食パン
| 100 gあたりの栄養価 | |
|---|---|
| エネルギー | 1,105 kJ (264 kcal) |
|
46.7 g | |
| デンプン 正確性注意 | 49.1 g |
| 食物繊維 | 2.3 g |
|
4.4 g | |
| 飽和脂肪酸 | (1.90) g |
| 一価不飽和 | (1.15) g |
| 多価不飽和 | (0.87) g |
|
9.3 g | |
| ビタミン | |
| ビタミンA相当量 |
(0%) 2 μg |
| チアミン (B1) |
(6%) 0.07 mg |
| リボフラビン (B2) |
(3%) 0.04 mg |
| ナイアシン (B3) |
(8%) 1.2 mg |
| パントテン酸 (B5) |
(9%) 0.47 mg |
| ビタミンB6 |
(2%) 0.03 mg |
| 葉酸 (B9) |
(8%) 32 μg |
| ビタミンE |
(3%) 0.5 mg |
| ミネラル | |
| ナトリウム |
(33%) 500 mg |
| カリウム |
(2%) 97 mg |
| カルシウム |
(3%) 29 mg |
| マグネシウム |
(6%) 20 mg |
| リン |
(12%) 83 mg |
| 鉄分 |
(5%) 0.6 mg |
| 亜鉛 |
(8%) 0.8 mg |
| 銅 |
(6%) 0.11 mg |
| セレン |
(34%) 24 μg |
| 他の成分 | |
| 水分 | 38.0 g |
| 水溶性食物繊維 | 0.4 g |
| 不溶性食物繊維 | 1.9 g |
| ビオチン(B7) | 2.4 µg |
|
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[2]。 | |
| %はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 | |
食パン(しょくパン)[3]とは、大きな長方形の箱型の型で焼いたパンのこと[4]。
目次
概説[編集]
食パンとは、生地を発酵させ、大きな長方形の箱型の型に入れて焼いたパンのことである。薄く切ってトーストにして食べたり、サンドイッチに用いたりされる[4][5]。
形により「山型食パン(ラウンドトップ)」「角型食パン(プルマンブレッド)」「ワンローフ」などに分類される。18世紀頃にイギリスで、カナダ産強力粉を原料[6]として金型に入れて焼いた山型食パンの製造が開始された[7]。「ティンブレッド(tin bread)」とも呼ばれる。イギリス系の植民地や食文化が世界に拡散するとともに、ブリキの箱(tin box)で焼くパンも全世界規模で広まった。
英国の山形白パンやフランスのパン・ド・ミなどに起源を持つ日本の食パンであるが、日本人は日本人の食感で、材料比率・形・焼き加減などを変え、英仏の原型とはいささか異なった独特のパンにして食べている。
原型になっている英仏のパンと、日本流の「食パン」をひとまとめにしてしまうのは多少問題があるが、日本語の語彙体系で言えば双方が「食パン」に分類されてしまうので、あわせて説明する。
名称[編集]
「食パン」は日本語における呼称で、日本での造語である。日本人が型に入れて焼いた軟らかいパンのことを「食パン」と呼ぶようになった理由については、「美術のデッサンの時に描いた線を消すのに用いるパンを『消しパン』と呼称し、それに対して食用のパンを『食パン』と呼称し始めた」とするものや、「明治初期に外国人が主食として用いていること(『主食用パン』であること)を示す言葉として使われるようになった」とするものなど、いくつもの説がある[8]。
台湾では日本語教育が行われた歴史があり、日本語の影響を強く受けた台湾語では食パンとトーストを「ショッパン」(白話字:sio̍k-pháng)と呼称している。一般的には国語が使われるので吐司(tǔsī)と呼ばれている(中国大陸側(普通話)では多士(duōshì))。焼いていないものは白吐司。同じく日本の影響を受けた朝鮮半島では食の漢字音のみ朝鮮語読みして「シッパン」(シクパン、식빵 / 食빵、sikppang)と呼ばれる。そもそもパンそのものを「パン」(빵、ppang)と呼んでいる。
構造[編集]
クラム[編集]
パンの外皮の内側にある気泡を多く含む軟らかい部分をクラムまたは内相という[9]。
食パンはフランスの「pain de mie」(パン・ド・ミ、パン・ドゥ・ミー)に相当する[5]。このmieはフランス語で中身を意味し、クラムの部分を楽しむタイプのパンとして嗜好され、日本でも「pain de mie」の名称で販売されることがある[5][10]。
かつて、軟らかく中が白いパンは豊かさの象徴だった。製パン工場で大量生産される廉価なローフブレッドによって、貧困層も従来より高品質な食事で命をつなぐことができるようになり、自家製パンの労働からも解放された。その半面で、手間のかかる郷土料理やホームベイク文化の消失にも繋がっている[11]。
