コミュニティ放送

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コミュニティ放送(コミュニティほうそう)は、コミュニティ英語community)を放送単位とする日本放送局形態の1つ。すなわち、市区町村又は政令指定都市行政区内の一部の地域(隣接地域を含む場合あり)を放送対象地域とする放送である[1][2]

1991年(平成3年)に開局が認められることになったこの放送は、全てVHF(超短波)の放送帯(76.0~90.0MHz)の中の周波数を使用し、変調方式にはFM(Frequency Modulation、周波数変調)が使われているため、市販のFM対応ラジオで聴取できる。但し、1990年代後半の一時期、76.1MHz-76.5MHzの間での開局が原則とされていた時期がある。

俗に、コミュニティFM(コミュニティエフエム)とも呼ばれる。この場合の省略形はcFMまたはCFM。

エフエム椿台(秋田県)の旧局舎外観

目次

[編集] 概要

従来のFMの放送対象地域である広域放送県域放送より狭く、小規模のイベントや場内放送などで用いられるミニFMより広い範囲で活用される放送制度。その放送単位のサイズから、「地域密着」「市民参加」「防災および災害時の放送」がコミュニティ放送の特徴と言われる[3]。特に防災行政無線と比べてコストが1/10~1/100と低いため、自治体第3セクターで参入する例が多く見られる[4]臨時災害放送局も参照)。地域メディアとしてはCATVとよく比較される[4]

放送事業者は電波法による無線局免許が必要であり、第2級陸上無線技術士以上の資格保持者が技術責任者として従事する必要がある。しかし、規制緩和によって創設された制度であるため、電波法第7条6項の規定に基づく資料提出は不要である[4]

識別信号(コールサイン)は「JOZZ」で始まり、その後に1桁の数字(0~9の地域番号)と2桁のアルファベットが続く、計7桁のアルファベットと数字の組み合わせである(コミュニティFMではそれに「-FM」がつく)。

日本コミュニティ放送協会」(JCBA) が全国組織として存在しており、2010年(平成22年)9月1日現在、全国のcFM運営会社243社中201社が加盟している[5]。加盟局では、6月6日のコミュニティの日に共通番組「Cの力、Rの絆」を放送するほか、年に何回か統一番組を放送している。

[編集] 沿革

欧米では、1970年代規制緩和によってコミュニティ・ラジオ局が次々と誕生した[3]。その頃の日本では「地方の時代」とのキャッチコピーが見られるようになったが、ラジオにおける変化は1980年代に入ってからであり、微弱無線局の分野でまず「ミニFM」がブームとなり、その後、期間限定の「イベント放送局」が制度化された[3]

1980年代後半のバブル景気期には、放送普及基本計画に従ってテレビ放送の分野では民放TV全国四波化が進み、一方でラジオでは民放県域放送FM局の開局が進むなど、地方ローカル局が次々現れた[3]

このような放送の多様化の流れと同時進行で、1983年(昭和58年)に郵政省(現:総務省)が「テレトピア構想」を提唱し、1985年(昭和60年)の「ニューメディア時代における放送に関する懇談会」、1988年(昭和63年)からはじまった「放送の公共性に関する調査研究会」においてコミュニティFMについて言及がなされた[3]1991年(平成3年)7月に開催された臨時行政改革推進審議会(第三次行革審)では多様で個性的な地域づくりが提唱され、1992年(平成4年)1月放送法の一部改正を行ってコミュニティ放送は制度化された[2]1992年(平成4年)12月24日には「FMいるか」(北海道函館市)が同制度の第1号として開局している。

制度化後のおおよその制度の変化は以下のようになっている。

開局制限 空中線電力 凡その可聴域
1992年平成4年)1月10日[6] 1. 既存民放・外国籍・個人の参入不可
2. 市町村特別区及び政令指定都市)ごとに1局
3. 第3セクター型では自治体出資比率30%以下
1W以下 半径 2- 3km[3]
1995年平成7年)3月9日[6] 既存民放・外国籍・個人の参入不可 10W以下 半径 5-10km[3]
1999年平成11年)3月30日[6] 20W以下 半径15-20km[3]

なお、実効輻射電力(アンテナの利得によって強められ放射される実際の電力。EIRP)に関しては上限無しとされている。

1994年(平成6年)に北海道帯広市おびひろ市民ラジオ(FM-WING)とエフエムおびひろ(FM-JAGA)が競願、両者とも一本化を拒否したため、当時の郵政省が両局に免許交付を行い事態収拾を行ったこと、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災以後、地域における非常用伝達手段を確保することを理由に、市区町村単位での複数開局や空中線電力の増強など規制緩和が進んだ。また、エフエム熱海湯河原のように、県境(同局の場合は静岡県神奈川県)を越えた地域圏を放送圏域とする局が設置される例も現れた。

