ダーク・タワー

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ダーク・タワー』(The Dark Tower)は、スティーヴン・キング長編小説。全7部構成(シリーズではなく、長編の分冊ということになっている)。英国幻想文学大賞を受賞した。キング自身ライフワークと称する作品で、アメリカ西部開拓時代を思わせる荒廃した世界(中間世界)を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドと仲間たちの壮大な旅を描く。

ストーリー[編集]

黒衣の男は飄然と荒野の彼方に逃げ去り、ガンスリンガーはその後を追った。

荒廃し、なにもかもが変転していく世界を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドが暗黒の塔を探索するという物語。「暗黒の塔」は、存在するすべての世界と宇宙を中心でつなぎとめていると言われ、この「塔」が倒壊しかけていることがこの世界の荒廃の原因である。ローランドの目的はこの「塔」を見つけて修復することであった。途中、様々な人物と出会い、時に旅の仲間を得ながら探索を続けるローランドだが、様々な困難が彼ら「カ・テット」(カ=運命によって結束した仲間)にふりかかることになる。

主要登場人物[編集]

ローランド・デスチェイン(Roland Deschain)
主人公。最後のガンスリンガー。ギリアドの末裔。塔に至る為ならば如何なる犠牲をも厭わない冷酷な性格だったが、長年の孤独の後に仲間と出会い、徐々に人間性を取り戻していく。高熱に浮かされたり、毒が体に回っても何日間と眠らずにいられるという強靭な体力の持ち主であると同時に、凄腕の拳銃遣いでもある。右利きだが、ある事件から左利きのガンスリンガーとなる。(カ・テットの指導者)
エディ・ディーン(Eddie Dean) 第2部以降
麻薬中毒者。馬鹿馬鹿しいジョークを連発してローランドを辟易させるが、頭の回転は早く鋭いものの見方をする。子供のころから兄ヘンリーに気を遣って生きてきたため、彼の中で兄の存在が絶対となっていた。麻薬の運び屋に手を染めていたところをローランドによって中間世界に引き込まれ、ガンスリンガーとなる。(カ・テット)
スザンナ・ディーン(Susannah Dean) 第2部以降
事故で足を無くした多重人格(オデッタ・ホームズとデッタ・ウォーカー)の女性。本来の人格は、冷静ながら情熱的。富豪でありながら、デッタの影響から万引きを趣味としていた。エディの献身的な愛によりオデッタとデッタの人格が統合され、新たな人格スザンナを生み出した。のちにエディの妻、ガンスリンガーとなる。(カ・テット)
ジェイク・チェンバーズ(Jake Chambers)
ローランドが一度見捨てた少年。黒衣の男を追う途中で千尋の谷に落ちるが、のちにローランドの手で救われる。ニューヨークの私立小学校に通っており、成績は学年トップクラスだった。家庭は裕福だが、両親の愛情を受けられず、決して幸福ではなかった。“タッチ”というテレパシーに似た、人の思考に触れる能力がある。(カ・テット)
オイ(Oy)
旅に加わった小動物。中間世界に生息している高い知能を持った種族ビリー・バンブラーであり、の中間のような姿をしている。人間の言動をまねすることができ、ジェイクとは深い絆で結ばれている。(カ・テット)
ドナルド・キャラハン(Donald Callahan) 第5部以降
もとセイラムズ・ロットという町の神父吸血鬼を見分けられる。セイラムズ・ロットの事件後、神父をやめて放浪しつつ吸血鬼を狩り続けた結果、異なる世界に足を踏み入れる事になる。最終的に、中間世界のある村にたどり着いた。実は『呪われた町』の登場人物。(カ・テット)
黒衣の男、不老の異邦人、リチャード・ファニン、ランドル・フラッグetc.(Ageless Stranger, The Man in Black)
ローランドの仇敵。ローランドの父の右腕として振舞う一方、敵と通じてギリアドを崩壊に導いた。数々の名前を使い、ローランドの前に現れ対決する。名前は出生名のウォルター・オディム、ジョン・ファースン以外はすべてイニシャルがR・Fである。『ザ・スタンド』、『ドラゴンの眼』などにも登場する。深紅の王の部下。ローランドは彼を自らの手で打ち倒さねばならないという宿命を背負っている。
深紅の王(クリムゾン・キング、Crimson King)
カ・テットとローランドの敵。暗黒の塔を倒そうと画策する、謎の存在。キングの諸作品においても黒幕として語られている。
コート(Cort)
ローランド、カスバート、アランらの師。弟子を容赦なく殴り飛ばすなど厳しい言動を取る。ロ-ランドに大きな影響を与えた。動乱の最中に死亡。一説では、何者かに毒殺されたといわれる。
カスバート・オールグッド(Cuthbert Allgood)
ローランドの友人。ジェリコの丘の戦いで、フラッグに目を射抜かれて死亡。
アラン・ジョンズ(Alain Johns)
ローランドの友人。ローランド、カスバートとともに旅をする仲間。この三人が、ローランドにとって最初のカ・テットである。ローランド、カスバートに誤って撃たれ死亡。
スーザン・デルガド(Susan Delgado)
ローランドの初恋の相手。陰謀により町長殺しの嫌疑を掛けられたローランドを助けたことより火あぶりにされる。


