フーズ・フォーラス

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株式会社フーズ・フォーラス
Foods forus Co., Ltd.
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
101-0052
東京都千代田区神田小川町1丁目8番8号
神田小川町東誠ビル5F
ライブラ法律会計事務所内
設立 1998年9月17日
業種 小売業
事業内容 郊外型レストランチェーンの経営
代表者 代表清算人 大村安孝
資本金 4,000万円[1]
売上高 18億円(2010年3月期)[1]
従業員数 750人[2](うち正社員80人[1]
決算期 3月末日
関係する人物 勘坂康弘(創業者・元社長)
外部リンク http://www.foodsforus.info
特記事項:2011年7月8日解散、現在清算中。
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株式会社フーズ・フォーラス(Foods Forus)は、かつて存在した日本の企業である。石川県金沢市を拠点に焼肉レストランチェーン「焼肉酒家えびす(やきにくざかやえびす)」を経営していた[3][4]

概要[編集]

創業者の勘坂康弘はいわゆる脱サラで「焼肉酒家えびす」を創業し、一皿100円の豚バラや同280円の和風ユッケなどの低価格メニューを売りに業績を急拡大させ[5]北陸3県と神奈川県横浜市・藤沢市の郊外(ロードサイド)に出店していた。

社名は「Food for us」を意味し、「得るより与えよ」を企業理念としていた[1]

1号店は当初、店の指揮をとる一方、勘坂の父親が駐車場での整理・誘導、母親が厨房での皿洗いをするという家族ぐるみでの運営が行われていたという[6]取締役監査役に社長の一族が就任している同族企業非公開会社)であった。

2011年4月18日に日本テレビ系で放送されたバラエティ番組人生が変わる1分間の深イイ話』で紹介され、出演者が同店を称賛していた[7]

店舗は2008年までに富山、石川、福井の3県で10店舗であったが、2009年以降急拡大し、2010年7月には横浜上白根店(神奈川県横浜市旭区)を開店して首都圏に進出、神奈川県を含めた4県で計20店舗となった。店舗が展開されていた石川県には、白山市に焼肉店「焼肉茶屋恵比須」が2店舗存在するが、焼肉酒家えびすとは無関係である。

2011年4月下旬に複数店舗で発生した後述のユッケ集団食中毒事件により全店で営業を中止[8]。その後営業を再開することなく同6月に従業員を全員解雇し、7月に廃業となった[8][9][10]

沿革[編集]

不祥事・事件[編集]

ユッケ集団食中毒事件[編集]

2011年4月21日以降、「焼肉酒家えびす」の富山・福井・神奈川の店でユッケなどを食べた客117人(5月15日時点)が腸管出血性大腸菌O111による食中毒になり、5人が死亡、24人が重症となった[13]。食中毒を発症した者は4月21日以降となっており、『人生が変わる1分間の深イイ話』での反響から[7]初めて来店した客も含まれていたと思われる。また、1996年に国内でO157などの大腸菌が死滅していない食材による食中毒が脅威的に流行したことで食品衛生法上の知識と対策が周知されていたこともあり、飲食チェーン店(食材入手元が同じ)で発生した集団食中毒において3名以上が死亡するのは極めて深刻な事態であった。

富山県は4月29日から3日間、県内の2店舗(砺波店および高岡駅南店)に対し食品衛生法に基づく行政処分(営業停止命令)を下した。5月4日に4人目の死者が出たことを受け、5月6日付けでこの2店舗に対し無期限の営業禁止処分を下した[14]。これを受けフーズ・フォーラス社は当面の間、焼肉酒家えびすの全店舗で営業を停止することを発表した[15]。その後、営業再開せずに同年7月に廃業となる。

原因[編集]

被害者の96%がユッケを食べていた。食中毒の発生地域が広範囲に渡っていることから、原因菌はえびすで発生したものではないとされた。配送前の時点で肉に付着していた腸管出血性大腸菌O-111と判断された[16]。また店舗で保管されていた未開封の肉からO-111が検出されており、この事からも汚染された肉が店外から持ち込まれたと判断された。被害者の半数から腸管出血性大腸菌O-111が検出され未開封の肉のO-111と遺伝子パターンが一致した。O-157も検出されたが、一部の被害者からだけ検出されたに留まり、保管されていた肉からも検出されなかったのでO-157は原因菌ではないとされた。フーズ・フォーラスは肉の輸送には関与していなかった。