このような規制緩和と個人消費拡大、更には前述の震災による防災意識の高揚に支えられて、1996年(平成8年)から1999年(平成11年)の間に開設が相次ぎ、全国各地でこの放送形態が浸透した。一方でこの頃は失われた10年と呼ばれた時期でもあり、1997年(平成9年)4月1日消費税が5%へ引き上げられると、個人消費の冷え込みが始まり、開局はしたもののスポンサーを失って経営が苦しくなる局が出現し、1998年(平成10年)11月30日FMこんぴらが閉局した。ただし、既存の県域放送FM局を聴取率で凌駕し、FM局からCM移転を受けて経営が良くなる局も出現して、過当競争になる地域も生まれた。そのため、新規開局数は景気循環との相関が強くなり、ITバブル景気や2002年(平成14年)から2007年(平成19年)にかけての景気回復期などの景気拡大期には増加傾向が見られるが、谷間にあたる2000年(平成12年)と2003年(平成15年)の新規開局数は少なかった。

[編集] 経営

経営体としては、地方自治体と民間の共同出資による第三セクター会社が多いが、同様な地域性があるケーブルテレビ会社の子会社、地方紙タウン情報誌の子会社、特定非営利活動法人が運営する放送局もある。

通常のFMラジオ局では、都道府県内全域(県域放送)に連日放送を行う義務があり、本局は500 - 10kW、中継局では10 - 100W程度で放送を行っている。一方で、コミュニティ放送は、連日放送を行う義務はなく(但し連日放送を行っている局が多い)、放送を行う場所も、基本的に人が住んでいる「コミュニティ」のみをターゲットとして放送することができる。結果、聞こえる範囲は狭いが、放送が聞こえる場所には多くの人がいることから、通常のFMラジオ局と比べると、ある意味でコストパフォーマンスが良い。これは、航空法改正に伴う新規参入の場合と相通ずるところがある。

[編集] 自主制作番組

コミュニティ放送では、前述の「地域密着」「市民参加」「防災および災害時の放送」という特徴を生かし、さまざまな自主制作番組が放送されている。放送地域及びその周辺の住民がパーソナリティを務め、トークや音楽を流す番組や地域のイベントの中継、放送地域を本拠地とするチームのスポーツ中継などがその中心である。

[編集] 災害情報番組

1995年(平成7年)の阪神大震災では、当時のミニFM局・エフエムわいわいやその母体となるFMヨボセヨ・FMユーメンが、主に外国人向けに災害情報の提供を中心とした放送を行い、この年の「井植文化賞・国際交流部門賞」を受賞するなどの評価を受ける。エフエムわいわいは震災1周年の1996年(平成8年)1月17日、コミュニティ放送局として新たなスタートを切った。これを機に、災害時におけるコミュニティ放送の役割が注目されるようになる。

2004年(平成16年)、台風23号が近畿地方に上陸した時は、兵庫県豊岡市FM JUNGLEが、エフエムわいわいの支援を得て、公的機関からの被災者向け情報を外国語へ翻訳し、放送を行った。

同じ2004年(平成16年)に発生した新潟県中越地震の発生時には、既存の新潟県長岡市FMながおかの放送設備と周波数を活用し、臨時災害放送局が開設された。送信出力を通常の20Wから50Wに増力して、放送エリアも周辺の市町に拡大の上で、地震発生直後から3ヶ月の間、毎日午前7時から午後8時まで災害情報を提供し続けた。2007年(平成19年)の新潟県中越沖地震発生時には、被害が甚大であった新潟県柏崎市にあるFMピッカラが、本局から電波の届かない柏崎市の一部地域や隣接する地域にも放送エリアを拡大するため、中継局として長岡市に臨時災害放送局を開設し、1ヶ月間、災害情報を流し続けた。

2008年(平成20年)に発生した岩手・宮城内陸地震の時には、TOKYO FMが、被災地の一つである岩手県奥州市にある奥州エフエム放送と回線でつなぎ、「JFN報道特別番組」を編成し、現地からの情報をつぶさに伝えている。この時は、コミュニティ局の奥州エフエム発の放送が、岩手県の県域局・エフエム岩手でもストレートに流れるという、県域・コミュニティ共同制作の番組以外としては異例の事態となった。

