レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ

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Red Bull Air Race 2010

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ(Red Bull Air Race World Championship)は、自身も選手として参戦するピーター・ベゼネイが提案し2003年レッドブルの企画で始まった曲芸飛行パイロットによるエアレースシリーズの総称。国際航空連盟公認のレース。

最高速度370km/h、最大負荷10Gにおよぶ過酷な空中タイムトライアルの連続でイベントが構成され、「空のF1」とも形容される。厳しい競技環境に耐え得る強靭な肉体と、飛行機を正確に操る技術力と集中力が要求される競技であり、国際選手権の優勝者や空軍教官を経歴に持つパイロットもいる。

2011年から[1]2013年までシリーズは休止されていた[2]が、2014年からはエンジンプロペラを統一して再開された。日本でも第2戦が2015年5月16日17日千葉県千葉市美浜区幕張海浜公園で開催された[3]

シリーズ概要[編集]

1開催は「トレーニング」「予選」「ラウンドオブ14」「ラウンドオブ8」「ファイナル4」の5つによって構成されている。各開催の順位に応じてポイントが与えられ、年間を通してもっとも多くのポイントを得たパイロットがチャンピオンとなる。大会は、

  • トレーニング:予選日の前日に実施。
  • 予選:各選手2回のフライトを行い、速い方のタイムが記録となる。その記録をもとに「ラウンドオブ14」の組み合わせが決定される。
  • 決勝
    • ラウンドオブ14:予選の記録をもとに1対1の対戦(ヒート)に分け、各選手1回のフライトを行う。各ヒートの勝者7名と敗者の中で最速のタイムを出した1名の計8名が「ラウンドオブ8」に進出。下位6名(9 - 14位)が脱落、順位確定。
    • ラウンドオブ8:1対1の対戦(ヒート)に分け、各選手1回のフライトを行う。各ヒートの勝者4名が「ファイナル4」に進出。下位4名(5 - 8位)が脱落、順位確定。
    • ファイナル4:各選手1回のフライトを行い、最終順位(1 - 4位)が決定。

というスケジュールで行われる。

ポイントは、

  • 優勝:12p
  • 2位:9p
  • 3位:7p
  • 4位:5p

で以下1ポイントずつ減っていき9位以下が0ポイントとなる。

2014年からは上記の方式を「Master Class」とし、若手選手発掘のためルールを簡易化した「Challenger Cup」が創設された。

2008年以前は、

  • 予選上位の8選手によるノックアウト・トーナメント形式で争われる。
  • 予選9位以下の選手ももう一度フライトを行い、最もタイムの良い選手にシリーズ・ポイント1ポイントが与えられる。

という方式だった。

各シリーズ[編集]

競技概要[編集]

コースへ向かうため離陸するジブコ エッジ540
ピーター・ベゼネイが操縦するCorvus Racer 540
ナイジェル・ラムが操縦するMXS-R
エクストラ 300LXとエンジンのみが違う300Lの画像

曲技飛行用の単発プロペラ機を操り、5〜6km(3〜4マイル)のコースに設置された高さ25mのパイロン風船障害物(エアゲート)を規定の順序と方法で通過、ゴールまでのタイムを競う。

小型の機体が高速で動くことから距離があると目視しにくいため、コース進入の直前にスモークを焚いたり、機体前方とコクピット内を映すカメラを設置するなど、曲芸飛行ではなくタイムトライアルではあるものの、観客や視聴者への配慮がルールで定められている。

パイロット[編集]

レースへ参戦するには現役の曲芸飛行士が最低条件で、さらにレッドブルが主催するQualification Campへ参加し、Red Bull Air Race委員会が発給する「スーパーライセンス(限定)」を取得すると「Challenger Cup」に参加する「チャレンジャークラス」の選手として登録される。そこから「スーパーライセンス(限定解除)」を取得し成績を残すと「Master Class」に参戦する「マスタークラス」の選手として選ばれる[4]

