全国瞬時警報システム
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全国瞬時警報システム(ぜんこくしゅんじけいほうシステム、通称:J-ALERT(ジェイアラート))とは、通信衛星と市町村の同報系防災行政無線を利用し、緊急情報を住民へ瞬時に伝達するシステムのことである。
2004年度から総務省消防庁が開発および整備を進めており、実証実験を経て2007年2月9日から一部の地方公共団体で運用が開始されている。
対処に時間的余裕がない大規模な自然災害や弾道ミサイル攻撃等についての情報を、「国から住民まで直接瞬時に」伝達することができるという点がJ-ALERTの最大の特長である。住民に早期の避難や予防措置などを促し、被害の軽減に貢献することが期待されており、導入により地方公共団体の危機管理能力が高まるとされている。
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[編集] 概要
J-ALERTは、大規模災害や他国による武力攻撃等の緊急事態が発生した際に、国民の保護のために必要な情報を、通信衛星(SUPERBIRD B2)を利用して瞬時に地方公共団体に伝達すると共に、地域衛星通信ネットワークに接続された同報系市町村防災行政無線(以下、「防災行政無線」)を自動起動させ、住民へ緊急情報を伝達するシステムである。
国民保護法に基づく国民保護体制を運用面から支えるものとされている。
[編集] 情報伝達の流れ
緊急事態の発生から住民に情報が伝達されるまでの大まかな流れは、以下のとおりである。
- 緊急事態の発生とその覚知
- 消防庁へ情報伝達
- 気象庁または内閣官房は、覚知した緊急事態について、消防庁に情報を伝達する。
- 地方公共団体へ情報伝達
- 消防庁は、通信衛星(SUPERBIRD B2)を経由し、緊急情報を全国の地方公共団体へ配信する。
- 住民へ情報伝達
- 消防庁からの緊急情報を地方公共団体が受信。市町村において防災行政無線が自動起動され、サイレン吹鳴や音声放送等により、情報が住民へ伝達される。
[編集] 伝達される情報
J-ALERTで伝達される情報は、以下のとおりである。 ただし、当面は気象庁からの情報(1-7まで)のみを対象とすることとなっている。[要出典] また、どの情報について防災行政無線を自動起動させるかを市町村で決定できることとなっているが、大津波警報、津波警報、緊急火山情報については、自動起動が原則とされている。
- 緊急地震速報(予測震度5弱以上)
- 大津波警報、津波警報
- 津波注意報
- 緊急火山情報、臨時火山情報等
- 気象警報等
- 震度速報
- 東海地震予知情報等
- 指定河川洪水予報
- 土砂災害警戒情報
- 弾道ミサイル情報
- 航空攻撃情報
- ゲリラ・特殊部隊攻撃情報
- 大規模テロ情報
[編集] 自動起動対象のフィルタリング
消防庁から情報を配信する際、情報の種類を識別する情報番号と対象地域コード情報を一緒に送信することにより、放送内容の自動選択および防災行政無線を自動起動させる地方公共団体のフィルタリングが可能となっている。これにより、必要な情報を必要な場所に伝達できるようになっている。
なお、このフィルタリング機能により、防災行政無線が自動起動するのは原則として気象災害等の対象地域のみとなるが、武力攻撃に関する情報(弾道ミサイル情報、航空攻撃情報、ゲリラ・特殊部隊情報、大規模テロ情報)については、その特殊性と拡大可能性の大きさから、攻撃対象地域以外の地域についても「通知・伝達地域」および「参考情報地域」として防災行政無線が自動的に起動する。
[編集] 経緯
J-ALERTに係る経緯は、以下のとおりである。
- 2004年11月
- 高知県芸西村において実証実験が実施される
- 2005年5月24日
- 経済財政諮問会議に提出された「麻生 安心・安全ビジョン」[1]内でJ-ALERTの開発・整備が発表される
- 2005年9月27日
- 中央防災会議でJ-ALERTの説明がなされる