作品解説[編集]

リンク[編集]

この小説について重要なのは、ほかのキングの多くの小説が、『ダーク・タワー』との関連を持っているということである。特に関係が深いものとして、『不眠症』、『ザ・スタンド』、『アトランティスのこころ』、『タリスマン』、『ブラック・ハウス』、『デスペレーション』、『レギュレイターズ』、『ドラゴンの眼』、『IT』などがあげられる。これらのリンクは作品において非常に重要であることもしばしばで、物語の展開にも深く関わっている。主要なものを列挙すると、

  • 本作品自体が、『タリスマン』、『ドラゴンの眼』などの作品の舞台でもある中間世界である。
  • 第4部『ザ・スタンド』での町が“超流行”つまり“スーパーフルー”で壊滅した町として登場する。
  • 第5部『呪われた町』の登場人物であるキャラハン神父が、重要な役柄で登場する。 
  • 第7部『アトランティスのこころ』、『何もかもが究極的』、『不眠症』から、それぞれテッド・ブローティガン、ディンキー・アーンショー、パトリック・ダンヴィルが登場する。とくにパトリック・ダンヴィルは終盤での重要人物である。
  • 第7部『IT』のIT(ペニーワイズ)=ピエロに酷似したものが登場する。

このような関連性からまず言えることは、本作品がスティーヴン・キングの作品世界の集大成だということである。キングの世界観は、以前から『IT』、『タリスマン』、『不眠症』等の作品で、多次元世界の思想、など、いくつかの種類の動物の姿をとった世界の守護者の存在、破壊者(ブレイカー)・ビームの概念、そしてそれを脅かす深紅の王(クリムゾン・キング)について少しずつ言及されてきた。しかし、『ダーク・タワー』の完成を見るまでは、その全体像はまったく不明と行っても過言ではなかった。本作品の完成で、その存在の正体、意味などが(未だ不明な点があるにしろ)明らかになったのである。即ち、キングの諸作品において怪奇事件や不可解な出来事が発生したのは、全て「暗黒の塔が狂ったから」であり、ローランドの目的はキング世界全体を救済する事であった。

ダーク・タワー世界[編集]

『ダーク・タワー』(とその系列にある作品中)には登場人物たちの背後にある2つの勢力の対立が描かれている箇所も多い。その背後にある力は、ここでは<純白>の勢力(善)と<深紅の王>の勢力(悪)の対立となっている。

<純白>は、ローランドの先祖、アーサー・エルド王(円卓の騎士などで知られるアーサー王)の古くからの勢力である。

そして、そのどちらにも加担し得る力として<カ>(ちからではなく)が登場している。この<カ>の定義は非常に難しいが、いわゆる“ロースピーチ語”での「運命」という語がもっともよく当てはまる。または「個人の<カ>」という使い方をする場合、「個人の運命」だけでなく「個人の意志」をも表すようだ。<カ>の語源には諸説あるが、もっとも有力なのはヒンドゥー教カルマ(業)である。「運命」には善悪は関係しない。したがってこの<カ>は、善悪に関係なく働くといわれる。実は、この<カ>の源は動物の形をとる守護者のひとり、である。亀は12の守護者の中で最高の格のものとされ、<ギャン>とも呼ばれる。

ギャンと暗黒の塔を支える魔法の力(ビーム)は、万物の原初の創造の源(プリム)から誕生した。宇宙はこのギャンによって創られたとされる。ここで重要なのは、塔がいくつもの世界・宇宙を一点で結んだ事である。が、長い時間の中でプリムが衰退し、暗黒の塔とビームだけが残った。魔法の時代の終焉である。

次にやってきたテクノロジーの時代では、<偉大なるいにしえの人々>が、全世界・宇宙を支配しようとした。宇宙と世界が無限にあることを彼らは見つけてしまったのである。当然暗黒の塔に手を出してビームを機械に置き換え、永久的であった魔法を損ねてしまった。世界と世界を結ぶ(機械の)ドアを造ったのも彼らである。最終的には疫病生物兵器により彼らは自滅していった。ただし人々は、それらの行いに対しての償いとして12のサイボーグの守護者の偶像を造った(12という数字は、6本の細長いビームが塔を中心に放射状に配置されていて、その端を守護することによる)。それから数千年がたち、ローランド・デスチェインらの騎士とガンスリンガーの時代が来るのである。   ローランドの時代、ビームはすでに衰えており、深紅の王という強大な存在が暗黒の塔を倒壊させようとしていた。そのため、ローランドは自身の先祖であるアーサー・エルド(アーサー王)の末裔として、暗黒の塔をめざすことになる。この過程で、それぞれ別の年代のニューヨークにいたジェイク、エディ、スザンナを、世界の間をつなぐ(魔法の)ドアから引き入れたのである。このことが実は、まだ力を失っていない<ギャン>=<カ>の意志であった。それ故にこの一団は、<カ>によって結束した人々=<カ・テット>と呼ばれるのである。

