劇用車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

劇用車(げきようしゃ)とは、劇中(テレビ映画コマーシャル舞台)などで使用する自動車を指す。古くから撮影スタッフの中だけで言われていた専門用語だったが、2004年の法改正によって初めて法律条文に劇用車と言う名称が載った。

2004年3月18日付け警察庁丁規発第19号によると、「劇用車とは道路運送車両法第4条の規定による自動車登録ファイルへの登録を受けていない自動車等であって劇中において使用するためのものをいう」。

則法律上で言う劇用車とはあくまでナンバーを付けていない撮影用車両を指し、一般的な意味合いとは若干異なる。

劇用車の例(車種:クルー。白黒パトカーは「白パト」などと呼ばれる)

概要[編集]

劇用車はパトカー救急車消防車・郵便バイクまたその劇にあわせて作った車(『ウルトラセブン』などで使用したポインター号、『ナイトライダー』で使用したナイト2000)など劇の中で出てくる車・バイクカートなどすべてである。

劇用車は作品の制作会社が保有するケースもあるが、多くは業者からのレンタルやリースで提供される。マエダオート、インペリアル、エルエーカンパニー、富士映画、カープロnetなど、劇用車を専門に扱っている会社があるが、その他ではロケバス会社、カースタント会社、中古車販売店や自動車解体業レッカー業オーナーズクラブなどが副業で行っているとみられる。

2000年代半ば以降になると(あまり車が登場しない)作品によっては経費節減などによりレンタカーで代用するケースも見受けられる。

主な車両[編集]

警察車両[編集]

制服警官が乗る白黒パトカーは、地方ロケで地域に密着した内容の場合のみ極少数、地元警察が協力して実物のパトカーを貸すこともあるが、ほとんどの場合は撮影用に製作されたパトカーを使用する(実物のパトカーは機密保持の為、耐用年数を過ぎても一般に払い下げられることはない)。業者の力量や考え方により、実車と同じ部品や装備品を用いて精巧に再現されたものもあれば、本物には遠く及ばない車両もある。

ベース車両はかつてはパトカー専用グレードに近い外観を持っていた教習車タクシーの払い下げ車が多く使用されたが、最近は普通の中古車が多い。昔のアクション作品ではスタント用に多くの中古車を使用していたため、現実のパトカーには採用されていない車種も使用していた。現在はほとんどが現行採用されている車種(主にクラウンセドリッククルー)を使用している。

護送車鑑識車機動隊輸送車なども中古のバンやバスをベースに作られることが多いが、スタッフや資材を現場まで運んできた撮影会社の車両やレンタカーに脱着式の赤色灯を付け代用しているケースも多々見られる。

覆面パトカー、特に捜査車両についてはその性質上全くの市販車でもそれらしく見えるため、スポンサーメーカーの広報車など製作放映時点での最新モデルが使われたり、レンタカーで済ませられることもある。

特殊な外見ゆえ、撮影場所までの移動中は警察名の文字や赤色灯を隠したり取り外し、撮影用車両の旨を書いた張り紙をしている。

消防車両[編集]

地域に密着したロケを行う場合や消防レスキュー活動を題材とした作品では現実の消防当局が撮影協力を行うケースも少なくないが、通常は業者が所有する消防車救急車を借り受けて対応する。

パトカーと違い消防車両の新車は業者や個人の購入も可能なため新車を劇用車とする業者も存在するが、高価であるため少数派で消防が使用していた払い下げ車両を用いることが多い。そのため放送時期に消防で使用されている車両より古い場合がある。

新車で購入した消防車を使用した例としては石原プロモーションが2003年に『西部警察 SPECIAL』の爆破シーン消火用兼劇用車として購入した高所放水車(モリタ製、ベースは日野スーパードルフィン・プロフィア)がある。購入費用は9000万円。尚この車両は、2008年11月12日放送の『ナニコレ珍百景』で、きちんと整備する事を条件にプレゼントすることが発表され、2009年11月神奈川県真鶴町に寄贈された。

タクシー[編集]

通常はタクシー会社(個人タクシーの場合もある)の協力の下、運転手エキストラで登場する。ただし、スタントに使用する場合は払い下げの中古を使用する。

バス[編集]

タクシーの場合と同じく、通常はバス会社の協力の下、運転手もエキストラで登場する。架空会社を名乗る場合やスタントに使用する場合中古バスを使用する。また、旧型バスやボンネットバス、護送車などが登場する場合、業者・博物館・個人所有の車輌を使用することがある。

その他の一般車両[編集]

上記以外の車種については後述のスポンサーメーカーの広報車両やレンタカー会社を利用するが、稀に製作会社の社用車やスタッフ・出演者個人の愛車を使用するケースもある。

ナンバープレート[編集]

劇中に登場する車のナンバープレートは美術部によってその撮影の都道府県や年代に合わせて製作して付け替えている。細かな撮影の場合車検ステッカーや点検ステッカーなども作って張り替えている。