- 2005年10月-2006年3月
- 「サイレン等による瞬時情報伝達のあり方に関する検討委員会」が開催される(全3回)
- 2006年1月-3月
- 15都道県、16市町村の参加の下で実証実験が実施される(詳細は次節参照)
- 2006年3月27日
- サイレン等による瞬時情報伝達のあり方に関する検討委員会の報告書[2]がまとまる
- 2007年2月9日
- 10都道県、4市町でJ-ALERTの一部運用が開始される
- 都道県(10団体)
- 北海道、埼玉県、千葉県、東京都、福井県、長野県、静岡県、兵庫県、鳥取県、福岡県
- 市町(4団体)
- 岩手県釜石市、埼玉県日高市、千葉県南房総市、兵庫県市川町
- 都道県(10団体)
- 2007年6月13日
- 消防庁より、岩手県釜石市および兵庫県市川町におけるJ-ALERTを用いた緊急地震速報の一般向け伝達試行の実施(6月18日)が発表される[3]
[編集] 実証実験
2006年1月から3月にかけて、15都道府県、16市町村の参加の下でJ-ALERTの実証実験が実施された。実験では、主に以下の確認が行われた。
- 都道県および市町村における緊急情報の適正受信
- 防災行政無線の自動起動
- 情報発信から放送までの所要時間
実証実験参加団体は下記の通り。
- 東京都豊島区、岩手県釜石市、北海道上富良野町、埼玉県日高市、群馬県川場村、長野県飯田市、静岡県吉田町、千葉県富浦町、福岡県前原市、愛媛県松山市、香川県宇多津町、鳥取県南部町、奈良県黒滝村、兵庫県市川町、福井県美浜町および越前市(15都道府県16市町村、実施順)
実験の際、消防庁からは弾道ミサイル攻撃情報、緊急地震速報、震度速報等が送信されたほか、複数の緊急情報を同時に送信するなどのテストも行われた。
奈良県黒滝村などでは屋外での公開実験が行われ、事前にその旨がプレスリリースされている。また、兵庫県市川町では、実験で伝達される情報を用いての図上訓練が行われ、千葉県富浦町でも実験に合わせて住民の避難訓練が行われた。
[編集] 実験結果
実験では、消防庁からの情報送信、地方公共団体での情報受信および防災行政無線の自動起動に成功したが、情報の受信までに1-2秒、自動起動による放送までに5-23秒を要するという結果となった。 「サイレン等による瞬時情報伝達のあり方に関する検討委員会」はこの実験結果を踏まえ、放送までに時間を要する主な理由等について検討を加え、今後改善していくべきポイントをまとめている[2]。
[編集] 今後の課題
今後の全国的な運用に向けては、次のような課題がある。
- 消防庁の担当者意識の低さ
- J-ALERTの消防庁における担当部署は国民保護室である。2008年度よりハード面で新しい機種がリリースされているが、この機種は動作試験における問題があるにもかかわらず、消防庁の担当者は早急な問題解決を図ろうとせず、「関係機関と協議中」といかにも役所の悪い面をむきだしにしたような対応しか行わない。消防庁自体が各自治体に整備を指導しているにもかかわらず由々しき問題である。
- 防災行政無線の整備推進と情報伝達経路の拡充
- J-ALERTは防災行政無線を活用する構成となっているため、その効果を最大限発揮するには当該無線の整備が必要不可欠となる。2008年3月31日現在、全国の同報系市町村防災行政無線の整備率は75.61%であり、未整備地域の解消が今後の課題とされている[4]。
- また、防災行政無線の特性上、聞き手が屋内にいる場合や、豪雨時、強風時などには情報が的確に伝達されないおそれがあることから、携帯電話等へのメール配信やCATV網を使用した伝達、ワンセグ放送を通じた伝達など、他の伝達経路の併用による情報伝達体制の強化も課題とされている。
- 防災行政無線の自動起動に要する時間の短縮