塔を守るためにはそれを支えるビームを守らなければならない。物語が始まった時点で3本あったビームだが、1本は旅の途中で折れてしまった。中間世界を通るもの、ニューヨークのある世界を通るものの2本を、彼らは救わなければならなくなる。 [1]

旅の人間ドラマ[編集]

物語を進行させる一つの要素はキャラクター造形である。ローランドの仲間となるジェイク、エディ、スザンナ、オイらを初め、途中通過する<タル>や<河の交差点>、<ラド>、<カーラ>、メイン州ニューヨーク、<雷鳴>などの人々、そしてウォルターら悪役は皆それぞれに個性的である。旅の途中にはかれらが互いにくりひろげる人間ドラマが多くあり、それら一つ一つの過程があって初めて長大な旅を続けられるのである。

さらに物語の流れから、物語全体は大きく1から4部と5から7部に分けられる。前者はローランドによる<カ・テット>形成を主とした部分であり、後者は彼らが塔とその世界を救おうと戦い、仲間の死と<カ・テット>の崩壊を経ながらもなお塔をめざす、<カ・テット>の塔への旅の部分である。

シリーズ構成[編集]

  • ダーク・タワーI ガンスリンガー (The Gunslinger) 1982年、加筆版は2003年
  • ダーク・タワーII 運命の三人 (The Drawing of the Three) 1987年
  • ダーク・タワーIII 荒地 (The Waste Lands) 1991年
  • ダーク・タワーIV 魔道師と水晶球 (Wizard and Glass)1997年
  • ダーク・タワーV カーラの狼 (Wolves of the Calla) 2003年
  • ダーク・タワーVI スザンナの歌 (Song of Susannah) 2004年
  • ダーク・タワーVII 暗黒の塔 (The Dark Tower) 2004年

執筆と出版、日本語訳[編集]

キングは、まだ大学生であった1970年ごろから構想を温めており、ロバート・ブラウニングの詩『童子ローランド、暗黒の塔に至るChilde Roland to the Dark Tower Cameを読んだことが、構想を得たきっかけである。また、『ザ・スタンド』同様、J・R・R・トールキンの『指輪物語』にも影響を受けている。

1970年代から断続的に書き進められたが、完成させるまでに30年ほどかかっている。最後の3部は、第4部が出版されてからかなり間を置いて執筆・出版された。この3部がこれほど早く執筆された(2001年から2003年)理由についてキング自身は、自分が死んでから、ダーク・タワーを「未完の部類に入れたくなかった」[2]と言っている。1999年に交通事故にあい、死への恐怖が生まれたことで完成させることを決意したらしい。ただ、この3部のプロットがある程度決まっていたことは、『不眠症』など事故前の作品に伏線があることから推測できるだろう。

日本語訳は、当初角川書店から池央耿の訳で第1、2部が、風間賢二の訳で第3、4部が刊行されていたが、アメリカで出版が滞ったために中断された。その後、2003年になってアメリカで続巻の出版が始まったため、2005年からすべて風間の訳で統一され、新潮文庫から刊行が開始された。この新潮文庫版の第1部『ガンスリンガー』の日本語訳は、流麗な文体で知られている池央耿の旧訳を参考にしている。ただし、キング自身が全巻を書き終えたのちに、矛盾を取りのぞく目的で『ガンスリンガー』を一部改訂したため、全く同じ物を改訳したというわけではない。第1部は執筆当初の文章をそのまま生かした独特の文体である。また、原書では愛蔵版に付されている挿絵が、新潮文庫版に収録されている。挿絵は毎巻別のアーティストによって描かれ、かなり豪華な仕様である。新潮文庫版のカバーについては、すべてスティーブ・ストーン(Steve Stone)の手によるものだが、第5部以降は日本限定である。

マーベル・コミック社によってコミック化されている(現在の所、邦訳は予定されていない)。

新潮文庫版[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 出典:スティーヴン・キング『ダーク・タワーVII 暗黒の塔』新潮文庫 解説より簡略化して出典
  2. ^ 『ダーク・タワーI ガンスリンガー』“はじめに”より

外部リンク[編集]