トータル・リコール

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トータル・リコール
Total Recall
監督 ポール・バーホーベン
脚本 ロナルド・シュゼット
ダン・オバノン
ゲイリー・ゴールドマン
原作 フィリップ・K・ディック
『追憶売ります』
製作 バズ・フェイシャンズ
ロナルド・シュゼット
製作総指揮 マリオ・カサール
アンドリュー・G・ヴァイナ
出演者 アーノルド・シュワルツェネッガー
シャロン・ストーン
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
撮影 ヨスト・ヴァカーノ
編集 カルロス・プエンテ
フランク・J・ユリオステ
製作会社 カロルコ・ピクチャーズ
配給 アメリカ合衆国の旗 トライスター・ピクチャーズ
日本の旗 東宝東和
公開 アメリカ合衆国の旗 1990年6月1日
日本の旗 1990年12月1日
上映時間 113分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $65,000,000[1]
興行収入 $119,394,840[1] アメリカ合衆国の旗カナダの旗
$261,299,840[1] 世界の旗
配給収入 24億5000万円[2] 日本の旗
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トータル・リコール』(原題: Total Recall)は、1990年アメリカ映画

フィリップ・K・ディックが1966年に発表した小説『追憶売ります』(We Can Remember It for You Wholesale)を映画化したSF映画である。ただし原作は数十ページ程度の短編であり、映画化に際してかなり多くのシーン(特にアクション・シーン)が追加されている。

アカデミー賞では視覚効果賞および特別業績賞(視覚効果)を受賞した。音響効果賞、録音賞にもノミネートされた。

あらすじ[編集]

火星の夢とリコール社[編集]

近未来。火星には植民地があり、多くの人類が居住しているが、酸素が薄く気圧が低いため防護服無しでは建物の外に出られず、「エネルギー採掘会社と反乱分子との間で紛争が絶えない」と連日報じられている。

ダグラス・クエイドはごく普通の建設労働者で、結婚8年になる妻のローリーと2人暮らし。彼は毎夜、行ったことが無い火星の夢に悩まされていた。「火星に移住したい」との想いをローリーに伝えるも一蹴されたクエイドは、列車内で偶然「旅行の記憶を売る」というリコール社(REKALL)の広告を見つける。

同僚の労働者ハリーから反対されながらも、クエイドはリコール社へ出向き、「秘密諜報員として火星を旅する」というコースを選択、夢の中のパートナーとなる女性の顔をモンタージュで選び、注射によって眠りにつくが、突然クエイドはわめきながら暴れだした。しかし、記憶の植えつけ処置はまだ行われていない。クエイドが実際に火星へ行ったことがあると察したリコール社はトラブルを恐れ、クエイドに麻酔をかけてリコール社に来た記憶自体を消し、タクシーに乗せ自宅へ送り出す。

帰宅途中、ハリーを含む謎のグループに襲われるクエイドだったが、クエイドは身に覚えのない格闘術でその全員を殺害。ようやくたどり着いた自宅でも、ローリーから攻撃を受ける。クエイドに取り押さえられたローリーは「クエイドの記憶は全てニセモノであり、自分は妻ではなく、クエイドの監視役である」と告げる。混乱するクエイドのもとへ迫るリクターとその部下たち。何とか彼らを振り切ったクエイドは、謎の男からカバンを受取る。その中のパソコンのモニターに、クエイドと全く同じ顔をしたハウザーと名乗る男が現れ、「クエイドとは、ハウザーが事情により記憶を消された仮の姿である」と語った。カバンの中には金や偽造身分証、そして特殊器具や変装道具も用意されており、体に埋め込まれていた位置発信器を器具で取り除いたクエイドは火星へ向かう。

そして火星へ[編集]

リクターたちの追跡を振り切って、クエイドが火星で出会ったのは、以前夢で見たことがあり、モンタージュでも選んだ黒髪の女性メリーナ。メリーナはクエイドをハウザーと呼ぶが、ハウザーだった過去を思い出せないクエイド。メリーナから追い出された彼がホテルの部屋へ着くと、突然妻のローリーと医者を名乗る男が現れ、「クエイドは現実には火星にはおらず、まだリコール社で夢を見ている。夢から覚めるため薬を呑め」と迫る。怪しんだクエイドが男を射殺すると、正体を現したローリーとその部下たちによって拉致されかけるが、そこへメリーナが参上。ローリー達を倒したクエイドとメリーナは逃亡する。