- J-ALERTはその趣旨から、秒単位の伝達スピードが要求される情報を取り扱うことが多いが、2006年に行われた実証実験では、前述のとおり情報の発信から防災行政無線による放送までに5-23秒の時間を要している。情報伝達に要する時間の短縮のため、屋外拡声子局の呼出方式の最適化、セレコール時間の短縮化、防災行政無線制御卓での情報処理時間の短縮化および合併した市町村における防災行政無線のシステム統合などに取り組むべきであるとされている。
- 他システムへの連動
- 既に地方公共団体が運用しているシステムにJ-ALERTを連動させることで、地方公共団体の全般的な危機管理能力の強化が期待できるとされている。J-ALERTとの連動が有効な例としては、主に以下のものが挙げられている。
- 職員の非常参集
- 消防機関等への一斉指令
- 非常電源の起動、など
- 誤作動を起こす可能性
- 2008年3月に岐阜県大野町で、また6月には福井県美浜町でそれぞれJ-ALERTが誤作動を起こすというトラブルが発生した。美浜町における誤作動では防災行政無線を介して「ミサイルが着弾するおそれあり」という放送が町中に流れ、誤報に気付いた町の職員が放送を停止、同無線で誤報である事を知らせたが、町民からは問い合わせが殺到したという。美浜町は原子力発電所(美浜原発)を抱えており、町は「あってはならないミスだ」として原因を究明している。さらに、8月13日には、愛知県庁とその出先機関20施設でも、ミサイル攻撃対象との警報が放送される誤作動があり、名古屋市役所での受信訓練中のミスとされた。
- 導入自治体の普及率
- 防災行政無線の設置費用を除いても1自治体あたり平均700万円の費用が必要なため、2009年4月1日現在、J-ALERTの受信システムを導入している自治体は15.7%(284市区町村)、防災行政無線などと直結させた自治体に限ると11.7%(211市区町村)に留まっている[5]。2009年4月4~8日には、北朝鮮が長距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を発射すると発表し、秋田県の沖合い130キロ付近を危険水域と発表した。また秋田県と岩手県の上空を通過することになり、発射が確認された場合は緊急警報を発報する必要があるが、J-ALERTによる伝達は「弾道ミサイルが日本をめがけて撃ってくる環境下で使用するもの」[5]との理由で見送られた。ただし、J-ALERTの設置自治体が1割強と低い事も理由とされている。そのため、首相官邸の危機管理センターが提供し、全国の7割の自治体で導入されている「Em-Net」(エムネット:緊急情報ネットワークシステム)を使用して伝達することになった。なお、Em-Net、J-ALERTとも導入していない自治体への警報伝達はファクシミリを使用した一斉同報送信に頼る事となり、J-ALERTの導入自治体を増やすことが重要となっている。
[編集] 脚注
- ^ 麻生 安心・安全ビジョン(平成17年5月24日)、消防庁
- ^ a b 全国瞬時警報システム(J-ALERT)についての検討会報告書、実証実験結果及び標準仕様書(平成18年3月27日)、消防庁
- ^ 全国瞬時警報システム(J-ALERT)を用いた緊急地震速報の一般への伝達の試行(平成19年6月13日)、消防庁
- ^ 市町村防災無線システムの整備数、総務省 電波利用ホームページ
- ^ a b 【北ミサイル発射】Jアラート整備へ財政支援 自治体対象に21年度補正で、産経新聞、2009年4月8日
[編集] 関連項目
- 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
- 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
- 災害対策基本法
- 国民保護
- 市町村防災行政無線
- 自治体衛星通信機構
- 緊急地震速報
- テロリズム
- 弾道ミサイル
[編集] 参考
- 全国瞬時警報システム(J-ALERT)についての検討会報告書、実証実験結果及び標準仕様書(平成18年3月27日)
- 全国瞬時警報システム(J-ALERT)による一部の情報の送信開始(平成19年1月10日)
[編集] 外部リンク

