アンテナショップ

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アンテナショップ(Antenna shop)とは、企業や地方自治体などが自社あるいは地元の製品を広く紹介したり、消費者の反応を探ったりする目的で開設する店舗のこと。地域活性化センターによると、アンテナショップの始まりは1994年ころ。バブル経済の崩壊で増えた東京有楽町や銀座の空き家店舗を利用して自治体が地域の特産品を売り始めたことがきっかけ[1]

企業のアンテナショップ[編集]

一般企業におけるアンテナショップは、主に消費者向けの最終製品を手がける企業が開設する。いわゆるショールームとしての機能のほか、自社製品のユーザー向けのサポート窓口・修理受付、消耗品の販売などを行うことが多い。また新製品のテスト販売を行ったり、アンテナショップ限定のグッズを用意したりする場合もある。

場所としては主に当該企業の本社ビル内やその周辺、あるいは人の多い繁華街に出店するのが一般的(例:メルセデス・ベンツ コネクションホンダウェルカムプラザ青山など)。最近ではキヨスクにアンテナショップの機能を持たせたものも登場している(詳しくはキヨスクの項を参照)。

またフランチャイズ展開を行うチェーンストアにおいては、直営店が実質的なアンテナショップの役割を担うことが多い。特に当該チェーンの本社・本部の周辺にある直営店では試験的なメニューの販売が行われたり、実験的な業態の店舗が開設されたりすることが多い。

企業が自社製品でなく、収益のほかに地域おこしへの貢献を目的として、地方物産など他社の製品を広く集めたアンテナショップを展開することもある。東日本旅客鉄道(JR東日本)の「のもの[2]三越伊勢丹ホールディングスによる「旅するマーケット」(東京)[3]などである。

自治体のアンテナショップ[編集]

自治体が運営するアンテナショップの前身と言える存在として、1932年昭和8年)に丸ノ内ビルヂング1階の空きブースに作られた、地方物産陳列所がある[4]。陳列所には15の自治体が協賛し、ジャパン・ツーリスト・ビューローの案内所を併設することで外国人観光客も対象として地方物産の案内や斡旋を行った。戦後は八重洲国際観光会館と鉄道会館で同様の事業が行われたが、これらは全て小規模ブースが集合した業態だった。平成6年頃から、各自治体が独立した店舗をアンテナショップとして運営するようになった[4]

自治体のアンテナショップは、自治体やその外郭団体、自治体が出資または契約する企業により設置・運営される。食品や伝統工芸など特産品の販売促進が主たる目的で、観光客や旅行者、UターンIターンの喚起、企業の誘致への波及効果も狙っている[4]。そのため消費者や企業、他の地方や海外からの来訪者も多い東京都内に置かれることが多い。都内の自治体アンテナショップは2019年時点で79店と過去最多に増えている(地域活性化センター調査)[5]三大都市圏の中心都市である大阪市名古屋市など、首都圏以外にも、一部自治体が出店している[6][7]。都道府県が都内に設置する場合は、主として山手線沿線とその内側の都心部に立地している。有楽町駅前の東京交通会館のように、複数のアンテナショップが集まる施設もある。東京都も都内に設置しており、中には北海道沖縄県のように複数のアンテナショップ(地元を含む)を展開する自治体もある[8]。期間限定[9]や、都道府県でなく市町村が商店街などに設けるアンテナショップ[10]もある。

特産品の販売所だけでなくギャラリー、観光情報コーナーなども備えられている店もある。首都圏在住者などにとって遠方の物産や観光情報を入手できるだけでなく、地方出身者が故郷の食品などを買える場でもある。中には北海道北海道どさんこプラザ宮城県の「コ・コ・みやぎ」、新潟県の「ネスパス」、香川県愛媛県共同設置の「せとうち旬彩館」、鹿児島県の「かごしま遊楽館」など飲食店を併設するものもある。

徳島県が2018年に開設した「Turn Table」(ターンテーブル)は宿泊も可能である[11]

企業の場合にも共通するが、アンテナショップはPR活動が重要な要素となるため、都市部の中でも立地の良い場所が必然的に選ばれる。そのため、テナント料をはじめとした維持費が高くつくのが難点といえる[4]。アンテナショップへの公的資金の投入額は最小で300万円、多いところでは2億円程度と言われており、人気店以外では採算割れする店も少なくない[4]徳島県のように、自前のアンテナショップに替えて、近隣のコンビニエンスストア内に特産品コーナーを設けたケースもある。

