認知行動療法

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認知行動療法
治療法
MeSH D015928

認知行動療法(にんちこうどうりょうほう、cognitive behavioral therapy:CBT)は、認知心理学的なアーロン・ベックによる認知療法や、行動主義心理学の影響を受けた心理療法の技法である。スキーマと呼ばれる誤った認知や、陥りがちな思考パターンの癖を、客観的でよりよい方向へと修正する。うつ病パニック障害強迫性障害薬物依存症などにおいて、科学的根拠に基づいて有効性が報告されている。

専門家によって実施されるほかに、こうした技法はマニュアル化できるため、セルフヘルプ・マニュアルのように自身で行うこともできる。

行動療法と認知療法[編集]

行動療法と認知療法とは切り離せないものと考えられており、今ではこの二つを合わせた「認知行動療法」と呼ばれるようになっている。認知行動療法という呼び名が最初に現れたのは、ドナルド・マイケンバウムの著作のタイトルである。行動療法では認知や感情も行動の一部であるという解釈があり、認知療法のアルバート・エリスアーロン・ベックは積極的に行動療法的な技法を取り込んで発展させて行った。そのため、次第にこの両者は統合あるいは折衷されていった。

認知療法、行動療法と分けて呼ぶ場合には「(ベックの)認知療法」と言った狭義の呼称であったり、系統的脱感作のような古典的技法を指しての「行動療法」であったりする。なお海外では「行動認知療法 (Behavioral and Cognitive Therapies)」と呼ばれることもある。

第三世代の認知行動療法[編集]

東洋の技法である、瞑想の伝統におけるマインドフルネス(念)を取り入れた認知行動療法が近年登場している。

弁証法的行動療法 (DBT)[1]や、マインドフルネス認知療法(MBCT)、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)などがある。

内容[編集]

  1. 患者を一人の人間として理解し、患者が直面している問題点を洗い出して治療方針を立てる
  2. 自動思考に焦点をあて認知の歪みを修正する
  3. より心の奥底にあるスキーマに焦点を当てる
  4. 治療終結[2]

認知行動療法の技法は、人それぞれが持つ認知構造やスキーマと呼ばれるものが、人生において出会ういろいろな状況に反応したり適応したりする方法を形づくるという想定の下にある[3]

診療ガイドライン[編集]

イギリスやアメリカでは、うつ病と不安障害の治療ガイドラインで第一選択肢になっている[4]

有効性[編集]

薬物療法と効果は同等であり、効果の持続時間はそれ以上であることが承認されている。多くの臨床研究によりうつ病と不安障害に対して効果が高いというエビデンスがある[4]

中等症以上のうつ病治療に対して、CBTの有効性は認められている[5]

議論[編集]

Bergerによる2013年の指摘では、認知行動療法の前提においては、否定的な思考という症状が、うつ病の原因であるとされているが、医学や精神医学の中では、症状が病気の原因になっているのはこれが唯一の例である[6]

うつ病に対する抗うつ薬の臨床試験の場合、偽薬(有効成分が入っていない)の投与群でも、症状がある程度改善するため、薬剤を服用しているという希望や期待によって否定的な思考が改善していることが、示唆されている[7]。認知行動療法の効果と同じ現象ではないかと示唆される[要出典]。偽薬効果に詳しいアービング・カーシュによれば、追跡調査で効果に違いがあり、抗うつ薬では治療をやめると再発しやすいが、認知行動療法では長期的にみると再発率が抗うつ薬よりも低い[8]。しかし、認知行動療法の長期的効果研究も、治療急性期と同様に(どんな精神療法も)、下記の説明のように、二重盲が不可能であり(患者も治療者も治療内容が認識している)、認知行動療法の長期的効果研究法に大きいな不備があると指摘されている。[6]

Bergerによる2013年の指摘では、認知行動療法の研究の方法として、治療法を患者に対して、二重盲検法によってランダムに割り振れないのではないかと指摘されている[6]。特に、認知行動療法の場合、患者は課題や宿題する必要であり、与えられている治療法は明らかである。

二重盲検法を用いても、患者も治療者も否定的な思考を修正することに積極的に取り組むことになり、希望による期待によってバイアス(偏り)が生じる[6]。また、研究の評価者は治療内容を認識していないが、患者と治療者の両者が認識している単盲検(シングルブラインド)による効果の研究方法は結果を歪ませてしまう[6]。2010年のメタアナリシスによると、二重盲検法による研究よりも、単盲検のほうが効果が大きく出ている[9]。しかし、単盲検(シングルブラインド)の正式の定義として、患者のみが治療内容を認識していることのであり[10]認知行動療法の効果研究が称している「単盲検(シングルブラインド)」は単盲検(シングルブラインド)ではなく、非盲検であり、評価者だけが盲検条件下で患者の報告をそのまま記録しているのみで、バイアスを防ぐ役割ではありません。

同様にBergerは指摘し、うつ病における試験では、50%の改善にて反応したとして評価するので、心理的な苦痛を和らげてはいるが、根本的な部分は実際に変わっていないとしている[6]。また「私はだめな人間」のような否定的な思考は、抑うつ気分から生じているかもしれないが、治療者によって与えられる希望や支援によって緩和されるが、それでもなお苦痛は残っている[6]。(この改善率などの評価方法は、抗うつ薬の試験でも同様である)

