不法滞在

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不法滞在(ふほうたいざい)または不法滞留(ふほうたいりゅう)は、一般に人が出入国関係法令(日本の場合は出入国管理及び難民認定法)に違反した状態で外国(自らが国籍を有する以外の国)に滞在している状態をさす。非正規滞在あるいはオーバーステイという表現が用いられることもある。

概要[編集]

難民法を立法化している国では政治難民は不法滞在にならない。ただし不法滞在の外国人が捕まると強制退去を逃れる手段として虚偽の難民申請をする場合が多く、難民に対する法的扱いに寛容なヨーロッパでは、不法滞在で逮捕される者の多くが引き伸ばしの手段として難民申請を行う。不法入国者の大多数が難民認定を申請し、滞在し続けているという現状があるため[要出典]、難民申請者は不法移民であるという偏見がヨーロッパで定着してしまった。

俯瞰的な観点からみると、世界各国の後進国から先進国への不法入国及び不法滞在が散見され、近年は不法移民の流入によって先進国の社会不安が増大したことから、特に不法移民取締の要請が社会的に強まりつつある。ヨーロッパのように不法入国者による犯罪や移民反対デモに則して移民全体に厳しい措置をとる国もある一方で、移民の制限を緩めて合法的に移民をしやすくし、質の悪い(犯罪や反社会的行為に走るような)不法移民を選別しようとする国も存在する。外国人が不法滞在者であることのみをもって国外退去を命じることは、難民の人権保護等の観点から問題があるとの意見もある。1869年の移民法可決から長きにわたり移民受け入れに寛容とされてきたカナダも、移民の流入先は都市部に偏っており、移民は税収増につながらないばかりか難民制度を悪用した不正移民及び社会不安により移民に消極的になっていると報道されている。

不法滞在者は法的な地位が安定していないことから刑事犯罪に走る傾向があるとされ[誰?]、その抑止のため日本では近年不法滞在者の摘発が強化されつつある。また、日本では昨今の不況を反映して多くの企業で人件費の削減が進められているが、そのために企業が不法滞在者を不当に安い賃金で労働に従事させるなどの問題が表面化している。1990年(平成2年)の全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約はこうした背景から採択された。

種類[編集]

不法滞在は不法残留不法入国に大別される。不法滞在者は退去強制(いわゆる「強制送還」)の対象となる。日本にはEU諸国間におけるシェンゲン協定のような、外国人が自由に往来できる制度がないため、日本国籍を持たない人(外国人)が合法的に日本に滞在するためには、一部の例外を除き、出入国管理及び難民認定法(入管法)に定める在留資格のいずれかを持たなければならないこととなっている。したがって、日本における不法滞在者とは在留資格(厳密には「在留の資格」)を持たない外国人を指すと言ってもよい。

不法残留(日本の場合)
入国する際には空港または港で上陸許可を受け、在留資格を有していたが、定められた在留期限満了後も出国せずに在留していること。(オーバーステイ・超過滞在)
不法入国
上陸許可を受けず、したがって在留資格を取得せずに入国すること。または、有効でない旅券を用いるなど、不正な手段で入国すること。
不法入国の手段は、近年では偽変造旅券行使、船舶による密航など多様化している上、人数の把握ができないため、対策が困難である。

日本の状況[編集]

日本の国籍別不法残留者数の推移
  • 日本では不法滞在者が1993年平成5年)の約30万人をピークに年々減少し、2014年(平成26年)年初には59,061人に激減した。新しい入国審査制度やオンライン情報受付などによる[1]出入国管理及び難民認定法第62条や第66条に規定される報償金に対する認知向上などが効果を上げたと見られる。しかし、2015年(平成27年)年以降は増加し、2016年は、62,818人となった。原因として、
  • 政府が東南アジア諸国からの観光客誘致やビジネス面での利便性向上を目的に、東南アジアに対して査証緩和を実施したことに伴い新規入国の数が増えたこと[2]。(下記の日本における不法残留者数にあるタイ・フィリピン・ベトナム・インドネシア・マレーシアは2013年7月1日に緩和措置(タイ、マレーシアは査証免除)がなされており、2014年にもフィリピン・ベトナムで2回、インドネシアで3回の緩和措置がされている。[3]
  • 景気回復を背景にアジア諸国からの技能実習生や留学生の来日などが活発になったこと[4]
  • 技能実習生が、来日後に別の仕事を求めて実習先から姿を消すケースが増えていること[5]

が背景にあると考えられる。

  • 不法滞在者の多くは、日本での経済的利益を得ることを目的としているが、渡航費や斡旋手数料などとして莫大な前借金を負わされて日本に入国し、強制的に働かされている者もおり、人身売買として問題となっている。不法滞在者はもちろん、それを雇った事業主や不法入国を援助した者に対しても罰則がある。
  • 1990年代初頭の不法滞在者数は現在と違い、1993年(平成5年)の時点でタイ人が55,380人、イラン人が同年5月1日時点で40,001人[6]となっていた

日本における不法残留者数[編集]

1995年(平成7年)以降、韓国人の不法滞在者数が1位となっている。また、韓国とタイ、フィリピン、マレーシア、シンガポールでは女性の方が男性よりもかなり多い。

2016年(平成27年)1月1日現在と最盛期[7]の比較
  • 韓国 13,412人 〈構成比21.4%〉← 62,580人(1999年)
  • 中国 8,741人 (構成比13.9%)← 39,740人(1994年)
  • タイ 5,959人 (構成比9.5%)← 55,380人(1993年)
  • フィリピン 5,240人 (構成比8.3%)← 42,610人(1998年)
  • ベトナム 3,809人(構成比6.1%)← 4,071人(2006年)
  • 台湾 3,543人(構成比5.6%)← 9,440人(1999年)
  • インドネシア 2,228人(構成比3.5%))← 7,246人(2004年)
  • マレーシア 1,763人(構成比2.8%)← 38,530人(1992年)
  • シンガポール 1,055人(構成比1.7%)
  • ブラジル 983人(構成比1.6%)← 5,026人(1997年)
  • その他 16,085人(構成比25.6%)← 87,930人(1992年)
  • 計 62,818人 ← 298,600人(1993年)
法務省資料

