小麦粉

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小麦粉
小麦粉、白、無添加[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,523 kJ (364 kcal)
76.31 g
糖類 0.27 g
食物繊維 2.7 g
0.98 g
飽和脂肪酸 0.155 g
多価不飽和 0.413 g
10.33 g
ビタミン
ビタミンA相当量
18 μg
チアミン (B1)
(10%)
0.12 mg
ミネラル
リン
(15%)
108 mg
マンガン
(32%)
0.682 mg
セレン
(48%)
33.9 μg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

小麦粉(こむぎこ、wheat flour)とは、小麦を挽いて作られた穀粉である。うどん粉、メリケン粉とも呼ばれるが、ともに俗称である(後述)。英語では穀物の中でも最も多く製粉されるため単にflourと呼ぶことが多い。人類による利用は古代エジプトにみられ、西洋圏では広く利用され、日本でも粒食と並んで中世後期には利用された。

形成されるたんぱく質のグルテンの性質によって、強力粉、中力粉、薄力粉などに分類され、それぞれ適した産地の小麦が存在する。強力はパンや麺に、中力はうどん、お好み焼き、たこ焼きに、薄力は菓子や天ぷらに適する。全粒粉は精白されていない小麦を用いておりその分栄養に富む。グラハム粉は、同じく全粒だが精製法が違い、表皮と胚芽の部分が粗挽きである。

栄養の特徴[編集]

成分の7、8割をデンプンが占め、タンパク質も約1割含んでいる。主なタンパク質はグリアジングルテニンで、これらはを吸収すると、粘りのあるグルテンとなる。このグルテンが独特の料理を生み出し、様々な食品に生まれ変わる。このグルテンのみを取り出したものが、(ふ)である。

他の穀物と同様、小麦タンパクもヒトに不可欠な必須アミノ酸のいくつかが欠如もしくは不足しているため、小麦だけをタンパク源にするとさまざまな健康障害を引き起こす。それらは不足しているアミノ酸を別の食品から摂取することで解消できる。主要な穀物源とする地域は世界各地にあるが、小麦と豆の様に伝統的な組み合わせがあり、健康障害を回避するための料理法や食材がある。

性質[編集]

カロテノイド色素により淡いクリーム色をしている[2]。粒子は直径150μm以下と細かく、東京都など一部の自治体では粉塵爆発のおそれもあるため、指定可燃物に規定している[3]。ほかの粉末と混ざりやすく、粉末調味料などを混ぜてプレミックスとしたり、ビタミンなどの添加に応用される。表面に水気を帯びたものに付着しやすく、ムニエルなどのや、麺類の打ち粉として使われる。匂い吸着しやすく、香り付けの加工ができる反面、保管の仕方によっては異臭が付くことがある[2]

精製[編集]

全粒から果皮や胚芽の部分がふすまとして取り除かれ、胚乳の部分のみを挽いたもので、全粒100kgからはおおよそ72~75kgほどが得られる。胚乳部分のみを残し果皮や胚芽を完全に取り除くと真っ白で純粋なものが取れるが、製パンに使用する場合、風味を与えるために、必ずしもふすま部分を完全に取り除いたものが良いとも限らない。素朴な味わいや風味を出すために、小麦粒をふすまごと丸々挽いた全粒粉も用いられる[4]

加工[編集]

液体を加えることにより状態が変化し、粉100に対し水60でパン生地、水45でうどん生地となる。こうした、こねることができる固めの生地を英語でドウと総称する。粉の2倍の水または卵を加えて混ぜた緩やかな生地はバッター (料理)英語版と呼び、天ぷらの衣やケーキに使われる。5-20倍の水を加えて加熱しながら混ぜるととなり、合板の接着にも使われる(等級の低い末粉が適する)。同量のバターと共に炒るとルーとなり、ソースやシチューのとろみをつけるのに用いられる[2]

種類[編集]

含有するタンパク質(主にグリアジン、グルテニン)の割合と、形成されるグルテンの性質によって薄力粉、中力粉、強力粉に分類される。タンパク質分を除いた残渣を精製したものは浮き粉と呼ぶ。澱粉だけでできたちょうど片栗粉のようなものになる。