2010年(平成22年)の奄美豪雨の際には、鹿児島県奄美市あまみエフエムが、携帯電話などのインフラが遮断された中、災害発生直後から24時間体制で、道路情報や安否確認の災害情報などを発信している。局には、情報を提供するリスナーからのメールやFAXが通常の約10倍の量届いたほか、被災者の避難所でも放送が頼りにされたという[7]

2011年(平成23年)に発生した東北地方太平洋沖地震の時には、未曽有の津波が岩手・宮城・福島を襲い、放送不能に陥った局もあったが、市役所などにスタジオを仮設し、「○○さいがいエフエム」という形で震災報道を継続。また、出力を最大の20Wよりも大幅に増力し(概ねの局が7~8倍)、情報を発信している。TOKYO FMは、茨城や千葉のコミュニティエフエムと回線をつないで、随時情報を届けている(「やまだひさしのシナプス」中)ほか、ニッポン放送なども東北のコミュニティ局と中継をつないだりしている。

[編集] スポーツ中継

県域ラジオやテレビのスポーツ中継に比べると使用する機材が少ないことや、ハイテクが進んだことによる機材の小型化などもあり、近年はJリーグ都市対抗野球大会などの大会を中心に中継する局も増えてきている。

[編集] スタジオ

2.FM HANAKOのスタジオ風景

人件費の関係上、番組の多くがパーソナリティが機器操作を(自分でCDを回しまたテープを再生しミキシングコンソールのフェーダーを調整したり、番組宛の電子メールをノートパソコンで直接読み出したり)しながら喋るワンマンDJスタイルである。

放送局のスタジオはその多くがサテライトスタジオ方式を採用しており、実際のスタジオ放送風景を自由に見学できるようになっている。

[編集] 再送信・ネット番組

自主制作番組のみで放送時間を埋められない放送局が多いため、他局などからコンテンツを購入する例が多い。外部から購入する局が多いため、結果的にネットワークが築かれたのと同様な状態にもなっている。番組販売により、放送時間が異なるネット化と、サイマル放送によるネット化が見られる。

[編集] 県域FM局・国外局・衛星・有線放送の再送信

J-WAVEをそのまま流す局も

コミュニティFMの中には、放送区域外の県域FM局・他国の放送局・衛星放送有線放送の放送内容を同時再送信(サイマル放送)している局がある。コミュニティFMはその小規模さ故に全時間を自局制作で埋めることが難しいためと見られる。独立U局における番組購入とは異なり、一定の時間帯において他局の放送をそのまま流すものである。コミュニティFM局側には労力をかけずに高品質の番組が放送できるメリットがあり、配信側の放送局にはエリア(聴取者)拡大という規模効果がある。中には一日の放送時間に占める再送信の割合が過半数を超えるも存在し、コミュニティFM局にもかかわらず地元の情報が流されない時間帯を多数生んでいる例がある。

東京都J-WAVEUSENSOUND PLANET経由)やミュージックバードを再送信している放送局が多く、特に夜間帯において実施する放送局が多い。スターデジオや有線放送CANの配信を受けている局もある。

北海道のNORTH WAVEを室蘭市のFMびゅーが、東京都等を放送対象地域とする外国語局インターFMを山形市のやまがたシティエフエムが、大阪府のFM802を滋賀県東近江市のびわ湖キャプテン、鳥取県米子市のDARAZコミュニティ放送が、福岡県のCROSS FMを熊本県阿蘇郡小国町のエフエム小国が一部時間帯で同時再送信している。かつてはFMアメリカというJFLMegaNet加盟局にも配信する会社の番組を受けていたところもあった。

また、米国ハワイ州KSSKサンフランシスコKOITを再送信していた局(仙台市民放送(閉局))や、ハワイ日本語放送KZOOを再送信していた局(沖縄県浦添市のFM21)もあった。

[編集] AM局の番組再送信

岩手県二戸市カシオペアFMは、県域局のIBCラジオの自社制作番組の一部を再送信している。岩手県北部は、地形及び周波数(本局684kHzの電波は夜間、近接する693kHzのNHK東京第2放送などの電波との混信が激しい)の関係でIBCラジオの難聴取地域が多く、特に二戸市では以前から補完を求める声が高かった。そのニーズに応えるため、2006年(平成18年)から再送信が始まった。2010年(平成22年)に開局した鹿児島県宇検村エフエムうけんでも、南日本放送の一部の番組の再送信を行っている。

[編集] コミュニティ局同士の番組ネット

県域放送による全国ネットやブロックネットと様相は異なるが、コミュニティ放送局同士でもさまざまな形で番組のネットを行い、受信エリアを拡大したり、聴取者数を増やしたりする試みが行われている。

