食中毒

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食中毒(しょくちゅうどく)とは、有害・有毒な微生物化学物質毒素を含む飲食物が口から摂取した結果として起こる下痢嘔吐発熱などの疾病中毒)の総称である。

分類[編集]

因子・物質による分類[編集]

食中毒は、その原因になった因子・物質によって5つに分類される。

  1. 細菌性食中毒
  2. ウイルス性食中毒
  3. 化学性食中毒
  4. 自然毒食中毒
  5. 寄生虫性食中毒
  6. その他

に大別される。なお、食物アレルギーは食中毒に含まれない。

かつては、人から人へ感染が及ばないものといわれていたが、O157 などの腸管出血性大腸菌ノロウイルスは患者から患者へ感染するため、近年、国際的には食感染症として伝染病とあわせた対策がとられている。

発症様式による分類[編集]

食中毒の直接の原因は、飲食物などに含まれていた有害・有毒な原因物質を摂取することによるが、その原因物質が直接に毒物として作用する場合と、原因物質が微生物であり、その増殖によって感染症を発症する場合に分けられる。

  • 毒素型食中毒 - 原因物質が毒物として作用。
化学性食中毒や自然毒食中毒はすべて毒素型食中毒である。
  • 感染型食中毒 - 病原体への感染による作用。
細菌性食中毒やウイルス性食中毒では、その原因病原体によってタイプが異なり、感染型食中毒を起こすものと、毒素型食中毒を起こすものがある。細菌性の毒素型食中毒の場合、原因病原体が食品中で増殖するとともに毒素を産生し、その食品を汚染することで食中毒の原因となる。この場合、増殖後に加熱などにより病原体を不活化しても、毒素が残っていれば食中毒が発生する。
  • 中間型食中毒 - 細菌性食中毒では、病原体が消化管内で増殖する際に初めて毒素を産生するものがあり、生体内毒素型食中毒と呼ばれるが、これは感染型と毒素型の中間に位置する。

梅雨で高温多湿となる夏期に、最も食中毒の発生件数が多くなる。そのほとんどは細菌性食中毒である。しかしこれ以外の季節でも、冬期には貝のカキが原因とみられるノロウイルスが原因の食中毒が多く発生する。また、キノコフグなどによる自然毒食中毒は、それぞれその食材の旬にあたる秋から冬にかけて多く発生する。

代表的な食中毒[編集]

食中毒には数多くの原因菌などがあるがその中の代表的なものを以下に示す。

2006年度は、患者数別では、ノロウイルスカンピロバクターサルモネラ属菌の順であり、この3種が8割を占めた(厚生労働省 2007)。

細菌性食中毒[編集]

毒素型[編集]

細菌産生毒素の生理活性による食中毒。食品摂取時点で細菌類が不活化していても発症するため、抗生物質は不効。毒素が熱分解に弱い場合には加熱により不活化する。

  • 黄色ブドウ球菌 - おにぎりすし、おつくり。皮膚常在菌が食品へ移行し食品表面で増殖、毒素を産生する。潜伏期間が短く1-5時間、耐熱性毒素のため調理加熱程度で不活化できない[1]。耐熱性毒素ST(エンテロトキシンの一種)による。
  • ボツリヌス菌 - 発酵食品、いずし類、真空パック食品、キャビアの瓶詰め、ソーセージ。毒素型としては潜伏期間が長く、12〜36時間で症状が出る事が多い。ものが飲み込みにくくなったり、発音がうまくできなくなるなどの神経症状(筋肉が麻痺するため)を引き起こす。ボツリヌス毒素自体は熱分解しやすい。また酸性(pH 4.5以下)に保つことで毒素の生産を抑えることができる[2]。食中毒の初報告は独・腸詰め(ソーセージ)。

感染型[編集]

