早春物語

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早春物語』(そうしゅんものがたり)は、赤川次郎の小説。これを原作として1985年に映画が、1986年にTBSでテレビドラマが制作された。

書誌情報[編集]

映画[編集]

早春物語
監督 澤井信一郎
脚本 那須真知子
原作 赤川次郎
製作 角川春樹
市村一三
出演者 原田知世
林隆三
田中邦衛
音楽 久石譲
石川光
主題歌 原田知世
早春物語
撮影 仙元誠三
編集 西東清明
製作会社 角川春樹事務所
配給 東宝
角川春樹事務所
公開 日本の旗 1985年9月14日
上映時間 96分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 12億5000万円[1]
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同時上映『二代目はクリスチャン』とともに角川映画10周年記念映画[2]原田知世主演、澤井信一郎監督。製作・角川春樹事務所、配給・東宝/角川春樹事務所。

ストーリー[編集]

沖野瞳は17才、北鎌倉高校の2年生、写真部。

同級生の麻子とは、ボーイフレンド、キス、セックス、淫夢、初体験への覚悟などを話題にしている。

母(さかえ)は4年前に病死して、現在は父と二人暮らし。


春休みになり、瞳は写真撮影のため鎌倉市内をめぐる。

偶然、梶川という中年の男性と出会う。

二人は車の道案内から仲良くなり、蕎麦を食べながら会話が弾む。

瞳は、自分は大学生2年生、20才、童顔だから若く見られるとウソをつく。

梶川は「40越してる。2。小さな商社で鉄を扱っているんだよ」という。


数日後。

瞳は銀座へ写真展を見に行く。

その後、日比谷にある梶川の会社を訪ねる。

会社は想定外に大きく立派だった。

梶川は瞳を夜のパーティーに誘う。

二人は社交ダンスを踊る。

二人はカラオケバーに行き、瞳は松山千春の「恋」を歌い、拍手喝さいを浴びる。

ちょっと酔った顔で、化粧室へ行く瞳。

梶川が追いかけて、「よかったら、ボクのホテルで寝てったら?」

「いい。中年女の嫉妬は怖いから。いつもこんな手で大人のおつきあいしているの?」

早朝、一人で街を歩く瞳。

道に落ちていたボールをける。

瞳は梶川に恋をしていた。



母の命日(3月31日)。

瞳は母が残したアルバムを見て、偶然、古い写真から梶川の顔を発見する。

瞳は、写真を持って、母と看護学校で同級生だった女性を訪ねる。

「ああ、これ、箱根にハイキングに行った時の写真ね。懐かしいわ」

「この男の人、知ってますか?」

「梶川さんでしょう。彼、大学生でね、この時、知り合ったのよ」

「母と、つきあっていたんですか?」

「まあね。彼、冷たい男でね、商社に就職して海外に駐在が決まった時、仕事とお母さんを測りにかけてね、結局、お母さんを捨てたのよ。かわいそうだったわよ、さかえ。いく晩もいく晩も泣いてね。愛してたから、この人」