えびすは大和屋商店から生食用として牛肉を仕入れており、大和屋商店は埼玉県内のK社から牛肉を仕入れていた。そのため警察は卸元の大和屋商店とK社に対して家宅捜索を行ったが、菌は検出されなかった[17]

この事件では調理したえびす・卸元の大和屋商店双方の問題が指摘されている。

  • えびす
    • 客に肉を提供する前にトリミングをしておらず、肉の衛生検査もしていなかった[18]
    • 各店舗では売れ残ったユッケを翌日も客に提供していた[19]
  • 大和屋商店
    • 冷蔵庫が小さくて肉が触れ合った状態で保存されていた。
    • レバー用とその他の肉用とで包丁及びまな板を使い分けしていなかった。
    • トリミング処理をしてない肉を、えびすに対して「歩留まり100%で無駄がありません」といい、生食用として出荷していた。
    • 本来生食用ではない牛肉を、生食用として卸していた。

被害者[編集]

  • 食中毒になった者(患者) 181名
    • 患者の都道府県別:富山県・175名、福井県・4名、石川県・1名、神奈川県・1名[20]
  • 患者のうち、溶血性尿毒症症候群を発症した重症者 32名
    • 重症者の年代別:10歳未満・7名、10代・15名、20代・6名、40代・1名、60代・1名、70代・1名、不明・1名[21]
  • 重症者のうち、死亡した者 5名
    • 死亡した者の都道府県別:富山県(砺波店)4名(6歳男児、14歳男子、43歳女性、70歳女性)、福井県(福井渕店)1名(6歳男児)

事件の経過[編集]

全て2011年

  • 4月21日-26日 - 富山県・福井県・神奈川県内の異なる店でユッケなど食肉を食べた複数の客が2日程度の潜伏期間を経て食中毒の症状を呈する。
  • 4月27日 - 「福井渕店」での飲食から腸管出血性大腸菌O111による食中毒を発症し、治療中であった6歳の男児が死亡。福井県が当該事実を公表。富山県は「砺波店」「高岡駅南店」で飲食をした複数の客がO111・O157による食中毒の治療を受けている旨の連絡を医療機関(保健所)から受け、同日から両店を営業停止処分にすると公表。この発表により「集団食中毒の疑い」と報道されるようになる。これ以外の店舗は営業継続した。
  • 4月29日 - 「砺波店」での飲食から腸管出血性大腸菌O111を発症し、治療中であった6歳の男児が死亡。同社は全店を営業自粛(停止)とした。
  • 5月2日 - 富山県警は業務上過失致死傷容疑の疑いで砺波署に捜査本部を設置する(後に福井県警・神奈川県警と警視庁(大和屋商店関連)が捜査本部を設置し、合同捜査本部化)。
  • 5月4日 - 「砺波店」での飲食からO111を発症し入院中であった40歳代女性が溶血性尿毒症症候群で死亡。
  • 5月5日 - 「砺波店」での飲食からO111を発症し入院中であった70歳代女性が溶血性尿毒症症候群で死亡。
  • 5月7日 - 合同捜査本部が、フーズ・フォーラス本社や店舗と食肉卸元の大和屋商店業務上過失致死傷容疑の疑いで家宅捜索(以後複数回)。
  • 5月15日 - O111・O157による集団食中毒を発症した者(疑い例含む)は死者4人を含め延べ171人に上り、大半が入院するなど重症であることが明らかとなる。
  • 5月16日 - 横浜市は「横浜若草台店」にある未開封の牛モモ肉からO111を検出したと発表。
  • 6月8日 - 営業停止を受け資金繰り悪化。営業再開を断念。役員以外の全社員90人を解雇。
  • 7月8日 - 会社解散。清算手続きへ移行する[22]
  • 7月15日 - 全店舗が同業者のスタンドサービスへ売却され、今後同社店舗として営業される予定(居抜き出店)。
  • 10月22日 - 「砺波店」での飲食からO111を発症し入院中の少年が死亡し、死者5人に[23]

廃業とその後[編集]

