プロダクトプレイスメント

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プロダクトプレイスメント: product placement)は、広告手法の一つで映画テレビドラマの劇中において、役者の小道具として、または背景として実在する企業名・商品名(商標)を表示させる手法のことを指す。プロダクト・プレイスメントとも表記されるほか、略してP.P.(もしくはPP)ともいう。

なお、劇中の犯罪者や嫌われ者の悪者が使用している場合[注 1]は、逆効果にもなりえる。これを意図的に行うことでイメージダウンを狙うものは「アンチ・プロダクト・プレイスメント」と呼ばれる[1][注 2]。「逆プロダクトプレースメント」という用語は既に作成された映画やドラマのシーンをCMに流用する手法を指す。

歴史[編集]

誕生は1955年公開のハリウッド映画『理由なき反抗』といわれる。劇中でジェームズ・ディーンがポケットから櫛を取り出し整髪するシーンが何度も出てくるが、これを観た当時のアメリカの若者たちから「ディーンが使っていた同じ櫛はどこで買えるのか?」と映画会社のワーナー・ブラザースに問合せが殺到した[2]。これが新しい宣伝ビジネスモデルになると気づいた各映画会社は、以降一般企業との「劇中広告でのタイアップ」を始める。これが「プロダクトプレイスメント」と呼ばれ、一般化した。現在、アメリカではPP専門の広告代理店が数十社存在する。

撮影後の映像に商品や広告を露出するデジタル技術「デジタル・プロダクトプレイスメント」も登場した[3]

最近の新技術によって、視聴者に好まれないCMをカットして見られるハードディスクレコーダーなど、広告業界や放送業界を悩ます潮流ができている状況下で、番組内や劇中に商品を入れることによって、視聴者側の都合でカットできないようにする利点がある。

日常に普及した携帯電話(フィーチャー・フォン)やスマートフォンなどは、現代(おおむね2000年代以降)を舞台にしたドラマやアニメの小道具としてもはや必須となり、実写のドラマではメーカーのロゴなどが映ることもある(アニメではタイアップでもしない限り、特定のロゴや機種が描かれることはない)。携帯型と据え置き型のゲーム機のPPも増えている[4]

映画[編集]

  • 町中のロケでは背景として自動販売機看板などのロゴが映ってしまうこともあるが、生放送などで偶然映り込んだ場合は、通常PPの範囲に含まれない。
  • アメリカではプロダクトプレイスメント専門の代理店も数多く存在する。それに動く金額は数億円、数十億円単位であるといわれており、実際、映画監督スティーヴン・スピルバーグ作品『マイノリティ・リポート』や『ターミナル』では各作品、数十社と契約[要出典]。劇中の各シーンに実際存在する店舗や商標を出しており、この広告費で製作費が100億円ともいわれる両作品でかなりの部分のコストを補ったと分析されていて、映画スタジオにとってのもう一つのリスクヘッジとしても注目されている。
  • 映画のテレビ放映のCM枠と比べ、宣伝劇中に挿入することで比較的削除されることがなくなったが、これが逆効果を生むことがある。数年後にテレビ放映されても、その時にはその商品が既に存在しない場合にあるため全く効果を生まない場合もあり、デザインを変えた新製品の場合だと、それをCGで差し替えることもできない。
  • 時代劇(特に昭和より前の時代)やファンタジー映画でのPPは通常ありえない。『ロード・オブ・ザ・リング』などのファンタジーは実世界の話ではないため、この手法は使えない。時代劇の場合、時代考証に反しない範囲であればPPも可能と考えられるが、日本の時代劇は大半が明治時代より前を題材としているため、PPにそぐわない。しかし、『ロード・オブ・ザ・リング』の映画の1シーンがフォード社のトラックのCMに逆使用されるなどの「逆PP」という裏技も存在する。この「逆PP」はテレビスマートフォンなどのCMでたびたび使用される。
  • 日本企業が本格的にPPを使用した例として、映画『007は二度死ぬ』におけるトヨタ自動車が挙げられる。全編日本国内でロケーションが行われたこともあり、ボンドカー[5]を含め登場車種に全てトヨタ車が使用された。
  • 1973年に公開されたラージ・カプールの映画『Bobby』では、主人公が黒と黄色のラージドゥート・バイクに乗っている。これは、ボリウッドインドムンバイの映画のこと)における映画内広告の最初の例の一つとされる[6]
  • 1982年の『ブレードランナー』では、作中で滋養強壮剤「強力わかもと」(わかもと製薬)の架空のCMも使われている。
  • 1985年のタイムトラベル物バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、台詞でカルバン・クラインが登場。欧州では当時まだブランドの知名度が低かったため、イタリアやスペインではリーバイ・ストラウス、フランス版ではピエール・カルダンに吹き替えられたという。
  • 2003年の『キル・ビル』では、主人公が黄色のトラックスーツ(ブルース・リーの『死亡遊戯』風)とともに着用していたオニツカタイガーのスニーカーが、人気を博した[7]
  • 2004年の韓国映画『私の頭の中の消しゴム』ではコカ・コーラファミリーマートが登場する。
  • 2006年の『サンキュー・フォー・スモーキング』では、タバコを劇中に押し込もうとする広告代理店と映画会社トップのPPに関する台詞がある。
  • 2006年の『スネーク・フライト』では、「All praises to the PlayStation!」という台詞が出てくる。

