エクストラ EA-300

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

エクストラ EA-300

エクストラ EA-300 ロイヤル・ヨルダニアン・ファルコンズ所属機 (2006年撮影)

エクストラ EA-300
ロイヤル・ヨルダニアン・ファルコンズ所属機
(2006年撮影)

エクストラ EA-300: Extra EA-300)は、ドイツエクストラ社が製作する曲技飛行飛行機。「エクストラ300」とも呼ばれる。

信頼性と高性能を両立し、1988年の登場以来、2020年代の現在に到るまでの間、曲技飛行機の代表的機種の一つとして地位を確立している。

概要[編集]

EA-300S

曲技飛行士ウォルター・エクストラの手によって1987年に設計され、翌年に初飛行した。機体はカーボンファイバーと鋼管フレーム製で、主翼は対称翼となっている。エンジンはライカミング・エンジンズ製のレシプロエンジンプロペラMT-プロペラ製の3翅を採用。荷重制限は+/-10G。

航空計器を航空法で必須とされるものだけに絞る[1]など曲技飛行に特化するため軽量化を優先しているが、曲技飛行に欠かせないスモーク発生装置を標準装備している。

民間では多くの曲技飛行士が世界選手権で使用し2009年に初優勝、2013年から2017年まで連続優勝を果たしており、レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ用のモデルも存在する。複座型は曲技飛行の初等訓練や体験にも利用されている。

軍用としてはヨルダン空軍ロイヤル・ヨルダニアン・ファルコンズチリ空軍アルコネス英語版など曲技飛行隊に使用されている。

エクストラは2018年現在、SC、LX、LTと低価格の入門用モデルEA-200の4機種を販売している。

派生型[編集]

EA-300[編集]

EA-300SHP
EA-300SC(室屋義秀の機体)

オリジナルの複座型[2]

EA-300S[編集]

単座型。翼幅は 50 cm (19+12 in) 縮小され、より大きなエルロンが取り付けられている[3][2]

EA-330SX
300Sの改良型。エンジンをAEIO-580に変更、より広いコードラダー、より大きなエレベーターに換装している。後に330SCに置き換えられた。
EA-300SP
300Sのパフォーマンスバージョンである。重量が減り、330SXの尾翼が取り付けられた[4]。廃止され、330SCに置き換えられた。
EA-300SHP
"HP" は "High performance(高性能)" を表す。AEIO-580を搭載した未認証バージョンである。
EA-300SR
レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ用に設計された高揚力翼を使用した改良モデル。2007年7月にデビューした。レッドブルエアレースでは2009年レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ以降使用されていない。
EA-330SC
Lycoming IO-580英語版」を搭載した単座型。300Sをさらに競技向けに特化し、ロール率の向上とロール停止の容易さを備えている。現在の世界選手権では主流となっている。
EA-300L
EA-300Lの後部座席
EA-300L
EA-300LC
ライカミングIO-580

EA-300L[編集]

"L"は2人乗りバージョンを表す。AEIO-540で動力を与えられる2座席の航空機で、低い翼と短い胴体を備えている[2]。曲技飛行を始める際に教官が同乗する練習機として使用されており、最も多く生産されている。翼は胴体の底に取り付けられ、スパンは26フィートから24フィートに減少している。改良された補助翼は、300Lのロールレートを400度/秒に上げる。すべての300Lは、連邦航空局および欧州連合航空局の規制に基づいて完全に認定されている。