瞳は梶川に敵意を持つ。


瞳は再び、偶然、鎌倉で梶川に会う。

「食事にでも行こうか?」

「ドライブがしたいな」

「うーん、それもいいなあ」

「どこ行く?」

「箱根」

二人は車で箱根へ向かい、小涌谷へと行く。

そこは、梶川と母(さかえ)が出会った思い出の場所だった。


その夜、二人は芦ノ湖の湖畔のレストランで赤ワインを飲む。

瞳は酔って、梶川にからむ。

「口きけないだけが恋じゃないもの。恋したから、しゃべり過ぎることだってあるんだもの。わかってない。梶川さん、ぜんぜんわかってない」


夜の芦ノ湖の湖畔。

「どうしてだか、わかんない。わかんない」

酔ってふらふらしている瞳を抱きかかえた梶川は、キスをする。

びっくりした表情の瞳。

「君、キスしたことなかったのか」

「何度も、何度も、したことある」

「ごめん」

「何度も、何度も、したことある」

「悪かった」

「何度も、何度も、したことある」

梶川は瞳を車で送っていく。

瞳は古い写真を、こっそりと梶川のカバンのポケットに入れる。


数日後。

瞳は会社に電話をかけて、神田の喫茶店「ランタン」に梶川を呼び出す。

そこは、梶川と母(さかえ)の思い出の店だった。

「左端の人、私の母です。旧姓、島崎。島崎さかえ。覚えてるでしょう?」

「ああ。お元気ですか?」

「死にました。4年前。病気で」

「亡くなった。そう」

「捨てた女でも、死ねば気になりますか? 自分の出世のために、母を捨てたんでしょう。そう聞きました」

「誰に?」

「誰だっていいでしょう!」

「そんなこと聞いて、どうするんだ。君は、このことを知ってて僕に近づいてきたのかい?」

「近づいてきたなんて言い方よして。私は事実が知りたいの。母はあなたの恋人だった。そう?」

「そうだ」

「自分の出世のために、母を捨てたのね」

「結果的には、そういうことになるな」

「そうなるってなによ。ひどい人ね。お父さんだって、かわいそうじゃない。他の男の人を愛している人と結婚したなんて、なんか、みじめよ」

「そういう言い方は、お父さんに対しても、お母さんに対しても、失礼だよ。お母さんはね、僕のことには関係なく、君のお父さんと結婚したんだ」

「あきらめたのよ。お母さん」

「だからって、それが不幸な結婚だとは言えないだろう。君みたいな、そういう線の細い考え方してたら、怖くて恋なんかできやしないじゃないか。君はまだ若いから、人の傷をことさら深く感じてしまうのかもしれないけど、人間には回復する力っていうのがあるんだよ。傷は癒えるし、つらいことは忘れるんだ」

