出血性大腸炎

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出血性大腸炎(しゅっけつせいだいちょうえん、英語: Hemorrhagic colitis)は、大腸感染症の一種。腸管出血性大腸菌志賀赤痢菌大腸感染してベロ毒素志賀毒素)を産生し、血便を伴う下痢と重篤な合併症を起こす。なお抗生物質など薬剤の副作用によって薬剤性腸炎[1]が起こることもあるが、ここでは主に感染症による出血性大腸炎について記述する。

概要[編集]

腸管出血性大腸菌志賀赤痢菌大腸感染ベロ毒素志賀毒素)を産生することで、大腸に出血を伴う激しい炎症反応が起こる病気

どの年齢層にも起こり得るが、特に小児高齢者に最も多くみられる。出血性大腸炎を起こす最も一般的な腸管出血性大腸菌の株はO157:H7である。O157はもともと健康なウシに生息しているものである。加熱が不十分な牛ひき肉や殺菌されていない牛乳果汁、また汚染されたを摂取することで集団発生することがある。出血性大腸炎は人から人へ伝染し、特におむつをつけている乳幼児の間で伝染する。

腸管出血性大腸菌のつくる毒素は大腸の粘膜に損傷を与える。毒素が血流中に吸収されると腎臓などの大腸以外の臓器にも重大な影響を及ぼす。

症状[編集]

他の腸管感染症と違い、吐き気および嘔吐は見られないことが多く、あっても程度は軽い。痙攣性の激しい腹痛水様性の下痢が突然始まり、下痢は24時間以内に真っ赤な血便になることが多い。下痢は通常1〜8日間続く。しかし、症状には個人差があり、中には軽症で済む(軽い下痢のみで終わり、血便や発熱がみられない)人もいる。

特徴的な症状は、

血便
初期は血液の混入は少量であるが、次第に増加し、重症例では大量かつ頻回の下血がみられる。典型的な症例では「糞便成分がほとんどなく、血液そのもの」というような状態になる。
発熱
無いか、あっても37℃台の微熱であることが多いが、乳幼児ではまれに39℃以上の高熱になることもある。

合併症[編集]

出血性大腸炎を起こした人の約2〜7%に、溶血性尿毒症症候群(HUS)という重い合併症がみられる。

診断[編集]

患者が血便を伴う下痢を訴えた場合は、出血性大腸炎が疑われる。診断をつけるには糞便のサンプルを調べて大腸菌赤痢菌の菌株を調べる。大腸菌が産生する毒素を検出する便検査を行うこともある。確定診断のため大腸内視鏡検査など他の検査を行うことがある。

鑑別疾患[編集]

血便を起こす他の疾患例。

治療[編集]

治療において最も重要なことは水分補給である。大量の体液が失われてしまった場合には輸液で補給する必要がある。下痢止め(止瀉薬)や抗生物質などは溶血性尿毒症症候群を起こすリスクを高めるので、原則使用しない。溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こした場合は入院して集中治療を受けることが必要となる。腎透析輸血が必要なこともある。

穿孔壊死虫垂炎腸重積などを合併した場合は手術が必要な場合もある。

出典・脚注[編集]

  1. ^ 平山政彦、古沢清文、山岡稔、抗生物質によると思われる急性出血性大腸炎の1例 日本口腔科学会雑誌 1986年 35巻 1号 p.259-265, doi:10.11277/stomatology1952.35.259

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • [1] MSDマニュアル家庭版