カルガモ

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カルガモ
アカボシカルガモ_オス
アカボシカルガモ(オス)
Anas poecilorhyncha poecilorhyncha
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: カモ目 Anseriformes
: カモ科 Anatidae
: マガモ属 Anas
: カルガモ A. zonorhyncha
学名
Anas zonorhyncha
和名
カルガモ(軽鴨)
英名
Grey duck
Spotbill duck
亜種
亜種カルガモ
Anas poecilorhyncha zonorhyncha
カルガモの親子

カルガモ(軽鴨[2]Anas zonorhyncha)は、鳥綱カモ目カモ科マガモ属に分類される鳥類。

形態[ソースを編集]

全長53-63センチメートル[3]翼開長83-91センチメートル[4]。全身の羽衣は黒褐色[4]

分類[ソースを編集]

本種の学名は、日本産鳥類目録改訂第7版で Anas poecilorhyncha から Anas zonorhyncha に変更された。

以前の分類では3亜種に分けられる。その場合、それぞれの特徴は下記を参照のこと。また、マミジロカルガモを本種に含める説もあった[3]

A. poecilorhyncha haringtoni ビルマカルガモ
中華人民共和国雲南省)、ベトナムミャンマーラオス[5][1]に分布。
翼長オス24.5-26.8センチメートル、メス23.7-25.5センチメートル[5]
上嘴基部の赤い隆起は小型、もしくはない[5]
A. poecilorhyncha poecilorhyncha アカボシカルガモ
インドスリランカ[4][3]に分布。
翼長オス26-28センチメートル、メス25-26.8センチメートル[5]。次列風切の光沢は緑紫色で、次列風切や三列風切外縁(羽縁)の白色部が明瞭[5]
オスは上嘴基部に赤い隆起がある[5]
A. poecilorhyncha zonorhyncha カルガモ
大韓民国中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国日本ロシア東部[5]に分布。
日本では主に本州以南に周年生息(留鳥)する[3][6]。和名は「軽の池」(奈良県橿原市大軽周辺とする説もあり)で夏季も含めて見られたカモであったことに由来すると考えられている[2]
翼長オス25.4-27.6センチメートル、メス24.3-26センチメートル[5]。次列風切の光沢は青紫色で、次列風切や三列風切羽縁の白色部が小型で不明瞭[5]
少なくとも亜種カルガモはオスの腹部の羽衣が濃褐色で、羽毛外縁(羽縁)の淡色部が小型になり胸部との差異が明瞭[7]。尾羽基部を被う羽毛(上尾筒、下尾筒)が光沢のある黒[7]。メスは胸部と腹部の羽衣の差異が不明瞭で、上尾筒や下尾筒が黒褐色で羽縁が淡色だったり淡色の斑紋が入る[7]

生態[ソースを編集]

湖沼河川などに生息し、冬季になると海洋にも生息する[3][6]。渡りは行わないが、北部個体群は冬季になると南下する[5][3]

食性は植物食傾向の強い雑食で、種子、水生植物、昆虫などを食べる[6]。狩猟で撃ち落とされた本種で、3.2-6.6センチメートルのオイカワを30尾食べていた例もある[8]。水面でも陸上でも採食を行う[3]

繁殖形態は卵生。亜種カルガモでは集団繁殖地(コロニー)を形成することもある[5]。水辺に巣を作る[5][3]。基亜種は7-9個、亜種カルガモは10-12個の卵を産む[5]。亜種カルガモの抱卵期間は26-28日[5]。少なくとも基亜種においてはオスも育雛を行った例がある[5]。雛は孵化してから2か月で飛翔できるようになる[3]

繁殖地が高密度になると、雌が同種他個体の子を殺す(子殺し)ことが報告されている[9]。このときには、他種(オカヨシガモ)の雛も殺している[9]。親が自分の子を殺す場合もある[要出典]

繁殖期前期(交尾から営巣地の探索程度まで)はつがいで行動するが、メスが抱卵・育雛を行っている間、オスは概ねオスだけの群れを形成する。繁殖期が終わると、まずメス親とヒナとの関係が消失する。その後は不透明であるが、越冬期前には、雌雄で構成される大群を形成する。