感染により体内増殖した細菌が病原性をもつことにより発症する。

  • 腸炎ビブリオ - 夏期の未加熱魚介類、刺身、シラスなどから感染することが多い。調理器具などを介した2次汚染で他の食品が食中毒の原因になることもある。海水の常在菌で、食塩濃度0.5〜10%で生育。塩分の無い水道水などでは生存できない。海水温度が高いほど菌密度が高くなる[3]。発生ピークは6-10月。
  • サルモネラ属菌(腸チフス・パラチフスは除く) - 内臓肉、鶏卵、鳥肉 -> 特に夏期の自家製マヨネーズ、アイスクリーム。
  • カンピロバクターカンピロバクター症 - 鶏肉、鶏卵、生乳、牛刺し、レバ刺し、馬刺し、生ユッケ。家畜・家禽類の常在菌であるため、その生食にリスクがある。特に鶏肉の加熱不十分が原因となることが多い。潜伏期間が2〜11日と長い[4]。近年、鶏肉の生食と関連するギラン・バレー症候群が注目されている。特に予後不良例が多いことが報告され、焼き鳥のレアを回避するよう注意喚起がなされている[5]
  • 病原性大腸菌 - 原因食品の傾向をつかみにくい。病原性を呈する大腸菌群全体を示す。→腸内での増殖、毒素産生をもつことから中間型に分類する諸家もいる。腸管出血性大腸菌O157(感染症法3類)がきわめて有名だが、感染症扱い。また、感染症にひきつづくベロ毒素(O111, O26他)による合併症TTP, 溶血性尿毒症症候群(HUS)も、用語としては一般的に「食中毒」として取り扱わない。接触感染することから、二次感染症との識別が極めて難しい。
  • リステリア属菌 - 食肉加工食品、生乳製品。潜伏期間は平均すると数十時間とされているが、患者の健康状態、摂取菌量、菌株の種類の違いにより発症するまでの期間は大きく左右されると考えられるため、その幅は数時間から数週間と長く、原因食品の特定が困難な場合もある。主に、胃腸炎症状。まれにインフルエンザ様症状。重篤な場合、脳脊髄膜炎などの神経系統症状。母子垂直感染による流産。

中間型[編集]

毒素型、感染型両方の中毒を起こす。

  • ウェルシュ菌 - 学校給食、料理作り置きなど保冷=解凍サイクルに乗じて増殖する。加熱調理・煮込み課程において不活化を免れた芽胞が保冷サイクルにおいても生存し、解凍時の加熱によって食品内で増殖する。経口時までに活性量の芽胞・菌体量が確保されることにより体内に侵入、消化刺激から芽胞を形成するときにエンテロトキシンを生成し発症する。芽胞+, 耐熱性 潜伏期間8-24時間
  • セレウス菌 - 土壌、水中、空気中など自然界に広く分布する。芽胞は100℃ 10分の条件でも不活化されず、加熱後においても芽胞を形成し体内に侵入、下痢・嘔吐等の発症にいたる。酸性では増殖しにくい[6][7]

型不明[編集]

  • エルシニア菌 - エルシニア属菌 (Yersinia) による食中毒をエルシニア感染症 (Yersiniosis) またはエルシニア食中毒という。おもに食中毒の原因になるのはYersinia.enterocoliticaである[8]。Y.enterocoliticaは海水中に生息する細菌だが、他にもいろいろな場所で生存できる。感染源は水、ミルク、魚介類、果物、野菜など[9]。28〜30℃が生育至適温度だが、0℃でも増殖できるものがある[8]

ウイルス性食中毒[編集]

  • ノロウイルス - ノロウイルス感染症を引き起こす小型のウィルス粒子の属名。例えばノーウォークウイルスなどがノロウィルス属に含まれる。直接ヒトからヒトに、また飲食物を介してヒトからヒトに感染する。潜伏期間は1〜2日で、激しい下痢と嘔吐が主な症状。感染性が非常に強い。老人ホームなど高齢者の集まる所で蔓延した場合、多数の死者を出しうる[10]
  • ロタウイルス - 抗原性によりA群からG群に分類され、ヒトに感染するのはA, B, C群である。A群は乳幼児下痢症の原因ウイルスとして重要。B群は成人に激しい下痢を引き起こす[11]
  • A型肝炎ウイルス
  • E型肝炎ウイルス - 野生動物肉や狩猟肉fr:gibieren:game meat)喫食に起因する急性肝炎を起こすことがある[12]

化学性食中毒[編集]