同社は集団食中毒による「巨額な賠償金を確保するため」として5月中旬に金沢市保健所を複数回訪れて営業再開を打診したが、これに対して保健所では「原因が究明されるまで待ったほうが良い」と許可しなかった[24]。これを受け、また営業停止で資金繰りが悪化したため、営業再開を断念し、6月8日付で役員以外の全社員90人を解雇したことが報じられた[25]。法人は2011年7月8日付で解散し、清算手続に入ったが[9]、特別清算の申し立ては大幅に遅れ、金沢地裁が開始決定を行ったのは2012年2月10日となった[26]。清算法人の事務所は2013年10月1日付で東京都の代理人弁護士の法律事務所内に移転している。

店舗施設は福島県郡山市に本社を置くガソリンスタンド経営会社のスタンドサービスに全店売却・譲渡され、同社観光事業部で運営する焼肉店チェーン「ヴイ・ブリアン(V.brian)」として営業再開した[27]。2011年9月1日スタンドサービスが金沢市高柳町の旧えびす店舗の施設に、運営する焼き肉店「ヴイ・ブリアン」の北陸1号店をオープンした[28]。しかし、スタンドサービスは資金繰りの悪化から2012年5月28日に福島地方裁判所郡山支部へ民事再生法の適用を申請し、同日に保全命令が下された[29]。その後これらの店舗は全店とも閉鎖され、会社自体も2015年1月15日解散、同年5月9日に清算を終えて完全消滅したことが登記簿で確認されている。

被害発生の場所となったフーズ・フォーラスには、食中毒事件の被害者総数158名より、6億8993万6880円の債権届出がなされた。フーズ・フォーラスには2億円の預金があり、それを被害者に優先的に配分できるように債権者(銀行)に依頼したが同意は得られず、預金は全て銀行の貸付金と相殺された。フーズ・フォーラスは、納入された牛肉にO-111が付着していたことによる事件であるとして、東京簡易裁判所に納入先の大和屋商店を相手に損賠賠償の調停を行ったが不調に終わった。これを受けて、大和屋商店ならびにK社に対して損賠賠償請求の裁判を実施し、その賠償金を遺族への債権補填に充てる方針が説明されている。損害賠償請求には遺族の一部も原告として参加しているが、フーズ・フォーラスを信用できぬとして別に大和屋商店を訴える動きもある。

影響[編集]

多くの焼肉店・韓国料理店でユッケの提供が自粛されるようになった[30]。厚生労働省基準での生食用牛肉が、国内では一切出荷されていないことが驚きとともに広く知られるようになった[31]

