クルーズコントロール
この記事はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。(2008年8月) |
クルーズコントロール (Cruise Control) とは自動車の付加機能もしくはその装置の名称。「オートクルーズ」とも称する。アクセルペダルを踏み続けることなくセットした速度を維持する機能であり、運転者の疲労低減並びに同乗者の快適性向上に寄与する。通常、クルーズコントロールはスロットルを制御するが、ブレーキまでは制御しない。
なお、鉄道車両でも定速制御というほぼ同じ目的のシステムを持ったものが存在する。
使用法
速度設定
通常、ステアリング付近の位置にエルゴノミクスに基づいたボタンあるいはレバーを備えており、速度設定、増速、減速、解除を行なう。不用意にこれらのボタンやレバーに触れてしまい意図しない巡航運転が開始されることを防ぐために、マスタースイッチを持つ車種もある。速度設定と減速のための動作は、共通することがある。
クルーズコントロールには、作動速度範囲(例えば、時速40~110km)が存在する。この速度範囲において通常走行中に、ドライバーが速度設定指示をすれば、その速度が記憶され、定速走行が始まる。なお、作動速度範囲の上限を越える速度で通常走行中に速度設定指示がなされた際には、定速走行に移行しないか、あるいは設定上限の速度までゆるやかに減速した後に定速走行が始まる。
クルーズコントロール中の加速
クルーズコントロールの下で定速走行中、ドライバーがアクセルペダルを踏めば増速する。この場合、速度の設定は上書きされない。したがってアクセルが離されれば以前記憶した速度までゆるやかに減速した後に定速走行が始まる。同様の走行中、増速指示を出し続ければ、ゆるやかに増速する。この場合は増速指示を止めた時点の速度が設定される。ただし、この際の速度がクルーズコントロールの作動速度範囲を超えている場合には、その上限の速度が設定される。定速走行中にドライバーが増速ボタンを短時間押せば、設定速度がある単位(例えばひと押しあたり時速1.5kmなど)増加するものもある。
クルーズコントロール中の減速および解除
一般にクルーズコントロールは、ドライバーがブレーキペダルかクラッチペダルを踏むことや、解除ボタンを押すことによって解除される。追突事故を防止する目的で、先行車との距離などに応じて設定速度を自動調節するタイプのクルーズコントロールも存在する。定速走行中にドライバーが減速ボタンを短時間押せば、設定速度がある単位(例えばひと押しあたり時速1.5kmなど)減少するものもある。
速度再設定
クルーズコントロールの下で定速走行中に速度セットをブレーキペダルやクラッチペダルを踏んで一旦解除した後、ドライバーがリジューム(復帰)スイッチを押せば、「以前記憶した車速」までゆるやかに加速あるいは減速された後に定速走行が始まる。ただし「以前記憶した車速」は、あるイベント(例えば車速が30km以下に落ちるなど)によってクリアされる。
歴史
1958年にクライスラー社が、クライスラー社のインペリアルに初めて採用した。日本車としては1964年に登場したトヨタ・クラウンエイトが「オートドライブ」の名称で、オプション装備として初採用した。
その後もごく一部の車種しか採用されなかったが、1981年に登場したホンダ・アコード以降、多くの車種に普及する。2004年現在では普及した機能になりつつありカタログ等で特筆される事項ではなくなったが、近年では、ACC、IHCC等と呼ばれる、衝突防止レーダーを備えたクルーズコントロール機能を持つ車種が登場し、高機能・多機能化している。
1990年代になると、トラックにも大型車の機械式オートマチックトランスミッション車を中心にクルーズコントロールが設定されるようになる。トラックは積載時と空車時で総重量や走行抵抗が異なるため、アクセル開閉の”むら”を減らし省燃費運転を行うことを目的に装備される。シフトチェンジだけでなく排気ブレーキやリターダなどの補助ブレーキや車間距離警報装置と連動可能な車種も存在する。
問題点
- 設定可能速度の制限
- クルーズコントロールの設定可能速度は法的な規制がなく、欧米の車種は上限を設けないか利用者が自主的に設定するように設計されている。日本の国産乗用車の設定車種は1980年代にホンダ・プレリュード(マニュアル車も含めて全車装着した)を初めとして一時増加したが、1990年代に減少した原因の一つは、この設定可能速度の制限にある。なお、衝突防止レーダーを備えたクルーズコントロールでは速度設定ではなく、追尾設定とすることで、時速0km、つまり停止状態から時速180km(スピードリミッター作動)まで前方車両を速度に応じた車間で追尾できる車種もある。
- クルーズコントロールの自動解除
- 一般的には、危険防止のためブレーキを踏んだり変速すると自動解除される。しかし、手動変速してもクルーズコントロールを自動解除しない車(2003年 マツダ・RX-8 オートマチックトランスミッション車)もある。この場合、手動変速によるエンジンブレーキが無効化される。
- 運転者感覚とのズレ
- 速度設定値と実際の車速との間に時間的な遅れが発生することが避けられない。上り坂でかなり速度が落ちてから急にスロットルが開いたり、下り坂ではどんどん速度が増してから急にエンジンブレーキが掛かったりするなど運転者感覚とズレることがあり、ある種の「気持ち悪さ」を感じさせることもある。また、日本の道路状況では長時間一定速度で走行することはあまりなく、実際上、数分あるいは十数分ごとにクルーズコントロールを再設定することが多いので、かえって面倒と感じる者もいる。