ヘチマ

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ヘチマ
W hetima2082.jpg
ヘチマの実
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ウリ目 Cucurbitales
: ウリ科 Cucurbitaceae
: ヘチマ属 Luffa
: ヘチマ L. cylindrica
学名
Luffa cylindricaL.)Roem.
和名
ヘチマ
英名
Luffa, Loofah, Loofa
ヘチマの花
へちまタワシ
ナーベラーンブシー
エジプトヘチマ

ヘチマ糸瓜天糸瓜、学名:Luffa cylindrica (L.) Roem.、シノニムLuffa aegyptica Mill.)はインド原産のウリ科一年草。また、その果実のこと。日本には室町時代に中国から渡来した。別名、イトウリ[1]トウリ[1]

名前の由来[編集]

ヘチマの生産向上に尽力した織田利三郎(1857~1923)
利三郎が出品したヘチマ(下は遠州しょうが)

本来の名前は果実から繊維が得られることから付いた糸瓜(いとうり)で、漢名(中国植物名)で絲瓜(しか)と呼ぶ[1][2]。一説には、イトウリが後に縮まって「とうり(と瓜)」と転訛し、「と」は『いろは歌』で「へ」と「ち」の間にあることから「へち間」の意で「へちま」と呼ばれるようになったとされている[3][4]。今でも「糸瓜」と書いて「へちま」と訓じる。沖縄ではナーベーラーと呼ばれるが、これは果実の繊維を鍋洗い(なべあらい)に用いたことに由来するという。

なお、中国から渡来した黒胡麻、通称黒芝麻(hei zhima) がヘチマと聞こえること、沖縄にはゆでた糸瓜に黒芝麻(ヘチマ)をかけたナーベーラー田楽という料理があることなどから、呼称違いではないかという説[5]もある。

また、耐病性へちま品種に「浜名」、「天竜」、「浜北」、「あきは」など、静岡県にちなんだ名称がつけられているのは、同県浜松出身の織田利三郎明治時代輸出振興のためヘチマの生産力を上げる改良に尽力したことによる[6]。市内で雑貨店を営んでいた織田は貿易商の助言で農産物の輸出に目をつけ、前田正名の指導のもと、日本の輸出農産物であったヘチマ、落花生ショウガなど特殊な農産物の生産向上に励んで静岡県内の生産額を劇的に増やし、とくにヘチマは1900年まで8万円だったものを1917年には4、5千万円に引き上げた[7][8]パリ万国博覧会 (1900年)では日本産ヘチマの宣伝のため、ヘチマで作ったゾウを展示したほか、1907年に「静岡県生姜、糸瓜、蕃椒、落花生同業組合」を設立、1909年のシアトル博覧会や1910年の日英博覧会など、多くの国内外の博覧会に出品し、受賞も多数獲得した[6][7]

特徴[編集]

熱帯アジア原産または、インド原産といわれるつる性一年生植物[1][9]。各地で栽培されている[9]は長く伸びて5つ稜があり、分岐した巻きひげで他のものに絡みつきながら生長する[1][9]葉柄があって互生し、葉身は掌状に浅裂し、表面はざらつきがある。雌雄同株[9]

花期は夏(7 - 9月)の日没後で、雌花雄花に分かれており、直径8センチメートル (cm) ほどの黄色い5裂したを咲かせる[9]。雄花は房状につき、雌花は独立してつく[9]自家和合性で同一株で受粉が可能である。

果実は円筒形で細長く、大きなキュウリのような形をしている[1]。若い果実は軟らかく食用に、成熟した果実は強い繊維性の網状組織が発達するのでたわしや靴の底敷きなどに用いられる[9]。果実は成熟後、次第に乾燥し、種子の周囲が繊維で支えられた空洞となる。その頃になると果実の先端が蓋のように外れ、果実が風で揺れる度に、ここから遠心力で種子が振り出され、飛び出す。原産地で野生植物であったときには、こうして一種の投石器のような機構で種子散布を図っていたと考えられる。

有用植物としてのヘチマ[編集]