また最近では、地方の特産品・加工品等を地元の住民がそもそも知らない、というケースも増えていることから、地域による地域のためのアンテナショップを管内に設置する動きも出てきている。鳥取県鳥取中部ふるさと広域連合が運営する「Coup! la cafe」(クラカフェ)などがその代表例である。

東京都内にある、各自治体の主なアンテナショップ[編集]

都道府県
食の国 福井館
全国の各都市
  • つがる市(青森県) - 果房 メロンとロマン(新宿区神楽坂)※2019年7月新設[12]
  • 八戸広域(共同)(青森県) - 8base(エイトベース)※2020年9月開設[12]
  • 鶴岡市(山形県) - 鶴岡江戸屋敷(東京都江戸川区西葛西
  • 河北町(山形県) - 山形県河北町アンテナショップかほくらし(世田谷区三軒茶屋)※2019年1月新設[12]
  • 飯豊町(山形県) - 飯豊町アンテナショップIIDE[12]※2019年3月リニューアルオープン[14]
  • 下妻市(茨城県) - 下妻市特産品アンテナショップ「シモンちゃんの家」(東京都足立区千住旭町
  • かすみがうら市(茨城県) - かすみがうら市特産品アンテナショップ(東京都板橋区宮本町イナリ通り
  • 墨田区(東京都) - 産業観光プラザ「すみだ まち処」[12]
  • 江戸川区(東京都) - 伝統工芸カフェ アルティザン(江戸川区篠崎町)※2008年7月新設[12]
  • 江戸川区(東京都) - アンテナショップ エドマチ(江戸川区船堀)※2018年8月新設[12]
  • 武蔵野市(東京都) - アンテナショップ「麦わら帽子」[12]
  • 魚津市(富山県) - うおづや(東京都板橋区中板橋)
    • 中板橋商店街振興組合の運営。産直食堂を併設[15]
  • 金沢市(石川県) - 銀座の金沢(東京都中央区銀座)
  • 安曇野市(長野県) - アンテナショップ「麦わら帽子」(東京都武蔵野市)
  • 熱海市(静岡県) - 熱海市インフォメーションセンター(東京都中央区京橋
  • 高梁市(岡山県) - 備中高梁館(東京都杉並区西荻北[16]
  • 府中市(広島県) - 広島県府中市アンテナショップNEKI(千代田区神田)※2017年8月新設[12]

他の府県にある、各自治体の主なアンテナショップ[編集]

  • 青森県 - 青森県特産品センター弘前店(青森県弘前市亀甲町津軽藩ねぷた村内)
  • 青森県・岩手県・秋田県(3県共同運営) - きた東北発見プラザ・JENGO(ジェンゴ)(大阪府大阪市中央区)
  • 愛知県 - ピピッと!愛知(愛知県名古屋市中区栄四丁目1番1号 中日ビルB1F)
  • 鳥取県(鳥取中部ふるさと広域連合) - 「Coup! la cafe」(クラカフェ)(鳥取県倉吉市山根557-1 SCパープルタウン1F)
  • 徳島県 - とくしま県の店(大阪府大阪市中央区)
  • 熊本県 - 熊本よかもんSHOP(大阪府大阪市中央区・ローソン安土町2丁目店内に、特産品コーナーとして開設)

閉店した主なアンテナショップ[編集]

  • 全国 - 銀座めざマルシェ(東京都中央区銀座
  • 北海道 - さっぽろスイーツカフェ(札幌市中央区さっぽろ地下街オーロラタウン内)
  • 北海道 - カムイン北海道(大阪府大阪市中央区)
    • 2012年3月28日閉店[18]。 閉店後、鹿児島県との共同設置により『北海道かごしま館』を6月1日に開設している。
  • 北海道・鹿児島県 - 北海道かごしま館[リンク切れ]
    • 前述の「カムイン北海道」の後継として出店したが、現在は閉店。
  • 函館市(北海道) - 函館もってきました。(東京都中央区京橋 ローソン京橋駅前店内)
  • 長野県 - おいしいさんぽ信州(東京都中央区築地)ナチュラルローソン築地東劇ビル店に、特産品コーナーとして開設
    • 2010年4月オープン、2012年3月閉店[19]
  • 鳥取県 - 食のみやこ鳥取プラザ(東京都港区新橋)
    • 2014年8月27日まで鳥取県単独で運営していた。閉店後はアンテナショップの機能を前述の「とっとり・おかやま新橋館」に継承[20]
  • いわき市(福島県) - いわき・ら・ら(東京都港区新橋)
    • 1994年にオープンしたが、2011年3月に閉店[21]
  • 三浦市(神奈川県) - 三浦市東京支店「なごみま鮮果」(東京都千代田区神田)※閉館[12]
  • 豊岡市(兵庫県) - 豊岡市アンテナショップ「コウノトリの恵み 豊岡」(東京都千代田区有楽町)
    • 2020年4月末に閉店。
  • 京都市(京都府) - 京都舘。東京都港区赤坂に1999年開店。中央区八重洲で2018年3月に閉館し、京都情報を紹介する公認サイトへ転換した[22]