グルテンの量は品種の他に、開花期・収穫期に雨が降るかどうかによっても変動する。この時期にが多いと小麦はグルテンを形成しにくくなるためである。

強力粉[編集]

強力粉(きょうりきこ)はタンパク質の割合が12%以上のもので、パン中華麺・学校給食で出てくるソフト麺等に使われるほか、国産の一部乾燥パスタは粗挽きの強力粉を用いて作られる。主にアメリカ・カナダ産の硬質小麦(パンコムギ)を使用している。焼くと硬い仕上がりになるので洋菓子には向かない。英語圈の分類ではbread flourがこれに近い。

中力粉[編集]

中力粉(ちゅうりきこ)はタンパク質の割合が9%前後のものでうどんによく使われるほか、お好み焼きたこ焼きなどに用いる。主にオーストラリア・国内産の中間質小麦を使用している。強力粉と薄力粉を混ぜれば性質は中間になるため、中力粉の代用とすることができるが、本来の中力粉とは加工特性がやや異なるため工夫を要する。

薄力粉[編集]

薄力粉(はくりきこ)はタンパク質の割合が8.5%以下のものでケーキなどの菓子類・天ぷらに使われる。主にアメリカ産の軟質小麦を使用している。タンパク質の含有量を抑えれば抑えるほど繊細な仕上がりになるので、タンパク質の含有量をさらに減らした、「製菓用薄力粉」などとラベルに書かれた、俗に「超薄力粉」と呼ばれるものも存在する(超薄力粉などと言う商品名の粉はない)。また、乾燥パスタ原料からの連想で誤解されがちなのであるが、卵を用いて生パスタを作る場合に使われるのは薄力粉である。英語圏の表記ではcake flourがこれに近い。

浮き粉[編集]

浮き粉(うきこ)は、生地から麩の原料としても使われるグルテンを分離した残りの澱粉分をいう。グルテンを分離するには、こねた生地を水につけて洗い流すのだが、この水に浸かっている状態では沈粉(じんこ)という。主に明石焼き和菓子香港の透明な皮の海老餃子などの原料として使われている。

全粒粉[編集]

「ぜんりゅうふん」。小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたものである。精製品に比べて食物繊維ミネラルビタミンが豊富。主にパンビスケットシリアル食品の材料として用いられる。

グラハム粉[編集]

グラハム粉(グラハムこ)とは、全粒粉の一種。小麦を胚乳と表皮および胚芽に分けてから、胚乳は普通品と同じ細かさに挽き、表皮と胚芽は粗挽きにして両方を混ぜ合わせたもの。全粒粉よりもざらざらしている。

セモリナ粉[編集]

セモリナ粉(セモリナこ)とは、通常品より粒子の粗い(210μmの布ふるいに残留する)粉をいう[5]。英語のセモリナ (Semolina) は、イタリア語のSemolaから由来し、これはラテン語のSimila(穀粉)に由来する。クスクスなどを作るために使用されるデュラム粉から精製されており、蛋白質の量が強力粉よりも多く、グルテンが少ない。乾燥パスタ、シリアル、プリンなどに使用されている。

等級[編集]

灰分含量を指標として等級づけられている。特等粉(0.3-0.4%)、一等粉(0.4%前後)、二等粉(0.5%前後)三等粉(0.8%前後)、末粉(1.5~2.0%)に分類される[6]。等級が上位のものほどミネラル分が少なく、くすみの少ない淡いクリーム色をしている[7]。種類と組み合わせて「強力一等粉」や「中力三等粉」のように表記される。

調合原料[編集]

作る料理によって、タンパク質の割合が適したものを選び、他の穀粉膨らし粉粉乳ショートニング調味料香料着色料などの原料を調合した商品(調製粉、プレミックス)が多種市販されている[8]

主原料として作る食品[編集]

そのほか、食品としては、饅頭もんじゃ焼きトルティーヤ、などがあるほか、餃子の皮やピザクラストにも用いられる。

麩は小麦グルテンを原料として作られ、焼麩の種類(車麩や庄内麩など)により異なる種類と等級の合わせ粉として使われる[9]

歴史[編集]

