マイノリティ・リポート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マイノリティ・リポート
Minority Report
監督 スティーヴン・スピルバーグ
脚本 ジョン・コーエン
スコット・フランク
原作 フィリップ・K・ディック
『マイノリティ・リポート』(旧題:『少数報告』)
製作 ボニー・カーティス
ジェラルド・R・モーレン
ヤン・デ・ボン
ウォルター・F・パークス
製作総指揮 ゲイリー・ゴールドマン
ロナルド・シャセット
出演者 トム・クルーズ
コリン・ファレル
サマンサ・モートン
音楽 ジョン・ウィリアムズ
撮影 ヤヌス・カミンスキー
編集 マイケル・カーン
製作会社 ドリームワークス
20世紀フォックス
クルーズ/ワグナー・プロダクションズ
配給 20世紀フォックス
公開 アメリカ合衆国の旗 2002年6月17日
日本の旗 2002年12月7日
上映時間 145分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $102,000,000[1]
興行収入 世界の旗 $358,372,926[1]
アメリカ合衆国の旗カナダの旗 $132,072,926[1]
日本の旗 52.4億円[2]
テンプレートを表示

マイノリティ・リポート』(Minority Report)は、2002年に公開されたアメリカSF映画ドリームワークス作品。

フィリップ・K・ディックの短編小説『マイノリティ・リポート』(旧題:『少数報告』)(The Minority Report)をスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した作品で、トム・クルーズが主演した。

2015年9月から、FOXチャンネルで映画に基づいた続編となるテレビドラマ作品が放送されていた(『マイノリティ・リポート (テレビドラマ)』)。

ストーリー[編集]

プリコグ(precog:precognitive、予言者)と呼ばれる3人の予知能力者たちで構成された殺人予知システムが実用化された近未来。それに従って予防的治安維持機能を遂行する犯罪予防局によって、システムの導入以後、西暦2054年のワシントンD.C.の殺人発生率は0%になったと報告されていた。

犯罪予防局の刑事ジョン・アンダートンは、6年前に息子のショーンが誘拐殺害されたのをきっかけに、犯罪予防にのめり込むようになっていた。息子を失ったトラウマから、その仕事に対する執着心は病的ともいえるもので、苦痛から逃れるために薬物に手を出しているほどだった。ある日、システムの全国規模での導入に対する国民投票が行われることとなり、司法省調査官のダニー・ウィットワーが局を訪れ、システムの完全性の調査が始まった。調査が行われる中、プリコグの一人アガサが突然ジョンに過去の事件の映像を見せてきた。プリコグは稀にこうした「エコー」と呼ばれる現象を起こすのだが、気になったジョンがその事件について調べると、アガサの予知の記録映像だけが削除されていた。ラマー・バージェス局長にそのことを報告するが、結論は出なかった。

後日、新たに殺人事件が予知されるが、そこには見ず知らずの他人であるリオ・クロウなる男を殺すジョンの姿が映っていた。何者かの罠だと感じたジョンはウィットワー達の追跡をかわし、システムの考案者であるアイリス・ハイネマン博士に助けを求めるが、彼女はシステムは偶然の発見から生まれたものであることを明かす。ハイネマンは元々、麻薬「ニューロイン」の中毒患者から生まれた遺伝子疾患を持つ子供達の研究を行っており、その子供たちはほとんどが12歳までに死亡してしまったが、生き延びたものは予知夢の能力を獲得しており、そこからシステムが開発されたのだった。さらにシステムは完全なものではなく、時に3人の予知が食い違うことがあり、システムの完全性を疑われないために少数意見(マイノリティ・リポート)になる予知は存在を秘匿され、なおかつ破棄されていた。そしてそれはプリコグ達の脳にのみ保存されているという。

特に強い力を持つアガサが鍵だと教えられたジョンは、局だけでなく街中に張り巡らされた網膜スキャナーを掻い潜るため、闇医者のエディ・ソロモンに依頼して他人の眼球を移植し、局内に潜り込んでアガサを誘拐する。そして、システムの操作系統を設計したルーファスの手を借り、アガサの脳内を探るが、マイノリティ・リポートは存在せず、アガサは代わりに再び過去の事件の映像を見せる。そして最後の手がかりであるクロウの部屋へと向かうが、そこには子供の写真が大量に散らばっており、その中には息子ショーンの写真があった。そこに現れたクロウがショーンを攫った犯人だと誤解し逆上したジョンは、クロウに銃を突きつけるが辛うじて思いとどまる。しかし、クロウは「殺されないと家族に金が渡らない」と、無理やり自分を撃たせた。クロウも何者かに利用されていたのだった。

