三方五湖

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三方五湖
Mikata five lakes Aerial photograph.2018.jpg
2018年8月1日撮影の21枚を合成作成。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。
所在地 福井県三方郡美浜町三方上中郡若狭町
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三方五湖レインボーラインから見た三方五湖

三方五湖(みかたごこ)は、福井県三方郡美浜町と同県三方上中郡若狭町にまたがって位置する5つのの総称。若狭湾国定公園に含まれる。

1937年(昭和12年)6月15日には国の名勝に指定された[1]。2005年(平成17年)11月8日にはラムサール条約指定湿地に登録された。2015年(平成27年)4月24日、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 - 御食国(みけつくに)若狭と鯖街道 - 」の構成文化財として日本遺産に認定された[2]

概要[編集]

三方五湖は五つの湖で構成されており、五つの湖はすべてつながっている状態である。湖の構成を以下に示す[3]

名称 読み 湖沼型 水質 面積 深度 周囲 備考
1 三方湖 みかたこ 富栄養湖 淡水 3.58 km2 [4] 05.8 m 09.60 km 南北約1.5km、東西約3km、湖面の海抜0m
2 水月湖英語版 すいげつこ 富栄養湖 汽水 4.18 km2 [4] 34 m 10.80 km 五湖中最大の面積
3 菅湖 すがこ 富栄養湖 汽水 0.91 km2 13.0 m 04.20 km
4 久々子湖 くぐしこ 富栄養湖 汽水 1.40 km2 [4] 02.5 m 07.10 km
5 日向湖 ひるがこ 貧栄養湖 海水 0.92 km2 38.5 m 04.00 km 出典では淡水と表記されている

特色[編集]

五つの湖は淡水海水汽水とそれぞれに違った性質を持ち、また同じ汽水湖でも日本海に直接つながっている久々子湖と一番奥にある菅湖、中間の水月湖ではそれぞれ海水と淡水の比率が違っている。そのため水の色も微妙に変化し[5]、梅丈岳(三方五湖レインボーライン展望台)から見える景色は、五つの湖がそれぞれに違った青色に見えるのである。三方五湖の周囲には梅畑が広がり、若狭広域農道には若狭梅街道という愛称が付けられている。

三方湖[編集]

三方湖

日本列島気候植生を何万年前より記録しており、また、日本海の海洋環境の変化を湖底に記録しているとされる。1980年(昭和55年)11月、湖底の堆積物を採取するためのボーリングが三方湖東南部(水深1.5メートル)の北緯35度33分32秒、東経135度53分40秒の地点で行われた。採取した堆積物から花粉珪藻などの微化石、あるいは植物遺体を検出した。過去7万年間の記録を保管していることが分かった。ボーリング地点から南に1キロほどのところに鳥浜貝塚がある。

冬期の三方湖ではたたき網漁が行われる。

水月湖[編集]

水月湖

水月湖は二重底の湖である。湖水上部(水深0-6m)は淡水、下部(水深7-40m)は硫化水素を含む無酸素の汽水となっている。

水路工事の結果、三方湖からは淡水、久々子湖からは汽水が流れ込むようになり、淡水に比べ重い汽水は湖底に滞留するようになった。この状態で湖の表面に強風が吹いても表層の淡水が攪拌されるのみで、湖底の汽水は滞留したままである。

この結果、下部の汽水は空気に触れることが無く、表層の酸素を含んだ淡水と混じり合うことも無いために、有機物分解によって酸素が消費し尽くされてしまい、酸素の代わりに汽水中の硫酸イオン還元して硫化水素にすることで呼吸を行う硫酸塩還元細菌の活動により、2006年時点では硫化水素を多量に含んだ無酸素状態となっている。

なお、嫌気性の下層水で最も光の強度が強い上限付近では、硫化水素を光エネルギーで単体硫黄にまで酸化させ、その時に発生するエネルギーを利用して炭酸同化を行う緑色硫黄細菌を主体とする酸素非発生型の光合成細菌が濃密に生息している。

水月湖の年縞堆積物は過去7万年の年代測定の標準時計として期待されている。水月湖の年縞堆積物に関しては年縞#水月湖の年縞を参照のこと。

菅湖[編集]