クエイドは反乱分子の首領であるミュータントのクワトーと対面。その超能力により記憶の一部を取り戻したことで、「火星には50万年前にエイリアンが作ったリアクターがあり、それを使って酸素を作り出せるが、採掘業者による火星支配の邪魔になるため世間には伏せられている」という事実を知る。

しかし、クエイドが火星で出会ったタクシー運転手ベニーの裏切りによって治安部隊が突入してきて、クワトーは殺され、クエイドは採掘会社総督コーヘイゲンのもとに連行される。コーヘイゲンは「ハウザーは自分の部下であり、クワトーの居所をつかむため、記憶を消しクエイドとして地球へ送りこんだ」と語り、リコール社と同様の装置でクエイドをハウザーに戻そうとする。

反乱分子に共感していたクエイドは装置を破壊してメリーナとともに脱出。銃撃戦の末にリクターとコーヘイゲンを倒すと同時にリアクターを作動させる。火星は酸素に包まれ、地表の大気は人間が暮らせるようになり、火星の民衆は圧政から解放された。クエイドは「これも夢かもしれない」と思いつつも、青く変わった火星の空の下でメリーナとキスを交わす。

登場人物[編集]

ダグラス・クエイド / ハウザー
演:アーノルド・シュワルツェネッガー
本作の主人公、地球建設会社に勤めている。毎晩見る火星の中でメリーナ似の女性に出会う。逃亡中に拾ったトランクビデオの指示に従い、頭の中の発信器を機械で抜いて、火星へ赴く。
コーヘイゲンの元に連行された後、研究室でリアクターに関する記憶を消されそうになるが力ずくで手枷を破壊し、研究員を次々に倒し、全滅させたところでメリーナを解放して落ちていたを拾って脱出する。
リアクターの起動後、火星の青空の下でメリーナとキスを交わす。
ローリー
演:シャロン・ストーン
ダグラスの妻で、火星に関わる話を避けるようにしていた。正体はリクターの手下で、リコール社から帰宅したダグラスを射殺しようとするが結局取り押さえられて、取り上げられた銃で脅され正体と実際の出来事を告げ、ダグラスを懐柔しようとするが殴られて昏倒。
火星のホテルでエッジマーに同行して部屋に再度現れ、彼が射殺された後、隣の部屋から壁に大穴を開けて突入した部下達に拘束されたダグラスの頭を蹴って「火星まで来させた仕返しよ」と股間を踏みつける。気絶した彼を連行しようとする途中、エレベーターホールで襲撃してきたメリーナと戦い、彼女にとどめを刺そうとしたら、ダグラスに銃を向けられ「私は既婚者なのよ!」と命乞いをして迎撃しようとしたが、ダグラスにすかさず眉間を撃たれ「これで離婚だ」と告げられて死亡。
メリーナ
演:レイチェル・ティコティン
火星の反乱組織のメンバー。火星のパブ「最後の楽園」でダグラスことハウザーに再会した際に平手打ちを放って「あんたって人は!心配していたのよ!」と叱りつつも、彼を抱擁した。地球での出来事や記憶を失ったことを聞かされるが信じず、いったんは彼を追い出す。
その後ローリー達に捕まったダグラスを救出する。
研究室の機械にダクラスとともに拘束された際、コーヘイゲンに「ダメだよお嬢さん、矯正するんだから。君は素直で尊敬されて賞賛されるようになるから。これが女性の道……」と諭されるがを浴びせて反抗する。
リアクターの起動後、ダグラスとキスを交わす。
コーヘイゲン
演:ロニー・コックス
火星の採掘会社の総督。空気を利用して火星社会を支配するが、クアトーの革命運動に悩まされていた。友人でもある部下ハウザーの記憶を消し、ダグラス・クエイドとして地球へ送り込んだ。
ジョージとクアトーの死後、思惑通りに反乱組織を暴くこととなったダグラスに感謝しつつ、研究室の機械でダグラスとメリーナの記憶を書き換えようとして別れを告げる。
