イボ

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サリチル酸で軟化した角質の下に隠れている小さい斑点(赤褐色)

イボ(疣)とは、皮膚にできる出来物である。

  1. 出来物の内、小型のドーム状に盛り上がった腫瘤をいう。
  2. ヒトパピローマウイルス感染によってできる腫瘤をいう。疣贅(ゆうぜい)と同義で、一般的にウイルス性疣贅という。

小型のドーム状の腫瘤[編集]

一般には、小さいなものを「イボ」、大きなものを「コブ(瘤)」と通称されている。原因はさまざまで、症状が一時的で治療が必要ないものから、難治性、悪性のものがある。治りが悪く障害を伴う場合は医療機関などの専門家による鑑定や治療が要る。以下では比較的小さな「イボ」について扱う。

種類[編集]

神経膠腫(グリオーマ、グリア細胞腫)は通常は脳腫瘍脊髄に発生し上皮からは観察されない)
  • 疣贅(ゆうぜい)

治療[編集]

それぞれ経過・治療が異なるため、内部リンクを参照のこと。

尋常性疣贅[編集]

ヒトパピローマウイルスHPV)による伝染性皮膚腫瘍疾患。HPVは180種類以上も見つかっており、上皮型と粘膜型に分類される。このうちイボの原因とされるものは上皮型に分類されている。ほとんどは良性腫瘍だが、極くまれに悪性化するものがある。子宮頸がんや陰部がんの原因とされる HPV は粘膜型でウイルスが異なる。

分類[編集]

症状は上皮型HPVウイルスの種類によって異なる。

尋常性疣贅(一般的に手足や顔にできる疣)
ヒトパピローマウイルス2型・27型・57型の感染で生じる。
足底疣贅(足の裏にできる疣)
魚の目に似ているミルメシアがあり、ヒトパピローマウイルス1型の感染で生じる。その他、ヒトパピローマウイルス65型・4型・60型で生じる色素性疣贅や、多発しやすいヒトパピローマウイルス63型感染などがある。
扁平疣贅
顔や腕に平たい褐色調の疣贅。ヒトパピローマウイルス3型・10型の感染によって生じる。
尖圭コンジローマ(性器疣)
外陰部・肛門の周囲にできる。ヒトパピローマウイルス6型・11型の感染によって生じる。性感染症である。
疣贅状表皮発育異常症
主に小児の顔や体に湿疹のように多発する。ヒトパピローマウイルス5型・8型の感染によって生じる。

疣贅の病態と進行[編集]

疣贅は皮膚表面にウイルスが付着し、上皮角質層に侵攻して皮膚組織を変質させていく症状を示す。皮下組織は侵さない。変質した皮膚は皮下の血管から栄養を受けて表面や周囲へ成長拡大し、変質部には毛細血管が新生して微小な斑点として観察される。角質層が厚い部位で生じた場合は真皮の深い場所まで侵攻して難治性となることがある。

疣贅の治療[編集]

疣贅は原因がウイルスであるため、殺菌滅菌のような根治的な治療薬や治療法がみつかっていない。治療としては病変部を除去しながら自己免疫や皮膚再生を活性化させて寛解させる。しかし、皮膚組織中の疾患のため細胞免疫は期待できない。ウイルスに対する体内抗体ができることで自然軽快(数年以内に自然に消える)することがあり、その場合には跡が残ることはほとんどない。しかし、抗体産生ができなかったり成長が急速である状況下では、放っておくとどんどん腫脹し、さらにほかの場所に同様の腫瘍が現れてしまう。さらに、剥離した皮膚片(フケ、垢など)や爪切りなどから、ウイルスを他人に移してしまう危険性があり、早急な治療が必要となる。広範囲である場合や治療に抵抗性がある場合、腫瘍の治療に加えて免疫力を低下させている基礎疾患も併せての治療を検討する必要がある。

