単純疱疹

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口唇ヘルペス。唇やその周囲では、単純ヘルペスウイルス1型の感染が多い。

単純疱疹(たんじゅんほうしん)とは、皮膚に生じる単純ヘルペスウイルス感染症の一種。単純ヘルペス(たんじゅんへるぺす、英: herpes simplex)とも。口唇やその周囲では口唇ヘルペス(こうしんへるぺす、英:Herpes labialis、口語でCold sore)となり、単純ヘルペスウイルス1型 (HSV-1) が原因になりやすい。陰部では性器ヘルペスで、2型 (HSV-2) が原因になりやすい。

初回感染時には症状が重い場合があり、逆に無症状の人も多い。疲労や発熱などをきっかけとして再発し多くの場合、約1週間で治る。治療には抗ウイルス薬が使われる。

口角炎は、真菌類カンジダの感染とビタミンB群の欠乏症であるため、口唇ヘルペスとは異なる。

原因[編集]

単純ヘルペスウイルスが原因。単純ヘルペスウイルスには1型 (HSV-1) と2型 (HSV-2) が存在し、1型は唇とその周囲、2型は性器に感染しやすい[1]。0-1歳では母体からの抗体の以降によって感染から保護されているが、抗体がない場合に新生児に感染した場合には重篤となりやすい[2]。(性器クラミジアの症状が出ている出産時には帝王切開となる)

病変やそこからの体液によって感染する。

再発性となることも多く、風邪やストレスや心労、老齢、抗がん剤治療・日光等の刺激によって、ウイルスが増殖して症状を再発する。免疫によるウイルスの排除が行えないため繰り返す。成人の約7割がこのウイルスに感染している。

一般的な症状[編集]

HSV-1の初回感染では、口腔に症状が出ることがあり、子供で急性庖疹性歯肉口内炎となることもある[2]。女性の性器ヘルペスでは初回感染は痛みが強く、2-3週間で症状は自然治癒し、男性では1週間後が症状のピーク、再発時はより症状は少なく、症状が軽い傾向となる[3]。再発では、ヒリヒリ感、違和感、痒みの前駆症状があり、湿疹、水膨れ、潰瘍となり、かさぶたとなって通常の皮膚へと戻る[1]

再発は顔では半分の人が、性器では7割が年に3回以上再発する[1]

口唇ヘルペスは風邪をひいたあとなど免疫力が落ちた時にできやすく、俗に「風邪の華」「熱の華」と呼ばれる。必ずしも唇周辺に出るとは限らず、頬の発疹や顔の一部に小さなニキビのように出現する場合もある。それぞれの人の体質によるため感染に気が付かないケースが多い。腕に出る場合もある。

検査[編集]

出現した水疱の水疱液を抽出しギムザ染色を行い、細胞診により、ウイルスの感染によって膨化したウイルス性巨細胞を検出するTzanck試験(ツァンク試験)と呼ばれる検査がある。その他にはウイルスを直接証明する抗原検査と血清抗体の上昇によって診断する血液抗体検査がある。

予防[編集]

感染自体の予防。

治療[編集]

抗ウイルス薬がウイルスの増殖を抑制するため、前駆症状や皮膚症状の出現直後での内服によって短期間での回復が期待でき、2015年の2つのガイドラインでもこうした「早期短期治療」が推奨されている[1]。一方で、日本ではこうした薬の使い方は未承認であり、症状の出現後の内服だけが承認されている[1]。抗ウイルス薬には、アシクロビルビダラビンバラシクロビルファムシクロビルがある。

皮膚症状に対しては前述の抗ウイルス薬の軟膏が使われる。適切な治療が行われれば、5日ほどで水ぶくれはかさぶたになり治癒する。

アメリカ合衆国では、アルコールに分類されるドコサノールが口唇ヘルペスの治療に承認されている。

市販の抗ウイルス薬(要・薬剤師)

日本で口唇ヘルペスに承認されている抗ウイルス薬は以下で、水疱となる前の再発の兆候の時点で使用される。

抗ウイルス薬が使えない際に、漢方薬を使うことがある[4]

有効性[編集]

