日本の救助隊

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現在の日本においては、通常の救助活動消防が担当し、海難救助海上保安庁が担当する。大規模な災害や事故になるとこれに加えて警察や陸海空自衛隊も投入される。また、多数の傷病者を救命するために災害派遣医療チームも派遣され各防災機関と連携した医療活動にあたる。

消防[編集]

消防では、全国の消防本部消防署等に特別救助隊(レスキュー隊)が配置されており火災交通事故など日常生活の中で起こる一般災害から自然災害や河川・山間部で起こる事故、そして震災など大規模災害やNBC災害など特殊災害とあらゆる救助事案に対応している。

日本の消防救助隊は1950年代から一部地域で編成され始め、1964年横浜市消防局が消防特別救助隊(横浜レンジャー)、1969年東京消防庁特別救助隊(レスキュー隊)を設置したのに合わせて全国の消防が設置を始めた。1986年になると消防法の改正により全国の消防に人命救助を専門とした特別救助隊と救助隊の設置が義務化された。またこの年には海外の災害の際に派遣される国際消防救助隊も発足し現在は国際緊急援助隊の救助チームの一員として海外の災害現場で活動している。

さらに1995年1月に発生した阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、同年6月に自治省消防庁(現総務省消防庁)では被災地の消防力のみでは対応困難な災害に際して都道府県の枠を超えて災害活動を行う緊急消防援助隊を創設した。

東京消防庁も阪神・淡路大震災を教訓に1996年12月に機動力と災害対処能力を備えた消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)を発足した。この部隊には救急救命士重機資格者も含まれ災害現場で救助活動から活動に支障ながれきの撤去や負傷者の処置まで一連の活動を行うことが可能な自己完結型の部隊である。都内だけではなく国内の災害には緊急消防援助隊、国外の災害には国際消防救助隊として常に派遣できる体制をとっている。 また、第八消防方面本部消防救助機動部隊は、立川広域防災基地内に配置されており、同じく所在する東京消防庁航空隊のヘリコプターと連携した救助・救急活動にも対応している。

2001年には名古屋市消防局特別消防隊(ハイパーレスキューNAGOYA)(後に名古屋市の特別高度救助隊に位置付けられる)が発隊。

さらに総務省消防庁新潟県中越地震JR福知山線脱線事故などの教訓から、2005年4月4日に中核市消防本部等に高度救助隊を、東京都及び政令指定都市消防本部等に特別高度救助隊の設置を義務付けた。

これらも東京消防庁のハイパーレスキューと同種の部隊であり各消防局は東京消防庁の消防救助機動部隊(通称ハイパーレスキュー)を参考に編成しているためにこれらの部隊には「スーパーレスキュー」や、「ハイパーレスキュー隊」など消防局それぞれの通称名が付けられている場合が多い。2008年に横浜市消防局特別高度救助部隊スーパーレンジャー(SR)がドラマで取り上げられ特別高度救助隊の存在が一般に知られるようになった。 近年は南海トラフ巨大地震首都直下地震などの発生が危惧されており設置基準でない消防本部でも自主整備で高度救助隊を編成する本部も増えている。

これらの部隊は大規模災害のみに出動すると思われがちだが通常は他の救助隊と同様に一般災害に出動する。また、化学救助や水難救助などの指定部隊とする消防や各部隊ごとに特定任務がある消防も存在する[1]

埼玉県では県内で地震による建物崩壊や列車脱線事故などの大規模災害が発生した際に県知事の指示・要請で出動し救助・救命活動を行う埼玉県特別機動援助隊埼玉SMART)を編成する体制をとっている。この部隊は県下7消防本部の救助隊で編成される機動救助隊、埼玉DMAT埼玉県防災航空隊の三部門で構成される。

さらに各地の消防本部には、 山間部や河川、湖、湾岸における救助隊として、山岳救助隊水難救助隊が設置されている。これらの部隊は一般の救助隊が兼任している場合が多い。

なお東京消防庁では、山岳救助隊内に「スイフトウォーターレスキュー隊(急流救助隊)」を設置している。この救助隊は、山岳救助隊が兼任しておりレジャー客が中州に取り残された玄倉川水難事故を機転に創設されており、急流救助に対応できる知識・技術を持ち、専門の資機材を装備している。第六消防方面本部消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)もスイフトウォーターレスキューの担当部隊となっている。

