アトピー性皮膚炎

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アトピー性皮膚炎
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
皮膚科学
ICD-10 L20
ICD-9-CM 691.8
OMIM 603165
MedlinePlus 000853
eMedicine emerg/130
MeSH D003876

アトピー性皮膚炎(アトピーせいひふえん、英語: atopic dermatitis)とは、アレルギー反応と関連があるもののうち皮膚炎症を伴うもの。アトピー性湿疹英語: atopic eczema)と呼ぶ方が適切である[1]アトピーという医学用語は、主にタンパク質のアレルゲンに強く反応する傾向のことであり、気管支喘息鼻炎などの他のアトピー性のアレルギー疾患にも冠されることがある[1]。アトピーである場合、典型的には皮膚炎、鼻炎、喘息の症状を示すことがあり、その内の皮膚炎(湿疹)のことである[1]

過半数は乳児期に、そして90%までが5歳までに発症する[2]。アトピー性皮膚炎のリスク排除の第一手段として乳児の完全母乳哺育が推奨されており、乳児の牛乳たんぱく質への暴露はその発症リスクの一因と考えられている[3]

治療には外用薬が使われることが多い。

初出と意味[編集]

アトピーという名称の由来は、「特定されていない」「奇妙な」という意味のギリシャ語「アトポス」(atopos - a=否定、topos=由来)であり、1923年にアーサー・フェルナンデス・コカポーランド語版ロバート・アンダーソン・クック英語版によって命名された。アトピー性皮膚炎という言葉が医学用語として登場するのは、1933年である。アメリカ人のザルツバーガー皮膚科医が、皮膚炎と結びつけてアトピー性皮膚炎 (atopic dermatitis)という病名を初めて使用した。

コカはアトピーの名称を異常な過敏反応を指して使い、病原体や病因が不明で眼、鼻、気管支、皮膚など多彩に発現し、奇妙、不思議であるということである[4]。アトピー性の人の血中に、アレルゲンに反応するレアギンが検出されることが分かり、これは免疫グロブリンに属することが分かりγEと命名され、今日ではIgEと呼ばれている[4]

世界アレルギー機構(WAO)の定義するところでは、アトピーとは、主にタンパク質のアレルゲンに暴露されIgEを産生する傾向のことで、IgEに対する高反応だということである[1]。それは家族的な場合もあり、典型的な症状として喘息、鼻炎、湿疹を示すことがある[1]。そしてIgE検査でIgE感作が証明されるまではアトピーとは言えない[1]

世界アレルギー機構の定義では、広く皮膚の炎症を指す時に皮膚炎を使用し、アレルギー性喘息や鼻結膜炎があるというような共通の特徴があるアトピー性体質の者の場合には、アトピー性皮膚炎と呼ぶよりアトピー性湿疹の方が適切である[1]

アトピー性皮膚炎の罹患者224人平均年齢26.4歳にて、91人は気管支喘息であり、166人はアレルギー性鼻炎、138人は過去1年間持続的に皮膚症状を呈しており、65人(29%)が一般的な食物アレルギー(小麦粉、牛乳、卵、ピーナッツ、大豆)であった[5]

原因[編集]

日本皮膚科学会ガイドラインでは、アトピー性皮膚炎は表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる。

アトピー素因

65%が1歳までに、90%が5歳までに発症する[2]

遺伝要因は約50%だと推定されているが、先進国では21世紀までに過去30年にわたり小児アトピー性疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻結膜炎)が増加してきており、そうした有病率の増加は遺伝要因からは説明しがたいし、実際にアトピー性疾患にかかる子供の大半は遺伝的にリスクの高いグループに属しているということもない[6]。またアレルギー性疾患とアトピー性疾患の関連は十分に証明されている[6]

遺伝的要因
遺伝子の解析により、マスト細胞好酸球にIgE抗体を結合させるレセプターや、サイトカインのうちアレルギーの炎症に関与するものの遺伝子が集中している遺伝子座がアレルギーと関連していることが明らかになっている[7]
日本人のアトピー性皮膚炎患者の約3割弱にフィラグリン遺伝子変異がみられる。フィラグリンは角層のバリア機能の形成や水分保持といった機能の蛋白である。フィラグリン遺伝子変異を有していると、2歳未満の若年発症が多い、より重症になりやすい、成長に伴い寛解しないといった傾向がみられる[8]。palmar hyperlinearity(手掌、特に拇指球にみられる皮膚紋理の増強)は、フィラグリン遺伝子変異に対する感度(ホモ接合体100%、ヘテロ接合体約75%)・特異度(約95%)がともに高い[9]

