ハイ・ファンタジー

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ハイ・ファンタジー

ハイ・ファンタジー英語: High Fantasy)は、ファンタジーのサブジャンルの1つ。対立する概念としてロー・ファンタジーがある。

ハイ・ファンタジーの用語はロイド・アリグザンダー1971年に発表したエッセイ『High Fantasy and Heroic Romance』で初めて用いられた[1]

ハイ・ファンタジーとは、現実の世界ではなく、架空の世界のファンタジーとして定義される[1]。その架空の世界は(架空世界内では)一貫しているが、現実の世界とは異なる「法則」で成り立っている[1]。逆にロー・ファンタジーは、現実の世界に魔法の要素が含まれていたり、架空の世界であっても(現実の世界として)合理的で親しみのある世界に魔法の要素が含まれている[1]

ウィリアム・モリスは架空の中世的世界を舞台にした数多くのロマンス作品を執筆したが、『世界のはての泉英語版』は最初のハイ・ファンタジーの例と見做されている[2]。また、J・R・R・トールキンの『指輪物語』は代表的なハイ・ファンタジーと見做されている[2]

その他の定義[編集]

次のような定義もある。

  • ハイ・ファンタジーは異世界そのものを舞台とする。ロー・ファンタジーは現実世界を舞台として本来現実には存在しない異世界の住民や魔法が登場する[3][4]

また、社会学者の高橋準は著書『ファンタジーとジェンダー』において、ハイ・ファンタジーを以下の3系統に大別している[4]

  • 最初から最後まで異世界が舞台。登場人物も舞台となる異世界の住民のみ。『指輪物語』、『ベルガリアード物語』など。
  • 現実世界の住民が異世界に紛れ込む。『ナルニア国物語』、『はてしない物語』、『扉を開けて』など。
  • 歴史や神話の世界を舞台とするもの。史実や神話のストーリーが改変されることもよくある。『アヴァロンの霧』、『プリデイン物語』など。
    • 歴史や神話世界を舞台とする作品の亜種として、未来世界や未来の地球外惑星を舞台とする『ダーコーヴァ年代記』(マリオン・ジマー・ブラッドリー)、『パーンの竜騎士』(アン・マキャフリイ)、『西の善き魔女』、『風の谷のナウシカ』、『BASARA』など。
    • しかし、上記の三項目においては1970年代にアメリカで編集されたファンタジー業書の著者たちにより、ハイ・ファンタジーとは成り得ないものとして、ファンタジーの四大元素という内訳で分類されていることも明らかである。
    • この世ならざる法則を扱う異世界を描くハイ・ファンタジー、現実世界の延長線上にある存在としてのこの世ならざる法則を描くロー・ファンタジー、現実世界の過去を描く(多くはアーサー王伝説を基軸として描かれている)、現実世界の未来を描くSFとの親和性が高いファンタジーが正確な分類ではないかと思われる。なお、主人公が現実世界の住人から異世界の住人になる、転移転生召喚はロー・ファンタジーの一分野であるとも言える。

また、ハイ・ファンタジーとロー・ファンタジーは厳密に分類されるわけでもないし、絶対的な区分もない。一例として『ハリー・ポッターシリーズ』は現代イギリス社会に魔法が入り込んでいるという観点からはロー・ファンタジーであるが、現実世界から切り離されているホグワーツ魔法魔術学校内や学校周辺は異世界的でありハイ・ファンタジーと言える[4]。このように一つの作品でハイ・ファンタジーとロー・ファンタジーとの混淆が起きることもよくある[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d ブライアン・ステイブルフォード (2005). The A to Z of Fantasy Literature. Scarecrow Press. p. 198. ISBN 0-8108-6829-6 
  2. ^ a b ガードナー・ドゾワ. “Introduction”. Modern Classics of Fantasy. ISBN 031215173X 
  3. ^ 一柳廣孝吉田司雄『幻想文学、近代の魔界へ』青弓社、2006年、181頁。ISBN 978-4787291790
  4. ^ a b c d 高橋準『ファンタジーとジェンダー』青弓社、2004年、27-30頁。ISBN 978-4787232342

関連項目[編集]