パツリン
|
| |||
| 物質名 | |||
|---|---|---|---|
4-hydroxy-4H-furo[3,2-c]pyran-2(6H)-one | |||
別名 2-Hydroxy-3,7-dioxabicyclo[4.3.0]nona-5,9-dien-8-one | |||
| 識別情報 | |||
3D model (JSmol)
|
|||
| ChEBI | |||
| ChEMBL | |||
| ChemSpider | |||
| ECHA InfoCard | 100.005.215 | ||
| EC番号 |
| ||
| KEGG | |||
PubChem CID
|
|||
| UNII | |||
CompTox Dashboard (EPA)
|
|||
| |||
| |||
| 性質 | |||
| C7H6O4 | |||
| モル質量 | 154.12 g/mol | ||
| 密度 | 1.52 g/mL | ||
| 融点 | 110 °C (230 °F; 383 K) | ||
| 溶ける | |||
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
| |||
パツリン (patulin) は、ペニシリウム属(アオカビ類) Penicillium expansum、アスペルギウス属(コウジカビ類)によって作られる、マイコトキシン(かび毒)の一種。
特長
[編集]不飽和5員環ラクトンを含む2環構造のカビ毒。極大吸収波長276 nmの紫外線吸収性があることから、その性質を利用した検出が行われる[2]。菌が付着して腐敗したリンゴ・ブドウ・モモ等から検出される。特にリンゴ製品のパツリンの量は製品の品質の基準として用いられる。
カルシウム塩は Penicillium expansum の増殖抑制効果があることが報告されている[3]。
パツリンは他のマイコトキシンと比較すると強力な毒物質ではないが、細胞膜に対する膜透過性を阻害する特性[4]を持ち、臓器出血性のほかいくつかの研究で遺伝毒性を持つことが示され、動物実験を通して発癌性の可能性が示唆されている[5]。
パツリン産生の影響因子
[編集]りんご品種により産生量が異なり「ジョナゴールド」が「ふじ」よりも多かったとする報告がある[6]。なお、全ポリフェノール量とリンゴ酸量はパツリン産生と負の相関関係があり、産生に影響を及ぼす果実成分は、果物特有の香気成分を構成するエチルエステル化合物の酪酸メチル類などで濃度依存的な促進効果がみられたと報告されている[7] [8]。
分解
[編集]アルコール発酵により分解する。また、条件によっては、アスコルビン酸はパツリンを消失させる。従って、オレンジなど柑橘類でのパツリン汚染は発生しない。150℃の高温処理では20%の減少と、亜硫酸塩の添加及び活性炭処理によって減少することが報告されている。
産生菌
[編集]- ペニシリウム属(アオカビ類)Penicillium expansum など
毒性
[編集]マウス経口評価では、
- 急性: LD50 17mg/kg 消化管の充血、出血、潰瘍等
- 短期: 摂餌量及び体重増加量の抑制、腎機能障害、十二指腸の充血
- 長期: 体重増加抑制
代謝
[編集]赤血球及び肝臓、肺、脾臓、腎臓に分布するが、ほぼ24時間以内に排出される。
基準
[編集]いくつかの国ではリンゴ製品に対しパツリン規制を設けていて、世界保健機関(WHO)ではリンゴジュース中のパツリンの最大濃度は50 µg/Lを推奨している[9]。
日本国内の汚染状況
[編集]福岡市保健環境研究所保健科学部門報告による、市販リンゴ果汁(100%果汁)の汚染調査によれば、16検体の試料のうちストレート果汁(6検体)からは不検出で、濃縮還元の10検体からは基準値の0.050ppm以内のパツリンを検出している[10]。
中毒事例
[編集]日本では、1964年神戸で汚染された飼料が原因となった乳牛の集団中毒が発生している[11]。
出典
[編集]脚注
[編集]- ^ Merck Index, 11th Edition, 7002
- ^ カビ毒の分析法 日本分析化学会 (PDF)
- ^ Effects of Ca2+ and Mg2+ on Botrytis cinerea and Penicillium expansum in vitro and on the biocontrol activity of Candida oleophila
- ^ マイコトキシン研究の現状 東京女子医科大学雑誌 53巻6号 p.533-555 1983/6/25
- ^ “Patulin: a Mycotoxin in Apples”. Perishables Handling Quarterly (91): 5. (August 1997).
- ^ 渡辺満, 鮎瀬淳「日本の主要リンゴ品種における Penicillium expansum のマイコトキシン産生とパツリン産生に及ぼす果実成分の影響」『日本食品科学工学会誌』第56巻第4号、日本食品科学工学会、2009年4月、215-222頁、doi:10.3136/nskkk.56.215、ISSN 1341027X、NAID 10024855309。
- ^ 田口智康, 石原亨, 中島廣光、【原著論文】リンゴ果汁に含まれる揮発性化合物による Penicillium expansum の生育およびパツリン産生への影響 『マイコトキシン』 2014年 64巻 1号 p.1-14
- ^ Tomoyasu Taguchi,Atsushi Ishihara,Hiromitsu Nakajima:【article】Effects of volatile compounds produced by plants on fungal growth and the production of mycotoxins 『マイコトキシン』 2015年 65巻 2号 p.131-142, doi:10.2520/myco.65.131
- ^ “Foodborne hazards (World Health Organization”. 2007年1月22日閲覧。
- ^ LC/MS/MS によるりんごジュース中のパツリンの残留分析 福岡市保健環境研究所保健科学部門
- ^ サイレージの品質管理 3) 好気的変敗の抑制 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
外部リンク
[編集]- 大野信子, 岡留美穂, 李晶「リンゴ青カビ病菌Penicillium expansum O-385-10によるペクチン分解酵素の生産とその酵素化学的性質」『和洋女子大学紀要 家政系編』第43巻、和洋女子大学、2003年3月、203-212頁、ISSN 09160035、NAID 110004870460。
- 横田栄一「食品中のマイコトキシンに関する規格基準について」『マイコトキシン』第54巻第2号、日本マイコトキシン学会、2004年7月、119-123頁、doi:10.2520/myco.54.119、ISSN 02851466、NAID 10026890904。
- 関口順一「マイコトキシンパツリンの生合成」『醗酵工学会誌』第61巻第3号、日本生物工学会、1983年5月、129-137頁、ISSN 03856151、NAID 110002777554。
- 大道公秀, 千葉瑞紀, 長谷川(谷内)友梨, 五百藏良「パツリンと糖の酵素存在下での反応挙動」(PDF)『東京医療保健大学紀要』第13巻第1号、東京医療保健大学、2018年、15-23頁、ISSN 1882-4455、NAID 40022104420。