2003年のアメリカ皮膚科学会による、小児アトピー性皮膚炎のコンセンサス会議では、アレルゲンへの暴露とアトピー性皮膚炎の発症の抑制との関連に焦点が当てられ、それは妊産婦の食物摂取までを含めたものでさらなる研究が必要とされ[10]、研究は進展してきた。

1940年代より乳児の食品の摂取状況とアレルギーの発症に関する報告があり、そうした先行する研究から、母乳の保護効果なのか、牛乳たんぱく質の回避によるのかといった2通りの考え方が提起された[6]。アトピー性皮膚炎のリスク排除の第一手段として乳児の完全母乳が推奨されており、2010年のシステマティック・レビューでは、完全母乳を実施しない場合には18の研究はすべて、100%乳清タンパク質の分解乳を用いたほうが、牛乳たんぱく質を原料とする調整粉よりも、アトピー性皮膚炎とアトピー性疾患の発症リスクを低下させていた[3]。あるいは、母乳哺育を行う生後4か月までの乳児の母親が、牛乳の摂取を制限することで、その子のアトピー性皮膚炎の発症率を下げる[11]。母乳中に主な食物アレルゲンであるα1カゼインが移行することは確認されている[12]。生後4か月までに4種類の固形食品を摂取した場合には、10歳までのアトピー性皮膚炎のリスクが2.9倍であった[13]

原因に関する仮説[編集]

下記の諸説があり解明されていない。

腸内・表皮・肺・口腔内等による細菌叢
表皮常在菌のバランスの乱れによる表皮の黄色ブドウ球菌異常増殖が原因となっている可能性が高い[14]。一方、関西医科大学小児科らの研究チームは、腸内細菌叢とアレルギー症状の推移の間に明確な相関を認めなかったとしている[15]
表皮バリア破綻説がある。アトピー性皮膚炎では、皮膚の保湿に関わる成分であるセラミドの減少も原因である。なお、入浴すると表皮が柔らかくなり、セラミドが減少することにより、症状が改善されない場合がある。
食事要因
魚、ω-3脂肪酸、ナトリウム、抗酸化物質などが言われている[6]。アトピー性皮膚炎患者に対してω-6脂肪酸(主としてリノール酸)の含有量の低い食事を与えたところアトピーに改善効果が認められた[16]

皮膚炎の症状[編集]

  • 乳児湿疹と混同される場合もある。その炎症は頭部に始まり、次第に顔面に及ぶ。そして体幹、手足に下降状に広がる。
  • 幼児期-学童期には、肘窩や膝窩などの関節の屈側に病変が生じ易く、耳介の下部が裂けるような症状(耳切れ)を呈する。
  • 思春期以後は、広範囲にわたり乾いた慢性湿疹の症状を呈する。
  • 眉毛の外側が薄くなる(ヘルトゲ兆候)。
  • 発赤した皮膚をなぞると、しばらくしてなぞったあとが白くなる(白色皮膚描記)。
  • 乾燥して表面が白い粉を吹いたようになり、強い痒みを伴う
  • 赤い湿疹、結節などができ、激しい痒みを伴う。痒疹を伴うこともある。
  • 湿潤した局面から組織液が浸出することがある。
  • 慢性化すると、鳥肌だったようにザラザラしたものができ、皮膚が次第に厚くなる。
  • しこりのあるイボ状の痒疹ができることがあり、この場合難治性である。イボになることもある。
  • 思春期以降は、手指に症状が表れ易くなり、爪元から第二関節あたりが特に酷く荒れやすい
  • 児童期が湿潤型、思春期以降は乾燥型の皮膚炎を起こす
  • 湿潤型は主に首周りや肘膝関節裏、乾燥型は頭皮、額、肩、内腿、内腕に発症し易いのが特徴である。また乾燥型に切り替わるとき、湿潤型の症状は軽快する傾向がある。

