野良犬 (1949年の映画)

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野良犬
監督 黒澤明
脚本 黒澤明
菊島隆三
製作 本木荘二郎
出演者 三船敏郎
志村喬
木村功
音楽 早坂文雄
撮影 中井朝一
編集 後藤敏男
製作会社 新東宝・映画芸術協会
配給 東宝
公開 日本の旗 1949年10月17日
上映時間 122分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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野良犬』(のらいぬ)は、1949年日本映画新東宝映画芸術協会提携の黒澤明監督作品。モノクロ映画。

1973年にはリメイク版映画が公開され、2013年にはテレビ朝日系にてテレビドラマによるリメイク版が製作されている。

概要[編集]

東宝争議の影響で東宝での製作を断念した山本嘉次郎本木荘二郎らの映画芸術協会に参加した黒澤明が、大映で製作した『静かなる決闘』に次いで、新東宝で製作した作品である。脚本は当時若手だった菊島隆三を起用して黒澤と共同で執筆した。以降、菊島は8本の黒澤作品を手がけた。淡路恵子のデビュー作であり、本名の井田綾子でクレジットされている。

第二次世界大戦終戦後のドッジ・ライン時の東京を舞台に、若い刑事が盗まれた拳銃とそれによって引き起こされる強盗殺人事件の犯人を追い求める、黒澤明作品初の犯罪サスペンス映画である。前作の『醉いどれ天使』同様、戦後の街並みや風俗とその中で生きている諸々の登場人物が生き生きと描写されている。

プロ野球の試合の行われている後楽園球場で二人の刑事が拳銃の闇ブローカーを捕まえるシーンがあるが、これは実際の巨人南海の試合映像が使われており、川上哲治青田昇千葉茂武末悉昌ら当時の選手の姿も見られる。『全集 黒澤明』(岩波書店)の第2巻に収録されたシナリオでは、この試合は巨人対阪神戦となっていて、別当の名前が見られる。また、「ラッキーセブンでございます」の場内放送にあわせ、観客が一斉に立ち上がり、セブンス・イニング・ストレッチをする様子も見られる。

闇市を歩く村上のシークエンスでは助監督担当の本多猪四郎がカメラマンと二人で本物の闇市を隠し撮りした。その際の歩く村上の足をフォローするカットなどでは本多自身がスタンドインを務めた。

1949年度のキネマ旬報ベストテンに第3位でランクインされた。また、毎日映画コンクールの撮影賞・音楽賞・美術賞・助演男優賞も受賞している。1999年キネマ旬報社が発表した「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編」では38位にランクインされた(同じ順位に『日本のいちばん長い日』、『ソナチネ』、『天国と地獄』など)。

あらすじ[編集]

ある猛暑の日、村上刑事は射撃訓練からの帰途のバス中で、コルト式拳銃を掏られてしまう。拳銃の中には7発の銃弾が入っていたため、事件が起きるのではないかと彼は焦り戸惑う。村上はスリ係の市川刑事とこの犯行を幇助した女スリ・お銀から貸しピストル屋を聞き出し、ベテランの佐藤刑事の指揮の下で、拳銃の闇ブローカー・本多を突き止めて後楽園球場で逮捕する。しかしその最中にも村上の拳銃による強盗傷害、果ては殺人までが起こってしまう。犯人は割り出せたが、犯人の遊佐は既に逃亡。訊き込みの末、遊佐は幼馴染みだったレビューの踊り子・並木ハルミに言い寄っていたことが判るが、多感な年頃の踊り子はなかなか口を割らない。ついに佐藤刑事までが凶弾に傷つき、村上はただ独り、遊佐を追い詰め対峙の瞬間を迎える。

キャスト[編集]

志村喬と三船敏郎
木村功と三船敏郎
  • 村上刑事:三船敏郎
  • 佐藤刑事:志村喬
  • 並木ハルミ(レビュー劇場の踊り子、遊佐の幼なじみ):淡路惠子(SKD)
  • ハルミの母:三好榮子
  • ピストル屋のヒモ(拳銃密売仲介屋):千石規子
  • 桶屋の女房(遊佐の姉):本間文子
  • スリ係市川刑事:河村黎吉(松竹)
  • 光月の女将:飯田蝶子(松竹)
  • 桶屋のおやじ:東野英治郎(俳優座)
  • 阿部捜査主任:永田靖(俳優座)
  • 呑屋のおやぢ:松本克平(俳優座)
  • 遊佐:木村功(俳優座)
  • スリのお銀:岸輝子(俳優座)
  • レビュー劇場の演出家:千秋實(バラ座)
  • ホテル彌生の支配人:菅井一郎(第一協団)
  • 係長中島警部(村上の上司):清水元(第一協団)
  • 水撒きの巡査:柳谷寛(第一協団)
  • 本多(拳銃の闇ブローカー):山本礼三郎(第一協団)
  • 鑑識課員:伊豆肇(第一協団)
  • 被害者中村の夫:清水将夫(第一協団)
  • アパートの管理人:高堂國典
  • レビュー劇場の支配人:伊藤雄之助
  • 若い警察医:生方明
  • さくらホテルの支配人:長濱藤夫
  • リーゼントスタイルのボーイ:生方功
  • チンピラ:水谷史郎
  • 老人の町医者:田中榮三
  • 佐藤の妻:本橋和子
  • あづまホテルのマダム:戸田春子
  • 藝者金太郎:登山晴子
  • パチンコ屋の女:安雙三枝
  • 支配人の妻:三條利喜江
  • レビュー劇場の客:堺左千夫 ※ノンクレジット

ナレーターは製作者の本木荘二郎だが、クレジットはされていない[1]

スタッフ[編集]

リメイク版[編集]

森崎東監督、1973年公開の松竹配給の映画。主役の刑事が拳銃を盗まれる冒頭シーンはほぼ同じであるが、ストーリーが進むにつれてオリジナルとは大きく異なった展開を見せ、クライマックスは在日米軍などで揺れる沖縄問題がテーマとなる。村上を渡哲也、佐藤を芦田伸介が演じたほか、オリジナルの黒澤映画常連俳優の一人、千石規子が出演している。

テレビドラマ[編集]

本作公開から63年後の2013年テレビ朝日系にてテレビドラマ化され、1月19日[2]に「テレビ朝日開局55周年記念 黒澤明ドラマスペシャル 野良犬」として放送された。主なキャストとして江口洋介広末涼子中村獅童柄本佑らを起用。また、映画を主な活躍の場としている永瀬正敏の久々のテレビドラマ出演作である[3]。このテレビドラマは黒澤明の「野良犬」を原作としているものの、主人公がバスの中で拳銃を盗まれる場面から盗まれた拳銃の行方を追うという筋回しが共通している以外は、物語、登場人物の設定など大きく変更されており、ほぼオリジナルストーリーとなっている。

テレビドラマ版キャスト[編集]

〈 〉内は設定年齢。

テレビドラマ版スタッフ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 藤川黎一『黒澤明vs.本木荘二郎 それは春の日の花と輝く』p.240
  2. ^ テレビ宮崎は1月21日の21:03-23:22に放送。
  3. ^ イントロダクション|野良犬、テレビ朝日開局55周年記念 黒澤明ドラマスペシャル 野良犬 公式サイト、2013年1月11日参照。

外部リンク[編集]