ホホジロザメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
ホホジロザメ
生息年代: 16–0 Ma
中新世 - 現在
White shark.jpg
ホホジロザメ Carcharodon carcharias
保全状況評価[a 1][a 2]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 VU.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
亜綱 : 板鰓亜綱 Elasmobranchii
: ネズミザメ目 Lamniformes
: ネズミザメ科 Lamnidae
: ホホジロザメ属 Carcharodon
: ホホジロザメ C. carcharias
学名
Carcharodon carcharias
Linnaeus1758
和名
ホホジロザメ
英名
Great white shark
Cypron-Range Carcharodon carcharias.svg
ホホジロザメの生息域(青い部分)

ホホジロザメ(頬白鮫、Carcharodon carcharias)は、ネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ属に分類されるサメ。本種のみでホホジロザメ属を形成する。ホオジロザメとも。「白い死神」とも呼ばれる[1]。ホホジロザメの名称は日本魚類学会発行の日本産魚類目録に記載された標準和名である。

分布[編集]

亜熱帯から亜寒帯まで、世界中の海に広く分布している。北はアラスカカナダ沿岸にも出現した記録がある。アメリカ合衆国南アフリカ共和国オーストラリアニュージーランドの周辺海域、地中海等で多く見られ、日本近海にも分布する。2009年には、メキシコ-ハワイ間の深海にホホジロザメが集う海域があるという研究結果が公表され、この海域はホホジロザメ・カフェと呼ばれている[2]

形態[編集]

上図:左から、メガロドン1ドル硬貨、ホホジロザメの歯
下図: ホホジロザメの歯の拡大写真

側頭部が白いことが和名の由来。胸鰭裏側の先端部には、大きな黒斑がある。背側は濃灰色から黒色、腹側は白色で、体を側面から見ると、背側と腹側の色は1本の線ではっきりと分かれている。

体型はがっしりとした流線紡錘型で、尾鰭は上下の長さがほぼ等しい三日月型。平均的なホホジロザメの体長は4.0-4.8メートル、体重680-1100キログラム。最大体長と体重に関しては諸説あり、一致した見解が無い。体長11メートルを越える巨大な個体も報告されているが、専門家の意見では体長6メートル、体重1900キログラム程度が最大と見積もられている。推定値ながら、台湾沖やオーストラリア沖などで、切り落とされた頭部の大きさなどから体長7メートル以上、体重2500キログラム以上と推定される個体が捕獲されたことがある。大きさや体型が似たウバザメ[3]が見間違われる事もある。

は非常に鋭利な正三角形で、長さは7.5センチメートル、のこぎりのようなギザギザを持つ鋸歯(きょし)状縁になっている。皮や筋肉を切断するのに適した形状で、ホホジロザメは獲物から一噛みで約14キログラムの肉塊を食いちぎるといわれている。歯列は3段あり、歯が1本でも欠けたり抜け落ちたりすると、すぐに後ろの歯列がせり上がってきて古い歯列を押し出す。これはサメ類に共通の特徴であり、歯は何回でも生え変わる。

生態[編集]

メキシコグアダルーペ島のホホジロザメ
骨格図

主に沿岸域の表層付近を泳ぐ。沖合から海岸線付近まで近づくこともある。海表面近くにいることもあるが、250メートルより深いところにも潜る。アザラシオットセイの繁殖地の周辺海域に集まることが多い。海面を泳ぎながら顔を出し、体を横に回転させながら口を開閉するrepetitive aerial gaping と呼ばれる行動が観察されるが、これは他のサメには見られないホホジロザメの特有の行動である。

奇網と呼ばれる毛細血管の熱交換システムが発達している為、体温を海水温よりも高く保つ事ができ、軟骨魚類の中では高い運動能力を獲得している。普段はゆったりと泳いでいるが、瞬間的には最高時速25-35 km程度を出すと言われ、海面から体が完全に飛び出す高さまで跳躍することもできる。これほどの運動能力は、他のサメでは高速遊泳を行うことで知られるアオザメオナガザメに見られる程度である。

シャチやイルカなどの海棲哺乳類の知能とは比べられないが、魚類の中でも高度な知能を持ち、学習能力に優れ、獲物を襲う際には過去の成功と失敗の経験を生かすと言われている。仲間内で多彩な行動を取り、獲物を分けるなど、社会性を示すような行動も確認されている。

食性[編集]

食性は動物食で、イルカやオットセイ、アザラシなどの海棲哺乳類を好み、魚類や海鳥も捕食する。クジラの死骸を食べることもある。またホホジロザメはよくエイを食べるが、エイのが内臓に引っかかることも珍しくない。体重の30%程の重量を食べると満腹になるといわれる。

硬骨魚類[4]鯨類は最高時速50km以上を出す事も珍しくないため、狩りの際は奇襲を仕掛ける事が多い。南アフリカ沿岸のホホジロザメは、海面を泳ぐミナミアフリカオットセイを狙う際、海底側から高速で突進し、獲物に噛み付いたまま海面に飛び出す光景で知られている。

