防災
この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。(2011年4月) |
防災(ぼうさい)とは災害を未然に防ぐための各種行為、施策、取り組みをいう。災害の概念が広いので地震や風水害のような自然災害のみならず、火災、爆発のような人為災害、あるいは伝染病のようなものへの対応も含めて使われることがある。
防災に類似した言葉で危機管理という表現がしばしば用いられる。いずれも何らかの具体的な行為によってリスクを減らすことが目的であるが、危機管理は事後の対応も含んだやや広い実務的な概念として使われることが多い。
防災体制
日本の防災体制
概説
日本では、一義的に防災任務に当たるのは、市町村とされており(災害対策基本法)、都道府県や国は市町村をバックアップ・支援する機関として位置づけられている。国レベルで防災に関与している省庁は内閣府を筆頭に警察庁、消防庁、国土交通省、国土地理院、気象庁、文部科学省、厚生労働省、防衛省など多岐にわたる。総理大臣の諮問機関として中央防災会議があり、ここでは大規模地震のための対応など国家レベルでの各種行動計画を策定している。
国家レベルでの取り組み例は、ダム、防波堤などの防災施設の設置(ハード対策)、住民への周知、避難対策(屋内退避、ソフト対策)等であり、公共事業などにより充実が図られている。
土砂災害に関する防災対策を例にとれば、1950年代には年間数千人前後を記録していた死者数も、防災対策が進んだ1970年代には年間500人前後に、さらに1990年代以降には年間数十人と確実に減少しており、効果が証明されている。
一方で市町村レベルでは防災計画の策定や防災用品の整備をはじめとする様々な防災施策を担当する。ただし小規模な自治体では防災に割ける人員・予算が限られており、専ら水害ないし地震に対する施策にとどまっている例が散見される。また広域災害になると市町村レベルでは限界があることも指摘されている。一方で行政だけでなく地域住民の互助を促し、住民による防災を進めることの重要性も指摘されている。
防災基本計画
災害対策基本法第34条、第35条に基づいて、中央防災会議が作成する国の基本指針を示す防災計画。防災に関する総合的かつ長期的な計画、中央防災会議が必要とする防災業務計画および地域防災計画作成基準を示す。対象とする災害は震災、風水害、火山災害、雪害、林野火災で、防災予防、発生時の対応、復旧等を記しておく。内容は行政側のみではなく、住民側の防災対応策についても記述されている。
防災安全街区
道路、公園等の都市基盤施設が整備されるとともに、医療、福祉、行政、避難、備蓄等の機能を有する公共施設・公益施設が集中立地し、相互の連携により被災時における最低限の都市機能を維持できる街区。普段からの安心まちづくり、非常時の危機管理に対応したまちづくりを実現することを日的としている。次世代の都市として環境、エネルギー、情報通倍等と連動したエコシティの一部として整備されることが望まれている。
防災街区整備事業
密集市街地整備法に基づき、建築物の権利変換による土地、建物の共同化によって、老朽化した建築物を除却し、防災性能を備えた建築物および公共公益施設の整備を行う公共事業。防災街区整備地区計画として、地区の防災性の向上を目的とする地区計画を適用する。その上で密集市街地における耐火建築物の整備、不燃化促進、敷地広さに関する制限等を定め、道路、公園等の防災公共施設の整備とともに、災害に強い街区の形成を図る市街地開発事業。
実施事業
- 東岸和田駅東地区防災街区整備事業 大阪府岸和田市土生町
- 板橋三丁目地区防災街区整備事業 東京都板橋区
- 寝屋川萱島桜薗町地区防災街区整備事業 大阪府寝屋川市
- 寝屋川市萱島東地区防災街区整備事業 大阪府寝屋川市
- 関原一丁目中央地区防災街区整備事業 東京都足立区
- 那覇市農連市場地区防災街区整備事業 沖縄県那覇市