自己処置で病変部を削ると、ウイルスを除去できないため削り口や切除片の接触によりウイルスを拡散し、病変がますます大きくなるばかりか別の部位にも発生させてしまうために、疣が気になる場合は自分で治療しようなどと考えずにまず皮膚科を訪れることが推奨される。

標準的でかつ健康保険が適用できる治療法は凍結療法で、液体窒素で病変部の凍結、剥離を繰り返す方法である。超低温で瞬間的に組織を凍結させてウイルス感染した病変部を物理的に壊死させる。同時に周囲の皮下組織に炎症を生じさせ、炎症反応による抗ウイルス効果を期待するものである。処置の性質上、皮下の血管や神経の組織を損傷させるため一時的な激痛を伴うほか、場合によっては血腫を生じ、処置後も痛みを伴う。これは局部的な凍傷であり、痛みはほとんどは一両日中に治まる。壊死した皮膚が再生すると病変部とともに自然剥離する。しかし病変部が深い場合、皮下組織から上皮細胞が再生と剥離を待って、あるいは深い病変部を露出させ、同じ箇所を病変部がなくなるまで再度処置を繰り返す必要があり、定期的な通院が必要になる。この場合、効果に個人差こそあるが、およそ数週から数年以上の長い日数をかける場合がある。処置による痛みが激しい場合や水ぶくれが肥大した場合は外科的治療や麻酔も併用される。他に保険適用の治療法としては、薏苡仁(ヨクイニン)という漢方薬(ハトムギのエキス)の服用が挙げられる。

かつては凍結療法も一般的でなかったため難治性となった例は数多く、様々な治療法が試みられているが、現在に至るも根治的な飲み薬や塗り薬は見つかっておらず、信心やまじない、迷信の類も世の東西を問わずに昔から存在している(小説トム・ソーヤーの冒険」にはいぼとりのまじないの話が出てくる。日本ではいぼとり地蔵が各地に存在している。)。

以下に有効であったという治療法を記す。

  • イミキモド(C14H16N4) - ウイルス性疣である尖圭コンジロームに適応。普通の疣には保険適用がない。Toll様受容体に作用し効率的に疣に対する自然免疫を賦活する。製薬会社によってベセルナクリーム、アルダラクリームなどの商品名で販売されている。健康保険適用外。
  • グルタルアルデヒド(C5H8O2) - 細胞を固定、腐食する薬剤で、疣の盛り上がりを平坦にする効果が高い。実験試薬であり、取り扱っている施設は数少ない。製薬会社によってステリハイドなどの商品名で販売されている。健康保険適用外。
  • 局所免疫療法 - 皮膚にかぶれを惹起させる薬剤を反復塗布することによって、局所の免疫を賦活する作用がある。取り扱い施設は少ない。薬剤としてはスクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)やジフェニルシクロプロペノン(DPCP)が一般的に用いられる。健康保険適用外。
  • レーザー治療 - 痛みを伴うので麻酔が必須である。疣感染組織を直接的に除去する治療法。施行している施設は少なく、組織の瘢痕化が残り疣は治ったが硬いままとなる危険性もある。一度ではなく反復治療が必要な場合も多い。健康保険が適用されるかどうかは疣の種類とレーザーの種類によって規定されている。たとえばルビーレーザーは疣の種類によって保険が適用されるが炭酸ガスレーザーは健康保険の適用外となる。
  • 外科手術 - 悪性腫瘍の可能性も否定出来ない場合に行われることもあるが、原則として行われない。その理由として患部にウイルスが残っていると容易に再発してしまう点、傷跡が残る可能性がある点が挙げられる。健康保険が適用される。

なお、疣の治療で併用されるサリチル酸は角質溶解作用を有する[1]ため、皮膚産生を促すのに用いられている。

脚注[編集]

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  1. ^ 熊谷洋他、臨床薬理学大系, 14, 108・234, (1969)

関連項目[編集]