  • アレルギー様食中毒
    • ヒスタミンアミン
      • 発症例はマグロ、カジキ、サバが多く鮮度の落ちた魚、チーズ、発酵食品、腐敗した食品などが原因となる。また、キノコなどの食材自体の腐敗により生成される場合もある。
        加熱調理用としてイカサバマグロブリなどを常温で保管した場合、ヒスタミンが食物中に蓄積する[13]が、調理の加熱ではヒスタミンは分解されず[13]、摂食により発症する。ヒスタミンが原因物質となっているため、胃腸炎の他に頭痛、発疹などの症状を呈し[14]、発症までの時間は20分程度と短い場合もある。ヒスタミン生産菌のProteus morganiiなどにより汚染された魚(鮮度の落ちた魚)には多量のヒスチジンが存在し、このヒスチジンが脱炭酸化によりヒスタミンに変化する。サバでは温度5℃5日間の保存で、官能的に腐敗臭を感じない状態でも、ヒスタミン量が中毒の閾値をこえる場合もある[15]が、中毒症状を発生させる閾値(濃度)は、多数の変動要因があり明らかになっていない[16]

自然毒食中毒[編集]

寄生虫食中毒[編集]

喫食した食物中に存在している寄生虫が体内で増殖、或いは体内を移動することによる

その他食中毒[編集]

食中毒の発生[編集]

日本国内での食中毒事件の発生状況は、年間、患者数約2万人程度である。死者数はゼロか、多くても十数人であり、交通事故による死者数(年間4,000人〜5,000人)と比較しても非常に少ない。

日本の食品衛生法には食中毒が発生した場合の報告・調査・行政処分等が定められている。行政上の措置にとどまらず、刑事事件(業務上過失致死傷等)や民事訴訟(損害賠償請求訴訟)に至るケースもあり死亡時の賠償額は、高額になる事もある。

報告[編集]

  • 食中毒患者等を診断し、又はその死体を検案した医師は、24時間以内に文書・電話・口頭により最寄りの保健所長にその旨を届け出なければならない(食品衛生法58条1項、食品衛生法施行規則72条)。
  • 保健所長は医師から届出を受けたときその他食中毒患者等が発生していると認めるときは、速やかに都道府県知事等に報告する(食品衛生法58条2項)。
  • 都道府県知事等は保健所長より報告を受けた場合に食中毒患者等が厚生労働省令で定める数以上発生し、又は発生するおそれがあると認めるときその他厚生労働省令で定めるときは、直ちに、厚生労働大臣に報告しなければならない(食品衛生法58条3項)。

調査[編集]

  • 保健所長は医師から届出を受けたときその他食中毒患者等が発生していると認めるときは調査を行う(食品衛生法58条2項)。

行政処分[編集]

  • 販売禁止命令
  • 出荷停止措置
  • 食品の回収命令・回収指示
  • 飲食店に対する営業停止、営業禁止、営業許可取消し
  • 給食施設に対する業務停止等

なお、食品衛生上の危害の発生を防止するため、食品衛生法違反者等(営業者名、施設名、所在地、食品名、行政処分の理由、行政処分の内容、病因物質)については都道府県等から公表される(食品衛生法63条)。

罰則[編集]

  • 業務上過失傷害罪
  • 業務上過失致死罪
  • 食品衛生法違反
  • 食品衛生法違反ほう助
  • 製造物責任法違反

大規模な食中毒事件[編集]

日本[編集]

北米[編集]

欧州[編集]

予防[編集]

細菌による食中毒を予防する三大原則[27] といわれているのは、

  1. 付けない(清潔)
  2. 増やさない(迅速、冷却、乾燥)
  3. 殺す(加熱など)

である。多くの細菌では、原因細菌が増殖し食中毒を発症しうる状態となっていても味や臭いを変えないため、飲食の直前に安全を確認するのは困難であり、これらの予防策に頼らなくてはいけない。

細菌・ウイルス以外の原因による食中毒の予防は、誤食しないということにほぼ尽きる。どのようなものを食べてはいけないかをよく覚えるしかない。寄生虫による食中毒は、細菌による食中毒の予防原則の「付けない」と「殺す」を守ることで予防できる。