ジョンが逃走した後、ウィットワーは現場を捜査するが、現場の状況からこの事件が仕組まれたものであることに気づく。さらに、アガサがジョンに見せたエコーの映像も調べると、エコーと実際の事件の映像の状況が僅かに異なることを発見し、仮説を立てた。何者かが殺し屋を雇って女性を襲わせ、予知局が殺し屋を逮捕した後に、同じ現場で殺し屋と同じ姿で改めて女性を襲って殺害。その事件も当然予知されるが、現場の状況が全く同じと判断した予知局はその事件をエコーと判断してしまい、事件は気付かれなくなってしまう。以上の仮説をウィットワーはバージェス局長に伝え、犯人はシステムを熟知しているものであると説明する。しかしウィットワーは突如、局長に撃たれ殺害されてしまう。すべての黒幕はバージェス局長だったのだ。

その後、ジョンは捕まり投獄され、システムが全国で導入されることとなった。しかし、バージェス局長の行動を不審に思ったジョンの妻のララは、ジョンの眼球を使って監獄へと潜入しジョンを脱獄させた。そしてシステムの全国導入を祝うパーティ会場で、ジョンは事件の真相を暴いた。殺された女性アン・ライブリーはアガサの母親であり、薬物中毒から更生したアンは娘を取り返しに来ていたのだ。しかしシステムにはアガサが不可欠なため、局長はシステムの盲点を利用して彼女を殺害したのだった。過去の犯行を暴露されたことによって追い詰められたバージェスは、プリコグたちに「バージェスがジョンを射殺する」という突発的殺人を予知されてしまう。これにより、「予知通りに殺人を犯すと投獄されるが、殺人を犯さなければシステムは完璧でないため廃止される」というジレンマに陥ったバージェスは、自殺を選んだのであった。

その後システムは廃止され、解放されたプリコグの3人は人里離れた土地で静かに暮らすこととなり、これまでに捕らえられた犯罪者は特赦が与えられ釈放された。そして別居していたジョンとララは復縁し、ララは新しい子供を身篭っていた。

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替1 日本語吹替2
ジョン・アンダートン トム・クルーズ 堀内賢雄 須賀貴匡
ダニー・ウィットワー コリン・ファレル 楠大典
アガサ サマンサ・モートン 根谷美智子 水樹奈々
ラマー・バージェス局長 マックス・フォン・シドー 大木民夫
アイリス・ハイネマン博士 ロイス・スミス 久保田民絵
エディ・ソロモン医師 ピーター・ストーメア 仲野裕
ギデオン ティム・ブレイク・ネルソン 牛山茂
ジャッド スティーヴ・ハリス 乃村健次
ララ・クラーク キャスリン・モリス 日野由利加
ウォリー ダニエル・ロンドン 土田大
フレッチャー ニール・マクドノー 荒川太郎
ノット パトリック・キルパトリック 谷昌樹
  • 日本語吹替1はVHSDVDBlu-ray Disc全てに収録されているが、日本語吹替2はDVDにのみ収録されている。

スタッフ[編集]

日本語版制作スタッフ[編集]

  • 日本語字幕翻訳:戸田奈津子
  • 日本語吹替演出:高橋剛
  • 日本語吹替翻訳:伊藤美穂
  • 日本語吹替調整:佐藤隆一
  • 日本語吹替制作:ビデオテック

その他[編集]

  • 劇中で2054年モデルのレクサスが登場する。これはレクサス・チャンネルを展開するトヨタ自動車の北米のデザイン拠点、CALTYがデザインしたものである。日本での劇場公開時、そのプロモーションの一環で東京・池袋にあるトヨタ自動車の展示ショールーム、アムラックスで劇中車のレクサスと作品に使われた小道具類が期間限定で特別展示された。なお、2002年当時は日本ではレクサスは展開前で、その事業発表もなされていなかった。
  • ジョン・アンダートンが地下鉄で逃亡したとき、新聞の速報を見てジョンを発見する男性乗客は、映画『バニラ・スカイ』のキャメロン・クロウ監督である。クルーズはクロウ監督作品の常連である。さらにその後ろには、目から上しか映っていないがキャメロン・ディアスカメオ出演している。
  • 本作は銀残しという手法を用いて現像処理され、コントラストが強く、彩度の低い映像となっている。監督のスピルバーグは「汚い映像にすることでリアリティを出したい」と意図してこれを用いている。場面によってはモノクロの映像のように見える特殊な表現であるため、当初トム・クルーズは反対の異を唱えていた。
  • トム・クルーズはなんでもスタントを自身でやりたがる俳優としても知られているが、スピルバーグは撮影前に「君がやるべきスタントは私が決める」と言って聞かせたという逸話がある。
  • 作中、スピルバーグの娘であるジェシカ・キャプショーがエヴァンナという役名で出演している。
  • 本作は「ジョン・アシュクロフト司法長官により、9.11以降アメリカ政府が国民の情報を管理しようとしていること」に対しての政治的問いかけを含んでおり、政府が未来を予測できるようになればどうなるかを描いている[3]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c Minority Report (2002)” (英語). Box Office Mojo. 2010年4月9日閲覧。
  2. ^ 日本映画産業統計 過去興行収入上位作品 (興収10億円以上番組) 2003年(1月~12月)”. 社団法人日本映画製作者連盟. 2010年4月9日閲覧。
  3. ^ 「映像の魔術師 スピルバーグ自作を語る」

外部リンク[編集]