「出世のために女を捨てた男が、もっともらしいお説教しないで!」

怒って一人で店を飛び出していく瞳。


瞳は偶然会った真佐子とディスコへ行く。

そこで、真佐子の彼(高校教師)への一途な気持ちを聞く。

「私、今日、帰らない。あなたと会って、自分が中途半端な生き方しかしてないなんて、恥ずかしくなった」

「無理に傷つくことないわよ」

「傷つきたい」

「つらいわよ」

「いい。つらくてもいい。傷ついたあなたって、ステキだもの」

瞳は何かを決心している。


雨が激しく降る夜、瞳は梶川が宿泊しているホテルの前で待つ。

梶川が帰ってきて、瞳は一緒にホテルの部屋に入る。

「アメリカに帰るの?」

「ああ」

「どうしていってくれなかったの?」

「君に話すようなことじゃないだろう」

「そうね。気晴らしに、ちょっとキスしたくらいの相手に、わざわざ話す必要ないもんね」

バスルームへ行こうとする梶川。

「どこ行くの?」

「酔いをさまして、君を送っていくんだよ」

「逃げないでよ」

瞳は部屋のライトを消す。

「お母さんからはうまく逃げたつもりでしょうけど、私は簡単に逃がさない」

瞳は服を脱ぎ始める。

「おい、何やってるんだ」

「見ればわかるでしょう。お母さんにしたことと同じことしてもらうの」

「何いってるんだよ。子供のクセに」

「私、お母さんに似てるって。私を抱いて、お母さんの体、思い出せば!」

瞳は下着姿になる。

「ばか!」

梶川が瞳の左頬を、ひっぱたく。

「お母さんとも寝たんでしょう!」

「お前のお母さん、そんな女じゃない。自分の母親を汚すようなこと、いうんじゃないよ」

「着ろ」

瞳が脱いだ服を渡そうとする梶川。

「いまさら、いい人ぶらないでよ! 私を抱いて、アメリカに帰ればいいのよ! 抱いてよ! 抱きなさいよ!」

「まったく、どっから声が出るんだよ。俺が出てくる前に着ておけ」

バスルームにこもる梶川。

「いい年して逃げる気? ふざけないでよ!」

瞳がドアをたたく。

「出てきなさいよ! 悪い人なんでしょう! 女を石ころみたいに捨てるんでしょう! だったら、もっと、悪い人になってよ! お母さんみたいに捨てればいいのよ!」

罵倒されて怒った梶川。

「だったら抱いてやる。裸で待ってろ」

梶川がバスルームから出てくる。

「寝ろ。寝ろよ」

ベッドの上に横になる二人。

急に怖くなった瞳は、毛布をかぶる。

「どうしたんだよ。なにやってるんだよ。怖いか。おい。おい。さっきの勢い、どうしたんだよ。ほら。抱いてやるよ」

下着姿でベッドから逃げ出す瞳。

「逃げるな。こら」

バスルームに逃げ込む瞳。

「着ろ」

梶川が、瞳の脱いだ服を投げこむ。


梶川は車で瞳を送っていく。

街道沿いには、多数のラブホテルが並んでいる。

「入って。入って。今度は嫌がらないから」と、急に瞳がいう。

「あそこに入って。入って。入って。入ってよ!」

「やめろ!」

興奮した瞳は梶川の運転を邪魔して、車は事故を起こし、瞳は左前頭部にケガをする。


夜の病院。

ケガした瞳を、やさしく包むように抱きかかえる梶川。

「ごめんなさい。私、梶川さんがアメリカに帰るって聞いたら、なんか急にカッとしちゃって」

「もういいから」

「ねえ、お母さんの話を聞かせて」

梶川は20年前の話を始める。

大学4年の春、二人は箱根の小涌谷で出会い、梶川は神田の喫茶店「ランタン」に通うようになった。

さかえのアルバイトが終わると、さかえ、梶川、さかえの女友達、3人で学生寮まで歩いた。

当時、シャイで煮え切らない男だった梶川は、さかえに自分の気持ちを伝えられなかった。

やがて、梶川は商社に就職し、海外への駐在が決まったところで、ついに、さかえに告白をした。

しかし、実は、さかえの女友達も梶川のことが好きだった。

二人の話を聞くと、彼女は、さかえの目の前で屋上から飛び降り自殺(未遂)をした。

「結局、それで僕たちはダメになった」

「私、よくわからないけど、今じゃないといえないような気がして、聞いて」

「何?」

「これ、恋だと思う。だから、愛してくれなくてもいいから、お母さんじゃなくて、私にキスして」

目を閉じる瞳。

長く甘いキス、きつく抱きしめる梶川。


数日後。

梶川は、真佐子の葬式の近くまで行き、黒い喪服の瞳に会う。

「あきらめきれるって、いってたのに。でも、彼女、幸せだったと思います。だから、私、泣かないんです」と、瞳はいう。

梶川は、今の会社は自分から辞めた、次は南米にある別の会社で働くという。

とりあえず、数日後にアメリカへ帰る予定。

二人は鎌倉の海岸の砂浜を歩く。

「ずいぶん、温かくなってきたね」

「梶川さんと会ってから、寒いとか、温かいとか、そんなこと感じる余裕なくしてたってかんじだけど。でも今日は、温かいって感じる」

「見送りに来てくれるかい?」

「たぶん、行かないと思う。春休みも終わるし、新学期の準備もあるから」


成田空港。

一人で出発しようとしていた梶川の目に、瞳が映る。

