セリアック病
セリアック病 | |
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![]() セリアック病によって絨毛などに異常を来たした小腸の生検画像 | |
分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 | 消化器学 |
ICD-10 | K90.0 |
ICD-9-CM | 579.0 |
OMIM | 212750 |
DiseasesDB | 2922 |
MedlinePlus | 000233 |
eMedicine | med/308 ped/2146 radio/652 |
Patient UK | セリアック病 |
MeSH | D002446 |
セリアック病(セリアックびょう、英: coeliac disease、米: celiac disease)またはシリアック病(シリアックびょう)は、遺伝的素因のある子供や大人の小腸に影響を与える慢性の多臓器自己免疫疾患であり[1]、グルテンを含む食品を摂取すると発症する[1]。この疾患はまた「グルテン過敏性腸症」[1][2]「グルテン性腸症」「セリアックスプルー(英: celiac sprue)」とも呼ばれる。英語圏では他にも「グルテン拒否症」「非熱帯性腸症」という意味の表現も用いられている。
概要[編集]
第二次世界大戦中のヨーロッパでグルテン食との関連が指摘され認識が広まった[3]。
遺伝性疾患である。患者の近親者にはセリアック病患者が見られることから遺伝的要因が大きいとされており、セリアック病の人のほとんどが、(ヒト白血球型抗原の)HLA-DQ2またはHLA-DQ8が陽性である[4]。欧米での罹患率は1 %程度と報告されている。だが日本での羅患率は不明である[5]。
- 機所(メカニズム)
小腸内の上皮細胞には絨毛・微絨毛と呼ばれる小突起が存在して栄養素の吸収を行なっている。遺伝的にセリアック病にかかっている患者がグルテンを含有する食物などを摂取すると、ヒトの消化酵素では分解できないグルテン分子の一部が小腸上皮組織内にペプチド鎖のまま取り込まれ、これに対する免疫反応がきっかけとなって自己の免疫系が小腸の上皮組織を攻撃して炎症を起こすことで絨毛などを損傷し、また上皮細胞そのものの破壊にまで至ってしまう[6]。この結果、小腸から栄養を吸収出来なくなり、患者は食事の量などに関らず栄養失調の状態に陥る。
症状[編集]
セリアック病の症状は消化器官の損傷が直接的に影響するものと、損傷が副次的に影響する物に分けられ、過敏性腸症候群、クローン病、憩室炎、慢性疲労症候群などと似ている。
- 消化器症状の例[3]
- 消化管外症状の例[3]
検査[編集]
- 上部消化管内視鏡 - 十二指腸の波状変形の感度は48に過ぎないが、特異度は99%と優れていた(陽性適中率は97%)[7]。
- 病理組織診断 - 十二指腸下行脚の小腸生検は特異度が低いが、診断のために必須である。
- 血清学的マーカー - 抗グリアジン抗体(AGA)と抗筋内膜抗体(EMA)、抗組織トランスグルタミナーゼ抗体(tTG)が用いられる。これらを併用すると、陽性および陰性適中率はほぼ100 %となる[8]。
治療[編集]
大部分の患者は、グルテンを含まないグルテン除去食が唯一の認められた治療法となる[10]。
セリンプロテアーゼの消化酵素を使った治療法は、試験段階で認可された医薬品はない[10]。
病名の語源[編集]
「coeliac」という単語は、ギリシア語のギリシャ語: κοιλιακος, koiliakos(腹部の)に由来しており、古代ギリシャにて本疾患を記述したとされるカッパドキアのアレタイオスの著作の翻訳に基づき、19世紀に導入された[11]。
出典[編集]
- ^ a b c [https://www.worldgastroenterology.org/guidelines/celiac-disease/celiac-disease-english World Gastroenterology Organisation, Global Guidelines, Celiac disease
- ^ [1]
- ^ a b c 中澤英之、セリアック病と「氷山モデル」 『信州医学雑誌』 2008年 56巻 4号 p.212, doi:10.11441/shinshumedj.56.212
- ^ van Heel D, West J (2006). “Recent advances in coeliac disease”. Gut 55 (7): 1037–46. doi:10.1136/gut.2005.075119. PMC 1856316. PMID 16766754 .
- ^ 中澤英之、牧島秀樹、石田文宏 ほか、「セリアック病」『胃と腸』 43巻 4号, 2008/4/24, doi:10.11477/mf.1403101344
- ^ 星野浩子、田所忠弘、「セリアック病とグルテンフリー食品」 『東京聖栄大学紀要』 VOLN6, 35-47, 2014-03-01, NAID 110009780443
- ^ Kasirer Y, et al. Dig Endosc. 2014 Mar;26(2):232-5.
- ^ Hill I. What are the sensitivity and specificity of serologic tests for celiac disease? Do sensitivity and specificity vary in different populations?. Gastroenterology 2005;128:S25-S32.
- ^ Cellier C, et al. Refractory sprue, coeliac disease, and enteropathy-associated T-cell lymphoma. French Coeliac Disease Study Group. Lancet 2000;356:203-208.
- ^ a b “Digestive Enzyme Supplementation in Gastrointestinal Diseases”. Curr. Drug Metab. 17 (2): 187–93. (2016). PMC 4923703. PMID 26806042 .
- ^ Adams F, translator (1856). “On The Cœliac Affection”. The extant works of Aretaeus, The Cappadocian. London: Sydenham Society. オリジナルの2007年3月11日時点におけるアーカイブ。 2006年9月4日閲覧。 Google Books entry も参照のこと
関連項目[編集]
- 遺伝性疾患、自己免疫疾患
- グルテン
- 小腸
- グルテンフリー・ダイエット
- グルテン関連障害
- 非セリアック・グルテン過敏症
- ノバク・ジョコビッチ - 世界的なテニスプレーヤーで、当疾患の患者で、当疾患とのつきあいかたに関する著書もある。
外部リンク[編集]
- 03-消化器の病気/吸収不良/セリアック病 メルクマニュアル 家庭版
- 01-消化器疾患/吸収不良症候群/セリアック病 メルクマニュアル プロフェッショナル版
- NDDIC: Celiac Disease(米国立消化器系疾患情報センターセリアック病の項)
- グルテン除去食治療抵抗性のセリアック病 (PDF)