また、化学兵器核兵器生物兵器放射能兵器等を使用したテロなどNBC災害に対応するため、東京消防庁には化学機動中隊第三消防方面本部消防救助機動部隊が創設されており、各地の消防もNBC災害の専門部隊を創設するようになった。

日本の消防救助隊は次の四段階構成になっている。

区分 救助資機材の基準 車両の基準 配置の基準 隊員の構成
救助隊 救助活動に必要最低限の資機材 救助工作車又は他の消防車1台 人口が10万人未満の地域 人命救助の専門教育を受けた隊員5名以上で編成するように努める。いわゆる兼任救助隊。
特別救助隊 救助隊よりプラスアルファの資機材 救助工作車1台 人口が10万人以上の地域 人命救助の専門教育を受けた隊員5名以上
高度救助隊 高度救助資機材電磁波人命探査装置、二酸化炭素探査装置、水中探査装置など一部の高度救助資機材は、地域の実情に応じて備える) 救助工作車1台 中核市もしくは消防庁長官が指定するそれと同等規模もしくは中核市を有しない県の代表都市を管轄する消防本部 人命救助の専門教育を受けかつ高度な教育を受けた隊員5名以上
特別高度救助隊 高度救助資機材と地域の実情に応じてウォーターカッターと大型ブロアー 救助工作車1台と特殊災害対応車1台 政令指定都市および東京都 人命救助の専門教育を受けかつ高度な教育を受けた隊員5名以上

警察[編集]

警察は、警察法第二条に基づき、災害が発生した際に個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序を維持する事を目的として行う活動を災害警備活動と規定している。災害警備活動は、被災地の交通整理や防犯警戒、死亡した被災者の検視なども含まれており、警察の救助はこれらの活動の一部として行われる。そのために普段は機動隊として犯罪証拠品の捜索や警備活動などの警察業務を行っている。

警察では1972年警視庁機動隊内に機動救助隊(レスキュー110)が編成されており、他の道府県警察の機動隊にも、救助任務を担当する機能別部隊が編成されている。だが、1995年に発生した阪神・淡路大震災に出動した際には、消防に準じた救助工作車や、救助資機材などの装備が不足していたため、救助活動は難航した。これを教訓に同年6月警察庁は、都道府県警察の救助資機材や、救出救助能力を充実させ、都道府県の枠を超えて活動する災害対策部隊として広域緊急援助隊を創設した。広域緊急援助隊には、救出救助班が編成されている。

また、新潟県中越地震の教訓を受けて、2005年に全国12都道府県の広域緊急援助隊に特別救助班 (P-REX) が設置された。特別救助班は、東京消防庁ハイパーレスキューを参考に創設されており、大規模災害時の救助活動を主要任務としている。また近年は、隊員を消防へ研修派遣しており、消防の救助隊と合同訓練が行われている[2]

2012年9月に警視庁警備部災害対策課特殊救助隊 (Special Rescue Team:SRT) が新設された。それまでの警察救助隊は機動隊の兼任活動だがこの部隊は警察としては初めての災害救助の専門部隊であり、レスキュー技術や重機操作などに優れた隊員を機動救助隊などから選抜して構成されている。特殊救助隊は立川広域防災基地内の警視庁多摩総合庁舎を活動拠点としており、同じく基地内に所在する航空隊のヘリコプターと連携して活動できる。普段は訓練や警察署員に対する救助技術の指導を行い、通常の部隊では対応が困難な災害が発生した際に出動するとされている。東京消防庁のハイパーレスキューの警視庁版とされる。

また、消防と同様に山間部や河川、湖、湾岸における救助隊として、各地の警察に山岳警備隊(警視庁では山岳救助レンジャー部隊)や、水難救助隊が設置されている。警察の水難救助隊は、消防の水難救助隊と同様に人命救助を主要任務とするが、刑事部などから要請を受け、犯罪に使われた証拠品の捜索や、死体の捜索に従事することもある。

各地の警察には、NBC兵器を使用したテロ事件に対処するため、NBCテロ対応専門部隊が設置されている。なお警視庁では、公安部の公安機動捜査隊とは別に、警備部に機動隊化学防護隊が設置されている。