本節の以降の記述は、細菌による食中毒の予防に関するものである。

付けない[編集]

一般に、生の魚介類や肉類には食中毒の原因となる菌が多く付着している。これらの食材自身は、加熱殺菌して食べたり、あまり時間を置かずに食べるなどして食中毒を防止できるが、しばしば盲点となるのはこれらを加工調理した器具に付着した菌である。調理器具の洗浄が不十分であった場合、器具上で菌が増殖してしまい、次に加工する食材に毒素とともに付着してしまうことがある。また、菌が調理器具を経由して生で食べる食材に付着してしまうこともある。包丁の柄は洗い残しやすい部分である。

この問題を避けるためには、魚介類・肉類用の調理器具と、野菜など用の調理器具を分けるのが効果的である。特にまな板は一般家庭の調理においても、魚介類・肉用とその他用で分けることが強く推奨される。複数のまな板を準備するのが困難である場合、まな板の両面で使い分けるだけでも効果がある。集団給食の調理場などではこれを徹底するために、色違いのまな板を用いるなどの工夫がなされていることが多い。また、できるだけ生食の食材の加工を先に行ない、肉類は最後に切り刻むように心がけることも予防につながる。

調理器具とともに、手の洗浄も重要である。糞尿には菌が極めて多数含まれているので、調理中にトイレに行った場合には必ず石鹸で手を洗わなくてはいけない。集団調理においては、着衣を着替えた上でトイレに行き、石鹸による洗浄の後に消毒用アルコールによる殺菌を義務づけているところも多い。

増やさない[編集]

食材を冷蔵冷凍することは、原因菌の増殖を抑えるのに非常に効果的である。一般には、10度以下で菌の増殖は鈍り、-15℃程度で増殖が停止すると言われている[誰によって?]。しかし、いずれも菌が不活化(死滅)するわけではない(実際、細菌研究者は実験に使用する菌は一般的な冷凍庫よりも低温で冷凍保存している。すなわち、あくまでも増殖が停止しているだけであって滅菌効果はない)。一度冷凍した食材でも解凍すれば菌の増殖は再開し、保存温度が十分に低くない場合にはゆっくりではあるが増殖は進む。家庭用の冷凍庫は冷却能力が低いことが多く、大きめの食材においては中心温度が十分に下がるまでにだいぶ時間がかかることがあり、その間に菌の増殖が進んでしまうことがある。加熱調理用の魚でも、調理の直前まで低温で保管し原因菌の増殖を防ぐ。

冷蔵庫に食材を大量に詰め込んだ場合、冷気の循環がうまく行かず、庫内といえども場所によっては十分に冷却されないということが発生する。一般には、最大容量の7割以上の食材を入れないことが、冷蔵庫の正しい使い方であるとされる。

高濃度の塩分には菌の増殖を抑える効果がある。しかし、効果が期待できるほどの濃度の場合、一般的にはそのまま食べるのには適さないので、梅漬けなどの少量を食べるもの以外では塩抜きをしてから食べることになる。また、黄色ブドウ球菌や腸炎ビブリオなどは好塩菌とも呼ばれ、比較的高濃度の塩分存在下でも増殖が可能であるため、これらの菌に対する効果は若干低い。リステリア菌では耐塩性が強く30%の塩分濃度でも生き抜くことが出来る。

細菌の増殖には水が欠かせないことから、乾燥させることは食中毒の予防になる。一部の食材を除いて、食材を完全に乾燥させることはできないので、この観点が重要になるのは調理器具である。調理器具を洗浄した後はすみやかに水分を拭き取り、湿気の少ない場所に置くことが推奨される。特に木製の器具は水分が浸透して乾燥しにくいので、引き出しの中などではなく風通しの良い場所に吊るすなどの工夫が必要になる。また、ふきんは食器を拭いた後よく乾くように、やはり風通しの良い場所に吊るさなければいけない。