菅湖

久々子湖[編集]

久々子湖におけるボート競技

1968年(昭和43年)に福井県で開催された第23回国民体育大会をきっかけとして、久々子湖には漕艇場が設置された。美浜町立美浜中学校福井県立美方高等学校福井県立敦賀工業高等学校の各ボート部、関西電力ボート部が久々子湖で練習を行っている。

日向湖[編集]

日向湖と日向集落

日向湖と若狭湾を結ぶ日向橋のたもとでは、毎年1月に「日向の綱引き行事」(水中綱引き)が行われる。疾病退散や豊漁祈願などの意味を持つ神事であり、国の選択無形民俗文化財に指定されている。日向は1985年(昭和60年)公開の映画『夜叉』(降旗康男監督、高倉健主演)の主要なロケ地となった。日向橋は1994年(平成6年)公開の映画『釣りバカ日誌7』(栗山富夫監督、西田敏行主演)のロケ地となった。

人工構造物[編集]

三方五湖には水月湖と久々子湖をつなぐ浦見川(浦見運河)と、水月湖と日向湖を結んでいる嵯峨隧道、菅湖と三方湖をつなぐ堀切の3つの人工水路がある。

浦見川[編集]

浦見川

浦見川(うらみがわ)は、水月湖と久々子湖を結ぶ人工河川。浦見運河と表記されることもある。

寛文2年(1662年)5月1日に発生した寛文大地震で、菅湖から久々子湖に流れていた気山川[6]の地盤が隆起して、川の機能を失ってしまった。その代替水路として、三方郡奉行の行方久兵衛の指揮のもとで浦見川が掘削された。約2年後の寛文4年(1664年)に運河は完成し、上流に溜まっていた水がすべて引いた上に、三方湖周辺の土地改良につながった。

嵯峨隧道[編集]

嵯峨隧道(水月湖側)

嵯峨隧道(さがずいどう)は、水月湖と日向湖を結ぶ暗渠(トンネル)の人工河川。

三方湖や水月湖の湖岸の集落や農地を湖の氾濫から守るために計画された。宝暦13年(1763年)に完成し、嘉永元年(1848年)には小舟の通行が可能となった。

水月湖側への海水の逆流を防ぐため、1939年(昭和14年)には水月湖側に木製の暫定水門が設置され、1980年(昭和55年)に改修されて現在の水門が設置された。基本的に閉ざされた状態であり、開かれることは少ない。水門を開けることによって水月湖の生態系に影響を与える可能性があり、また日向湖のいかだ釣堀の魚に深刻な影響を及ぼすからである。

1999年(平成11年)8月14日には嶺南地方を豪雨災害が襲い、三方湖を中心にして三方五湖周辺で浸水被害が発生した。この際には全ての水門を開けたが、日向湖の漁業に大きな影響が出た。

日向運河[編集]

その他[編集]

菅湖と三方湖の間には堀切がある。掘削時期は明暦3年(1657年)以前と考えられるが、詳細は不明である。

流出入する河川[編集]

日向湖を除く4湖は、久々子湖と若狭湾を結ぶ早瀬川を本川とする二級水系に属している。比較的大きな川は三方湖に流入する鰣川(はすかわ)のみである。そのほかは小さい川が多数流入している。若狭湾へ流れ出る川は早瀬川、並びに日向湖に繋がった運河のみである。

生物相[編集]

湖には、コイフナボラウナギエビワカサギなどが生息し、釣りもできる。また、野鳥の観測地としても全国的に知られ、なかでもカモ目は、マガモカルガモキンクロハジロホシハジロなど10数種類・数千羽が確認されている[5]。湖周辺には、オオワシオジロワシなどの猛禽類も姿を見せる[5]

産業[編集]

漁業[編集]

ウナギ

夏季の三方五湖を象徴する漁業はウナギ漁であり、日向湖を除く全域で筒漁によって漁獲される[7]。江戸時代初期の随筆にも三方地域の名物としてウナギが紹介されている[7]。江戸時代の本草学の書物では三方五湖産のウナギは脂の乗りが良いとされ、「京都で一番美味な鰻」として説明されている[7]