外国のアンテナショップ[編集]

アジア太平洋[編集]

中近東[編集]

  • 南アフリカ - マデリーフ&カニールス(埼玉県さいたま市浦和区常盤)
  • トルコ - カセリア(愛知県名古屋市中区大須)
  • 中国 - 中国物産長江(愛知県名古屋市中村区椿町)

ヨーロッパ[編集]

  • ドイツ - ダンケ(奈良県生駒市 西旭丘)

アメリカ[編集]

  • 南米 - アルパカハウス 長野県茅野市ちの3502-1 ベルビア2F

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 県名書かず・バルで県産酒・メロンで勝負:朝日新聞デジタル
  2. ^ 東京の一等地で“地方”を売る「常設アンテナショップ」の熱い戦いダイヤモンド・オンライン(2013年9月12日)2018年4月12日閲覧
  3. ^ 三越伊勢丹HD、東京・虎ノ門にアンテナ店/各地の特産品で「旅気分」バイヤーの力を結集『日経MJ』2017年3月29日(ライフスタイル面)
  4. ^ a b c d e 立教大学観光学部(編)『大学的 東京ガイド:こだわりの歩き方』 昭和堂 2019年 ISBN 978-4-8122-1814-3 pp.183-200.
  5. ^ 「都内アンテナ店、最多の79店に」日本経済新聞』朝刊2019年12月5日(首都圏経済面)2020年1月6日閲覧。
  6. ^ 「新潟県のアンテナショップ、大阪と東京で勢いに明暗」産経新聞ニュース(2018年2月8日)2018年11月22日閲覧。
  7. ^ 北海道どさんこプラザ/店舗情報(2018年11月22日閲覧)。
  8. ^ 沖縄県物産公社「わしたショップ」店舗案内(2018年11月22日閲覧)。
  9. ^ 一例として、千葉県が東京のJPタワー内で2018年11月17日~12月15日に開設した「ちばI・CHI・BA」(2018年11月22日閲覧)。
  10. ^ 一例として、戸越銀座にある福井県坂井市アンテナショップ(2018年11月22日閲覧)
  11. ^ アンテナショップ「徳島」掲げず出店 宿泊施設も 『毎日新聞』朝刊 2018年2月11日
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at 2020年度自治体アンテナショップ実態調査報告”. 一般財団法人地域活性化センター (2020年12月23日). 2021年8月11日閲覧。
  13. ^ 滋賀県情報発信拠点「ここ滋賀」の開設に伴う「ゆめぷらざ滋賀」営業終了について(滋賀・びわ湖観光情報)
  14. ^ 山形県飯豊町アンテナショップIIDEの徹底レポ
  15. ^ 北日本新聞 2016年11月10日付 27面『魚津の味 東京で提供 中板橋商店街に食堂開店』より
  16. ^ 備中高梁館(旧吉田邸)高梁市、2021年8月21日閲覧。
  17. ^ “8月、「さっぽろスイーツカフェ」が惜しまれながら閉店”. 札幌市: たびらい. (2016年6月8日). https://www.tabirai.net/sightseeing/news/0001654.aspx 2022年2月28日閲覧。 
  18. ^ 関西圏道産品チャレンジショップ「カムイン北海道」閉店のお知らせ(北海道貿易物産振興会、2016年11月10日閲覧)
  19. ^ 「おいしいさんぽ信州」東京店 終了のおしらせ”. 長野県 観光部 観光振興課 (2012年3月19日). 2012年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月11日閲覧。
  20. ^ とっとり・おかやま新橋館
  21. ^ いわき市アンテナショップ「いわき・ら・ら」3月閉店へ-事業縮小で(新橋経済新聞 2016年11月10日閲覧)
  22. ^ 京都館

関連項目[編集]

外部リンク[編集]