慌てて駆け寄る梶川。

「20年前、お母さん、見送ってくれた?」

「いや、見送ってくれなかった」

「そう。じゃ、よかった。私がお母さんの分まで見送ってあげる」

急に真剣な表情になる梶川。

「好きだ。大好きだ」

「お父さんから聞いた。そんなこといってくれなくても、だいじょうぶよ、私は」

「そうじゃない。ホントに好きになっちゃったんだよ、君が。17才の君が好きになっちゃったんだ」

「ありがとう。梶川さん。さよなら」

瞳は笑顔で去って行く。

「さよなら。瞳くん」

瞳は振り返らない。

瞳は泣かない。


高校3年生の新学期が始まった。

「ついに経験しちゃった。女になったのよ、私」と、麻子はいう。

「経験だけじゃ、女になれないわよ」と、瞳はいう。

「なによ、えらそうに」

「私、過去をつくったもの」

「なにそれ?」

「苦しい恋のこと。私、過去のある女になったのよ」


歌「早春物語」 エンドロール


キャスト[編集]

沖野瞳
演 - 原田知世
17歳。高校では写真部に所属しており冒頭で鎌倉の春を写真に撮るためいくつかの場所を巡る途中で梶川と知り合う。率直な性格で普段誰かとの会話でも、やや突っかかるような話し方をしている。恋愛に関しては、キスもまだしたことがない。修三の敬子との再婚話には一応賛成しているが、本心ではまだ納得しきれておらず彼女に素っ気ない態度を取っている。初めて会った梶川には、“20歳になったばかりの大学2年生”と自己紹介し大人っぽく振る舞い始め、次第に彼に惹かれていく。
梶川真二
演 - 林隆三
42歳で未婚の独身男性。日比谷にある商社「にっこう物産」のニューヨーク支店駐在員として働いてきたが、アメリカでの鉄鋼販売の事業でミスをして日本に呼び戻された。鎌倉のとある寺社で瞳と出会い、その帰りに東京への近道を教えてもらい一緒に食事をしたことから親しくなる。渋い大人の雰囲気を漂わせており、クラブのホステスらしき2人の女性からも言い寄られている。
沖野修三
演 - 田中邦衛
瞳の父。父子家庭で瞳と2人暮らし。妻に先立たれ現在は独身で、再婚を前提に敬子と交際している。さかえとは見合い結婚だが自身にとっては一目惚れ。春休み期間中に約1週間長野に出張する。
沖野さかえ
瞳の母。故人。4年前に亡くなっており作中で3月31日の命日を迎えている。若い頃に東京の看護学校に通っていて、作中の喫茶店でバイトをしていた。大学生時代の梶川と付き合っていたが破局した過去がある。
大宅敬子(おおや)
演 - 由紀さおり
修三の恋人で瞳にとって継母となる予定。瞳からはやや距離を置かれていて、「大宅さん」と呼ばれている。修三の出張で家を空ける間、瞳を心配する彼に頼まれて沖野家で寝起きする。自身に対して反発気味な瞳に、さらっと大人の対応をする。
牧麻子(あさこ)
演 - 仙道敦子
瞳の親友。17歳。1ヶ月前からふみおという青学の3年生の彼氏と付き合い始めたばかり。子供から大人へ成長していく年頃で、瞳とは性や恋愛について一歩踏み込んだ会話をしている。梶川に惹かれ始めた瞳に遊ばれないように忠告する。
沢田真佐子
演 - 早瀬優香子
瞳と同じ高校に通う生徒。妻子ある教師の横谷と付き合っている。教師との不倫発覚でゴタゴタしていることもあり、作中では登場シーンでは感情的な言動をしている。横谷との不倫が学校にバレて、数日後瞳に自身の気持ちを語る。
松浦純子
演 - 宮下順子
看護師。さかえの看護学校時代の友達。瞳が持ってきた若い頃のさかえと梶川の写真を見ながら、2人が出会って恋に落ちその後破局した当時のことを彼女に伝える。
小野
演 - 津村鷹志
梶川の同僚で親友。職場では梶川と同じ派閥に所属していて気心の知れた関係。冒頭で支持していた常務が自宅療養することになり梶川に今後の会社員生活について不安を漏らす。
武藤
演 - 戸浦六宏
にっこう物産の部長。梶川の上司。部下である梶川たち数人でスナックに飲みに行くが、酔った彼に絡まれる。
会社員
演 - 伊藤克信
にっこう物産の会社員。梶川の後輩社員。社屋ビル前でたまたま会った瞳に「にっこう物産はどこですか?」と尋ねられる。
こいずみ
演 - 大林丈史
梶川の仕事関係の友人。立食パーティーで梶川に連れられて来た瞳と知り合う。
竹中常務
演 - 平幹二朗
にっこう物産の常務。梶川の上司で派閥の長。ガンにかかっており自宅療養している。
竹中夫人
演 - 岩崎加根子
夫の見舞いに自宅に訪れた梶川と小野を見送りの挨拶をする。
喫茶店マスター
演 - 小林稔侍
神田の「ランタン」で働く。ある時瞳と梶川が店で待ち合わせする。さかえがバイトしていたのは、自身の父がマスターをしていた頃で自身は彼女と面識はない。
水江
演 - 一色彩子
クラブのホステス。客の梶川とは男女の関係があるらしき人。
石原貴子
演 - 秋川リサ
梶川の知人女性。立食パーティーに梶川と一緒に来た瞳に嫉妬する。
ナンパする男
演 - 倉崎青児
1人で飲食店のカウンターに座る真佐子に一緒に飲もうと声をかける。
その他
演 - 有川博大場順井上博一加藤和夫有栖川淑子寺杣昌紀海一生ほか