シジミ

4月から11月にかけて、三方五湖では久々子湖を中心としてシジミ漁が行われる[8]。久々子湖の他には浦見川、水月湖、菅湖などでも行われ、ヤマトシジミが漁獲される[8]。久々子湖は砂地で泥が少なく、他地域のシジミと比べてさっぱりしているとされる[8]。三方湖の湖岸には縄文時代の鳥浜貝塚があるが、鳥浜貝塚からもヤマトシジミが発掘されている[8]。江戸時代には製塩に用いる土釜の材料にシジミの貝殻が用いられた[8]

スズキ

三方五湖ではスズキも多く生息している[9]。春から秋にかけて日本海から三方五湖の全域に遡上し、水月湖と菅湖では延縄漁で漁獲される[9]。江戸時代には献上品にも用いられ、明治時代の水月湖ではボラに次いで産出額の多い魚だったが、今日では市場で値が付かないため、大半が漁師メシになっている[9]

テナガエビ

春から秋にかけて、日向湖を除く三方五湖全域でテナガエビが漁獲される[10]。主に柴漬け漁が用いられ、漁師メシなどとして消費される[10]

ボラ

冬の三方五湖ではボラが漁獲される[11]。1881年(明治14年)における水産統計によると、三方五湖で最も生産高・売上高が大きな魚介類はボラだった[11]。今日では市場で値が付かないため、漁師メシなどとして消費される[11]

フナ

12月から翌年3月にかけて、三方湖・水月湖・菅湖ではフナが漁獲される[12]。三方湖ではたたき網漁で、水月湖と菅湖では刺し網漁が用いられ、昭和40年代までは福井県外にも出荷されていた[12]松江重頼の随筆『毛吹草』にはウナギやワカサギとともに三方地域の名物として紹介されている[12]。2022年(令和4年)5月には福井県里山里海湖研究所と福井県立若狭高等学校海洋科学科の生徒らが協力し、寒ぶなの煮つけの缶詰が商品化された[13]

コイ

冬の湖魚の代表格はフナとコイであり、三方湖のたたき網漁などで漁獲される[14]。鳥浜貝塚で出土した約1万3700年前の土器片にもコイ科の魚類を煮炊きした痕跡が残されている[14]小浜藩第7代藩主の酒井忠用は病気療養のために三方湖のフナを求めた[14]

ヒシ

古くから三方五湖にはヒシが自生している[15]。縄文時代草創期からこの地域では食材となっており、江戸時代には田畑がない家における食料源となった。かつてはヒシが胃病の妙薬として重宝されていた時代もあった。三方湖の湖面の70%以上をヒシが覆う年もあり、過剰な繁茂を防ぐために計画的に刈り取られている。

観光業[編集]

若狭町観光船レイククルーズ

水月湖と菅湖を巡る双胴船による遊覧[16]。所要時間は約40分。船幅と喫水の制限のため、浦見川以遠と三方湖は遊覧しない。三方五湖ジェットクルーズの運行会社が休業したため、三方五湖の遊覧はレイククルーズによる2湖のみとなった[17]

三方五湖ジェットクルーズ(運休中)

浦見川と三方五湖をめぐる、ジェット船による遊覧[18]。美浜町レークセンターから出航し、久々子湖、浦見川、菅湖、水月湖、三方湖を巡る約40分の航路である。2016年(平成28年)12月末より運休中[17][19]

美浜町レークセンター(営業終了)

福井県三方郡美浜町早瀬24-4。若狭美浜物産振興協会が指定管理業者となって運営していた施設[20]。売店や食堂、三方五湖めぐり(ジェットクルーズ)の遊覧船発着場があった。遊覧船の運行再開のメドが立たないため、2017年(平成29年)6月30日に営業終了した。

三方五湖レインボーライン

三方五湖周辺の山地には、三方五湖や日本海を展望できる観光道路三方五湖レインボーラインがある[5]。1968年(昭和43年)の開通時から有料道路だったが、2022年(令和4年)に無料開放された。また、三方五湖周辺には国道162号道の駅三方五湖国道27号の五湖の駅、舞鶴若狭自動車道三方五湖パーキングエリアなどの休憩施設がある。