[編集] 全国ネット

1997年(平成9年)9月から、共通番組「木村太郎のこの人と話したい」を全国コミュニティ放送協議会(2002年(平成14年)4月22日より日本コミュニティ放送協会)加盟全63局で放送した[6]。翌1998年(平成10年)1月からは加盟全82局で放送[6]。コミュニティ局は当時100局に満たなかったが、200局を超えた現在も日本コミュニティ放送協会加盟全201局(2010年(平成22年)9月1日現在)で6月6日のコミュニティの日に共通番組「Cの力、Rの絆」を放送し、各地区協議会で制作した番組も統一番組として全国の加盟局で放送している[8][9]

また、2004年(平成16年)には、Kiroroが全国のコミュニティ局を結んで交流を深める「hot pot Kiroro」という番組が放送された。

[編集] ブロックネット

地方ブロック単位で、その地方にあるコミュニティ局の多く(または全局)で放送され、ブロックネットに近いかたちで放送されている番組も存在する。例えば、東北地方では地方内に所在する全局が「東北コミュニティ放送協議会」(東北コミュニティ放送ネットワーク)に参加し、大半の局が共通番組の「ワンデイトリップ」を放送している。cFMのネットワークであるため東北地方の全住民が可聴域に入らないものの、ブロックネットに近い例である。

[編集] 地域圏ネット

同じ都道府県内や県境を挟んだ隣接地域のコミュニティ局同士で番組を共同制作をする例も見られる。

  • 「札幌方式」
2004年(平成16年)、北海道札幌市内にあるコミュニティー局が協力しあい、災害時に備えて共通同一の放送をするという企画が同市の協力の元に立ち上げられた。2007年(平成19年)現在、この札幌方式に同市内の全7局が参加し、毎週金曜日午後3時から午後4時に「そら色ステーション」の名称で同時放送されている。
  • 青函コミュニティFMネットワーク協議会(津軽海峡を挟む両岸)
FMいるか北海道渡島総合振興局函館都市圏)・Be FM青森県八戸都市圏)・FM AZUR(青森県むつ市)・FMアップルウェーブ(青森県・弘前都市圏)・FM JAIGO WAVE(青森県・弘前都市圏)の5局で「青函メッセージBOX」という10分番組を週1回、共同制作している。
  • 宮城県
サッカーJリーグ・ベガルタ仙台の試合を県内全5局で同時中継している。
仙台シティエフエム宮城県仙台都市圏)と山形コミュニティ放送山形県村山地方)で、「762EXPRESS」という週1回の10分番組をネットしている。
2010年(平成22年)10月から、エフエム西東京西東京市)・調布エフエム放送調布市)・エフエムむさしの武蔵野市)の3局の共同制作で、毎週月~金の午前11時から正午まで生放送で「ハッピーうーたん」という帯番組が放送されている。このうち、調布エフエム放送とエフエム西東京は、サッカーJリーグ・FC東京の試合も同時ネットで中継している(制作は調布エフエム)。
三遠南信のコミュニティ放送局参照。
半島内の4つのコミュニティ局でおおすみ半島コミュニティ放送ネットワークを組織し、番組をネットしている。

[編集] 企画ネット

同一クライアント、同一企画の番組を各局個別に制作し放送する例も見られる。FMやまとエフエム入間いちかわエフエムで実施している、まあるいしあわせスリーエフレポートなど。

[編集] 脚注

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  1. ^ 放送法施行規則 別表第1号(注)十四法令データ提供システム)から定義を以下に引用
    「一の市町村特別区を含み、地方自治法第二百五十二条の十九に規定する指定都市にあつては区とする。以下同じ)の一部の区域(当該区域が他の市町村の一部の区域に隣接する場合は、その区域を併せた区域を含む)における需要にこたえるための放送」
  2. ^ a b コミュニティ放送の新たな展開総務省
  3. ^ a b c d e f g h 日本におけるコミュニティFMの構造と市民化モデル 全文より(大阪市立大学大学院創造都市研究科 浅田繁夫)
  4. ^ a b c 多様化するコミュニティFM放送東京経済大学人文自然科学論集 第119号)
  5. ^ 日本コミュニティ放送協会
  6. ^ a b c d e 11. JCBA10年史 年表(日本コミュニティ放送協会「十年史」)
  7. ^ 地域FM、災害情報24時間生放送 南日本新聞 2010年(平成22年)10月24日付、2010年10月26日閲覧
  8. ^ JCBAについて(日本コミュニティ放送協会)
  9. ^ 東北発「Cの力、Rの絆」

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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