リアクターの起動を試みるダグラスを阻止しようとして、床に設置した自爆装置をリモコンで作動させたが、ダグラスに自爆装置を投げ捨てられた。爆発で壊れたドームから火星の地表へ吸い出され、低圧・低酸素の大気で苦悶の内に死亡。
リクター
演:マイケル・アイアンサイド
コーヘイゲンの手下。部下のローリーとは情を通じており、彼女が任務のため偽装結婚したダグラスのことを快く思っていない。ダグラスの正体をコーヘイゲンから知らされておらず、彼を本気で殺害ないし捕獲しようと試みる。
火星のリアクターへの通路で治安部隊と一緒に待ち構えてダグラスに機関銃で斉射するが、通用せず「なんて奴だ……」と驚いたが、ホログラムが作り出した偽者だと気付いた。
最上部へつながるエレベータで先回りしようとしたが、追い付いて飛び乗って来たダグラスと格闘するが、ゴンドラと昇降路の間に腕をもがれ墜落死した。
ジョージ
演:マーシャル・ベル
クアトーを宿している、火星反乱組織の男性。地下墓地の奥に隠された秘密基地で暮らしている。治安部隊の襲撃から逃れようと、ダグラスたちをエアロックへ案内するが、ベニーに射殺される。
クアトー
演(声):マーシャル・ベル
火星反乱組織のリーダー、ジョージの胴体に宿っている。火星住民たちの解放のため、リアクターの起動を目論んでいる。超能力でダグラスの記憶を復元できる。ジョージの死後「リアクターを起動してくれ・・・・・」と遺言を残すがリクターに射殺される。
ベニー
演:メル・ジョンソン・Jr
陽気なタクシー運転手。火星に着いたダグラスをパブ「最後の楽園」に送る。その後、リクターに追われるダグラスとメリーナと一緒に3人でタクシーに乗って逃走し、隠し通路で自らもミュータントだと明かす。しかしエアロックでジョージを射殺し、正体がコーヘイゲンの手下だと明かして、治安部隊を迎え入れてダグラス達をコーヘイゲンの元へ連行した。
研究室を脱出してリアクターへの通路を探していたダグラス達を採掘機で殺そうとするが、落ちていた掘削用ドリル油圧ホースを破られ、同じドリルで運転席側面から刺し殺された。
エッジマー
演:ロイ・ブロックスミス
火星のダグラスを訪れた、自称「医者」。リコール社の仮想世界で眠っているダグラスが気になるから迎えに来たと主張し、ローリーも部屋に連れて説得させ「仮想世界の私を殺したらここに来た意味が無くなる上、最終的には現実の世界で植物人間になるんだ」とダグラスに睡眠薬を飲ませようとするが、顔に流れたで内心の緊張を露呈してしまい、眉間を撃たれ死亡。ダグラスが乗った鉄道のテレビでも、リコール社のCMに出演している。
ハリー
演:ロバート・コスタンゾ
ダグラスの同僚、「リコール社へ行くのはお奨めできない」と作業現場で忠告する。ダグラスがリコール社に行って来ると、彼を問い詰めて殺そうとするが、逆に殺される。
タクシードライバー
演(声):ロバート・ピカード
無人運転タクシーの運転手ロボット。リコール社で騒ぎを起こし、取り繕われて目を覚ましたダグラスに事情を聞かれるが「自分で乗ったんでしょ?」と答える。
自宅から逃走した時に捕まえたタクシーでの最中では、具体的な行き先を告げないと運転できないため、しびれを切らしたダグラスに体をもがれ廃墟まで運転される。到着後、料金を踏み倒したダグラスを誤作動で轢きかけるが、壁に衝突して「またのご利用を・・・・・お待ちしております・・・・・」と自爆した。前者の時は客であるダグラスが乗って寝ている中、口笛を吹いて運転をして、後者では「私、ジョニーです」と自己紹介をしたりと機械ながら人間臭い仕草をする。
トニー
演:ディーン・ノリス
パブ「最後の楽園」の男性。ミュータントで、顔の右側面がはれ上がった容貌。最初に会った時は怪訝な態度だったが、リクターに追われているダグラスたちを隠し通路へ案内して彼らを匿い、治安部隊とも戦う。

