小人 (伝説の生物)
小人(こびと)とは、世界各地の伝承や伝説に登場する小型の人間、または人間に近い容姿を持つ神や精霊、妖精などをさす。侏儒(しゅじゅ)矮人(わいじん)と記されることもある。
伝承・伝説の小人[編集]
日本神話ではスクナビコナ、またアイヌ神話ではコロポックルが伝説上にあらわれる小人の存在として有名である。
古代中国の伝説上の異国のひとつに小人(しょうじん)があり、小人国あるいは小人島に住んでいるとされる[1]。
説話・物語の小人[編集]
日本の昔話、説話文学には一寸法師(『御伽草子』)など、小人が主人公として登場するものがある。多くの場合、結末やそれ以前の展開において体が大きくなる(一寸法師でいえば「うちでのこづち」を使い、背が大きくなっている)[2]。『竹取物語』のかぐや姫も竹の中から見つけ出された時は、3寸ばかりの小さな女の子であったと描写されているが、竹から出された後は成長をしている。
『グリム童話』などにも白雪姫を家に住まわせてやる登場人物として森の中に棲む小人(Sieben Zwerge、ドワーフ)が登場している。
アイルランドの作家・家ジョナサン・スウィフトによる小説『ガリヴァー旅行記』に登場する小人の国「リリパット」(Lilliput)の住人は広く知られている。西欧のファンタジー作品などでは「リリパット」という名称で小人が登場したりもしている。
妖精としての小人[編集]
西欧に伝わるフェアリー(fairy)には様々な種類の姿があるが、その一つとして「ごく小さい妖精」「小妖精」(Diminutive fairies)というものがあり、花やキノコの上に乗るくらいの大きさをしている[3]。イングランドではそのような小さな妖精をエルフ(Elves)と呼んでおり、シェイクスピアの『夏の夜の夢』では「小さきエルフたち」という呼ばれ方を見ることが出来る[4]。イングランドコーンウォール州では「コーンウォールの小さい人」(Small people of Cornwall)[5]、アイルランドではレプラコーン(Leprechaun)、ドイツなどではドワーフ(Dwarf)、スカンジナビア半島ではトロール(Troll)が小人として伝えられている。
作曲家・エドヴァルド・グリーグの『抒情小曲集』第1集(1867年)第4番には「Alfedans (Elves' dance)」という曲がある。日本では現在「妖精の踊り」と翻訳されるが、昭和の前半までは「小人の踊り」[6]と翻訳されていた。西欧においてエルフ(妖精)が小人のすがたをとっていると捉えられていたことを踏まえての訳語である。
ファンタジー作品などでは、ドワーフ(Dwarves)やノーム(Gnome)は働き者で人間に対して友好的な小人の一族として登場している。
明治・大正時代以降に幼年向けの童話作品などを通じて日本で一般的になったファンタジー作品の「小人」は、このフェアリー・エルフ・ピクシーなどを指したものがほとんどを占めている。「小人」という呼称の使用は商業出版物では新規に用いられることは無くなりつつあるが、漫画・アニメなどの創作作品で「小人のイメージ」が登場する場合も、おとぎ話の一寸法師イメージを除けば基本的にはフェアリー的な意味合いの「小人のイメージ」が用いられることが主流である。
実在としての小人[編集]
インドネシアのフローレス島で2004年に発掘された1万3000年~3万8000年前の成人と思われる遺骨7体から、今まで知られていない身長1メートル前後の骨格が見つかり、ホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis、フローレス人)と名づけられている[7]。ただし実在した新種の人類であるのか、小人症の人類の骨格であったのか学者間でも意見が分かれている。実在した新種の人類であったとすれば、伝説として語られて来た小人族は、古代においてある地域において実在していた可能性があり、それが伝承として残っていた可能性もあるといえる。
脚注[編集]
- ^ 寺島良安 『和漢三才図会』3、島田勇雄・竹島純夫・樋口元巳訳注、平凡社〈東洋文庫〉、1986年、351頁。
- ^ 市古貞次 校注『御伽草子』下 岩波文庫 1986年 140-148頁
- ^ キャサリン・ブリッグズ 編著 平野敬一,井村君江,三宅忠明,吉田新一 共訳 『妖精事典』 冨山房 1992年 113-117頁 「ごく小さい妖精」の項
- ^ キャサリン・ブリッグズ 編著 平野敬一,井村君江,三宅忠明,吉田新一 共訳 『妖精事典』 冨山房 1992年 41頁 「エルフ」の項
- ^ キャサリン・ブリッグズ 編著 平野敬一,井村君江,三宅忠明,吉田新一 共訳 『妖精事典』 冨山房 1992年 122-123頁 「コーンウォールの小さい人」の項
- ^ 東京音楽書院編輯部 編著『二十四のピアノ小品集』東京音楽書院 1943年 24頁
- ^ Brown, P.; Sutikna, T., Morwood, M. J., Soejono, R. P., Jatmiko, Wayhu Saptomo, E. & Rokus Awe Due (October 27, 2004). "A new small-bodied hominin from the Late Pleistocene of Flores, Indonesia.". Nature 431 1055-1061. DOI:10.1038/nature02999
関連項目[編集]
小人
- エルフ
- コリガン (小人)(ブルターニュ人の民族伝承)
- コロポックル
- 小人(しょうじん、中国の伝説)
- タマオロノ・リパラサウ
- ドワーフ
- トントゥ(北欧の民間伝承)
- ノーム
- フェアリー
- ホビット(『指輪物語』)
- メネフネ - ハワイに伝わる。
- リリパット(『ガリヴァー旅行記』)
- レプラコーン
その他
- シュリンカー (フィクション) 人間が極端に小さく変身してしまうこと。
- ピグミー
- 小さいおじさん