参加選手は、マット・ホール(元オーストラリア空軍教官)やフランソワ・ル・ヴォ(元フランス空軍教官)など元空軍パイロットだけでなく、室屋義秀ハンネス・アルヒマイケル・グーリアンなど民間出身の曲芸飛行士も存在する。なお「曲芸飛行士」には現役の軍人も含まれており、所属先の許可が下りれば参戦が可能である。2015年現在はマルティン・ソンカチェコ空軍曲技飛行隊)が個人として参戦している。

他のモータースポーツと比べ参加選手の年齢は高い傾向にあり、マスタークラスは40代の選手が中心である。2015年現在はピート・マクロードの28歳が最年少参加記録[5]、レース創設に関わったピーター・ベゼネイは58歳ながら現役選手である[6]

アジアからは2009年に日本人の室屋義秀が初めてエントリーし[2]、マスタークラスに参戦している。また2015年には元マレーシア空軍教官のハリム・オスマンがチャレンジャークラスに参戦している[7]

チーム[編集]

レースへはチーム単位での出場するためパイロットの他に、整備を担当するエンジニアとチームを統括するコーディネーターを基本とし、チームによってはコースレイアウトや気象条件を分析しアドバイスを出すレース・アナリストやメディアに対応する広報担当などが雇用されている[8]

機体[編集]

マスタークラスへの参戦者は1人乗り機であるジブコ エッジ540Corvus Racer 540MXS-Rのいずれかを選択[9]し、レギュレーションの範囲内で調整を施すことになるが、Corvus Racer 540はピーター・ベゼネイのために設計された機体であり[10]、MX社製の機体もナイジェル・ラムとマット・ホールだけが使っている状況であるため、3人以外のチームはジブコ エッジ540のV2かV3を利用している[9]

チャレンジャークラスはレッドブルから提供されたエクストラ社製の2人乗り曲技飛行練習機であるエクストラ 300LXを使うワンメイクレースとなる[10][11]

レギュレーションで機体にかかる重力加速度が最大10Gに制限されているため、高度と速度の他、加速度を表示する付帯情報表示(PVI)と、GPSなどの情報を表示・記録する「レッドブル・エアレースEFIS」の搭載が義務付けられている。EFISのデータは無線によりリアルタイムで確認ができるため、実況中継でも参照される。またEFISに記録したデータはダウンロードできるため、次回のフライトに活かされる[10]

2014年からはレース用にチューニングされたライカミング・エンジンズの「Thunderbolt AEIO-540-EXP」[12]の使用が義務付けられ[9]、さらにマスタークラスに参加する機体のプロペラHartzell製の3枚羽に限定される[10]

エアゲート[編集]

エアゲートは2本のパイロン1組からなる「スタート/フィニッシュゲート」「シケインゲート」「水平ゲート」「ナイフエッジゲート」および、4本で1組の「クアドロゲート」が設定され、それぞれに異なる通過の仕方が決められている。ゲートへの接触や規定に満たない通過を行った場合、タイム加算あるいは失格のペナルティが科せられることになる。各ゲートの通過ルールは以下のとおり。

スタート/フィニッシュゲート
  • スタート/フィニッシュゲート
黒と白のチェック模様が施されている。ゲート上部50%の高さを(パイロットのヘルメットが)通過。1回目通過時は水面に対し0°±10°の姿勢。また後述のとおりスタート時には制限速度が定められている。
  • シケインゲート
色は赤。最後のパイロンまで、ゲート上部50%の高さを通過。
  • 水平ゲート
色は青。パイロンの間隔は約14m。ゲート上部50%の高さを水面に対し0°±10°の姿勢で通過。

以下の種類のゲートは2010年シーズンまで使用されていたが、以降は廃止されている。

  • ナイフエッジゲート
色は赤。機体を90度バンクさせて翼と水面を垂直にする飛行技術を「ナイフエッジ」と呼ぶ。パイロンの間隔は約10mで、ゲート上部50%の高さを水面に対し90°±20°の姿勢で通過。傾ける向きも指定されている。
クアドロゲート
  • クアドロゲート
色は赤。パイロン4本で構成。ゲート上部50%の高さを水面に対し90°±20°の姿勢で通過。1度通過した後270°旋回して1度目と直交する形で通過する。

