ヴィクトール・フランクル

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1950年代のフランクル

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl、1905年3月26日 - 1997年9月2日)は、オーストリアの精神科医心理学者。著作は多数あり邦訳も多く重版されており、特に『夜と霧』で知られる。

来歴[編集]

1905年ウィーンに生まれる。ウィーン大学在学中よりアドラーフロイトに師事し、精神医学を学ぶ。

ウィーン大学医学部精神科教授、ウィーン市立病院神経科部長を兼任。「第三ウィーン学派」として、また独自の「実存分析」を唱え、ドイツ語圏では元々知られていた。フランクルの理論にはマックス・シェーラーの影響が濃く、マルティン・ハイデッガーの体系を汲む。精神科医として有名であるが脳外科医としての腕前も一級であった。

1933年から、ウィーンの精神病院で女性の自殺患者部門の責任者を務めていたが、ナチスによる1938年のドイツのオーストリア併合で、ユダヤ人がドイツ人を治療することが禁じられ、任を解かれた。1941年12月に結婚したが、その9ヶ月後に家族と共に強制収容所テレージエンシュタットに収容され、父親はここで死亡し、母親と妻は別の収容所に移されて死亡した。フランクルは1944年10月にアウシュビッツに送られたが、3日後にテュルクハイムに移送され、1945年4月にアメリカ軍により解放された。その後1946年にウィーンの神経科病院に呼ばれ、1971年まで勤務し、その間の1947年には再婚している。

強制収容所での体験をもとに著した『夜と霧』は、日本語を含め17カ国語に翻訳され、60年以上に渡って読み継がれている。発行部数は、(20世紀内の)英語版だけでも累計900万部に及び、1991年のアメリカ国会図書館の調査で「私の人生に最も影響を与えた本」のベストテンに入ったという[1]。他に読売新聞による2000年の「読者の選ぶ21世紀に伝えるあの一冊」のアンケート調査で、翻訳ドキュメント部門第3位となったとされる。

よく誤解されるがフランクルのロゴセラピーは収容所体験を基に考え出されたものではなく、収容される時点ですでにその理論はほぼ完成されており、はからずも収容所体験が彼の理論の正当性を検証することとなった。[要出典]

極限的な体験を経て生き残った人であるが、ユーモアとウィットを愛する快活な人柄であった。学会出席関連などで度々日本にも訪れていた。

著作(主な日本語訳)[編集]

  • 『生きがい喪失の悩み 現代の精神療法』 中村友太郎訳 エンデルレ書店、1982年(絶版、巻末に詳細な書誌)

研究・関連書[編集]

  • 『人生があなたを待っている 夜と霧を越えて』(全2巻、みすず書房、2006年)
 ハドン・クリングバーグ・ジュニア、赤坂桃子訳。著者はアメリカの臨床心理学者
  • 『現代思想 imago 総特集ヴィクトール・E・フランクル それでも人生にイエスと言うために』(青土社、2013年3月)
  • 諸富祥彦 『ビクトール・フランクル 絶望の果てに光がある』 (ベストセラーズ〈ワニ文庫〉、2013年)
  • 諸富祥彦訳著 『『夜と霧』ビクトール・フランクルの言葉』 (コスモス・ライブラリー、2012年)
  • 諸富祥彦 『生きる意味 ビクトール・フランクル22の言葉』 (ベストセラーズ、2010年)
  • 諸富祥彦 『どんな時も、人生に“YES”と言う フランクル心理学の絶対的人生肯定法』 (大和出版、1999年)
    • 改題 『どんな時も、人生には意味がある フランクル心理学のメッセージ』(PHP文庫、2006年)
  • 諸富祥彦 『フランクル心理学入門 どんな時も人生には意味がある』(コスモスライブラリー、1997年) 
  • 山田邦男編 『フランクルを学ぶ人のために』(世界思想社、2002年)
  • 山田邦男 『生きる意味への問い―V・E・フランクルをめぐって』(佼成出版社、1999年)
  • 山田邦男 『苦しみの中でこそ、あなたは輝く フランクル人生論』(PHPエディターズ・グループ、2009年)
  • 山田邦男 『フランクルとの〈対話〉 苦境を生きる哲学』(春秋社、2013年)
  • 斉藤啓一 『フランクルに学ぶ』(日本教文社、2000年)
  • 宮地正卓 『運命・自由・愛―フランクルの生きる意味随想』(中央法規出版、2002年)  
  • 広岡義之 『フランクル教育学への招待』(風間書房、2008年)
  • 北杜夫 『夜と霧の隅で』 (新潮文庫)ほか。第43回(昭和35年)芥川賞受賞作品

出典・脚注[編集]

  1. ^ 諸富祥彦 『生きていくことの意味』、p.32 (PHP新書、2000年)

関連用語[編集]