スタッフ[編集]

主題歌[編集]

製作[編集]

赤川次郎は原田知世の主演映画を念頭において本作を執筆したが[3][4]、原作にあったミステリー要素は消え、小説とは別の物語となった[4][5]。小説は当時、角川書店の発行する「野性時代」に連載中だった[3]

原田知世がそれまでの清純派のイメージを一新、中年男性をたぶらかず悪女を演じる[5][6]。製作発表会見で澤井信一郎監督は「知世ちゃんには私生活でも良い子でなくなって欲しいくらいだ」、角川春樹プロデューサーは「(原田の)この次の作品もハードボイルドで、北方謙三さんに書いてもらっている(『黒いドレスの女』)」と、原田の"悪女路線"を続けると宣言[6]。原田は「お父さんみたいな人をたぶらかすなんて。主人公の気持ちが理解できません」と話した[6]

演出[編集]

監督の澤井は『Wの悲劇』成功の後であったが、尊敬する三人、岡田茂東映社長、師匠・マキノ雅弘、本作プロデューサーの黒澤満から、「大振りするな、次は力を抜いて小さく行け」と同じ内容のアドバイスを受けたことから、今度は小品を撮ろうと決めた[7][8]。また、当時の映画が二時間とか、長尺化していたため、自身の子どもの頃に多かった一時間半程度に収めるように決めた[7]。『Wの悲劇』はどうしても説明が必要で短く出来なかったが『早春物語』は短くまとめることが可能と考えた[7]

脚本[編集]

『Wの悲劇』同様に難航[3]。澤井は、川端康成短編小説母の初恋』のイメージを脚本の那須真知子に伝えたが[4]、那須はハコ書きが書けず[9]。監督の澤井と毎日、ドライブインで打ち合わせ。冬の寒い中をバイクで行って、行くたびに怒られ1ヵ月の間これが続いた[9]。「澤井さんにはいじめられました」と述べている[9]。那須はこれ以降、原作があれば企画書なら書けるが、オリジナルの脚本は、最初から「ハコは出来ませんから」と言って、東映に確認を取って仕事を受けるという[9]

撮影[編集]

ヒロインの原田知世はまだ17歳。薬師丸ひろ子ならタタけば反応することができても、澤井映画の本格的なヒロインとしては早すぎないかと不安視された[10]。1985年3月~4月の原田の春休みに撮影したが、公開は夏ではなく秋になった。これは角川映画が自社配給を始めたためで、夏休みは洋画系上映館のブッキングは洋画各社の大作で占められているため、ブッキングできなかった[3]

配給[編集]