獲物を食いちぎる際、肉に刺さって欠けた歯を一緒に飲み込んで自身の内臓を傷つける場合があると言われている。獲物に喰いついて大ダメージを与えた後に放し、出血多量で死ぬのを待つ行動は、歯が折れるのを防ぐ為だと考えられている。

繁殖[編集]

卵胎生で、子宮の中で卵から孵化した胎仔が、胎内に放出される未受精卵を食べて育つ母体依存型胎生であるが、妊娠初期は子宮ミルクを分泌する。現在確認されている中で、子宮ミルクを分泌するサメはホホジロザメのみである[5]

妊娠期間については知られていないが、雌は1度に2 - 15尾前後の子どもを産む。産まれた子どもは体長1.2-1.5メートルの大きさで、しばらくは魚を中心に捕食し、大きくなると大型魚類や海棲哺乳類を襲うようになる。

天敵[編集]

天敵は人間やシャチ、他の大型のサメである。大型のサメは比較的小型のホホジロザメを捕食することもあり、また、同じホホジロザメ同士で、より大型の個体が小型の個体を捕食することもある。

シャチは偏食の習性があるのに加えて、抵抗されれば自身にも危険が及ぶホホジロザメを積極的に攻撃や捕食の対象にはしていないと見られているが、沖合型のシャチはサメ類を積極的に捕食しているという説もある。また、子供を連れているシャチは危険を除去する目的で積極的に攻撃を仕掛け、ホホジロザメを殺害する例が幾度も観察されている。シャチはサメをはじめとした軟骨魚類を襲う際に、身体をひっくり返して擬死状態に陥らせ、抵抗できなくしてから捕食する[6]

ハンドウイルカの子イルカを捕食しようとしたホホジロザメが、成体のハンドウイルカに反撃される例も観察されている。内臓を守る硬い骨格を持たないサメは、イルカの体当たりを受けて内臓破裂で死ぬこともある。

分類[編集]

ホホジロザメ属 Carcharodonの現生種は、ホホジロザメ C. carcharias 1種のみ。

絶滅種。カルカロドン・メガロドン(あるいは単にメガロドン)と学名で呼ばれることも多い。歯の化石しか見つかっていないが、体長最大13メートル、ジンベエザメに匹敵する大きさの巨大な捕食者だったと考えられている。ただし、まだ学問的に完全に決着がついたと言える状況ではないものの、近年では本種との関係性自体否定され学名もカルカロクレス・メガロドンに変更されつつある。

人間との関係[編集]

人間とホホジロザメの大きさの比較

ホホジロザメは、サメの中でも人を襲った記録が多く、さらに映画『ジョーズ』のモデルとなって以来、英語圏でMan eater sharkという俗称がつくほどに「人喰いザメ」のイメージが定着した。サメの中では世界最大のジンベエザメと並んで一般によく知られ、「サメ」と言えば、大口を開けたホホジロザメがイメージされることも多い。

巨大な体、大きな顎、鋭い歯をもち、泳ぐのが速く、獲物の探知に優れているなど捕食者としての能力の高さから、襲われれば最も危険なサメであり、世界中で死傷事故が発生している。

サーフィンの最中や、貝などの漁で潜水しているとき、海水浴場での遊泳中に襲われる場合が多い。噛み付かれると致命傷になることがしばしばあり、死に至らなくとも手足を切断されるような重傷を負うことがある。サメにより人が襲われる事故は、例えばオーストラリアだけで1791年から2006年までの約200年間に668件発生しており、その内191人が死亡している。

人を襲う理由[編集]

低水温に耐えられるホホジロザメは、温帯から亜寒帯の広い海に生息し、時期によっては亜熱帯海域にまで進出する。さらに沿岸域の浅い所で生活し、昼行性であるため、サメと人の活動が重なる機会の多さが、事故の起きる要因になっている。

空腹でない限りは何も襲わず、こちらから危害を加えなければ何もしてこないと考えられているが、主食となるアザラシと、水中にいる人間を見間違えて襲っているという見解がある。人を襲うのは、アザラシやオットセイなど海生哺乳類を主食とする4-5メートル級の大型個体が多く、サーフィン板等の上で腹ばいになってパドリングする人間の動きや、ウェットスーツを着て足ヒレを動かす姿が、サメからはアザラシのシルエットと同じに見えるのだと考えられている。

サメ事故の予防策としては

  • 目撃情報や生息情報のある危険海域に近づかない
  • 色の明暗がある水着やサーフボードを利用する。黒と白の縞模様など、なるべく明るい色の入ったものが望ましい。鮫は明暗が分かるので、アザラシなどと勘違いされることを避けることができるとされている。
  • 海中で排尿・排便をしたり、怪我や月経による出血がある場合は泳がない。鮫は嗅覚がとても優れているので、臭いに寄って来る可能性がある。

などが挙げられるが、狂暴でない個体が突然人を襲うケースもあり、サメが人を襲う根本的な理由はわかっていないため、ホホジロザメに限らずサメ類による事故の予防には、サメとの遭遇そのものを避けることが重要になる。