診断[編集]

日本皮膚科学会の診断基準は、1.かゆみ、2.特徴的な皮疹とその分布、3.慢性・反復性の経過で、3つすべて当てはまるものをいう。

検査[編集]

血液検査
  • 好酸球好塩基球、IgEなどの上昇がみられる。IgEは総IgEと特異的IgEがあり、特異的IgEではダニなどのアレルギーが悪化要因となっていないかが調べられる。
  • TARC (Thymus and Activation-Regulated Chemokine) は、血清で測定するケモカインの一種である。病勢に比例して上昇する(健康保険適応あり)。
VAS (visual analog scale)
主観的な掻痒の程度の指標。100%が最も痒みが強い時、0%がまったく痒みがない時として、何%かをみる。主観に頼るため一般的な指標になりにくいが、痒みの改善度をみるのには非常に有用である。また、掻痒だけでなく、掻痒によって生じる睡眠障害の程度もこの指標が利用される。
SCORAD (SCORing Atopic Dermatitis)
発疹の範囲(熱傷 9の法則に準じる)、紅斑・苔癬化などの発疹の多様性、VAS(掻痒・睡眠障害)を数値化し点数にし、重症度を評価する。合計108点満点。アメリカ等で普及している。

経過[編集]

アトピー性皮膚炎治療ガイドラインには以下のように記載されている。

一般に慢性に経過するも適切な治療により症状がコントロールされた状態に維持されると、自然寛解も期待される疾患である。と明記されている。

主な合併症[編集]

アトピー性皮膚炎体質の人は一般に皮膚が弱く、子供の頃におむつかぶれを起こしやすかったり、各種の化粧品、塗り薬、洗剤などによる接触性皮膚炎を起こしやすいことが知られている。アレルギー反応が強い箇所を中心に、結節を伴う痒疹(結節性痒疹)を生じることがある。慢性化、難治化することもある。円形脱毛症の合併も知られている。

感染症[編集]

眼科疾患[編集]

最近では白内障網膜剥離を合併するケースが増えてきている[17]。 網膜剥離に関しては、特に顔面の症状が酷い際の掻破、顔をたたいてかゆみを紛らわせる行動などの物理的な刺激の連続により発生すると考えられている。白内障については原因は

  • 網膜剥離と同様、顔や瞼の痒みから強く擦ったり叩いたりするからではないか
  • 水晶体は発生学的に皮膚細胞と同じ分類に入るため、アトピー性皮膚炎と同様な病変が起こるのではないか

といった説がある。いずれにせよ、加齢に伴って発症する通常の老人性白内障とは異なる原因で発生すると考えられており、また水晶体が皮質からではなく核から濁ってゆく事が多いという症状のパターンの違いから、「アトピー性白内障」と呼ばれることもある。ステロイド内服の副作用として白内障があげられることから、原因としてステロイド外用剤の副作用が疑われたが、外用剤との因果関係は統計がないため不明である(内服薬の副作用として発生する際は、白内障ではなく緑内障の発生率のほうが高い)。外用剤のみで治療されているアトピー性皮膚炎患者では緑内障の方が少ないということから、ステロイド外用剤は直接白内障とは関連がないとの結論に至っている。

医療機関の療法および薬[編集]

ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)[18]
ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)外用剤は、免疫反応を抑制し、症状を改善する効果がある。外用剤にはランクがあり、「Weak(弱い)」「Medium(普通)」「Strong(やや強い)」「Very Strong(かなり強い)」「Strongest(最も強い)」に分けられ、症状の度合い・炎症の発生部位によって使い分ける。ステロイド外用剤の副作用には、皮膚萎縮、皮膚感染症の誘発、毛細血管拡張などがある。またステロイド外用剤によるproactive療法(アトピー性皮膚炎が寛解している際でも週に1〜2回ステロイドを外用することにより症状の増悪を予防する)は再発を予防する目的で各国で行われている使用法である。TARC試験と合わせたアトピー性皮膚炎の皮膚症状のコントロールの方法として注目されている。また外用剤は、内服薬に比べ副作用は少ない。
日本の関係学会は「湿疹を覆うように」塗るよう指導しているが、そうではなく2016年にも患者の5割強が「ステロイド薬をできるだけ薄くのばして塗る」と教えられており、標準的な治療法の指導がいきわたっていないとみられている[19]
タクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)[18]
免疫抑制薬のタクロリムスを外用剤として製剤化したものである。濃度は成人用では0.1%、小児用は0.03%である。1993年から治験として使われ始め1999年6月に認可された。ステロイドの「strong」の強さをもつ一方、正常な皮膚には作用せず(分子量が大きいため)、炎症が強く壊れた皮膚にのみ浸透していく性質があり、顔や首などステロイドによる副作用が強く現れやすい顔面や頸部に使われやすい。特にアトピー性皮膚炎で生じる頚部のさざなみ様沈着には効果が高いとされている。使用開始初期にヒリヒリとした刺激感や火照りを感じる人もいるが、徐々に治まってくる事が多い。妊娠中・授乳中は使用禁止となっている。また、胎児や新生児・乳児への影響については報告されていないが、日本では小児用は2歳以上16歳未満、成人用は16歳以上の適応となっている。外用後の強い日光浴は避けるべきとされている。また皮膚癌やリンパ腫の発生リスクの問題に関しても、タクロリムス軟膏外用を行っても自然発生率を超えるものではないとの報告がみられるようになってきた。
プロアクティブ療法 - ステロイド等で症状が落ち着いた後、もともと炎症のあった場所に、抗炎症作用のある外用薬を塗布する治療法。再燃を長期にわたって抑えることができる。慶應大学病院皮膚科アトピー外来は、タクロリムス軟膏を用いたプロアクティブ療法の有用性を報告している[20]
抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬[18]
痒みが強い場合、必要に応じて抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬を使用する。アトピー性皮膚炎の患者では、発疹→痒み→掻破行為→発疹にて悪循環になっていることが多い。そのため、その悪循環を断つという意味で痒みを抑える効果のある抗アレルギー薬は有効である。効果が現れるのには数週間ほど時間がかかるという特徴がある。その他、IPDというTh2活性阻害薬が使用されることがある。アトピー性皮膚炎では、Th2細胞の亢進・サイトカインの中のIL-4・IL-5(アレルギー症状を誘発するもの)の産生の増加がみられることがあるため、効果があるとされている。その他、痒疹タイプの皮疹に対してトラニラストも使用される。
保湿外用薬[18]
実際の処方では、ワセリン、プラスチベース®等の油性のものや、適度に水分を含んだクリーム状の保湿剤(ヒルドイド®ソフト軟膏等)がよく処方されるが、医療機関で処方されるものだけでなく、薬局・薬店で購入できるスキンケア製品でも効果が期待できる。ただし患者の敏感な皮膚は製品によっては接触性皮膚炎を起こすこともあり、使用感がよく、かぶれを起こさない製品を選択することが重要である。いろいろ試して、自分に合う保湿剤を探索するのが良い。今後さらに具体的な使用法やセルフケアについてのエビデンスの蓄積が期待される。
シクロスポリン内服療法[18]
シクロスポリン内服療法は、アトピー性皮膚炎治療の強力な選択肢として、日本でも2008年に承認された(先発品のネオーラルのみ)。シクロスポリン内服療法にあたっては、適応、投与量、使用期間について添付文書やガイドラインを遵守すべきであり、患者またはその家族に有効性および危険性を予めよく説明し理解を得た上で投与する必要がある。TDM(薬物血中濃度測定)が必要。
漢方療法[18]
漢方薬は西洋薬と併用され、補助的に用いられる。炎症やかゆみの沈静に効果がある。胃腸症状が時々、薬疹がまれにみられるが、2003年から2009年9月までに報告された11編の論文を対象としたEBM調査では、漢方薬の有用性が示される一方、重篤な有害性は認められなかった。
一方、日本全国の約110施設において、2006年4月~9月の6ヶ月間に登録された397例を対象者として、GPSPを参考としたプロスペクティブ調査が行われ、その結果、24週間の補中益気湯の服用により、皮疹と外用剤使用量の総合評価において、有効以上が88.7%とされた。大多数の症例で症状の維持以上の効果が期待でき、アトピー性皮膚炎が軽快する症例が多く観察された。特に重篤な副作用も見られなかった。本薬との因果関係が完全に否定できない副作用とみられる事例は、1.5%と397例中6例に見られ、黒褐色皮膚疹、イライラや不眠胃もたれ便秘などで、投薬中止後すぐに回復している[21]
合併症[18]
アトピー性皮膚炎には様々な病原微生物感染症が合併しやすいことが知られている。ウイルス性疾患としては、単純ヘルペスウイルスや伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症がよく知られている。いずれも、健常者においても認められる感染症であるが、比すると罹患率が高く、重症化すると広範囲に小水疱が波及する状態となり、カポジ水痘様発疹症、疱疹性湿疹と呼ばれる。伝染性軟属腫は、健康な小児では自然消退も認められるが、湿疹病変や乾燥した皮膚に合併しやすく、アトピー性皮膚炎の患者では広範に拡大し難治化しやすいと言われている。
硫黄液[18]
吹き出物の民間療法に硫黄液というものがあるが、アトピー性皮膚炎の炎症や痒みを抑えることにも効果がある。硫黄液の製造及び使用法は、粉末硫黄(沈降硫黄を薬屋で取り寄せる)を薬瓶の中で水溶液にして(傷薬や美容液を加えても良し)、爪楊枝の柄を使用して患部に塗る。患部が広範囲の場合には、美容液などの容器を使い掌に付けて塗るのが良い。硫黄は角質を軟化させ剥がれ易くすることと、皮脂抑制、患部の乾燥効果などがある為、炎症と痒みを抑えて、アトピーの症状を軽減してくれる。また、硫黄の黄色みが炎症の赤みを隠してくれる。硫黄の黄色みが目立たない様に薄く塗ることが肝要。擦るのではなく、被せる様に塗ること。