本事件を受け[32]、生食用牛肉の処理に関する基準が2011年10月1日に改定され、腸内細菌科菌群を対象とした微生物検査が義務付けられるとともに、生食用加工設備の完全な区分けや肉塊ごとの設備・器具洗浄、衛生的に密封した肉塊を熱湯などで表面から深さ1cmまでを60℃で2分以上加熱処理するなどの規定が盛り込まれ、原則として有資格者ないしその監督下での処理以外が認められなくなり、食中毒などを起こした場合、営業停止や刑事罰も適用できることとなった[33]。また、牛生レバーについても2012年7月1日から提供禁止となった[34]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d リクナビ (2010年10月1日). “株式会社フーズ・フォーラス 【焼肉酒家えびす】” (日本語). リクルート (Internet Archive). 2013年11月5日閲覧。
  2. ^ 金沢公共職業安定所 (2011年3月1日). “株式会社フーズ・フォーラス (焼肉酒家えびす) / 管理部門(経理・財務)” (日本語). インディビジョン. 2011年5月9日閲覧。
  3. ^ “集団食中毒 6日にも強制捜査”. NHK. (2011年5月6日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110506/k10015714841000.html 2011年5月6日閲覧。 
  4. ^ “きょう午後、家宅捜索 焼き肉チェーンや卸業者”. 中國新聞. (2011年5月6日). http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201105060069.html 2011年5月6日閲覧。 
  5. ^ “残ったユッケ翌日も提供 焼き肉チェーン捜索”. 日本経済新聞 朝刊. (2011年5月7日) 
  6. ^ ユッケ食中毒事件 『サンデースクランブル』(テレビ朝日)平成23年5月8日放送
  7. ^ a b “紳助番組でユッケ食中毒店「深イイ」絶賛”. 日刊スポーツ. (2011年5月4日). http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20110504-770634.html 2011年5月4日閲覧。 
  8. ^ a b 生肉食中毒「えびす」営業再開を断念 『日本経済新聞』 平成23年6月9日夕刊
  9. ^ a b “集団食中毒、「えびす」運営社8日に解散”. 読売新聞. (2011年7月8日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110708-OYT1T00045.htm [リンク切れ]
  10. ^ (株)フーズ・フォーラス | 倒産速報 | 最新記事 | 東京商工リサーチ
  11. ^ 「焼肉えびす」が卸売業者を提訴へ 被害者にも参加訴え 朝日新聞デジタル・2012年2月19日
  12. ^ 食中毒の「焼肉酒家えびす」運営会社、特別清算申し立て 朝日新聞・2012年2月10日
  13. ^ “大和屋商店に2度目の家宅捜索”. チューリップテレビ. (2011年5月11日). http://www.tulip-tv.co.jp/news/detail/?TID_DT03=20110511120027 2011年5月23日閲覧。 
  14. ^ “焼肉酒家えびすの2店、富山県が無期限営業禁止”. 読売online. (2011年5月6日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110506-OYT1T00550.htm 2011年5月8日閲覧。 [リンク切れ]
  15. ^ 焼肉酒家えびす公式サイト
  16. ^ “焼き肉店集団食中毒:富山・福井、菌の遺伝子型が一致 専門家「店外付着の可能性」”. 毎日新聞. (2011年5月5日). http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110505ddm041040087000c.html 2011年5月23日閲覧。 [リンク切れ]
  17. ^ “大和屋商店・埼玉市場から菌検出されず”. チューリップテレビ. (2011年5月20日). http://www.tulip-tv.co.jp/news/detail/?TID_DT03=20110520200104 2011年5月23日閲覧。 
  18. ^ “大和屋商店以前の業者が証言”. 北日本放送. (2011年5月18日). http://www2.knb.ne.jp/news/20110518_28150.htm 2011年5月23日閲覧。 
  19. ^ “売れ残りユッケ、翌日も提供 焼肉店強制捜査”. 日本経済新聞. (2011年5月6日). http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E2E4E2E6E78DE2E4E2E7E0E2E3E39191E3E2E2E2 2011年5月6日閲覧。 
  20. ^ 焼き肉「えびす」食中毒、富山の14歳死亡 死者5人目 asahi.com・2011年10月23日
  21. ^ ユッケ食中毒5人目死亡 asahi.com・2011年10月24日
  22. ^ “フーズ社が解散=店舗一括売却へ、焼き肉店食中毒”. 時事通信. (2011年7月8日). http://www.jiji.com/jc/zc?k=201107/2011070800459 2011年7月8日閲覧。 
  23. ^ “焼き肉食中毒、死者5人に=入院中の少年が死亡-富山”. 時事通信. (2011年10月23日). http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011102300073 2011年10月23日閲覧。 
  24. ^ 焼肉えびす、営業再開を打診…保健所は「再考」[リンク切れ]
  25. ^ “生肉食中毒:「えびす」再開断念 社員90人全員解雇”. 毎日新聞. (2011年6月9日). http://mainichi.jp/life/food/news/20110609k0000m040144000c.html 2011年6月9日閲覧。 [リンク切れ]
  26. ^ “集団食中毒でフーズ社が特別清算 被害賠償含め負債17億円超”. 共同通信. (2012年2月10日). http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012021001002300.html 2012年2月27日閲覧。 
  27. ^ 福島の会社にフーズ社全店売却へ 集団食中毒事件 『共同通信』平成23年7月15日配信
  28. ^ 売却先が新焼き肉店オープン 集団食中毒事件 『共同通信』平成23年9月1日配信
  29. ^ “焼肉えびす買収のスタンドサービスが民事再生法申請 負債72億円”. 産経新聞. (2012年5月28日). http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120528/biz12052813110005-n1.htm 2012年5月28日閲覧。 
  30. ^ “焼き肉店集団食中毒:ユッケ自粛、県内でも 業者に「風評被害」懸念も /秋田”. 毎日新聞. (2011年5月7日). http://mainichi.jp/area/akita/news/20110507ddlk05040004000c.html 2011年5月23日閲覧。 
  31. ^ “生食用牛肉出荷ゼロ「加熱用、生で提供」常態化”. ヨミドクター. (2011年5月4日). http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=40295 2011年5月23日閲覧。 
  32. ^ 生食用牛肉、罰則付き新基準告示…レバー対象外 - 読売新聞[リンク切れ]
  33. ^ 2011年(平成23年)9月12日厚生労働省告示第321号「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」
  34. ^ 牛生レバー:7月から禁止 - 毎日新聞 2012年05月20日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]