2017年のメタアナリシスでは、再発した口唇ヘルペスに対し、アシクロビルよりバラシクロビルの方が治癒期間を短縮した[5]。日本での二重盲検化されたランダム化比較試験では、前駆症状のうちにファムシクロビルを1日だけ内服する治療法で500人以上が試験を完了し、再発した性器ヘルペスで約2日、口唇ヘルペスで約0.7日治癒期間を短縮したが、口唇ヘルペスでは統計的に有意な差ではなかった[1]。安全性の問題はみられなかった[1]

再発抑制[編集]

再発抑制療法

単純疱疹による口唇ヘルペスや陰部ヘルペスには、あらかじめアシクロビルやビダラビン、バラシクロビルやファムシクロビルという抗ウイルス薬を、原則1年間内服する方法がある。(日本ではこの再発抑制療法は性器ヘルペスに保険適用)

経口薬は口唇ヘルペスの予防に有効だが利益は小さく、また副作用の証拠はない[6]。局所薬は、口唇ヘルペスの予防に有効ではない[6]副腎皮質ホルモンの塗り薬の追加は、抗ウイルス薬単独よりも再発を予防するが、治癒期間の短縮は見られなかった[7]

研究開発段階[編集]

海外では、米国及び英国で単純ヘルペスワクチンや局所感染予防薬や、完治薬の研究開発中である。

日本国内では、東京大学や大阪大学において、単純ヘルペス感染の仕組みなどの解明や、完治にむけた新たな治療法や、感染予防法の開発研究が行われている。最近の研究成果では東京大学で薬剤ML-7によりマウスで単純ヘルペス感染予防の実験に成功している。

疫学[編集]

世界中で一般的な疾患である。若年成人における大規模調査では、研究までに男性の33%、女性の28%が口唇ヘルペスを2回以上呈していた。アメリカでの生涯有病率は20-45%、フランスでは男性32%、女性42%。[8] アフリカでは有病率はもっと高い。

日本の0-15歳までのヘルペス未発症の241人を対象として、2歳以降の17%の子供の唾液中にHSV-1が検出された[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 川島眞、加藤俊之、藤井千恵、加藤るみこ「ファムシクロビルの再発型単純疱疹患者に対する早期短期治療(1日治療)による第III相臨床試験:-ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較多施設共同試験-」、『日本臨床皮膚科医会雑誌』第35巻第3号、2018年、 488-496頁、 doi:10.3812/jocd.35.488NAID 130007411774
  2. ^ a b c 吉原俊博、加我正行、小口春久「PCR法による唾液中の単純ヘルペスウイルス検出に関する研究」、『小児歯科学雑誌』第35巻第5号、1997年、 773-777頁、 doi:10.11411/jspd1963.35.5_773NAID 130004633424
  3. ^ 日本性感染症学会「性感染症 診断・治療 ガイドライン2016」 (pdf) 、『日本性感染症学会誌』第27巻1 Supplement、2016年11月、 64-68頁。
  4. ^ 土方康世、山田聖佳、安原昭博「P-80 口唇ヘルペス、性器ヘルペス56例に対する生薬の効果」、『和漢医薬学雑誌』第18巻0、2001年、 126頁、 NAID 110001853293
  5. ^ Chen F, Xu H, Liu J, et al. (2017年9月). “Efficacy and safety of nucleoside antiviral drugs for treatment of recurrent herpes labialis: a systematic review and meta-analysis”. J. Oral Pathol. Med. (8): 561–568. doi:10.1111/jop.12534. PMID 27935123. 
  6. ^ a b Chi CC, Wang SH, Delamere FM, Wojnarowska F, Peters MC, Kanjirath PP (2015年8月). “Interventions for prevention of herpes simplex labialis (cold sores on the lips)”. Cochrane Database Syst Re (8): CD010095. doi:10.1002/14651858.CD010095.pub2. PMID 26252373. 
  7. ^ Arain N, Paravastu SC, Arain MA (2015年2月). “Effectiveness of topical corticosteroids in addition to antiviral therapy in the management of recurrent herpes labialis: a systematic review and meta-analysis”. BMC Infect. Dis.: 82. doi:10.1186/s12879-015-0824-0. PMC 4342818. PMID 25887308. https://doi.org/10.1186/s12879-015-0824-0. 
  8. ^ “Interventions for treatment of herpes simplex labialis (cold sores on the lips) (Protocol)”. Cochrane Database of Systematic Reviews (10). (2011年). doi:10.1002/14651858.CD009375. 

関連項目[編集]