生活指導[編集]

一般的にアトピー性皮膚炎では下記の生活指導が有用である[17]
  • 入浴、シャワーにより皮膚を清潔に保つ。
  • ナイロンタオルを中止する。
  • 室内を清潔に保ち、適温・適湿の環境を作る。
  • 規則正しい生活を送る。
  • 刺激の少ない衣服を着用する。(物理的刺激の場合)
  • 換気に気を付ける。(揮発性有機化学物質などの化学的刺激の場合)
  • 爪は短く切り、掻破による皮膚障害を避ける。
  • 顔面の症状が高度な例では眼科医の診察を定期的に受ける。眼囲の皮疹を掻破、叩打することによって眼病変(網膜裂孔網膜剥離)を生じうることに留意する。
  • 細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症を生じるリスク因子が高い場合もあり、皮膚をよい状態に保つよう留意する。

ステロイド外用薬とアトピービジネス[編集]

日本では1990年代に、マスコミによりアトピー性皮膚炎とステロイド外用薬に関する誤った報道が大規模に行われ、ネットの普及でそういった誤情報が爆発的に拡散した。そのため、ステロイド内服薬の副作用が外用薬の副作用と誤認されるなど、情報の混乱が広く見られる。患者のステロイド外用薬への誤解を利用した悪徳商法は「アトピービジネス」と呼ばれ、業者の逮捕例も多数ある。医師がアトピービジネスを行う例もあり、問題となっている。