人間との関係[ソースを編集]

イネなどを食害する害鳥とみなされることもある[5]

本種は雑食性の性質が強く、植物質のエサ以外にタニシなども好んで食べ肉に臭みが出るので日本ではマガモのように賞味される機会は少ないものの、マガモより食味が極端に落ちるようなことはなく、植物食の傾向が強い時期の肉は、マガモと並んでうまいとされる。

日本では1984年以降、数年間に渡って東京都千代田区大手町にある三井物産ビルのプラザ池から皇居和田倉堀へ引っ越す本種の親子をメディアが取り上げ、ブームとなったことがある。2013年現在[10][11]においても、同社では同池に営巣する本種を観察し、それを記録するためのカルガモレディなる女性を雇用している[12]。また、一列に並んで歩く親子の様子から、複数の車両が同様に走行することやそれを悪用した反則行為を「カルガモ走行」(カルガモそうこう)と称するようになった[13]

日本のカルガモはアヒルとの種間雑種が存在しているとされる[注 1]。アヒルの原種はマガモであり、3代も野生で放置されると飛翔するほどになるが、日本のカルガモもアヒルと交雑することで、元々は狩猟の対象であり、ヒトを恐れていたはずのカルガモも前述のようなヒトを恐れない行動をとるようになっていったと考えられ、都市部のカルガモの多くがアヒルとの雑種であり、遺伝子汚染が進行している。照明の多い都市部では夜間に飛翔する個体もある。

外形に関する遺伝形質はカルガモの方が強いため、見た目はカルガモでも性格はアヒルに近いものが現れたと分析される[14]

1994年(平成6年)1月13日から2014年(平成26年)3月31日まで販売された90円普通切手の意匠になった[15]

脚注[ソースを編集]

注釈[ソースを編集]

  1. ^ この日本のアヒルは一時期、夜店で売られていたものが野生化したと考えられる。

出典[ソースを編集]

  1. ^ a b The IUCN Red List of Threatened Species
    • BirdLife International 2011. Anas poecilorhyncha. In: IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2.
  2. ^ a b 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社2008年、109頁。
  3. ^ a b c d e f g h i 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥類I』、平凡社1986年、180頁。
  4. ^ a b c 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版2000年、118頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 黒田長久、森岡弘之監修 『世界の動物 分類と飼育 (ガンカモ目)』、財団法人東京動物園協会、1980年、58-60頁。
  6. ^ a b c 環境庁 『日本産鳥類の繁殖分布』、大蔵省印刷局1981年
  7. ^ a b c 今村知子、杉森文夫 「今村知子、杉森 文夫:羽色に基づく繁殖期のカルガモの雌雄判別 山階鳥類研究所研究報告 Vol.21 (1989) No.2 P247-252
  8. ^ 水野千代 「カルガモの魚類捕食に関する事例報告」『Strix』vol.24、日本野鳥の会、2006年、201-203頁
  9. ^ a b Shimada, Tetsuo; Kuwabara, Kazuyuki; Yamakoshi, Saori; Shichi, Tomomi (2002). “A case of infanticide in the Spot-billed Duck in circumstances of high breeding density”. Journal of Ethology 20 (2): 87-88. doi:10.1007/s10164-002-0058-7. ISSN 1439-5444. 
  10. ^ 5年ぶりのヒナ誕生を確認 三井物産本店のカルガモ - 朝日新聞、2014年5月25日閲覧
  11. ^ 株主通信2013年夏号 p.24
  12. ^ 「カルガモ日記」三井物産
  13. ^ かるがもそうこう【軽鴨走行】の意味 - goo国語辞書
  14. ^ 藤本和典著、『生物いまどき進化論』、技術評論社、2009年12月10日初版第1刷発行、ISBN 9784774140568[要ページ番号]
  15. ^ 普通切手、慶弔切手一覧”. 公益財団法人日本郵趣協会. 2014年4月1日閲覧。 (ただし、発売開始の出典とはならない)