不法滞在者による犯罪[編集]

2014年(平成26年)の 外国人犯罪者の総検挙人員のうち、約17.6%(刑法犯:約4.9%、特別法犯:約32.6%)が不法滞在者であり、2014年(平成26年)の 外国人犯罪者の総検挙者数の内訳では、正規滞在は8,807人(内 刑法犯:5,504人、特別法犯:3,303人)、不法滞在の犯罪者1,882人(内 刑法犯:238人、特別法犯:1,599人)である。不法滞在者による犯罪には、まず窃盗(不法滞在刑法犯検挙人員の約59.0%)や入管法違反(不法滞在特別法犯検挙人員の約95.4%)が多く、次いで旅券、外国人登録証明書、運転免許などの偽造による有印公文書偽造、偽装結婚、偽装認知などの知能犯(不法滞在刑法犯検挙人員の約18.4%)、さらに薬物事犯(不法滞在特別法犯検挙人員の約2.3%)などがある[8]

有印公文書偽造による入管法違反
不正取得した旅券在留カードを使用して、不法出国と不法入国を繰り返す犯罪もある。2012年(平成24年)に愛知で起きた韓国人女性による入管法違反の事件では、2009年(平成21年)10月から2010年(平成22年)4月までの間、不法滞在の女性が不正取得した旅券を使用し、日本人女性になりすまして日韓間の出入国を何度も繰り返していた事件がある[9]
偽装認知
不法滞在の外国人が在留資格を得る目的で、実の子と偽って日本人に認知してもらうことをいう。2009年(平成21年)2月に、東京都で起きた中国人による偽装認知事件では、中国人2人の間にできた子供を日本人男性との間にできた子供と偽り、日本人男性が認知したとする虚偽の届け出を市役所に提出し、中国人が日本国籍の実子を養育していたもので、中国人父母と日本人男性の間に面識はなかった。
不法出入国
日本国内での犯罪から逃亡するために[10]、また不法滞在者が用事などで一時帰国せざるを得なくなり、その際に正規手続きによって日本から出国をすると不法滞在が判明してしまう為、これを防ぐ目的での「不法出国」が増加している。2006年(平成18年)に、海上保安庁が摘発した不法出国者数は41人。このうち36人が韓国人で、そのほとんどは女性であった[11]。2013年には、福岡県釜山広域市へ帰るため、釣り船を待っていた不法滞在の韓国人女性6人が摘発されている[12]。女性らは韓国退去強制されたが、再び日本へ渡航するために釣り船による密航を行なっている。警察では「日本の上陸拒否期間を知った上で組織的に行われた悪質な犯行」としている[12]

デマ[編集]

2015年、「7月9日以降、在日は不法滞在者になり、強制送還される」というデマがインターネット上に広がり、法務省入国管理局に寄せられる不法滞在の通報メールが7-9月で1万件程度におよび、在日コリアンらに関する事実に基づかない情報が大幅に増えた。当局は受け付けを一時停止し、業務妨害等に当たらないか警察に相談、「外国人を中傷するメールは通報システムの目的にそぐわず、まったく遺憾だ」としている。通報メールは2004年に導入され、日本弁護士連合会は、2005年、「一般市民に、不法滞在者ではないかという注意を向けさせ、外国人への偏見や差別を助長する」などと中止を求める意見書を法務大臣宛てに提出、2015年11月、市民団体「移住者と連帯する全国ネットワーク」が法務省に対し、「差別扇動につながる」と指摘していた。一橋大学名誉教授の田中宏は「密告を奨励するような仕組みが、『朝鮮人を追放しろ』などのヘイトスピーチを繰り返す者に『政府のお墨付きがある』と感じさせている。停止するのではなく、廃止すべきだ」と述べている[13]

脚注[編集]

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  1. ^ 「情報受付」, 法務省入国管理局.
  2. ^ 在留外国人、過去最多の223万人 - 不法残留も増加 マイナビニュース 2016年3月11日
  3. ^ 資料5 ビザ条件の緩和 観光庁 閲覧日2016年3月21日
  4. ^ 在留外国人が過去最多…不法残留者も2年連続増 読売新聞社 2016年3月11日
  5. ^ 在留外国人 1959年以降最多 223万2189人 毎日新聞社 2016年3月11日
  6. ^ 本邦における不法残留者数について(平成13年1月1日現在)
  7. ^ 外国人登録の状況と不法滞在者
  8. ^ 来日外国人犯罪の検挙状況(平成26年)のP32とP35 警察庁刑事局組織犯罪対策部 国際捜査管理官 2015年(平成27年)3月 
  9. ^ 来日外国人犯罪の検挙状況<平成24年上半期>P24 警察庁刑事局組織犯罪対策部  2013年(平成25年)5月閲覧
  10. ^ 「JR西日暮里スプレー噴射事件 密入国ルート」2006年4月12日統一日報
  11. ^ 「不法出国 90%は韓国女性」2007年5月2日 統一日報
  12. ^ a b 風俗店に就業するため日本へ密航しようとした女性らを摘発=韓国 サーチナ 2013年(平成25年)5月13日
  13. ^ “不法滞在の通報、前年比3倍超 ネット上のデマ影響か”. 朝日新聞. (2015年12月23日). http://digital.asahi.com/articles/ASHDK5T49HDKOIPE01M.html 

関連項目[編集]