心理療法の臨床試験の募集の際にすでにバイアス(偏り)が生じており、心理療法に反応しないような重症のうつ病の者は、臨床試験に採用されにくく、日常の臨床に適していない[11]

ゆえに、Bergerは二重盲検されているとはみなされないとし、「根拠に基づく」(Evidence-Based) とはいえず、これまでのデータは、「統制されていない研究結果」にすぎない[6]。さらにEBMでエビデンスレベルが最も高いのは、ランダム化比較試験(ランダムに割り付けられた二重盲検による試験)であるという指摘もある[12]。なお、抗うつ薬二重盲検試験にも、副作用の有無によって医師と被験者に抗うつ薬と偽薬のどちらを投与したか見破られるという問題がある[13]。そのため、抗うつ剤であるうか(確か、ある抗うつ剤は盲検に欠けた)精神療法であろうか(精神療法なら盲検は不可能)、その治験の盲検にかけたら、その結果にも大きいな不備が残っている。

また、医薬品の単盲検試験では被験者に割付群を知らせないが、心理療法のランダム化比較試験 (RCT) における単盲検では効果の評価者に割付群を知らせないという違いがある。心理療法のRCTの問題を克服する手法も開発されており、評価者がブラインド化された研究では効果量が50~100%高く出ることもない[14]。ただ、上記のように評価者が患者の報告をそのまま記録している役割のみであり、バイアスを防ぐができません。

重度の症状が有る場合は、苦痛を伴う事が少なからず有る事で、苦痛に耐えきれず中途で断念する人が少なからずいる[要出典]。(医薬品の試験でも同様であり、例えば、抗精神病薬の試験にで18カ月で74%が、効果がないか副作用のため試験から脱落している[15])。しかし、抗精神病薬は精神病を治療しているも目的であり、認知行動療法の主な対象であるうつ病で使われている抗うつ剤の場合の脱落率は、SNRI(26.1%), SSRIs (28.4%)であり[16]、決して高くありません。

資格[編集]

  • 日本行動療法学会
    • 認定行動療法士
    • 専門行動療法士
  • 日本認知行動カウンセリング協会
    • 認知行動療法専門カウンセラー
    • 認知行動療法実践看護師

出典・脚注[編集]

  1. ^ マーシャ・M.リネハン 『弁証法的行動療法実践マニュアル―境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ』 小野和哉訳、金剛出版、2007年、13頁。ISBN 9784772409865
  2. ^ 認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル 厚生労働省
  3. ^ Nancy C. Andreasen; etc. (2006). Introductory Textbook of Psychiatry (4th ed.). p. 460. 
  4. ^ a b 清水栄司『認知行動療法のすべてがわかる本』2010年。p.14-15
  5. ^ 「うつ病の認知行動療法」医学のあゆみ242巻7号2012年8月18日
  6. ^ a b c d e f g h Berger, D. Psychiatric Times, July 30, 2013. Cognitive Behavioral Therapy: Escape From the Binds of Tight Methodology
  7. ^ Marchesi, C, De Panfilis C, Matteo T, Ossola P. Is placebo useful in the treatment of major depression in clinical practice? Neuropsychiatric Disease and Treatment, 2013:9, pp.915–920.
  8. ^ アービング・カーシュ 2010, pp. 215-218
  9. ^ Lynch D, Laws, KR, McKenna PJ. Cognitive behavioral therapy for major psychiatric disorder: does it really work? A meta-analytical review of well-controlled trials. Psychol Med. 2010;40:9-24.
  10. ^ Friedman LM, Furgerg CD, DeMets DL. Fundamentals of Clinical Trials, Third Edition. Springer; 1998 (or internet search for:“definition of single-blind”).
  11. ^ Sathyanarayana R, Andrade C. Screening for disease, psychologic testing, and psychotherapy: Looking behind the mirror. Indian J Psychiatry. 2013;55:103-105.
  12. ^ 「科学的根拠に基づく医療(EBM)」2010 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター
  13. ^ Irving Kirsch 2009, pp. 14-16(翻訳書は アービング・カーシュ 2010, pp. 29-30)
  14. ^ 菊池安希子 「イギリスにおける統合失調症に対する認知行動療法」、『平成17年度厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究推進事業報告書』 (厚生労働省)2-3頁、2005年 
  15. ^ Lieberman JA, Stroup TS, McEvoy JP, et al. (September 2005). "Effectiveness of antipsychotic drugs in patients with chronic schizophrenia". N. Engl. J. Med. 353 (12): 1209–23. doi:10.1056/NEJMoa051688. PMID 16172203. 
  16. ^ Machado M, Iskedjian M, Ruiz I, Einarson TR. Remission, dropouts, and adverse drug reaction rates in major depressive disorder: a meta-analysis of head-to-head trials. Curr Med Res Opin. 2006 Sep;22(9):1825-37.

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

日本国内の学会
日本以外の学会