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹き替え
VHSDVD テレビ朝日
ダグラス・クエイド / ハウザー アーノルド・シュワルツェネッガー 屋良有作 玄田哲章
ローリー シャロン・ストーン 高島雅羅 小山茉美
メリーナ レイチェル・ティコティン 戸田恵子 弥永和子
コーヘイゲン ロニー・コックス 家弓家正 中村正
リクター マイケル・アイアンサイド 内海賢二 羽佐間道夫
ジョージ / クワトー マーシャル・ベル 池田勝 / 辻村真人 麦人 / 吉水慶
ベニー メル・ジョンソン・Jr 田中亮一 樋浦勉
エッジマー ロイ・ブロックスミス 筈見純 阪脩
マクレーン レイ・ベイカー 有本欽隆 小川真司
ヘルム マイケル・チャンピオン 稲葉実 大塚芳忠
ドクター・ラル ローズマリー・ダンスモア さとうあい
アーニー デビッド・ネル 高宮俊介 島田敏
ティファニー(リコール社の受付) アレクシア・ロビンソン 松本梨香 小林優子
ハリー ロバート・コスタンゾ 島香裕 麦人
エヴェレット マルク・アレイモ 西村知道 千田光男
タクシードライバーの声 ロバート・ピカード
トニー ディーン・ノリス 田原アルノ 秋元羊介
バーテンダー マーク・カールトン 島香裕 辻親八
メアリー リリシア・ナフ 滝沢久美子
入国管理官 ケン・ストロースバーグ 高宮俊介
大柄な女性 プリシラ・アレン 片岡富枝 さとうあい
ホテルのフロント係 ケン・ギルディン 高宮俊介 田中正彦
エージェント ロジャー・カドニー 辻親八 幹本雄之
レジスタンスの男 マイケル・グレゴリー 有本欽隆 水野龍司
頑丈な鉱夫 ミッキー・ジョーンズ 池田勝 吉水慶
その他又は役不明 星野充昭
中沢みどり
紗ゆり
中博史
竹口安芸子
麻生侑里
叶木翔子
演出 蕨南勝之
翻訳 武満眞樹 平田勝茂
調整 金谷和美 蝦名恭範
効果 佐藤良介
担当 吉富孝明
プロデューサー 猪谷敬二
制作 ニュージャパンフィルム
初回放送 1992年4月5日
日曜洋画劇場
ノーカット放映

作品解説[編集]

映画全体が夢であったのか
劇場公開版やDVD版とは違い、日本語吹き替えVHSビデオ版では日本語版スタッフの手で「全ては夢(装置による記憶)だった」というカットが追加されている。DVD版のオーディオコメンタリーによれば、これは破棄された設定ではなく、ホワイトアウトによる映画のラストシーンは「夢であった」ということを示唆している。
エピソード
主演のシュワルツェネッガーが2003年カリフォルニア州知事選挙出馬を決めたのは、当時の州知事であるグレイ・デイヴィス(Gray Davis)がリコールされたことが直接のきっかけであったが、それを報じた現地のタブロイド紙の見出しは “Total Recall” であった。彼の自伝のタイトルも“Total Recall: My Unbelievably True Life Story ISBN 978-1451662436 である。
SF新世紀レンズマン』などの制作協力でも知られる金子満のメトロライトスタジオがアカデミー特別業績賞を受賞するが、これは当時の最新技術だったモーションキャプチャシステムがうまく作動せず、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーでアシスタント・プロデューサーの経験もあった金子が、窮余の一策でハーフミラーを使ってシュワルツェネッガーのビデオショットを1枚ずつコンピューターモニターに投射し、モニター上の骸骨モデルをビデオの動き通りの位置に張り付けるロトスコープの使用を提案する。それがアカデミーの技術協会から、「お金をかけなくても良い効果を生み出せる例」として評価された[3]

漫画[編集]

日本公開直前に小学館の学年別学習雑誌『小学六年生』にダイジェスト版として漫画化されており、エンディング以外の全編を駆け足で書いた作品になっている。主に登場するのはクエイド、メリーナ、コーヘイゲンで、リコール社やローリーなどは登場しない。クワトーも台詞こそあるものの、姿は影に包まれたものとなっている。

リメイク版[編集]

2012年にレン・ワイズマン監督によるリメイク作品が公開された。主演コリン・ファレル、配給はコロンビア映画

参考文献[編集]

  1. ^ a b c Total Recall (1990)”. Box Office Mojo. Amazon.com. 2010年8月23日閲覧。
  2. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)504頁
  3. ^ 『映像ミザンセーヌの黄金則 ヒットする映画の作り方』(著:金子満、近藤邦雄、三上浩司、渡部英雄。発売:株式会社ボーンデジタル)113頁

関連項目[編集]

外部リンク[編集]