花実のない森
花実のない森 | |
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作者 | 松本清張 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 長編小説 |
発表形態 | 雑誌連載 |
初出情報 | |
初出 | 『婦人画報』 1962年9月号 - 1963年8月号 |
初出時の題名 | 『黄色い杜』 |
出版元 | 婦人画報社 |
刊本情報 | |
刊行 | 『花実のない森』 |
出版元 | 光文社 |
出版年月日 | 1964年10月1日 |
装幀 | 伊藤憲治 |
挿絵 | 堀文子 |
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『花実のない森』(かじつのないもり)は、松本清張の長編推理小説。『黄色い杜』のタイトルで『婦人画報』に連載され(1962年9月号 - 1963年8月号)、1964年10月に光文社(カッパ・ノベルス)から刊行された。上流階級の気風を漂わせる謎の女性の周囲で起こる連続殺人事件を描く、サスペンス・ミステリー。
1965年に大映系で映画化されている。2017年にテレビ東京でドラマ化された[1]。
あらすじ
[編集]退屈な生活に飽き飽きしていた梅木隆介は、ドライブ帰りの途中、所沢街道で、一組のカップルを拾った。芳醇で蠱惑的な魅力を湛えた美しい女性と、品の無い中年男の不思議な組み合わせに、梅木は好奇心を起こす。車の中に落ちていた万葉集の相聞歌が刻まれたペンダントの返却を口実に、梅木は、女性の正体を突き止めるべく追跡を始める。その結果、表参道近くの高級アパートに住んでいることを突き止めるものの、女を例の中年男から取り上げようと次の展開を睨んでいた矢先、女性はアパートから姿を消してしまう。
件の女性が戦前からの上流階級と繋がりがあることを知った梅木は、彼女が参加したデザイナーの新作発表会の出席者から手がかりを掴もうとするが、なぜか関係者はひどく冷たい態度を示す。調査が壁に突き当たったかに見えた中、箱根で発見された殺害死体の主に驚く梅木。やがて、それにとどまらず、問題の女性に近づいた男が続々と怪死を遂げていることがわかり、梅木はいっそう強い興味を惹かれていくが・・・。
主な登場人物
[編集]- 原作における設定を記述。
- 梅木隆介
- 独身のサラリーマン。車好きでドライブが趣味。雑司が谷のアパートに住む。
- 浜田弘
- 京橋の商事会社課長。背広のくたびれた中年男。
- 藤村真弓
- 丸の内のビルに勤めるウェイトレス。推理小説好き。
- 楠尾英通
- 多くの名誉職を務める元華族。港区麻布の瀟洒な邸に住む。
- 山辺菊子
- 元イタリア大使夫人。麹町の荘重な住居に住む。
- 村岡
- N自動車のセールスマン。二年前に一碧湖で溺死。
- 林田庄三
- 新宿のM証券の契約係。ずんぐりした身体。
- 江藤平右ェ門
- 柳井の造り酒屋の主人。
- 江藤みゆき
- 江藤の妻。
エピソード
[編集]- 作中の記述「ある伯爵の娘は、お抱え運転手と駆けおちをした」[2]について、エッセイストの酒井順子は、大正時代に一大スキャンダルとなった、芳川鎌子とお抱え運転手の駆け落ち事件(千葉心中)を指すと指摘し、「鎌子が伯爵(芳川顕正を指す)の妾腹の娘だったことを考えると、『花実のない森』は、芳川鎌子事件の現代版的小説だったのかもしれない」と述べている[3]。
文学碑
[編集]小説後半では山口県柳井市が舞台となり、当時の町並みの様子が描写されているが、古市金屋地区の「白壁ふれあい広場」の一角に、1997年3月16日、本作にちなんだ文学碑が建立され、小説の一節が刻まれている[4]。
柳井市は降りただけで旧い町だと知れた。・・・珍しい町の風景だ。近年、こういう古めかしい場所がだんだん少なくなっている。世に有名なのは、伊豆の下田と備中の倉敷だが、ここにもそれに負けないような土蔵造りの家が並んでいる。歩いている人間も静かなものだし、店の暗い奥にすわっている商人の姿も、まるで明治時代からその慣習を受けついでいるような格好であった。
— 松本清張『花実のない森』「白壁と川のある街」より
関連項目
[編集]- 姥子温泉[5] - 小説の舞台。
- 川奈ホテル[6] - 小説の舞台。
- 万葉公園 (湯河原町)[7] - 小説の舞台。
- 佐伯祐三[8]
- 色情症 - 小説中「欲望に異常な亢進が見られるようになった」[8]として描写される。
映画
[編集]花実のない森 | |
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The Forest of No Escape | |
監督 | 富本壮吉 |
脚本 | 舟橋和郎 |
出演者 |
若尾文子 園井啓介 |
音楽 | 池野成 |
撮影 | 小原譲治 |
編集 | 関口章治 |
配給 | 大映 |
公開 | 1965年1月23日 |
