部の寿司屋では、削り節を具にした巻き寿司を「猫巻き」と称して提供している。

汁をかけた飯[編集]

味噌汁をかけた飯

他の地方では汁かけ飯ぶっかけ御飯犬飯などとも呼ばれる。なお汁かけ飯は飯場では工事現場の事故(山崩れなど)を想像させる縁起の悪いものでタブーとされる[2]。また、東北地方においては工事関係者、鉱山関係者に限らずマタギ木こり牛方馬方など山中で危険な肉体労働に従事する者の間で汁かけ飯は「仕事に味噌をつける」として嫌われた。牛方の一団が朝食を摂る折に一人でも飯に汁をかけた者がいるとその日の旅程は中止になり、滞在費は汁かけ飯のタブーを犯した者が負担した。ただ「汁かけ飯」ではなく「飯を入れた汁」の飲食は許されていた。

猫の餌としての「ねこまんま」[編集]

ペットの餌代を減らすため、また1970年代頃まではペットフード自体が無かったため、日本では人の残飯を「ねこまんま」、「犬飯」の状態にして与えることある。元来が肉食性の猫を、米など主に植物性の餌で飼育する文化は、世界的にも珍しい。

しかし猫は炭水化物の消化能力が、人間はもとより犬よりもさらに低い。また犬、猫ともに腎臓の能力が人間よりも低いため、人間が好む味付けでは塩分過剰となる。人間の残飯を与えることは栄養学的に好ましいことではない。飯に味噌汁をかけたねこまんまでは、猫にとって炭水化物・塩分過剰、タンパク質不足となる。ネギ類には犬猫の赤血球を破壊する物質(硫黄化合物)が含まれているため、与えると重度の貧血をもたらしたり、場合によっては死に至ることもある。このため、ネギそのものやネギ類の抽出物を含むような食品を与えてはならない。特に玉ねぎは要注意である(タマネギ中毒)。現代では所得の相対的向上や、また安価な猫缶や各種のキャットフードドッグフードなどが出回るようになったため、残飯を犬猫に与える家庭は減っている。ただし言葉だけは残っており、キャットフードをねこまんまと呼ぶこともある。

ねこまんまの歴史[編集]

起源は定かではないが、飢餓、戦災が多かった時代にはしばしば庶民の主食となっていた。戦国時代には関東北条家もこれを好んでいたと伝えられ、北条氏康は息子である北条氏政が飯に汁を2回かけるのを見るや「(飯にかける汁の量すら目分量できないとは)北条家もこれまでか」と嘆息したと伝えられる。

江戸時代中期~後期には、幕府の腐敗や鎖国を原因とする食料資源の枯渇により貧富の差が広がるとともに貧民のみならず身分の低い武士でさえもが飢えに瀕し、安価で調理の簡便な「ねこまんま」が大流行。当時カツオの産地として名をはせていた静岡和歌山鹿児島産のカツオ節が多く使われた。その後、明治維新後の争乱期から第二次世界大戦末期まで、庶民が飢餓をしのぐ食料の中心的存在となっていた。その後、これが単に貧民の食料に終わらずに、その独特の風味から、富裕層の一部や地方の役人なども好奇心から食べるようになった[3]

海外のねこまんま[編集]

日本と同様に、椀に盛った飯と汁物を同時に食べる文化のあるベトナムでも、食事の際に汁物をご飯に掛けることは頻繁に見られる。また日本とは違い、大衆食堂等の他人の目がある場所でおこなっても、マナー違反とはされない。

出典[編集]

  1. ^ ねこまんま コトバンク デジタル大辞泉
  2. ^ 日経WagaMaga 食べ物新日本奇行 汁かけご飯(その2) ご飯入れる?・汁かける?トンネルのこだわり”. 2015年8月閲覧。
  3. ^ 家計にやさしい「ねこまんま」が日本でひそかにブーム”. レコードチャイナ (2012年12月9日). 2015年8月30日閲覧。

参考文献[編集]

  • 遠藤哲夫「第2章 なぜ、人びとは、かくもネコまんまに興奮するのか?」『汁かけめし快食學』(ちくま文庫)、筑摩書房、2004年。(ISBN 4-480-03978-3)