1984年夏、角川春樹が東映の岡田茂社長を訪ね、「来年から自社配給を手掛けてみたい」と伝えた[11][12]。しかし岡田から「やるのは勝手だが配給の仕事はわれわれの生命線だから、これまでのように協力は出来ない」[11]、「配給の機能、ノウハウ、宣伝を含めて人も機能も貸さない。一切あなたの方でやりなさい。これは当たり前のことです」と冷たく返答された[12]。1985年早々に行われた本作の製作発表会見で、角川春樹が自社配給業に乗り出すことを発表した[13]。このため、それまで角川映画の宣伝を一手に引き受けていた東映洋画部が縮小された[14]。東映洋画と角川春樹事務所とは一体のように考えられていて[13][15]、薬師丸ひろ子の独立も東映洋画の関与が噂された[15]。薬師丸は1985年3月末に角川春樹事務所から独立して個人事務所を設立し、4月に「励ます会」が開催されたが、アンチ角川の結集以外の出席者は角川に遠慮して僅か[15]。役者仲間は皆無で、監督も澤井と相米慎二だけだった[15]

1985年3月に、角川春樹が岡田社長と会談した際には[16]、岡田から「もうアイドル路線はやめなさい。もう一度ブレインを組み直した方がいい。しかしカリスマ的生き方は捨てては駄目だ」などと説教された[16]。角川はこの意地から岡田に「前売り200万を売って見せる」と豪語した[14]。結局、角川映画として初めて配給も手掛けることを決めたが[17]、自社配給といっても東宝が劇場チェーンをタダで貸すわけではないため、同時上映の『二代目はクリスチャン』と共に角川と東宝洋画系の共同配給という形である[10]。角川の自主配給は難航し[16]東宝に話を持ち掛けるが角川サイドが望んだ配給歩率9対1を拒否され、東宝の主張する7対3を飲まざるを得なかった[16][17]。また公開も秋に延ばされ、1986年の正月映画も同時に配給を希望したがこれも断られ、全面的に東宝に押し切られた[16]。これらが決まるまで年明けから春までかかった[16]。ゴタゴタした要因は角川作品のパワーが一歩一歩、落ちてきていると評された[16]

本作も『二代目はクリスチャン』も角川の製作とはいえ、実際はどちらも東映系のスタッフによる製作である[18]。前述のように角川の自社配給を面白く思わない東映本体とはここで決別することになった[17]。角川と岡田はケンカ別れしたと業界の一部で認識されたことが、1990年の『天と地と』の配給変更に影響した[14]。実はケンカ別れはしていなかった[14][19]。東映洋画は角川と縁が切れ、開店休業となったため、自社製作第一弾として『それから』の映画化を決めた[20]

受賞歴[編集]

同時上映[編集]

二代目はクリスチャン

テレビドラマ[編集]

早春物語〜私、大人になります〜』(そうしゅんものがたり わたし、おとなになります)のタイトルで、TBS系列で1986年5月23日 - 7月18日に放送された。

17歳の高校生・沖野瞳は、高校の部活を終えて帰宅した際に、とある男性よりかかってきた電話に出たことからストーリーが始まる。その男性こそ、梶川真二であった。実は梶川は瞳の姉・光子と交際していたのだが、梶川から光子への電話を、母・栄枝への電話と勘違いしたのである。沖野家の平和を守るため、母との交際を辞めさせるべく、梶川と光子とのデートの待ち合わせ現場へと向かう。そこで梶川に出会った瞳は、光子の妹であることを隠してしまう。梶川は大手建設会社のエリートサラリーマン。専務の覚えめでたく敏腕ぶりを随所に発揮していた。多忙を極めていた梶川にとって瞳との出会いは新鮮なものであった。そして瞳に魅かれ始めた梶川は、東京近郊のドライブや沖縄・札幌への仕事に瞳を誘い、瞳も梶川の大人の魅力にいつしかあこがれや恋心を抱くようになる。梶川が瞳に魅かれるようになったことを知った、梶川の前妻・美沙子は瞳の前に現れ、恋路の邪魔を図る。そんな折、瞳は同級生・真知子が、駅伝部の顧問・横谷と不倫の関係にあることを知る。また、梶川も恋人である瞳の姉・光子との交際に区切りをつけようとしていた。瞳は自分の恋心を確認するため、梶川の自分への思いが愛なのかどうかを確認するため、梶川のマンションへと向かう……。