食用
繊維が未発達の若い果実には独特の風味があり、固い皮を剥いて加熱すると甘味のある液が出る。汁物や煮物などに用いるほか、台湾では小籠包の具としても使用する。
日本では主に南西諸島と南九州で食べられている。沖縄では味噌味の蒸し煮であるナーベラーンブシーとして食べるほか、シチューやカレーなどの洋風料理にも用いられる。南九州では煮物や焼き物などにし、味噌汁の具になることが多い。
なお、ヘチマの一部の株においてククルビタシンを非常に多く産生するものが混じって流通することがあり[10]、自家栽培したものなどを苦味を我慢して食べたことによる食中毒事例(おう吐や下痢等)もある[10]。そのため、ゴーヤーニガウリツルレイシ)に比べて苦味の強いものには注意する必要がある[10]
へちま水
に実が完熟した頃、地上30 - 60 cmほどの所で蔓(茎)を切り、根側の切り口をビン容器に差し込んで、口元を綿栓で塞いでしばらく置くと、根から吸い上げられた水がビン容器に溜まり、この液体のことを「へちま水」(へちますい)という[1][9]。根まわりに水を十分与えておくと、数日で500 - 2000 ccほどの液が採れる[1][9]
化粧水として用いるほか、民間薬としては飲み薬塗り薬として用いられる。含有成分は、ヘチマサポニン硝酸カリウムペクチンタンパク質分等である[1]。カリウムイオンによる緩和な皮膚軟化作用と、わずかな量のサポニンによる浄化作用があり、またカリウムのアルカリ性とサポニンにより去痰作用があるといわれる[1]正岡子規の句「痰一斗糸瓜の水も間に合わず」はこの咳止めの効能に関わるものである。
化粧水として保存するときは、煮沸して冷ましたヘチマ水500 ccに対し、グリセリン100 ccと日本薬局方アルコール100 - 300 ccを加えて濾過し、香料が適量加えられる[1][2][9]
飲み薬としては咳止めむくみ利尿に効くとされ、塗るとあせもひびあかぎれ肌荒れにきび日焼け後の手当てにも効くとされる[9]。そのままでは防腐剤が入っていないため腐りやすいので煮沸濾過をして冷蔵庫にしまい、使う時だけ取りだすと長持ちする。民間療法では、痰切り、咳止めにヘチマ水600 ccほどを半量になるまでとろ火で煮詰め、食間に3回に分けて服用するか、ヘチマ水でうがいする用法が知られている[1]妊婦への服用は禁忌とされる[2]
タワシ
晩秋に茶色くなった果実を、水にさらして軟部組織腐敗させて除き、繊維だけにして、タワシを作る。果実の先端(雌しべのある方)を地面などに軽く叩きつけて、蓋のようになっている部分を開いて取り除いて水にさらす。他にも、完熟して乾燥した果実の皮を剥いて中身の種を取り出す方法のほか、煮て中身を溶かして作ったり、酵素剤を使って中身を溶かす方法で作ることができる。産地には、江戸時代から静岡県浜松市袋井市がある。
学習教材
1年で発芽開花受粉、結果、枯死し、雄花雌花によって他家受粉することから、日本では小学校理科教材として使用される。

近縁種[編集]

トカドヘチマ
トカドヘチマ(Luffa acutangula (L.) Roxb.)の果実にはとても硬い筋があり、そこから名前が付けられた。野菜としての用途が主たる栽培目的である。トカドヘチマの葉と茎にはナッツ系の独特の臭気がある。タワシを作る場合は、完熟乾燥すると果実が硬く加工が難しくなるので、やや緑がかった状態が適している。繊維採取用の種類より幾分果実が小さく、15 - 40cm程度である。小さい果実であれば原型を活かしたままタワシにすることができる。
トゲヘチマ英語版

栽培[編集]

夏場に、窓や庭に日陰を作るために植えられている[1]。強健で作りやすい植物で、肥沃な土地であれば栽培は容易である[9]連作は避ける[9]

発芽温度が高いので、四月下旬から五月上旬頃播種する。タネはかなり大きいので、覆土は1~2cm位にする。鉢にまいて後で植え替えてもいいが、直まきにする方が楽である。蔓が伸びてきたら、4m位の支柱を立てて誘導してやる。適当な排水がある土地なら比較的栽培は容易である。ヘチマをとるほか、緑陰としての人気が高まっている。

ヘチマの成長について

ヘチマの種子(種)は スイカの種子のように黒くて平べったい。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 田中孝治 1995, p. 110.
  2. ^ a b c 貝津好孝 1995, p. 169.
  3. ^ 田中孝治 1996, p. 110.
  4. ^ 稲垣栄洋 2010, p. 76.
  5. ^ 「食文化雑学」原語か考えるホントの語原 文芸社 2015
  6. ^ a b はままつ農業のここが肝。浜松市役所、2013年9月1日
  7. ^ a b 農産物の輸出増加『模範農村と人物』香坂昌孝 著 (求光閣書店, 1917)
  8. ^ 浜松市史 三 「浜松町農会 浜名郡農会」浜松市立中央図書館/浜松市文化遺産デジタルアーカイブ
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m 馬場篤 1996, p. 101.
  10. ^ a b c ゴーヤーより苦いヘチマやユウガオにご注意! (PDF)”. 沖縄県衛生環境研究所. 2013年5月16日閲覧。

参考文献[編集]

  • 稲垣栄洋『残しておきたいふるさとの野草』地人書館、2010年4月10日。ISBN 978-4-8052-0822-9
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、169頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、110頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、101頁。ISBN 4-416-49618-4