これらの部隊は、東京消防庁の化学機動中隊のように被害者の救助を任務とするが、同時に証拠品の収集や現場保存など、犯人を逮捕するための初動捜査を担当している[3]

海上保安庁[編集]

海上保安庁は海洋における警察・消防任務を担当しており、特殊海難に対応する専門部隊として第三管区海上保安本部特殊救難隊(トッキュー隊)(羽田特殊救難基地)を設置している。また、初動対応班として5箇所の管区航空基地に機動救難士が配置されている。これらの要員は海保の潜水士(レスキューダイバー)の資格を持つ者であり、各管区の巡視船にも潜水士が乗船することもある。

原則的に、救助活動を行うのは海上だが、大災害の発生時には応援要請があれば、山間などでも、孤立集落の傷病者の搬送などの、一連の救助活動を行う。

自衛隊[編集]

陸上自衛隊[編集]

陸上自衛隊には救助専門部隊は編成されていないが、マンパワーは最も大きく、災害派遣の主力として行方不明者の捜索・救助や被災地の復旧にあたる。

海上自衛隊[編集]

海上自衛隊には救難飛行隊が編成され、救難飛行艇やヘリコプターでの救難を専門にする隊員が配置されており、こちらは機上救護員、または降下救助員と呼ばれている。

航空自衛隊[編集]

航空自衛隊には捜索救難機(捜索ジェット機、救難ヘリコプター)を備えており、専従部隊として、航空救難団が設置され10個の救難隊が全国に展開している。1958年3月(昭和33年)から航空自衛隊による日本では初めてのエアーレスキュー(Air Rescue)として設置される。他の救助隊と異なり、最終的に「戦闘地域で敵の脅威にさらされた状態での救助(コンバットレスキュー)」を想定しているため装備、練度共に高く、救難の「最後の砦」とも称され、多くの困難な事象を抱える遭難や事故などで優れた捜索・救難活動を行なっている。

航空救難団の任務は公式ホームページによれば

  1. 救難機による事故航空機の搭乗員の捜索、救助
  2. 保有機による人員及び装備品等の空中輸送
  3. 教育・訓練
  4. その他の任務(災害派遣、在外邦人等の輸送など)

とされている。

なお、航空自衛隊では、人命救助を担当する隊員を正式には救難員と呼ぶが、隊内では「パラシュート降下の出来る衛生兵」という観点からパラメディック(PARA-MEDIC)と呼んでいる。(通称メディック)また、前出の公式サイトによれば、救難員の任務は以下のとおりである。

救難機上で遭難者の目視捜索、援助、救出、看護等を行い、遭難者発見以降は遭難現場へ展開し、救出活動を行う。

医療機関[編集]

医療機関では、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Asistance Team、通称DMAT)が編成されている。DMATは医師看護師、業務調整員(救急救命士薬剤師診療放射線技師、事務員等)で構成され、大規模災害や事故などの現場に急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームである。

脚注[編集]

  1. ^ 「われら消防レスキュー隊」(イカロス出版)によれば、大阪市消防局特殊災害機動部隊(特別高度救助隊)と名古屋市消防局特別消防隊(特別高度救助隊)には各方面ごとに特定任務が与えてあるとされる。また新潟市消防局は水難救助隊員育成が難しいことから特別高度救助隊を水難救助専任隊としている。また岡山市消防局ホームページ及び季刊誌「Jレスキュー」(イカロス出版)2011年11月号によれば、岡山市消防局と堺市消防局の特別高度救助隊も隊員全員に潜水士資格を取得させ特別高度救助隊に水難救助に従事しているとされている。
  2. ^ 季刊誌「Jレスキュー」(イカロス出版)2008年5月号によれば、北海道警察2007年に、機動隊員(救助任務を担当する特務中隊の隊員)を消防へ研修派遣し、その中から優れた者を選抜して、特別救助班を編成したとされている。また同誌には、札幌市消防局特別高度救助隊(SRS)と、北海道警察特別救助班が実施した合同訓練の模様が掲載されている。この合同訓練は、2008年3月19日に、大規模災害を想定して札幌市で行われた。
  3. ^ 季刊誌「Jグランド」(イカロス出版)14号によれば、2007年11月10日東京都で行われた「大規模テロ災害対処共同訓練」において、機動隊化学防護隊が化学テロの被害者の救出を行い、公安機動捜査隊が証拠品の収集を担当している。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]