パン耳[編集]
パンの外側の硬く焼き色がついた部分はクラスト(crust)または皮(表皮)というが、食パンの場合は「耳」ともいう[9]。英語では踵を意味する「heel」という呼び方もある。
サンドイッチなどに使う時は白い部分だけを用い茶色の部分あたりは切り落とすことことが多い。パンをまとめて焼き、サンドイッチに加工したりする街のベーカリーにとっては「パンの耳」は一種の中途半端な余剰物にあたる。以前は捨てられることが多かったが、有効活用される努力も行われている。古くからある有効活用法は、動物園や農家などの動物・家畜の餌(飼料)であった。
大手の製パン工場では、小規模なベーカリーなどと比較しても比べものにならないほど大量の「パンの耳」が発生するため、それらをどう活用するのかは課題であった。努力・研究の結果、近年では別の商品に活用したり、発想の転換で新商品を生みだしたりするのに成功する会社も増えた。
- 末広製菓や山崎製パンが販売する「揚げパンスナック」は、サンドイッチ製造時の副産物であるパン耳を加工・商品化したものである。
- 山崎製パンは「ランチパック」製造時副次産物のパン耳を商品化した「チョコの山」を2009年に発売した[12]。
- 従来はパン粉会社や家畜飼料会社へ提供していたパン耳を、ラスクに加工販売するかつサンド店[13]もある。
パンの耳は、家庭などではオーブンなどで軽く焼くとカリカリとした食感になり、ラスクやビスコッティの代用品として、コーヒーなどを飲みながら食べることができる。また、パンの耳を揚げて砂糖や蜂蜜で味つけをし、かりんとうに似た食感の菓子として供することもある。
種類と形態[編集]
分類[編集]
食パンには次のような分類がある。
- 角食パン(角型食パン)
- 角食パンは、生地を型に入れた後、蓋をして焼いた食パンである[5]。蓋を閉じて焼くためしっとりと滑らかな触感となる[5]。
- 山食パン(山型食パン)
- 山食パンは、生地を型に入れた後、蓋をせずに焼いた食パンである[5]。焼く過程で生地が上に伸びるため比較するときめが粗い触感となる[5]。日本では明治時代にイギリス人によって作られたこともあり「イギリスパン」ともいう[5]。
北海道では、四辺が直線の食パンを「角食」(かくしょく)と呼び、一辺が丸い食パンを「山食(やましょく)」と呼ぶ人も多い。
なお、小麦粉に全粒粉を用いたものは全粒食パン(ブラウンブレッド、グラハムブレッド)という[5]。
英仏の食パン[編集]
イギリスでは焼き型に蓋せず上部が盛り上がった山形である。
近年、イギリス大都市部のパン職人はフランスやドイツ流のサワードウ発酵パンを主流とする。伝統的なローフブレッドは田舎町のパン工房や観光地で探した方が見つけやすい状況にある[14]。
食パンはフランスの「pain de mie」(パン・ド・ミ、パン・ドゥ・ミー)に相当する[5]。フランスはパンの種類が多様であり、その多くが外側が濃い色にパリパリと固く焼き上げられたものである。フランス語で「mie ミー(ミ)」というのは中身のことであり、ハードなクラスト(皮)ではなく、ソフトなクラム(中身)を楽しむパンという意味である[5]。フランスでは日本の食パンに比べてやや小振りなタイプが広く嗜好されている[15]。とは言ってもフランスでは朝食ではクロワッサンなどが主流であるし、サンドイッチに使うパンはあくまでバゲット類が主流なので、全体の流通量に占めるパン・ド・ミの割合はかなり小さい。
日本の食パン[編集]
明治初期に日本へイギリスの山型白パンが伝わり、主に外国人向けに製造された。神戸では米騒動を期に食パンが朝食用に用いられた[16]。太平洋戦争後、サンドイッチを食する占領軍兵士の要望を受けて、角型食パンが8枚に切り分けて販売される。後年に食パンの食感が日本人の嗜好へ調整されるようになった。トーストでの供食に好まれる6枚(20mm)、5枚(24mm)、4枚(30mm)など厚切りや、サンドイッチなど調理加工に好まれる10枚(12mm)、12枚(10mm)など薄切りが販売されるなど切り分け厚は多様である[17]。
消費は関西が特に多い。都道府県別の消費量で見ると、近畿の2府4県が上位10位内に入っており、廉価品より高級品、薄切り(6・8枚切)より厚切り(4・5枚切)の販売額が高い[18]。
欧州各国では水と塩だけで練られることが多いのに対して、日本の食パンは牛乳や脱脂粉乳、バター、マーガリン、ショートニングなど油脂類の添加されているものも多い。こうした日本の製品は菓子パンに分類される場合がある。
現代日本において、食パンは家庭のホームベーカリーで焼かれるほか、様々な事業者により生産・販売される。大手製パン会社が自社ブランドや小売チェーン等から依頼を受けたプライベートブランド(PB)商品[19]として生産するほか、街中のベーカリーでも売られている。2010年代に入ると食パン専門店も増え、食感の良さを売り物にした高級品は1斤1000円を超える場合もある[20][21]。
製法[編集]