通過姿勢はゲートの色で判断でき、赤が翼を垂直に、青が水平にすべきゲートである。

エアゲートは参加選手であるピーター・ベゼネイのアイディアが元になっている[10]

ペナルティ[編集]

ゲートへの接触や異常接近、不正な姿勢でのゲート通過などが認められた場合、ゴールタイムにペナルティタイムが加算される。またレースの安全確保のため、危険な飛行と判断された場合は即刻失格になる厳しいルールが敷かれている。

1秒ペナルティ[編集]

  • スタートゲートへの進入速度が、201〜201.99ノット(時速372〜374km/h)であった場合(2015年シーズンよりスタートゲートへの侵入速度については200.99ノット以下とする改定がなされた)
  • 飛行中にスモークがたかれていない場合(人為的、技術的エラーに関わらず)

2秒ペナルティ[編集]

  • ゲートで、規定高度より高く通過した場合
  • ゲート通過時の水平姿勢(具体的には水平線に対する傾きが10度より大きい場合)またはナイフエッジの角度が不正だった場合
パイロンは機体が接触すると即座に破れるため機体へのダメージはない
  • パイロンに接触した場合(危険な接近、接触と判断されると即失格になる場合もある,2015年第2戦より3秒ペナルティに変更)

DNF(フィニッシュせず、そのフライトは無効)[編集]

  • スタートゲートに202ノット(時速374km)以上で進入した場合
  • 重力加速度が10Gを超える負荷がかかった場合
  • パイロンへの接触が3回になった場合
  • コースを逸脱した場合

DQ(失格、そのラウンドの参加権を失う)[編集]

  • 危険な姿勢での飛行
  • 規定高度より低い飛行
  • 観客上空に進入した場合
  • 雲の中に入ってしまった場合
  • 規定重量違反

歴代チャンピオン[編集]

エリート/マスタークラス[編集]

シーズン チャンピオン 2位 3位
2003年 ハンガリーの旗 ピーター・ベゼネイ ドイツの旗 クラウス・シュロット アメリカ合衆国の旗 カービー・チャンブリス
2004年 アメリカ合衆国の旗 カービー・チャンブリス ハンガリーの旗 ピーター・ベゼネイ イギリスの旗 スティーブ・ジョーンズ
2005年 アメリカ合衆国の旗 マイク・マンゴールド アメリカ合衆国の旗 カービー・チャンブリス
2006年 アメリカ合衆国の旗 カービー・チャンブリス アメリカ合衆国の旗 マイク・マンゴールド
2007年 アメリカ合衆国の旗 マイク・マンゴールド イギリスの旗 ポール・ボノム ハンガリーの旗 ピーター・ベゼネイ
2008年 オーストリアの旗 ハンネス・アルヒ イギリスの旗 ポール・ボノム アメリカ合衆国の旗 カービー・チャンブリス
2009年 イギリスの旗 ポール・ボノム オーストリアの旗 ハンネス・アルヒ オーストラリアの旗 マット・ホール
2010年 イギリスの旗 ナイジェル・ラム
2011年 Not held
2012年
2013年
2014年 イギリスの旗 ナイジェル・ラム オーストリアの旗 ハンネス・アルヒ イギリスの旗 ポール・ボノム

チャレンジャークラス[編集]

シーズン チャンピオン ポイントリーダー
2014年 チェコの旗 ペトル・コプシュタイン フランスの旗 フランソワ・ル・ヴォ

テレビ放送[編集]

日本では、2006年GAORAで、2007年からはJ SPORTSで放送されている(2014年の最終戦は生中継された)。放送は機内のカメラが捉えたパイロットの映像のほか、合成やCGによるリプレイなど工夫を凝らしたものになっている。2008年にはフジテレビが地上波で初めて放映権を獲得した。なお、フジテレビでは2007年に『すぽると!』の企画として全戦放映されている。

2015年はNHKBS1を中心に全8レースが『エアレース世界選手権2015』として放送予定[13]

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]