など)が存在すると増殖に至適な環境では無くなるので細菌の増殖が抑えられることが多い。特に生の魚介類に酢やレモン汁をかけて食べる料理はマリネと呼ばれ、世界中の魚介類が豊富な地域で食べられている。しかし、酸による制菌効果はそれほど高いものではない。腸炎ビブリオなど酸に弱い菌もあるが、一般的な食事に適した濃度の酸で不活化(殺菌)できる菌は少ない。日本酒ワイン焼酎程度のアルコール濃度では、一部の原因菌は不活化することはできない。従って、原因菌の増殖防止あるいは滅菌(殺菌)目的でアルコール飲料を使用することは予防方法にはならない。

殺す(不活化)[編集]

細菌を不活化させるのに最も効果が高いのは、加熱することである。食中毒の原因菌は、75度以上の環境で1分以上経つとほとんどが不活化する。大きな食材では食材の中心が75度以上に1分以上ならなくてはいけない。例えば、厚さ3cm程度のハンバーグを焼く場合、中心温度が75度以上になるまでに9分近くかかるという実験結果もある[28]。ただし75度1分という加熱条件には、明らかに加熱し過ぎでこの加熱条件では製品が成り立たなくなる、という批判もある。実際、アメリカ合衆国政府やカナダ政府などの食品安全のガイドラインではさらに弱い条件での加熱を示している[29]。例えば、カナダ保健省(Health Canada)ではハンバーグは71度に到達することとしている。また、ノロウイルスを不活化するためには、中心温度85度以上で1分間以上加熱する必要がある[30]

中心まで十分に加熱するためには、食材の切り方を工夫したり、低火力で長時間加熱するなどの必要がある。電子レンジによる加熱は、表面を焦がさず中心まで均等に加熱することができる。大きなハンバーグなどは電子レンジで予備加熱を行なってからフライパンなどで焼くと、安全でおいしく仕上がる。しかし、加熱して不活化するのはあくまで細菌であり、腐敗により生成されるアミン類や芽胞の不活化および毒素の分解温度ではない。細菌が既に毒素を作り出している可能性がある場合には、加熱は食中毒の防止手段にはなり得ない。例えば、黄色ブドウ球菌が作り出すエンテロトキシンは通常の加熱調理ではほとんど分解(失活)しない為である。但し、E型を除くボツリヌス毒素の一部は100度で10分以上、あるいは80度で30分以上加熱しないと失活しないものもあるが、E型の毒素は63度で10分の加熱により失活するなど、細菌・毒素のタイプによる違いもある。

さらに気をつけるべき点は、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、セレウス菌など耐熱性の高い芽胞をつくる細菌があり、これらの芽胞は100度でも完全に不活化させることができない。75度1分以上の加熱で人体に影響を与える量以下に十分抑えることができるが、加熱後長時間放置しておけば生き残った少数の菌が増殖してしまうことになる。

大量調理の現場では、まな板などを乾燥するための装置を備えていることも多い。夜間、ヒトが不在なときに紫外線を発する蛍光灯が付いていて、光による殺菌を同時に行なうようになっているものもある。ヒトに対して紫外線は有害であり、その利用は時間・空間的に限定されるため補助的な殺菌方法として利用される。

エタノールの殺菌効果は70%w/w程度の濃度で最大であるが、通常の食品に使用される濃度では、殺菌できるほど効果は強くない。また、胞子状態や菌種によって無効である。