工程はおおまかに言うと、ミキシング(材料を混ぜること)→ 発酵 → 切り分け・丸め → ベンチタイム → 成形・型詰め → 焼成 → 型からの取り出し、といった順になる。
製粉小麦粉類を焼成すると重量は約1.5倍に増加する。用いられる長い箱型の型は、日本では「食パン型」と呼ばれている。
日本の家庭で食パンを作ろうとしても、以前はなかなか困難であった。生地をコネたり発酵させたりといった工程の管理も大変であったが、長い金属型を入れて焼くことができるような大型のオーブンなどを持つ家庭が少なかったためである。近年、日本の家庭では家庭用パン焼き機(ホームベーカリー)も普及するようになってきており、そのほとんどが工程のコースを選べるようになっており、おおむね基本コースとして「食パン」コースを用意している。家庭用パン焼き機の内部には、テフロン加工などのこびりつかない金属型とヒーターがあり、生地をコネることや発酵も含めて工程のほとんどが自動的に行われるようになっている。
計数単位[編集]
食パンの重量は「1斤(きん)」「2斤」……と数える。尺貫法の斤から派生した「英斤」(120匁=450グラム)に由来し、製品重量の偏差を考慮して1斤当たりの重量は350 - 400グラムであるのが一般的で、製パン業界の公正競争規約では340g以上と定めている[24]。切り分け前の棒状食パンは1本、2本と数え、切り分け後は1枚、2枚、または1切れ、2切れと数える。
美術[編集]
木炭およびそれに適した用紙を用いるデッサンの場合、描いた線を修正する時に消しゴムを使うと硬くて用紙を傷める。このため前述のように、軟らかく油分の少ない食パンが広く用いられている。練り消しゴムが安価に広く流通している現在でも、木炭デッサンでは最適の道具として食パンが用いられることが多いのである。
参考書籍[編集]
- ウィリアム・ルーベル 『パンの歴史』 堤梨華 訳、原書房、2013年。ISBN 9784562049370。
出典[編集]
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ 『新明解国語辞典』の初版などには「口語形はしょっぱん」と書かれていた。これは名古屋を中心とする中部地方域と九州各県に見られる新方言である。[要出典]
- ^ a b 広辞苑 第6版【食パン】
- ^ a b c d e f g h i j k ナガタ ユイ 『サンドイッチの発想と組み立て』 誠文堂新光社、2012年、10頁。
- ^ 『穀物・豆 (新・食品事典)』 河野友美 編、真珠書院、1994年、152頁。ISBN 978-4880091013。
- ^ 舟田詠子 『パンの文化史』 朝日新聞出版、2007年、236頁。ISBN 978-4861430695。
- ^ あははっ 語源 食パンの語源
- ^ a b “パンの用語集”. 日本パン技術研究所. 2019年1月18日閲覧。
- ^ “パン・ド・ミとハードトースト、その違いは?”. ドンク. 2017年6月29日閲覧。
- ^ パンの歴史, 第2章,4章.
- ^ パンの耳のチョコレート菓子「チョコの山」 - 日経トレンディネット
- ^ まい泉の“かつサンド”の“パンの耳”で作ったラスクが登場!|web★1週間
- ^ パンの歴史, pp. 114-116.
- ^ 『パンの事典―おいしいパンのある幸せな生活』 成美堂出版編集部、成美堂出版、2006年、60,90。ISBN 978-4415039954。
- ^ 「神戸のケーキとパン」『聞き書 兵庫の食事』 日本の食生活全集兵庫編集委員会(編)、農山漁村文化協会〈日本の食生活全集〉、1992年、61頁。ISBN 978-4540910067。
- ^ 柴崎友香 「ローカルフード」『よそ見津々』 日本経済新聞出版社、2010年、123頁。ISBN 978-4532167554。「「八枚切り」の存在を大阪の友だちに言うと、「ああー、だからトーストくわえて走っている場面が【漫画やラブコメに】あるんや」という。確かに、五枚切りではくわえて走るのは、無理ではないがちょっと難しい。あごが疲れそうだ。四枚切りではさらに難易度が上がる。」
- ^ 関西では厚切りの食パンが好まれるというデータと考察(大阪観光コンベンション協会) 2011年6月5日閲覧。
- ^ PB商品「金の食パン」が高くても売れる理由『プレジデント 』2014年3月17日号(2018年10月3日閲覧)。
- ^ 「ふんわりしっとり 高級食パン人気/素材・製法こだわり 各地に専門店」『読売新聞』朝刊2018年8月26日(くらし面)。
- ^ 「プチぜいたくな朝」楽しむ おすすめ食パン10選『日本経済新聞』朝刊2018年9月15日(別刷り日経プラス1)2018年10月3日閲覧。
- ^ 『小麦粉とパン・めん・菓子・料理』 財団法人製粉振興会、平成19年、p.57
- ^ 小麦粉のおはなし ●日本人が作り出した食パン(製粉振興会) 2011年7月9日閲覧。
- ^ 食パンの1斤の定義(農林水産省) 2011年6月7日閲覧。