古代エジプトの壁画にも小麦の収穫の模様が描かれるほど、人類と小麦の歴史は古く、人類初の作物のひとつとされる。紀元前3,000年頃の古代エジプトでは、既に無発酵のパンが食べられていた記録が残っている。紀元前600年頃の古代オリエント時代には回転式の石臼が考案され、それまでは石の間に挟んで押しつぶす形での製粉であったことから劇的に変わったといえる[10][要高次出典]

産業革命以降、蒸気機関の利用により、製粉はより大規模となり、世界に流通し、19世紀には、現代でも使用されている製粉機が誕生し、効率・品質ともにより向上した[11]

日本列島では縄文時代石皿磨石を用いて植物や堅果を粉砕し食すという、粉食習慣が行われていた。弥生時代稲作農耕が開始されると石皿・磨石が消失し、米や大麦雑穀などの穀物は粒のまま食する粒食に変化した。小麦は弥生時代以降には日本列島に伝来し、古代には麺類も貴族の間で食されている。中世前期には、こね鉢・すり鉢などの加工具が再び出現し、さらに中世後期には石臼も出現し、僧や武士、庶民の間でも粉食習慣が復活した。江戸時代にはうどん・蕎麦などが食されている。

近代には、戦後の食糧不足対策としてという名目ではあるが、アメリカの小麦戦略から余剰分を援助物資として供給され[12]、学校給食でパン食が取り入れられたことなどからパン食の食習慣が広まった[13]

メリケン粉とうどん粉の違い[編集]

日本産の小麦を製粉したものをうどん粉、アメリカから輸入した小麦を製粉したものをメリケン粉と呼んでいた[14]。メリケンはアメリカン(American)のことで、英語発音がそう聞こえるためである。この名残で、関西などでは今もこう呼称することが多い[15]

明治の頃、国内生産のものは褐色で粉粒が粗くパン作りには向かなかった(当時の精製技術(水車製粉)では真っ白にはならなかった)。そこで、アメリカから白く精製されたものを輸入していた。

現在、日本では料理用として薄力粉(天ぷら粉など)が普及しているが、強力粉以外をうどん粉と呼ぶ場合が多い(中力粉または薄力粉の意味)。

出典[編集]

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  1. ^ [どれ?]米国農務省食品成分データベース (英語)
  2. ^ a b c 長尾精一 『粉屋さんが書いた小麦粉の本』 三水社、1994年ISBN 4-915607-68-2
  3. ^ 東京都火災予防条例
  4. ^ ジェフリー・ハメルマン 2009, pp. 36-38.
  5. ^ 長尾精一編 『小麦の科学』朝倉書店、1995年、p.62。ISBN 978-4-254-43038-7
  6. ^ 小麦・小麦粉の商品知識、小麦粉のおはなし」製粉振興会。閲覧2017年5月30日
  7. ^ 小麦粉のはなし、小麦と小麦粉のはなし」木下製粉株式会社。閲覧2017年5月30日
  8. ^ プレミックスとは?」日本プレミックス協会。閲覧2017年5月30日
  9. ^ 長尾精一編 『小麦の科学』 朝倉書店、1995年、pp.187-188、ISBN 978-4-254-43038-7
  10. ^ 小麦粉の歴史・文化、小麦粉百科」日清製粉グループ、閲覧2017年5月30日
  11. ^ 粉砕部分に着目した製粉機の分類、製粉の歴史」木下製粉株式会社、閲覧2017年5月30日
  12. ^ 学校給食の歴史、学校給食について」全国学校給食会連合会。閲覧2017年5月30日
  13. ^ 「コメよりパン」になった日本人の食卓」ニッポンドットコム。閲覧2017年5月30日
  14. ^ 『広辞苑 第五版』 岩波書店、1998年ISBN 978-4000801119
  15. ^ 第10回 メリケン粉、洋菓子の世界」日本洋菓子協会連合会。閲覧2017年5月30日

参考文献[編集]

  • ジェフリー・ハメルマン、井上好文、金子千保 『BREAD―パンを愛する人の製パン技術理論と本格レシピ』 旭屋出版、2009年ISBN 978-4751108130

関連項目[編集]

外部リンク[編集]