香辛料による効果に関して

ニンニクワサビなどの香辛料にも殺菌効果があるとされる。特にワサビは、その辛みの主成分であるイソチオシアン酸アリルに強い殺菌作用がある。ただし、イソチオシアン酸アリルは揮発性が高いので、長時間に渡る殺菌効果の持続は望めない。一方、生姜には原因菌の増殖抑制効果は無く[31]、逆に増殖を促進してしまう[32]。また、香辛料は収穫から流通までの過程でかび[33]や細菌類に汚染されていると指摘され[34]汚染源となる可能性がある[35][36]ほか、香辛料の抗菌性は組合せにより大きく変わり期待できないとの指摘もある[36]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.62-63
  2. ^ 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.64-65
  3. ^ 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.59-61
  4. ^ 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.71-72
  5. ^ カンピロバクター食中毒予防について(Q&A) 厚生労働省
  6. ^ 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.70-71
  7. ^ 感染症の話 セレウス菌感染症 国立感染症研究所 2003年第5週号(1月27日〜2月2日)掲載
  8. ^ a b 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.72-73
  9. ^ 『ブラック微生物学(第2版)』p.695
  10. ^ 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.79
  11. ^ 『スタンダード栄養・食物シリーズ8 食品衛生学(第3版)』p.81
  12. ^ 野生動物等の肉を生食してE型肝炎発症!福岡県庁ホームページ
  13. ^ a b ヒスタミン食中毒防止マニュアル10.3.9 (PDF) 大日本水産会 国際・輸出促進部 品質管理課
  14. ^ ヒスタミンによる食中毒新宿区保健所衛生課
  15. ^ 赤身魚類の貯蔵中におげるヒスタミンの消長 (PDF)
  16. ^ ヒスタミン食中毒の統計に関する調査研究 The Investigation Study on Statistics of Histamine Fish Poisoning 国立医薬品食品衛生研究所 (PDF)
  17. ^ 自然毒のリスクプロファイル 厚生労働省
  18. ^ 食中毒原因物質の分類 厚生労働省 (PDF)
  19. ^ 鈴木淳、魚類からの粘液胞子虫の検出状況 日本食品微生物学会雑誌 Vol.29 (2012) No.1 p.65-67, doi:10.5803/jsfm.29.65
  20. ^ 川瀬雅雄、吉岡丹ほか、【原著】Kudoa hexapunctata 寄生メジマグロが原因と疑われる有症事例と患者便検査に関する検討 本食品微生物学会雑誌 Vol.32 (2015) No.1 p.48-53, doi:10.5803/jsfm.32.48
  21. ^ 住肉胞子虫のヒト感染症について
  22. ^ 札幌市衛生研究所-調査報告(1983)札幌市における西友ストアー清田店の集団食中毒について2014年8月1日閲覧。
  23. ^ 2013年11月16日付【学校法人香川栄養学園】「本学カフェテリアにおける食中毒の発生のご報告とお詫び」
  24. ^ 2013年11月16日付【学校法人香川栄養学園】「本学坂戸キャンパス内カフェテリアにおける食中毒の発生について」
  25. ^ 2013年11月22日付【学校法人香川栄養学園】「本学坂戸キャンパス内カフェテリアにおける食中毒の発生について(その2)」
  26. ^ O-157食中毒の発生について(静岡市)
  27. ^ 厚生労働省ホームページ
  28. ^ http://www.city.suginami.tokyo.jp 東京都杉並区の保健所による報告。
  29. ^ How to Avoid Illness from HamburgersHealth Canada.
  30. ^ 『ノロウイルスに関するQ&A』厚生労働省
  31. ^ 宮川豊美、川村一男、食中毒菌に対する香味野菜の発育阻止作用 The journal of Wayo Women's University 29, 13-19, 1989-03-31, NAID 110000472201
  32. ^ 野田克彦、磯崎さとみ、谷口春雄、スパイス類の大腸菌増殖抑制と促進効果 日本食品工業学会誌 Vol.32 (1985) No.11 P791-796, doi:10.3136/nskkk1962.32.11_791
  33. ^ 堀江義一、山崎幹夫、宮木高明ほか、香辛料を汚染するカビについて 食品衛生学雑誌 Vol.12 (1971) No.6 P.516-519, doi:10.3358/shokueishi.12.516
  34. ^ 一戸正勝、食品の一次加工,調理によるカビ毒の消長と輸入食品のカビ毒産生菌 日本調理科学会誌 Vol.42 (2009) No.5 p.349-354, doi:10.11402/cookeryscience.42.349
  35. ^ 藤田賞子、吉川光一、調理食品中の香辛料の抗菌性(第2報) : 市販粉末シナモン中の生菌数 日本家政学会誌 45(8) pp.713-717, NAID 110003167860
  36. ^ a b 宮本悌次郎、山崎匡美、松田生恵、山本 由喜子ほか、香辛料によるスープ中細菌の増殖阻害 調理科学 Vol.21 (1988) No.4 p.274-278, doi:10.11402/cookeryscience1968.21.4_274

参考文献[編集]

外部リンク[編集]