激突!
激突! | |
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Duel | |
監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
脚本 | リチャード・マシスン |
原作 | リチャード・マシスン |
製作 | ジョージ・エクスタイン |
出演者 | デニス・ウィーバー |
音楽 | ビリー・ゴールデンバーグ |
撮影 | ジャック・A・マータ |
編集 | フランク・モリス |
配給 | ユニバーサル・ピクチャーズ |
公開 |
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上映時間 | 90分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $450,000 (概算) |
『激突!』(げきとつ、原題: Duel)は、リチャード・マシスンの短編小説を映像化した、1971年製作のアメリカ合衆国のテレビ映画。ユニバーサル社提供。スティーヴン・スピルバーグ監督。日本での公開は1973年1月。
運転中に追い抜いたトレーラーから執拗に追跡されるセールスマンの恐怖を描く。1973年に第1回アボリアッツ・ファンタスティック映画祭グランプリを受賞した。
目次
あらすじ[編集]
セールスマンであるデイヴィッド・マン(デニス・ウィーバー)は商談のため車でカリフォルニアへ向かう途中、荒野のハイウェイで1台の大型トレーラー型タンクローリーを追い越す。しかし追い越した直後より、今度はトレーラーがマンの車を追いかけ回してくるようになる。
幾度となく振り切ったように見せかけては突如姿を現し、トレーラーは列車が通過中の踏切にマンの車を押し込もうとしたり、警察に通報するマンを電話ボックスごと跳ね飛ばそうとするなど、次第に殺意をあらわにしながら執拗に後を追ってくる。マンは大型車の不利な峠道へと逃げ込むが、出がけに立ち寄ったガソリンスタンドでラジエーターホースの劣化を指摘されており、車は峠道の上り坂でオーバーヒートを起こしスピードダウンしてしまう。
逃げ切ることが難しいと悟ったマンはトレーラーとの決闘を決意し、峠の途中の崖へと続く丘にトレーラーを誘い込む。車をUターンさせてトレーラーに向かって走り、正面衝突する直前に飛び降りるが、衝突の炎と煙で視界を奪われたトレーラーの運転手はマンが車ごと突っ込んできたと勘違いし、そのまま崖に向かって走り続ける。崖に気づき、慌ててブレーキを掛けるもマンの車もろとも崖下へと転落。辺りには2台の車が落下しながら捻じれ軋む音が咆哮のように響く。マンは崖から2台の残骸を見つめながら決闘から生還した事を1人喜んだ。
どれほどの時間が経過したのか陽は沈もうとしていたが、マンは崖の縁に腰掛け、ただ2台の車の残骸を見つめていた。
登場人物[編集]
- デイヴィッド・マン
- 主人公。サングラスを掛けた、どこにでもいる一般的なサラリーマン。愛車のプリムス・ヴァリアントでハイウェイを走行中に大型トレーラータンクローリーを追い越した事がきっかけで、トレーラーの運転手に命を狙われる羽目になる。最初はスピードを上げて追い抜いたり、引き離したりしてトレーラーから逃げていたが、終盤で車がオーバーヒートを起こした為にトレーラーに決闘を挑む。
- トレーラーの運転手/ケラー
- マンが追い越した大型トレーラータンクローリーの運転手。錆びついた古いピータービルト281を愛用し、執拗にマンの命を狙う。
- マンの車を無理やり追い越した後故意に減速して進路妨害したり、先の見えないカーブで窓から腕を出して先に行くように指示し、対向車に衝突させようとするなど、当初は嫌がらせのような妨害が多かったが、次第に殺意をあらわに追跡してくるようになる。マンの車を追い越した後かなりの距離が離れてもスクールバスを助けようとするマンの元に戻ったり、路肩に停め待ち伏せしたり、物陰に隠れてやり過ごしたマンが車内で眠るほど休憩したにも関わらず、来る事を予想してその先で長時間待ち伏せる等、執念深さを見せる。
- 中盤ではタイヤが地面に嵌り動けなくなったスクールバスをトレーラーで後ろから押して助ける一面を見せるが、あくまでマンへの殺意をカモフラージュするための行いにすぎない。待ち伏せしている際にマンが顔を見ようと走り寄って来た際は再び走り出して距離を置こうとする等、最後までマンに姿を現す事はなかった。