EA-330LC
ライカミング・エンジンズライカミングIO-580英語版を搭載。
EA-300LP
「P」はパフォーマンスを表す。300Lの軽量版で、競技会やエアショーのパフォーマンスを改善するために再設計されている。
EA-330LX
EA-330LX
AEIO-580を搭載した複座型。2014年レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ以降、2017年までのチャレンジャークラスで使用される機種であり、レギュレーションに対応した電子飛行計器システムを搭載している。なお、チャレンジャークラスは2018年からはジブコ エッジ540 V2に変更となる[5]■右列に画像あり
EA-330LT
AEIO-580を搭載した複座型。330LXをベースに電子飛行計器システムを搭載、ロールレートを縮小するなど、曲技よりも長距離飛行に適したセッティングとなっている。
EA-330LE
単座型。出力 260 kWのシーメンス社製モーター「SP260D」 (enを搭載した電動飛行機の実験機[6][7]
2017年3月23日、ドイツはノルトラインヴェストファーレン州ヴェーゼル地区英語版の町ディンスラーケン (Dinslakenにあるディンスラーケン・シュヴァルツェ・ハイデ飛行場 (Flugplatz Dinslaken Schwarze Heide) より飛び立った当機は、3 kmに亘って最高速度 342.86 km/hの飛行を行い、電動飛行機の速度記録を樹立[6][7]国際航空連盟 (FAI) には、操縦者ヴァルター・カンプスマン (Walter Kampsmann) 名義で認定された[6]。関連記事「乗り物に関する世界一の一覧#飛行機」も参照のこと。
また、2017年3月24日には、世界で初めてグライダーを牽引した電動飛行機となった[8]

運用[編集]

ノーザン・ライツの曲芸飛行
EA-330SC による曲芸飛行

民間[編集]

軍用[編集]

 チリ

チリ空軍所属のエスクァドリーリャ・デ・アルタ・アクロバシア・アルコネス (Escuadrilla de Alta Acrobacia Halcones、通称「アルコネス」と呼ばれる曲芸飛行隊は、2003年からエクストラ EA-300Lを使用している。

フランスの旗 フランス

フランス空軍が使用している。

ヨルダンの旗 ヨルダン

ヨルダン空軍では、ロイヤル・ヨルダニアン・ファルコンズロイヤル・ヨルダン航空とヨルダンの公式の国立曲芸飛行チーム)が、4機のエクストラ EA-300を形成する。

マレーシアの旗 マレーシア

マレーシア王立空軍英語版cf. マレーシア軍#空軍)所属の曲芸飛行デモンストレーションチーム「クリス・サクティ英語版 (Kris Sakti」が使用している。

諸元 (EA-300L)[編集]

EA-300

出典: Extra Aircraft's EA-300L page

諸元

性能

  • 超過禁止速度: 408 km/h (220 knot, 253 mph)
  • 巡航速度: 317 km/h (170 knot, 196 mph)
  • 失速速度: 102 km/h (55 knot, 63 mph)
  • 航続距離: 944 km with auxiliary fuel (510 海里, 586 statute mi)
  • 実用上昇限度: 4875 m (16,000 ft)
  • 上昇率: 975 m/min (3200 ft/min)
  • 馬力荷重(プロペラ): (5.9 lb/hp (typ. solo configuration))
  • * ロールレート : 400 度/秒


お知らせ。 使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

出典[編集]

  1. ^ AIRCRAFT - ウイスキーパパ競技曲技飛行チーム
  2. ^ a b c Taylor 1999, p. 426.
  3. ^ Lambert 1993, p. 100.
  4. ^ Extra Aircraft (2009年). “EA-300SP”. 2008年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年1月3日閲覧。
  5. ^ Edges for Challengers and G-limit changes in 2018” (2017年12月5日). 2017年12月7日閲覧。
  6. ^ a b c Walter Kampsmann (GER)” (English). Fédération Aéronautique Internationale (FAI) (2017年3月23日). 2021年1月20日閲覧。
  7. ^ a b FAI ratifies two world records for ‘revolutionary’ Aerobatics e-plane” (English). FAI (2017年4月4日). 2021年1月20日閲覧。
  8. ^ World-record electric motor for aircraft - Siemens Global Website - シーメンス[リンク切れ]
  9. ^ The Blades official website.
  10. ^ Biography – Patty Wagstaff”. pp. 1. 2009年2月28日閲覧。
  11. ^ http://www.sky-flash.com/Display_teams/Northern_Lights/index.html

外部リンク[編集]