また、医師の中にも、アトピー性皮膚炎の症状がステロイド外用薬の影響によるものだという意見もごく少数ある。ステロイド外用薬を長期使用し続けることによって副作用が起こると考えた人々の間で、ステロイド外用薬の副作用と彼らが考えた皮膚症状を指す言葉として「ステロイド皮膚症」という言葉が一部で使われていた[要出典]。古くは一部の皮膚科医がこの俗語を用いることもあったようであるが[22]、正式な医学用語ではない。現在では、一般的に皮膚科医が用いることはなく、アトピービジネスの業者や、その治療とされる行為を受ける一部の患者で用いられる俗語である[要出典]。このようなもっともらしい俗語は、患者を混乱させ誤解を招いている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 世界アレルギー機構(WAO)/欧州アレルギー・臨床免疫学会議(EAACI)によるアレルギーの定義 (世界アレルギー機構)
  2. ^ a b Atopic dermatitis : a type of eczema, April 2003. NIH publication no. 03-4272. p.4.
  3. ^ a b Alexander DD, Schmitt DF, Tran NL, Barraj LM, Cushing CA (2010). “Partially hydrolyzed 100% whey protein infant formula and atopic dermatitis risk reduction: a systematic review of the literature”. Nutrition Reviews 68 (4): 232–45. doi:10.1111/j.1753-4887.2010.00281.x. PMID 20416019. 
  4. ^ a b 狩野博嗣「アトピーとは?」 (pdf) 、『母子保健情報』第57号、2008年5月、 9-。
  5. ^ Celakovská J, Bukač J (2014). “Analysis of food allergy in atopic dermatitis patients - association with concomitant allergic diseases”. Indian J Dermatol 59 (5): 445–50. doi:10.4103/0019-5154.139867. PMC 4171910. PMID 25284847. https://doi.org/10.4103/0019-5154.139867. 
  6. ^ a b c d Halken S, Høst A (2000). “The lessons of noninterventional and interventional prospective studies on the development of atopic disease during childhood”. Allergy 55 (9): 793–802. PMID 11003443. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1034/j.1398-9995.2000.00117.x/full. 
  7. ^ Ono SJ Author AND "Annu Rev Immunol" Journal 2000;18:347-66.
  8. ^ Barker JN et al. J Invest Dermatol 127:564,2007.
  9. ^ Brown SJ et al. Br J Dermatol 161:884,2009.
  10. ^ Eichenfield LF, Hanifin JM, Luger TA, Stevens SR, Pride HB (2003). “Consensus conference on pediatric atopic dermatitis”. J. Am. Acad. Dermatol. 49 (6): 1088–95. doi:10.1067/S0190. PMID 14639390. http://www.jaad.org/article/S0190-9622(03)02539-8/fulltext. 
  11. ^ Jirapinyo P, Densupsoontorn N, Kangwanpornsiri C, Limlikhit T (2013). “Lower prevalence of atopic dermatitis in breast-fed infants whose allergic mothers restrict dairy products”. J Med Assoc Thai 96 (2): 192–5. PMID 23936985. 
  12. ^ Coscia A, Orrù S, Di Nicola P, et al. (2012). “Cow's milk proteins in human milk”. J. Biol. Regul. Homeost. Agents 26 (3 Suppl): 39–42. PMID 23158513. 
  13. ^ “Early solid feeding and recurrent childhood eczema: a 10-year longitudinal study”. Pediatrics 86 (4): 541–6. (1990). PMID 2216619. 
  14. ^ アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌巣が引き起こす -黄色ブドウ球菌と皮膚炎の関係を解明・新たな治療戦略に期待- 慶應義塾大学プレスリリース 2015年4月22日 (PDF)
  15. ^ 服部和裕ほか (2003) アトピー性皮膚炎患児に対するビフィズス菌末の投与が児の腸内細菌叢とアレルギー症状に与える影響の検討 アレルギー 52(1), 20-30, 2003-01-30
  16. ^ 下田妙子 「アトピー性皮膚炎患者の低n-6系列多価不飽和脂肪酸食の効果(自然科学編)」『九州女子大学紀要』自然科学編 37(2), 2000-09, 15-23 NAID 110004624905
  17. ^ a b c 日本皮膚科学会編「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」 (PDF)
  18. ^ a b c d e f g h 厚生労働省研究班(よりよい治療のためのEBMとデータ集)
  19. ^ 堀井恵里子 (2016年12月11日). “アレルギー治療 拠点病院整備へ 厚労省が初の基本指針案”. 毎日新聞. http://mainichi.jp/articles/20161211/k00/00e/040/115000c 2017年8月15日閲覧。 
  20. ^ 笠井 弘子, 川崎 洋, 海老原 全「成人アトピー性皮膚炎患者に対するタクロリムス軟膏を用いたプロアクティブ療法―リアクティブ療法からの移行についての検討―」、『日本皮膚科学会誌』第6号、2014年、 1141-47頁。
  21. ^ 補中益気湯の臨床研究報告 2009年6月クラシエ薬品
  22. ^ 「ステロイド皮膚症発症の頻度の推移-1979年から1984年まで-」皮膚 27: 1166-1171 1985

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

関連団体[編集]