三方五湖周遊道路

三方五湖周遊道路は日本の道100選のひとつに選出されている[5]。菅・三方・水月の3湖の湖岸を巡る全長23kmのうち、湖の西側10kmは国道162号福井県道216号常神三方線の2車線道路、湖の東側13kmは若狭町道として整備された自然遊歩道である[5]

周辺施設[編集]

三方五湖の沿岸には、弘法大師が一夜で観音像を彫ったという伝説があり、手足の不自由な人に御利益があるといわれる三方観音、日本最古の丸太船が出土し縄文時代の遺跡として知られる鳥浜貝塚や、古代の出土品などが展示される若狭三方縄文博物館などがある[5]

若狭三方縄文博物館

福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1。鳥浜貝塚をはじめ「縄文時代」をさまざまな視点からとらえる博物館。入室可能な竪穴建物の原寸大復元模型、古代人の生活の展示、考古学的研究の展示などがある。有料施設。併設されている公園にはアスレチック施設などがあり、また道の駅三方五湖が隣接している。

福井県年縞博物館

福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1。地誌学および考古学の博物館。三方五湖の一つである水月湖の湖底で発見された、7万年に及ぶ年縞に関する展示・研究を行っている。若狭三方縄文博物館に隣接している。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 三方五湖 - 文化遺産オンライン文化庁
  2. ^ 海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群”. 文化庁. 2020年9月19日閲覧。
  3. ^ 環境庁自然保護局編『日本の湖沼環境II』、(財)自然環境研究センター、1995年 ISBN 4915959104
  4. ^ a b c 国土地理院 (2015年3月6日). “平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積 (PDF)”. 2015年3月24日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 「日本の道100選」研究会 2002, pp. 122–123.
  6. ^ 現在も気山保育所付近に川の跡が残っている。
  7. ^ a b c 「食べて納得! 三方五湖メシ 夏編 1 ウナギ」『福井新聞』2021年8月19日
  8. ^ a b c d e 「食べて納得! 三方五湖メシ 夏編 1 シジミ」『福井新聞』2021年8月25日
  9. ^ a b c 「食べて納得! 三方五湖メシ 夏編 3 スズキ」『福井新聞』2021年9月1日
  10. ^ a b 「食べて納得! 三方五湖メシ 夏編 4 テナガエビ」『福井新聞』2021年9月4日
  11. ^ a b c 「食べて納得! 三方五湖メシ 冬編 1 ボラ」『福井新聞』2021年2月4日
  12. ^ a b c 「食べて納得! 三方五湖メシ 冬編 2 フナ」『福井新聞』2021年2月9日
  13. ^ 「若狭高生『寒ぶな缶』完成」『福井新聞』2022年5月14日
  14. ^ a b c 「食べて納得! 三方五湖メシ 冬編 3 コイ」『福井新聞』2021年2月16日
  15. ^ 「食べて納得! 三方五湖メシ 夏編 7 ヒシ」『福井新聞』2021年10月7日
  16. ^ 若狭町観光船レイククルーズ”. 若桜町. 2017年5月14日閲覧。
  17. ^ a b 三方五湖レークセンターが休業へ”. 福井新聞. 2017年5月14日閲覧。
  18. ^ 広報みはま 2017.4月号「三方五湖遊覧船について」”. 美浜町. 2017年7月14日閲覧。
  19. ^ ㈱三方五湖レークセンター”. コンパスクラブ. 2017年5月14日閲覧。
  20. ^ 美浜町レークセンター”. 美浜町商工観光課. 2017年7月14日閲覧。

参考文献[編集]

  • 「日本の道100選」研究会 著、国土交通省道路局(監修) 編 『日本の道100選〈新版〉』ぎょうせい、2002年6月20日。ISBN 4-324-06810-0 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯35度34分19.9秒 東経135度53分04.0秒 / 北緯35.572194度 東経135.884444度 / 35.572194; 135.884444 (三方五湖)