世界のホホジロザメによる事故[編集]

「人食いザメ」のイメージから、他種のサメによる事故と混同される例もあるが、1876年2004年の間に確認された人身事故は224件あり、その内63件が死亡事故である。場所別に見ると、アメリカ西海岸が最も多く84件(7件)、次が南アフリカで47件(8件)、3番目はオーストラリアで41件(27件)(括弧内は死亡事故)。他に、地中海ニュージーランドでの被害も多い。日本では、2000年に1件の死亡事故が確認されている。上記のデータは国際サメ被害目録によるものであり、他にも下記のような事故が起きている。

日本のホホジロザメによる事故[編集]

タイラギ貝漁中に潜水夫が行方不明になった。ウェットスーツや通信ケーブルが切り裂かれており、その切断面の形状から体長約5メートルのホホジロザメに襲われたものと断定された。
ミル貝漁をしていた男性が突然サメに襲われた。引き上げたところ体長6メートルほどのサメが食いついており、右肩から腹部にかけて噛まれ、右腕は食いちぎられており、ほぼ即死状態だった。
体長からサメはホホジロザメとみられる。この事故の後、仲間の漁師らが「敵討ち」と称し捕獲作戦を決行したが、ついに捕獲には至らなかった。

ホホジロザメの目撃例[編集]

ホホジロザメを撮影するスタッフたち。人が入ったケージを海に落とすところ。
ケージの中から撮影されたホホジロザメ
船の上から撮影された、ケージに近づくホホジロザメ
海水浴場に全長約5.3メートルのホホジロザメが現れた。このサメは沖合をしばらく泳ぎ回った後、捕獲された。
その後も光市内では2002年8月にも虹ヶ浜付近にホホジロザメらしきサメが出現している。
雄としては世界最大級とされる体長4.8メートルの屍体が発見された。現在この屍体は剥製標本となり川崎市東扇島川崎マリエンで展示されている[7][リンク切れ]

飼育[編集]

モントレー湾水族館のホホジロザメ(2006年9月)

常時動き続けなければ生存できないため飼育は非常に難しいとされ[8]、生体を飼育・展示している水族館はほとんどない。米国のモントレー湾水族館で若い雌を198日間飼育したが[9] 、その後この個体は海へ返されている。飼育を断念したのは、成長に従って水槽内の他の魚への危険が増したためであると水族館側は説明している。ほかに島根県立しまね海洋館で2002年に幼体を4日間[9]大分マリーンパレス水族館「うみたまご」で2004年に1日[10]飼育したことがある。

2016年1月5日より沖縄県沖縄美ら海水族館読谷村沖の定置網にかかった体長約3.5メートルのオスの成体を飼育・展示し、成体では世界初の飼育例となったが、その個体は3日後の1月8日に死亡した[8][9]

関連作品[編集]

スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作である映画『JAWS』に登場する「人喰いザメ」も、このサメである[11]

代表的な人食いザメというイメージから、良くも悪くも人の注目を集めるサメであり、ジャンルを問わず数々の作品においてホホジロザメが登場したり、それをモチーフとしたキャラクターが登場している。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 土屋健 『カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史』 講談社2017年、139頁。ISBN 978-4-06-502018-0
  2. ^ 一匹おおかみ「ホオジロザメ」が東太平洋の「カフェ」に集合、移動時期や経路に規則性 米研究”. AFPBB News (2009年11月11日). 2009年12月5日閲覧。
  3. ^ 厳密には、ウバザメの方が大きい
  4. ^ バショウカジキは時速109.7キロメートルで泳いでいたことが記録されている。また、クロマグロも時速70-90キロメートルで泳ぐことができる。中村庸夫、『記録的海洋生物 No.1列伝』、誠文堂新光社、2010年、p76,94
  5. ^ ホホジロザメが子宮で「授乳」、サメでは初の発見”. 2016年9月17日閲覧。
  6. ^ The moment a whale delivers a deadly 'karate chop' blow to a killer shark
  7. ^ ホホジロザメ剥製完成記念式典”. 川崎市. 2009年12月5日閲覧。
  8. ^ a b 美ら海 ホオジロザメ死ぬ 飼育から3日、原因調査中 - 琉球新報、2016年1月8日
  9. ^ a b c 水族館で飼育された世界唯一のジョーズ 3日で死亡 沖縄美ら海 - ハザードラボ、2016年1月8日
  10. ^ [1]-p.48
  11. ^ 但し「体長8m/体重3000kg」という、正式には確認されていない大きさの設定である。

参考文献[編集]

  • A&A・フェッラーリ 『サメガイドブック-世界のサメ・エイ図鑑』 御船淳・山本毅訳、谷内透監修、ティビーエス・ブリタニカ、2001年、256頁。
  • 仲谷宏一 『サメのおちんちんはふたつ』 築地書館、2003年、231頁。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ IUCN Red List of Threatened Species
  2. ^ CITES homepage