ナンバー製作の際は実際に存在しえない番号となることもある。ひらがなの「へ」「し」などを使用(例:2代目スバル・ステラテレビCM)したり、まだ発行されていない分類番号のナンバーを作ったり[1][2](例えば「品川87あXX-XX」。8ナンバーで分類番号が2桁の時代"88"以外はほとんど発行されておらず[3]、希望ナンバー制導入時に分類番号も3桁になったため"87"は今後発行されることはない)することもある。また一般公道で道路使用許可を取らずに引き絵で撮影する場合などはナンバーを付け替えずに撮影している。また、変わった例では

等、実際には絶対にあり得ないナンバープレートとなっている例がある。

使用上の規制[編集]

劇用車を一般道路上で撮影するにあたっては様々な規制や条件の下で行われる。

撮影する場合は、一般公道の場合道路使用許可を所轄の警察署や港湾などに申請して許可を得る。もしくは、撮影所や工場などの私有地私道を管理者の許可を得た上で封鎖して使用する。

ロケ地までの移動を容易にするため、公道を走れるようにナンバープレートを付けていることが多いが、8ナンバーや緑ナンバー交付対象にはなりえないため通常のナンバーを交付されており、撮影中のみ架空の番号を付けた劇用のナンバープレートを貼り付けている。

しかし近年、白パトや救急車等といった緊急車両系の劇用車がその特殊な外見故に、一般市民の誤解を招き街中でのトラブルや勘違いの元になり易いという事が指摘されたことから規制が厳しくなり、道路使用許可を申請しても、撮影用ナンバーを貼った上での公道上での走行シーンの撮影や、緊急車両系の劇用車自体の撮影が認められないことがある。そのため、一部の2時間ドラマでは撮影用ナンバーを用意せずに通常のナンバーのまま撮影され、覆面パトカーなのにレンタカーの"わ"ナンバーであるという矛盾が生じている。

テレビドラマ[編集]

スポンサー[編集]

  • 一番大きい特徴としてスポンサーに左右されやすい傾向がある。これはTVにおける番組提供に自動車メーカーが名を連ねていることが挙げられる。最近では少ないが、番組提供は行わないが車両のみ提供するケースもあり、エンドロールに「車両提供:●●自動車」などと表記される。輸入車インポーターが車両提供を行う場合は後者の場合が多く、国産メーカーも1970〜1990年代前期まではクレジットされていたが現在は一部の劇場版を除いてクレジットされていない。
    • 2010年現在まで車両提供の頻度が特に高いのがトヨタ(系列のダイハツを含む)・日産で、次いでマツダ(1980年代まで)・三菱(1980年代後半から1990年代にかけて)・ホンダ(1990年代から2000年代前半にかけて)・スバル(2000年代後半から)である。
  • 番組提供も車両提供もない場合は劇用車両をレンタル・リースを行う専門の業者かレンタカー会社で用意したものがほとんどである。最近では「車両:●●リース」などと表記されている。あるいは制作会社が自前で劇用車両を持っている場合もある。
  • まれに製作サイドが中古車ディーラーで直接買い付けるケースもある。大抵の場合、スタントに使われることが多い。
  • 地方ロケや道路封鎖しての大規模ロケの場合、地元の運送会社・バス会社・タクシー会社の協力や地元住民が車ごと持ち込んでのエキストラで登場するケースもある。このような場合は、仮にスポンサーが付いていた場合でも他社車両が使われる。
  • 車種名やメーカー名のいわゆるエンブレムをテープで隠したり、取り外したり、まったく異なるマークを付けているケースが増えてきている(主にノンスポンサーの枠やスポンサー以外のメーカー車を使用する際)。近年では映画や2時間ドラマではほとんどエンブレムが隠されている。これは制作時期と実際放送される時期・枠によりスポンサーが交代ないし降板している可能性もあるため。他にも良い使われ方をしない、例えばひき逃げをする、暴走行為、欠陥車という設定などがスポンサーから難色を受けることもあるため。特に欠陥車においてはまったくの架空メーカーの車両・ブランド名を付けることもある。

連ドラ・2時間枠の自動車メーカー番組提供枠(2016年10月現在)[編集]

  • NHKのドラマは除外。

※・・・映画枠だが特別企画でドラマを放送している場合がある

放送局 放送枠名・番組名 現在のスポンサー 過去のスポンサー
フジテレビ 木曜劇場 ホンダスバル トヨタ

三菱
金曜プレステージ 三菱・ダイハツ 日産
土曜プレミアム ※ 日産・トヨタ・ダイハツ・三菱・スズキ ホンダ
関西テレビ 火曜21時枠(旧・22時枠 ダイハツ スズキ