上映時間 | 89分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
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1965年1月23日公開。製作は大映東京撮影所、配給は大映。殺人事件の背景および真犯人が原作と異なる。村岡の設定は原作後半のやくざと統合され、またラストで明かされる犯人の設定は映画オリジナルとなっている。
キャスト(映画)
[編集]- 若尾文子(江藤みゆき)
- 園井啓介(梅木隆介)
- 江波杏子(節子)
- 船越英二(浜田)
- 田村高廣(楠尾英通)
- 角梨枝子(山辺菊子)
- 川畑愛光(宮坂清)
- 仲村隆(村岡)
- 浜村純(岩下)
- 吉葉千郎(クローク)
- 川島真二(雑誌記者)
- 響令子(家政婦)
他
スタッフ(映画)
[編集]テレビドラマ
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ドラマ特別企画 松本清張「花実のない森」 | |
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ジャンル | テレビドラマ |
原作 | 松本清張 |
脚本 | 篠崎絵里子 |
監督 | 中前勇児 |
出演者 |
東山紀之 中山美穂 小澤征悦 相武紗季 大和田獏 渡辺いっけい 鷲尾真知子 中原丈雄 吹越満 寺島進 |
製作 | |
プロデューサー |
松本拓 高石明彦 |
製作 |
テレビ東京 The icon |
放送 | |
音声形式 | ステレオ放送 |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 2017年3月29日 |
放送時間 | 水曜日 21:00 - 23:08 |
放送分 | 128分 |
回数 | 1 |
公式サイト |
東山紀之主演のスペシャルドラマとして、テレビ東京系で2017年3月29日21:00に放送された[1]。原作と異なる事件背景および殺人動機が設定されている。
キャスト(テレビドラマ)
[編集]- 東山紀之(梅木隆介)
- 中山美穂(江藤みゆき)
- 小澤征悦(楠尾英通)
- 相武紗季(藤村真弓)
- 鷲尾真知子(山辺菊子)
- 木本武宏(安達哲也)
- 久保酎吉(村岡弘忠)
- 中村僚志(間宮修治)
- 中村公隆(小泉敬太)
- 日向丈(松田)
- 越村公一(梅木光太郎)
- 吹越満(井上幸太郎)
- 寺島進(島崎芳樹)
- 大和田獏(浜田弘)
- 中原丈雄(郷田良亮)
- 渡辺いっけい(渡部慎二)
- 中山由香、須藤温子、栗田桃子、田村勝彦、久保田秀敏、三島ゆたか、有福正志、永嶋美佐子、利麗、金沢きくこ(「カルネ」のママ) ほか
スタッフ(テレビドラマ)
[編集]- 原作 - 松本清張 『花実のない森』(光文社)
- 脚本 - 篠崎絵里子
- 監督 - 中前勇児
- ロケ協力 - 山口県フィルムコミッション、岩国市観光振興課、柳井市商工観光課、山口市フィルムコミッション、宇部フィルムコミッション、西日本旅客鉄道、湯河原町、とちぎフィルム応援団、調布市産業振興課、品川シーズンテラス ほか
- 特別協力 - スターフライヤー、メルセデス・ベンツ
- スタントコーディネート - 小池達朗、高橋伸稔
- CG - マリンポスト
- 音響効果 - スポット
- 技術協力 - ビデオスタッフ、東通
- 照明協力 - ザ・ホライズン
- 美術協力 - フジアール
- チーフプロデューサー - 中川順平(テレビ東京)
- プロデューサー - 松本拓(テレビ東京)、高石明彦(The icon)
- 製作 - テレビ東京、The icon
脚注
[編集]- ^ a b “ストーカー東山紀之…松本清張ミステリーで妖艶美女追い回し盗撮”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2017年1月27日). オリジナルの2017年1月27日時点におけるアーカイブ。 2017年1月27日閲覧。
- ^ 「白壁と川のある街」4節。
- ^ 酒井順子「松本清張の女たち」第5回「転落するお嬢さん達」(『小説新潮』2022年12月号掲載)参照。
- ^ “柳井市古市・金屋伝統的建造物群保存地区 - 柳井市ホームページ”. www.city-yanai.jp. 2019年11月2日閲覧。
- ^ 「箱根の山荘」3-4節。
- ^ 「消えた男たち」2節。
- ^ 「万葉の庭」1節。
- ^ a b 「白壁と川のある街」3節。
外部リンク
[編集]- 花実のない森 - allcinema
- 花実のない森 - KINENOTE
- The Forest of No Escape - IMDb
- 花実のない森 - ウェイバックマシン(2021年6月21日アーカイブ分) - 角川映画
- ドラマ特別企画 松本清張 花実のない森 - テレビドラマ公式サイト。