全粒穀物

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全粒穀物(ぜんりゅうこくもつ、: whole grains)とは、精白などの処理で、となる果皮種皮胚乳表層部といった部位を除去していない穀物や、その製品である。

主に玄米、玄米を発芽させた発芽玄米ふすまを取っていない全粒粉の小麦を使った食品、オートミール、挽きぐるみのソバなどがある。

こうした穀物は精白したものより食物繊維ビタミンB1をはじめとしたビタミンB群鉄分をはじめとしたミネラルが多く栄養価に富むために[1]健康を目的として食べられている。また、食物繊維が多いことが消化吸収をゆっくりにし、長時間に渡って空腹感を避けさせる[2]。このことは血糖値を急激に上げないということでもあるが、これも疾患の予防につながるとされる。

糠には、健康に影響する成分や、美容製品に使われる成分がそのまま入っているために美容目的でも食べられる。

食品に含まれる栄養素[1]
(食品 100 g あたり)
食品名 玄米 精白米 上白糖
エネルギー 350kcal 356kcal 384kcal
たんぱく質 6.8g 6.1g (0)
脂質 2.7g 0.9g (0)
炭水化物 73.8g 77.1g 99.2g
ナトリウム 1mg 1mg 1mg
カリウム 230mg 88mg 2mg
カルシウム 9mg 5mg 1mg
マグネシウム 110mg 23mg Tr
リン 290mg 94mg Tr
2.1mg 0.8mg Tr
亜鉛 1.8mg 1.4mg 0
0.27mg 0.22mg 0.01mg
マンガン 2.05mg 0.80mg -
β-カロテン当量 1mcg 0 (0)
ビタミンD (0) (0) (0)
ビタミンE 1.4mg 0.1mg (0)
ビタミンK (0) 0 (0)
ビタミンB1 0.41mg 0.08mg (0)
ビタミンB2 0.04mg 0.02mg (0)
ナイアシン 6.3mg 1.2mg (0)
ビタミンB12 (0) (0) (0)
葉酸 27mcg 12mcg (0)
パントテン酸 1.36mg 0.66mg (0)
ビタミンC (0) (0) (0)
食物繊維 3.0g 0.5g (0)

1999年7月、アメリカ食品医薬品局(FDA)の許可によって、51%以上の全粒穀物を含む製品にがんや心臓病のリスクを減らす可能性があると表示できるようになった[3]

アメリカ[4]、カナダ[5]食生活指針では、穀物の半分以上を精製されていないものにするように指導している。また、イギリス[6]、オーストラリア[7]、シンガポール [8]、マレーシア[9]をはじめとして、量を指定せず未精製の穀物を摂取することを指導している国も多い。

世界保健機関(WHO)と国際連合食糧農業機関(FAO)による2003年のレポートで、野菜や全粒穀物に豊富な食物繊維が、肥満や糖尿病や心臓病になるリスクを低下させると報告されている[10]アメリカ心臓協会(AHA)による2006年版の生活指針で半分以上は全粒穀物にすることが推奨されている[11]世界がん研究基金アメリカがん研究協会によって7000以上の研究を根拠に報告されたがん予防の10か条や[12]アメリカがん協会のがん予防のガイドラインで、[13]全粒穀物を選択するようにすすめている。

大規模な研究調査で、主要な生活習慣病のリスクが低下するという結果が得られている。アメリカ国立癌研究所の大規模な研究は、未精製の穀物は大腸癌のリスクを下げると報告している[14]。また、他の大規模な研究でも糖尿病心臓病のリスクを低下させると報告された[15][16][17]。7つの研究をメタアナリシスし、心血管疾患のリスクを低下させることが分かった。[18]。女性で炎症に起因する病気のリスクが低下し、炎症を抑制した原因は全粒穀物に多い抗酸化性のあるフィトケミカルだと考えられる[19]

1985年には、大腸癌を抑制させる原因は食物繊維よりもフィチン酸ではないかと報告され[20]、後にラットへのフィチン酸の単独投与でもがんや腫瘍を抑制することが観察されている[21]

メイヨークリニックが、季節性インフルエンザの感染を個人として予防する方法において、食事の項目で全粒穀物をあげている[22]

脚注[編集]

  1. ^ a b 五訂増補日本食品標準成分表(文部科学省)
  2. ^ ウォルター C. ウィレット 『太らない、病気にならない、おいしいダイエット-ハーバード大学公式ダイエットガイド』 光文社、2003年5月。145頁。ISBN 978-4334973964
  3. ^ FDA-CFSAN Health Claim Notification for Whole Grain Foods (英語) (FDA)
  4. ^ MyPyramid.gov - United States Department of Agriculture (英語) (アメリカ)
  5. ^ Eating Well with Canada's Food Guide (英語) (カナダ)
  6. ^ Food Standards Agency (英語) (イギリス)
  7. ^ The Australian Nutrition Foundation (英語) (オーストラリア)
  8. ^ Nutrition.com.sg (英語) (シンガポール)
  9. ^ nutriWEB Malaysia (英語) (マレーシア)
  10. ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases 2003
  11. ^ Our 2006 Diet and Lifestyle Recommendations (AHA - American Heart Association)
  12. ^ World Cancer Research Fund and American Institute for Cancer Research "Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer: A Global Perspective" 2007
  13. ^ Kushi Lawrence Haruo Sc.D, Tim Byers et al. "American Cancer Society Guidelines on Nutrition and Physical Activity for cancer prevention: reducing the risk of cancer with healthy food choices and physical activity" CA Cancer J Clin 56, 2006, pp254-281. PMID 17005596
  14. ^ Arthur Schatzkin et al. "Dietary fiber and whole-grain consumption in relation to colorectal cancer in the NIH-AARP Diet and Health Study." American Journal of Clinical Nutrition, Vol.85, No.5, May 2007, pp1353-1360. PMID 17490973
  15. ^ Fung TT, Hu FB, Pereira MA, et al. "Whole-grain intake and the risk of type 2 diabetes: a prospective study in men." American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 76, No.3, September 2002, pp535-540. PMID 12197996
  16. ^ S Liu et al."A prospective study of whole-grain intake and risk of type 2 diabetes mellitus in US women."American Journal of Public Health. 90(9):2000 September, pp1409–1415
  17. ^ Simin Liu at al. "Whole-grain consumption and risk of coronary heart disease: results from the Nurses' Health Study" American Journal of Clinical Nutrition, Vol.70, No.3, September 1999, pp412-419. PMID 10479204
  18. ^ Mellen PB, Walsh TF, Herrington DM. "Whole grain intake and cardiovascular disease: A meta-analysis" Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2007 Apr 19. PMID 17449231
  19. ^ Jacobs DR Jr, Andersen LF, Blomhoff R. Whole-grain consumption is associated with a reduced risk of noncardiovascular, noncancer death attributed to inflammatory diseases in the Iowa Women's Health Study. Am J Clin Nutr 85(6), 2007 Jun, pp1606-14. PMID 17556700
  20. ^ Graf E, Eaton JW. "Dietary suppression of colonic cancer. Fiber or phytate?" Cancer. 56(4), 1985 Aug 15, pp717-8. PMID 2990653
  21. ^ 細胞実験と動物実験 (IP6+イノシトール)
  22. ^ "Flu Prevention" (Mayo Clinic)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]