トヨタ
テレビ朝日 水曜21時枠 日産
木曜ドラマ スバル 日産ディーゼル

マツダ

プジョー

ダイハツ
日曜洋画劇場 ※ トヨタ(LEXUS)・スズキ 三菱
日本テレビ 水曜ドラマ スバル 日産

トヨタ

ホンダ
金曜ロードショー ※ トヨタ・ダイハツ・スズキ ホンダ

いすゞ

マツダ
土曜ドラマ スズキ ホンダ

ダイハツ

日産
TBS 火曜ドラマ 日産 BMW
金曜ドラマ トヨタ[4] ホンダ

マツダ

日産
以下の枠では、現在スポンサーに自動車メーカーが含まれていないため、レンタル・リース会社が調達。

劇場版[編集]

前述の通り、最近では車両協力(特別協賛)でのクレジット表記は稀で、また特定のメーカーのみというケースは少ない。

主にテレビ局が制作に加わっている作品について、後にゴールデン・プライムタイムでのテレビ放送がされる場合、枠によってはライバル会社がスポンサーになっている場合もあるため、近年はエンブレム隠しを施しているケースが多い。例を挙げると、テレビ朝日の劇場版『相棒』がテレビ放送されたのは『日曜洋画劇場』(初回放映時、トヨタと三菱が当時スポンサー)しかないことから、劇中はレギュラー放送同様全て日産車だったもののエンブレムはテープなどで隠される処置がされていた)。

ちなみに舞台の時代設定が1950〜1980年代の場合、その当時の車両の大半は自動車メーカー系の博物館(テレビドラマの場合が多い)やオーナークラブ所有、エキストラ募集で集められた個人所有の車が使われる。

バラエティ[編集]

  • ロケが多いバラエティ番組の場合、出演者が自らハンドルを握る車の場合、番組スポンサーの車両を使用することがある。レンタカーで他車を使用する場合ぼかしを入れている。(例:ザ!鉄腕!DASH!!…トヨタ(一部ダイハツ)+日産、この差って何ですか?…レンタル・リース会社調達)
  • 最近では番組とスポンサーとのコラボレーションで出演者がそのままCMに出演している。(例:「出没!アド街ック天国」における日産「セレナ」)
  • バラエティだが合間に再現ドラマがある場合にも劇用車で登場している(例:「行列のできる法律相談所」…日産、「世界の日本人妻は見た!」…日産、「ウチくる!?」…レンタル・リース会社調達。)
  • まれにスポンサーの関係から、VTRに映った一般車や取材先の個人保有の車のエンブレムに「ぼかし」を入れるケースがある。また、「警察24時」系の番組においても登場した事件関係者の車や捜査用車両のエンブレムに「ぼかし」を入れるようになっている。

ゲーム[編集]

ゲームの場合、完全な架空の車両、実在のモデルを再現しつながらも架空の名前で登場しているもの、実在のモデルを細部まで再現し実名で登場している物にわかれる。架空車両の場合、「リッジレーサー」「GTA シリーズ」のように、新作が発売されるごとにゲーム内の車両もモデルチェンジするなど、実在の車かと思えてしまうほど凝った設定が設けられているものもある。実在のモデルを架空の名前で登場させるものは、まだ車種が判別できるほど精巧なグラフィックを描くことができなかったプレイステーションまでのゲームに多い。また、「首都高バトル」では、実名登場をさせる際に、自動車メーカーの許可が下りずに収録を断念したり、カスタマイズカーが使用できなくなった車種がある。実名収録されるものは、「グランツーリスモ」、「Forza Motorsport」、「ニードフォースピード」などのリアル系ゲームがほとんどで、最近では、自動車メーカーやテレビ番組とのタイアップも行われている。

海外映画など[編集]

代表例としてはジャッキー・チェン主演の香港映画(現代劇における)ではほとんどの作品で三菱自動車が車両協力で登場している。もちろんエンドロールでクレジットされている。とはいえ、一部の日本の連続ドラマのようなスポンサーメーカーの車両しか登場しなかったり他メーカー車種にエンブレム隠しをしているというわけはなく、他の日本車メーカーやアメリカ車・欧州車も登場している。例えば『デッドヒート』では三菱がスポンサー(乗ったのもキャンター(レッカー車)、FTO、ランエボ、GTOと三菱車ばかり)なのだが、敵車両としてBNR32スカイラインGT-R(設定上)が出てくるだけにとどまらず「この男がGT-Rで警官を轢くのを・・・」とジャッキーが明言したりもしていた(もっともこの作品の場合、エンドロールではNISMOの名も出ていた)。

脚注[編集]

  1. ^ 分類番号は現在は軽自動車を含めてすべて3ケタであるが、現在でも2ケタの番号を使っているものがある。
  2. ^ 30や60番台、600番台など普段は割り当てられない番号がよくつかわれる。
  3. ^ 89など88以外の分類番号も発行されたことがあるが、ごく一部の地域のみで、ごく少数である。
  4. ^ 90年代後半からホンダの後釜としてスポンサーに就いた後一時離脱を経て2000年代中盤からスポンサーに復帰。

外部リンク[編集]

  • IGCD.net ゲームの劇用車のデータベース