このほか、東京都墨田区が住宅市街地総合整備事業(密集市街地整備型)を進めている京島二・三丁目地区内で、新たに防災街区整備事業の事業化を検討している。
防災まちづくり事業
地域の地理的、気候的条件や都市構造、地域の実情に応じた災害に強い安全なまちづくりを促進するために、1986年から2001年まで行われた公共事業。現在は防災基盤整備事業および公共施設等耐震化事業に継承され、防災拠点施設整備や建物の不燃化と耐震化を推進している。
防災拠点
地震等の大規模な災害が発生した場合に、被災地において救援.救護などの災害応急活動の拠点、拠点となる施設。的確な情報提供、災害対策の体制構築、計画実施、救援救助や応急復旧活動、負傷者等の安全な受け入れ、医療支援等、復旧活動の中心となる。防災計画によって当該県庁や市役所役場、消防署、警察署、学校、病院、大規模な公園等が指定されている。
防災公園
都市の防災機能向上により安全、安心な都市づくりを図るため、地震災害時の復旧・復興拠点や中継基地となる防災拠点、周辺地区からの避難者を収容し、市街地火災から避難者の生命を保護する避難地として機能する地域防災計画に付置づけられる都市公園等をいう。 地域防災計画に基づき、公園には広域避難基地機能、備蓄倉庫耐震付貯水槽、放送・情報通信施設、ヘリポート、延焼防止用散水施設が整備される。 公庫補助事業として、防災公園街区整備事業 (住宅市街地総合整備事業制度要綱に基づく密集住宅市街地整備型重点整備地区を含む整備地区)がある。
防災生活圏
既往コミュニティの活動範囲を目安に日常的な生活圏を基本として、道路や公共不燃化建物による延焼遮断帯で囲まれた小、中学校区程度の区域をいう。 防災生活圏ごとに避難場所となる公園整備をはかり、防災拠点となる公共施設に隣接させるなど、防災まちづくりの基本単位としている。
延焼遮断帯
大規模な地震等において、市街地大火を阻止する機能を果たす、道路、鉄道、公園等の都市施設と、それらの沿線の範囲に建つ耐火建築物により構築される帯状の不燃空間のこと。
防災地図
避難場所や避難経路、防災施設、防災拠点等が示された地図で、災害発件後の行動の拠り所となる。ハザードマップのように危険予測図的な内容が含まれる場合もあり、災害時のがけ地の崩壊や水害による洪水等の危険箇所を示したもの。また、こうした地図作成には、地元まちづくり団体や地域住民自身が協働で作成しているものもある。
文化遺産防災
文化遺産とその周辺地域を一体的に災害から守る防災の考え方で、内閣府では地震対策の検討項目として位置づけられている[1]。人の命と生活を守り、さらに文化をも守ることを目指し、地域の防災力を高めようとしている[2]。
海外の防災
天災とは、人間がコントロールできない災害であるとして、日本のように巨額の防災対策関係費を計上する国は希有である。
アメリカ合衆国を例にとれば、土砂災害(地すべりなど)による防災対策は、国ではなく土地所有者が行うべきものとされるなど、自己責任の原則が貫かれている。
しかしながら2000年代に入ると、スマトラ島沖地震による津波災害、ハリケーン・カトリーナによる洪水災害など、規模の極めて大きく、かつ、事前の予知が可能とされた自然災害が頻発している。このため徐々に、国家レベルの自然災害対策の重要性が認識され始めたところである。災害規模と貧困の関係もあり、なかなか難しい面もある。
防災に関する研究
日本は、地震・津波・台風・洪水・高潮・高波・火山の噴火・雪崩など世界的に見ても自然災害の多い国であり、古くから災害に関わる研究が積極的に行われてきた。21世紀初頭における今日では、自然災害に関する研究の中でもとくに防災あるいは減災という視点での研究がさかんである。日本の防災に関する研究拠点としては、京都大学防災研究所や防災科学技術研究所が挙げられる。
脚注
参考文献
- 京都大学防災研究所編『防災学講座第4巻 防災計画論』、山海堂、2003年
関連項目
- 防災一般
- 防災に関わる日
- 防災に関わる準備
- 防災と都市計画
- その他