- 物語では一切判明しなかったが、本作で登場するトレーラーの運転手の正体は各州で同じ手口でドライバーを狙う殺人トレーラー運転手。トレーラーのフロントバンパーに付けてある各州数枚のナンバープレートは犯行時に自分が付けていた州ごとのナンバーで犯行の証[1]。一見マンに追い越された事で怒りを抱いた行き摩りの犯行に見えるが、マンを標的にしただけだった。
- 物語では一貫して大型トレーラーの運転手(スタントマンのキャリー・ロフティン)の顔が見えず手足しか見えない。これによりあたかも大型トレーラー自体が意思を持ち、追って来るような効果を演出している。運転手が顔を見せず執拗にマンを追いかけるトレーラーを監督は「怪獣の様に考えた。」と語る。
- 本作では最後までトレーラーの運転士の名前と顔は不明だが、原作では「ケラー」という苗字で顔は「角ばった顔、黒い目、黒い髪の毛」との事。
キャスト[編集]
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |||
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NET版 | 劇場公開版 | 日本テレビ版 | ソフト版 | ||
デイヴィッド・マン | デニス・ウィーバー | 穂積隆信 | 宍戸錠 | 徳光和夫 | 原康義 |
妻 | ジャクリーン・スコット | 沢田敏子 | 北浜晴子 | 横尾まり | 日下由美 |
バーの店主 | エディ・ファイアストーン | 村松康雄 | 村松康雄 | 後藤敦 | |
バスの運転手 | ルー・フリッゼル | 加藤正之 | 池田勝 | 石住昭彦 | |
ガソリンスタンドの女店主 | ルシル・ベンソン | 麻生美代子 | 麻生美代子 | 巴菁子 | |
ラジオのパーソナリティ | スウィート・ディック・ウィッティントン | 野沢那智 白石冬美 |
屋良有作 | ||
トレーラーの運転手 | キャリー・ロフティン | 台詞なし | |||
その他 | 篠原大作 石森達幸 野田圭一 緑川稔 槐柳二 沼波輝枝 中川まり子 野沢マキ 広見多子 佐久間あい 秋元千賀子 |
千田光男 郷里大輔 沢木郁也 さとうあい 中田和宏 宮内幸平 矢野陽子 江沢昌子 鶴田良美 片岡富枝 |
みやざこ夏穂 西川幾雄 加藤亮夫 村松康雄 前田敏子 蓮池龍三 田村聖子 古澤龍之 小島大輝 宮里駿 小坂明 十川史也 岡珠希 今泉舞 木村優梨香 | ||
日本語版制作スタッフ | |||||
演出 | 左近允洋 | 左近允洋 | 中野洋志 | ||
翻訳 | 進藤光太 | 高山美香 | |||
調整 | 栗林秀年 | 飯塚秀保 | |||
効果 | PAG | PAG | |||
選曲 | 東上別符精 | ||||
担当 | 吉田啓介 | ||||
制作 | グロービジョン | 日本テレビ グロービジョン |
ACクリエイト |
- ※ユニバーサル思い出の復刻版DVD・BDにソフト版と共に収録。
- 劇場公開版 - 1976年のリバイバル上映の際に制作、使用されたもの。
- ※宍戸は当時『警部マクロード』でデニス・ウィーバーを吹替えており、それを踏まえての起用と思われる。
- ※デヴィッドを吹き替えた原は、1990年代の『激突!』と評されている映画『ブレーキ・ダウン』でも主人公の吹替を担当している。
作品解説[編集]
無名時代のスティーヴン・スピルバーグが演出し、その名前はこの作品の成功によって業界内に知れ渡った。劇中で、主人公の車や、電話ボックスのガラスにスピルバーグの姿が映っていたことでも知られる。
もともとテレビ放映用に製作された作品だが、日本やヨーロッパでは劇場公開された。上映時間はテレビ版が74分、ヨーロッパで劇場公開された版は90分。劇場版ではデニス・ウィーバーのナレーションが無い。発売されているビデオは劇場版+ナレーション付きのものである。
スピルバーグはこの年、本作の監督を務める前に『刑事コロンボ』の第3作「構想の死角」で監督を務めた。本作の監督に立候補した際、プロデューサーから「君の自信作を持って来てくれ」と言われ、『コロンボ』を提出したところ、監督としての採用が決定した。
演出[編集]