キャスト[編集]

主題歌[編集]

  • Dance Beatは夜明けまで」荻野目洋子
  • 挿入歌 - 「ベルベットの悪戯」荻野目洋子、「愛をそえて」柏木由紀子

スタッフ[編集]

サブタイトル[編集]

  1. ときめいて17歳
  2. このドアを開ければ…
  3. ファースト・キッス!
  4. あの人に逢いたい!
  5. 抱きしめられて…
  6. わたしを愛して!
  7. あのひとに愛人が!
  8. 私を連れて逃げて!
  9. 愛と青春の旅立ち
TBS 金曜21時枠連続ドラマ
前番組 番組名 次番組
大人になるまでガマンする
(1986.4.11 - 1986.5.16)
早春物語
(1986.5.23 - 1986.7.18)
男女7人夏物語
(1986.7.25 - 1986.9.26)

脚注[編集]

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  1. ^ 1985年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  2. ^ 中川 2014, p. 235.
  3. ^ a b c d 「雑談えいが情報 新作映画ニュース」『映画情報』、国際情報社、1985年5月号、 72頁。
  4. ^ a b c 中川 2014, pp. 244-245.
  5. ^ a b 早春物語 | WOWOWオンライン
  6. ^ a b c 京塚伊都子「日本映画わっくわくシアター 知世の悪女ぶりはいかが? 『早春物語』」『ロードショー』1985年3月号、集英社、 181頁。
  7. ^ a b c 松田政男「『早春物語』特集1 澤井信一郎インタビュー」『キネマ旬報』、キネマ旬報社、1985年8月下旬号、 78-79頁。
  8. ^ 昭和40年男. “巻頭特集:俺たちの角川映画 〈アイドル編〉証言者 澤井信一郎”. クレタパブリッシング (2016年8月号): 32-33. 
  9. ^ a b c d 桂千穂「クローズアップ・トーク 普通のOLから『ビー・バップ・ハイスクール』などの売れっ子シナリオライターへ アメリカ映画に負けない娯楽映画を! <ゲスト>那須真知子」『シナリオ日本シナリオ作家協会、1990年1月、8-9頁。
  10. ^ a b 「雑談えいが情報」『映画情報』、国際情報社、1985年6月号、 73頁。
  11. ^ a b 中川 2014, pp. 240-241.
  12. ^ a b 『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』文化通信社、2012年、197 - 198頁。ISBN 978-4-636-88519-4
  13. ^ a b 「興行価値」『キネマ旬報』、キネマ旬報社、1985年3月下旬号、 172頁。
  14. ^ a b c d 「雑談えいが情報 長女ひろ子は独立しても次女・知世がいます、角川映画...」『映画情報』、国際情報社、1985年5月号、 73頁。
  15. ^ a b c d 「雑談えいが情報 新作映画ニュース」『映画情報』、国際情報社、1985年6月号、 72頁。
  16. ^ a b c d e f g 「映画・トピック・ジャーナル」『キネマ旬報』、キネマ旬報社、1985年5月上旬号、 177頁。
  17. ^ a b c 中川 & 2014honto, 89%.
  18. ^ 中川 2014, p. 241.
  19. ^ 「映画・トピック・ジャーナル」『キネマ旬報』、キネマ旬報社、1985年10月上旬号、 174頁。
  20. ^ 「雑談えいが情報 新作映画ニュース」『映画情報』、国際情報社、1985年6月号、 72頁。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]