災害救助犬

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生存者の捜索を行う災害救助犬

災害救助犬(さいがいきゅうじょけん、英語Search and rescue dog)とは、地震土砂崩れ等の災害で、倒壊家屋や土砂等に埋もれ、助けを必要とする人を、主にその嗅覚によって迅速に発見し、その救助を助けるように訓練された

概要[編集]

ヨーロッパでは古くから牧羊犬を使っていたという歴史があり、早くから災害救助犬の育成を行っている。スイス山岳救助に犬を使っていた事から災害救助犬の始まった国であるとも言われており陸軍が育成を担当している。

犬種はジャーマン・シェパードラブラドール・レトリバーなどが多いが、犬種を限定されておらず、基本的にはどのような犬でも災害救助犬になることが可能。一般には中型犬以上が望ましいとされるが、小型犬は、大型犬では入り込めないような隙間に入り込んで捜索することが可能であるという説もある。

災害救助犬は、そのの使い方が警察犬と異なる。

  • 警察犬が鼻を下向きに使うのに対して、災害救助犬は空気中の浮遊臭をかぐため、必然的に鼻を上方向に向けて使う。
  • 警察犬は、特定の人(容疑者)の原臭が必要だが、災害救助犬は生存、非生存にかかわらず不特定の行方不明者を捜索対象とする。生存者を捜索する場合は、呼気を中心とした「人間に共通の臭気」を追い求め、その結果、特定の状況下(障害物に阻まれ見えない、倒れている、うずくまっているなど)にある人間に対して、訓練されたアラート行動(吠えるなど)を示す。

災害救助犬は、その名のとおり災害における被災者、山林などでの行方不明者を捜索することを想定して訓練されているが、事件直後に周辺に隠れている犯人ならば原臭がなくとも突き止めることは可能である。非生存者を捜索する場合は、体液を中心とした腐敗臭に対する反応と考えられているが、現在においては、生存、非生存どちらの捜索のケースにおいても、救助犬の嗅覚反応に対する科学的な分析は十分とは言えない段階である。

捜索可能時間は1頭がおよそ20分から30分。2頭から3頭など複数で捜索と休憩を交代しながら数時間の捜索が出来る。

組織[編集]

日本では、1990年より社団法人ジャパンケネルクラブが事業計画を開始し、NPO法人全国災害救助犬協会が、救助犬育成を目的とする日本初の「救助犬協会」となった。日本には現在、大きな災害救助犬組織が4団体存在する(全国災害救助犬協会・ジャパンケネルクラブ・日本救助犬協会日本レスキュー協会)ほか、国内では数少ないIRO (国際救助犬連盟)加盟団体の救助犬訓練士協会や、2007年9月、全国災害救助犬協会で中心的な会員が新たに設立した「NPO法人災害救助犬ネットワーク」などがある。同組織は2009年度は全国組織として23都府県、会員100名、災害救助犬の認定は50頭を超えている。

また、都道府県レベルで独自に活動している協会も多く、最近は都道府県の警察嘱託犬に捜索救助、災害救助という部門で災害救助犬を活用する都道府県警察も増えてきており、行方不明者の捜索に出動することも多い。

ただし各団体の救助犬に関する理解や認定基準には大きなバラつきがあり、犬に関する事象全体が欧米に比べ未だに後進的であるという日本の現状から、「現場で活動できるレベルに達していない犬まで認定されているケースが少なくない」という関係者の声も上がりはじめている。 災害現場で迅速かつ確実に対応するためにも、IRO (国際救助犬連盟)やFCI(世界畜犬連盟)といった国際標準と同等レベルの国内統一基準の策定を求める声があがっており、すでに一部では話し合いや、研究会(日本特殊災害救助医療研究会など)が始まっている。

1995年の阪神大震災に際しては、国外からも災害救助犬を受け入れたが、スイス隊の現地到着が遅れたということがあった。これは受入体制が整わなかったことによる問題であったが[1]、検疫にも問題があったとの批判もあり[2] 、2011年の東日本大震災では弾力的な検疫措置を行なっている[3]

国際試験、競技大会[編集]

国際救助犬連盟(IRO)加盟のOPDESRDTAによって、IRO基準による国内試験が行われている。IRO世界大会では、地震のような家屋倒壊現場の他、山林(山岳救助)、海や湖などの水辺(水難救助)というように環境ごとに部門が設置されている。

「大会」という名称から競技会と捉えられることもあるが、瓦礫捜索において世界最高レベルと言われるスイス陸軍の救助犬チームが参加していることからも、現場での活動をその究極の目的とした各国の実働チーム同士の、訓練レベルの向上を目指した技術交流の場であるという側面の強いことが伺える。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]