日本映画[編集]

テレビ番組[編集]

ドラマ[編集]

  • 旅情物などでは、ロケに使われたホテルとタイアップできた場合、(入口や看板などの)名称が、大きく映される。ロケ地の地名がテロップ表示されることもある。逆に、重い犯罪ドラマなどでは、イメージダウンを懸念しタイアップNGとなることもある(少なくとも事件は館内で起きない設定にするなどの工夫も)。
  • 日本の連続テレビドラマでは、特に1970~90年代前半までの刑事ドラマにおける自動車メーカーのタイアップが代表例として挙げられる。大半の作品でカーチェイスシーンがあったことから、スポンサーである実車メーカーが捜査用車両(覆面パトカー)を提供していた。メーカー別では中~大型の後輪駆動車を生産しているトヨタ自動車日産自動車マツダの登場機会が多く、通常警察車両では採用されないクーペタイプのボディを持つ車両[8]が登場することも少なくなかった。
  • また、1979-1984年に製作されたアクション刑事ドラマ『西部警察』では、ドラマの中で「爆破する建造物の建造費」と、他のドラマの制作費の一本の「総額」が同じであるほど制作費がかさむことから、各種スポンサーの商品やブランドがストーリーと無関係なところでも登場した。特にパート2・3で恒例のシリーズとして行われた「日本全国縦断ロケ」のシリーズでは、番組のCM提供スポンサーのほか、地元系列局や日産自動車の地域ディーラー、さらには地元の企業・団体が大挙趣旨に協賛して、その企業・団体や商品名などをセリフに使うなどしていた。
  • 上品ドライバー』のように劇中CMが用いられるものある。テレビ東京電通による『Friend-Ship Project』はインフォマーシャルというスタイルで、第9弾は2012年に約2時間のドラマ特番として放送された。
  • 2000年放送の『世にも奇妙な物語』「バーゲンハンター」の劇中には、人気商品という設定で、金・銀色に染められたコトブキヤ製「壮絶合金ガオファイガー」(同年のOVA勇者王ガオガイガーFINAL』)が登場した。また、2012年放送の『踊る大捜査線』シリーズのスピンオフドラマ特番にはヴァルヴレイヴ3号のフィギュア、2015年のテレビアニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ』にはゲッターロボ(アニメ『ゲッターロボ』)の可変フィギュア(以上、バンダイ製)が、それぞれ登場した。
  • ウルトラマンティガを始めとしたウルトラマンシリーズにおいて、戦闘の舞台となる市街地のセットに制作協力をしていた富士通や、映像ソフト版元のバンダイビジュアルの看板が見られる。

アニメ[編集]

ゲームソフト[編集]

  • ゲームソフトでも、スポーツゲームでスタジアム内に実在する企業の広告を入れたり、ゲーム中のアイテムとして特定企業の商品を登場させたりすることで広告費を得る手法がある。

漫画[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 2008-2009年の3部作映画『20世紀少年』では忍者ハットリくんナショナルキッドお面を着用した登場人物がいたが、少なくとも2010年に発売されたフィギュアに関しては著作権上の許諾を得ているという。 (『20世紀少年』1/6スケールフィギュア ともだち - ホットトイズジャパン)
  2. ^ ニュース報道などでも同様の現象がある。1998年に発生した和歌山毒物カレー事件では、ミキハウスのスウェットシャツを着用していた犯人(取材時は容疑者)のニュース映像が大量に流れ、同社のブランドイメージに影響したといわれる。その後の映像を再使用する際には、ロゴをぼかしで隠すよう配慮された。
  3. ^ 一部回では東急ストアの店舗も作中に登場している。
  4. ^ その後、2015年には同社が出版元の講談社と『ダイヤのA』でのタイアップ商品の発売契約を発表。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]