運転手が顔を見せず執拗に主人公を追いかけるトレーラーを、監督は「怪獣のように考えた」と語る。その描写は『ジョーズ』のホホジロザメに引き継がれていく。終盤でトレーラーが崖から墜落するシーンとジョーズが死ぬシーンでは、効果音として同じ恐竜の鳴き声[5]が使用されている。
物語で立ち寄った飲食店にて主人公がトレーラーの運転手を「誰だ? 誰だ?」と探しまわるシーンには、黒澤明監督の『野良犬』のラストシーンがそのまま引用されている。
撮影[編集]
撮影期間が16日、編集作業から放送まで3週間程度しか確保出来なかったため、絵コンテを用いず、大きな地図に撮影ポイントなどを書き込んだものを使って撮影が進められた。早撮りで知られるスピルバーグであるが、自身でも「最も慌しい映画作りだった」と振り返っている。撮影現場はカリフォルニア州の砂漠で、キャニオン・カントリー(Canyon Country)やアグア・ダルシー(Agua Dulce)、アクトン(Acton)のシエラ・ハイウェーやエンジェルス・フォレスト・ハイウェーで行われた。トンネル、ガスステーション、踏切、カフェは実在する。
車[編集]
撮影に使用された赤色の乗用車は、米クライスラー製の「プリムス・ヴァリアント」(1967-76年生産、劇中のモデルはグリル形状、エンジン音から70-71年式の直列6気筒3.2もしくは3.7リッターエンジン搭載車で出力140馬力、最高速度150km/h程度)というごく普通のコンパクトカー。ベース車両はこげ茶色だったが、撮影のため新車設定にはない赤色に再塗装されている。「砂漠の中でも目立つから」という理由で赤色に塗り直した(本来、メッキパーツであるエンブレムも赤い事から、マスキングせずに赤色に塗装した事が伺える)。
トレーラーは「ピータービルト281」。タイヤはブリヂストン製。映画の本編ではエンブレムが取り外されていた。トラブル時のバックアップ用として複数台が用意されていた模様で、2013年現在、現存している車両もある。テレビで公開された後の劇場用追加撮影でバックアップ用の車両が使われた。
原作との相違点[編集]
原作ではトレーラー運転手の苗字が「ケラー」となっており、運転台のドアに書かれたその苗字を、マンがキラー(人殺し)と一瞬誤読して動揺する描写がある[6]。また、マンがトレーラー運転手の顔をはっきり見ているのも映画との相違点である。「角ばった顔、黒い目、黒い髪の毛」と、描写されている[7]。
その他、飲食店でマンが間違った相手につかみかかるくだりや、スクールバスのくだり、踏切で押し出されて走行中の列車に殺されそうになるくだり、老夫婦に助けを求めるくだりなども映画のオリジナルである。
ソフト[編集]
DVDが発売される以前の本作のソフトは、1993年のニューマスター版レーザーディスク(スタンダードサイズ/ナレーション無しの90分版。日本未発売)発売まで画面と音が合っていないなどの問題点があった。
DVD版では効果音が一新・修正され、サウンドもドルビーとDTSの5.1chで収録された。なお、劇場公開時は画面サイズがシネマスコープのワイドにトリミングされていたが、DVD版ではテレビサイズで収録されている。
BD版は、4Kスキャンと高画質化がなされ、ヴィスタサイズにて収録された。
現行ソフト
- 激突! ブルーレイ(2015年9月2日発売・廉価版)
- 激突! スペシャル・エディション DVD(2012年4月13日発売・廉価版)
影響[編集]
本作のカーチェイスシーンは、ビル・ビクスビー主演のテレビシリーズ『超人ハルク』の1エピソードに丸々流用されている。更に、本作品のパターンは後に『ブレーキ・ダウン』や『ノーウェイ・アップ』などに引き継がれていく。
その他[編集]
- 主人公が警察に通報するため立ち寄るガソリンスタンドの女店主役を演じているルシル・ベンソンは、スピルバーグの『1941』でも同じ役で出演している。
- 主人公が助けを求める通りすがりの老夫婦役を演じているアレクサンダー・ロックウッドとエイミー・ダグラスは、スピルバーグの『未知との遭遇』でも夫婦役で出演している。
- 終盤、山道を登る前の場面で主人公は害虫駆除業者の車を警察車両と見間違えて車を寄せる。業者の社名は"Grebleips"で、スピルバーグ姓(Spielberg)の逆綴りになっている。
関連項目[編集]
脚注[編集]
外部リンク[編集]
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