オレンジジュース

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Orange juice
248 g (1 cup)あたりの栄養価
エネルギー 468.6 kJ (112.0 kcal)
25.79
糖類 20.83
食物繊維 0.50
0.50
飽和脂肪酸 0.06
一価不飽和 0.089
多価不飽和 0.099
1.74
ビタミン
ビタミンA相当量
(3%)
25 µg
ビタミンA 496 IU
チアミン (B1)
(19%)
0.223 mg
リボフラビン (B2)
(6%)
0.074 mg
ナイアシン (B3)
(7%)
0.992 mg
ビタミンB6
(8%)
0.099 mg
葉酸 (B9)
(19%)
74 µg
ビタミンB12
(0%)
0.00 µg
ビタミンC
(149%)
124.0 mg
ビタミンD
(0%)
0.0 IU
ビタミンE
(1%)
0.10 mg
ビタミンK
(0%)
0.2 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
2 mg
カリウム
(11%)
496 mg
カルシウム
(3%)
27 mg
マグネシウム
(8%)
27 mg
リン
(6%)
42 mg
鉄分
(4%)
0.50 mg
亜鉛
(1%)
0.12 mg
他の成分
水分 218.98

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

オレンジジュース: orange juice)は、オレンジ果実搾ることで得られる果汁ジュース)であり、あくまでオレンジの果汁が100%のものである。日本の「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(以下「JAS法」)の通達でも『オレンジ、および規定の添加物のみが配合された飲料』と定義されている。

栄養素的には、オレンジに含まれる栄養素を含み、ビタミンC食物繊維が豊富とされる。なおビタミンC含有量に関しては製法や保存状況によっても異なる。味やフレイバーは、オレンジ固有の香りや風味(酸味甘みを主として、苦味などを含む)をもつ。

色は、絞るオレンジの種類にもより、代表格2種のバレンシアオレンジネーブルオレンジを絞る場合はいわゆるオレンジ色であり、この色がもっとも広く親しまれているが、ブラッドオレンジを絞る場合はかなり赤みがかった色の果汁である。

用途としては、主に飲料として用いられるが、このほかにも料理製菓)の材料として使われることもあり、また清涼飲料水の風味付けなどにも用いられる。飲料としては、朝食おやつにしばしば飲まれ、それ以外の時間帯でもビタミンその他の栄養素などの補給を期待して飲んでいる人々は多い。

オレンジジュースは、果実としてのオレンジを搾ることで作られるわけだが、これはオレンジ果実そのものよりも保存性がよい。オレンジ1個からはおおよそ90グラムのオレンジジュースが得られる。「100%のオレンジジュース」1リットルを得るのに2~3kgほどのオレンジ果実が必要だと言われている。

歴史

第二次世界大戦中、アメリカ軍は兵士の健康を考慮し壊血病を防止するためにビタミンCを補給させようとして、レモンの結晶を支給したが、それはおいしくなかったので兵士たちから拒絶されてしまった。そこで米国の連邦政府は、もっと好ましい味のもので、かつ壊血病を防ぐことができる食品を探した。当時すでに缶詰のオレンジジュースというのは存在したが、もっと良いものを探したのである。連邦政府とフロリダ州柑橘類局は科学者グループと協力して研究した結果、冷凍濃縮オレンジジュースを開発できた[1]。なお、濃縮冷凍オレンジジュースの開発し終えたのは第二次世界大戦が終了してから3年後のことで、戦争には間に合わなかったが、その後の世界の人々の生活には貢献することになった。

種類、分類

まず絞るオレンジの種類で分類されている。バレンシアオレンジネーブルオレンジブラッドオレンジなどの種類で分類されている。また産地によっても、ブラジル産、アメリカ産、メキシコ産、南アフリカ産...トルコ産...などと分類されている。

またオレンジジュースが濃縮されているか、されていないかで「非濃縮オレンジジュース」と「濃縮オレンジジュース」に分類されている。濃縮オレンジジュースの中でも冷凍されたものは冷凍濃縮オレンジジュース(FCOJ)と分類される。今日、世界的な流通は主に冷凍濃縮オレンジジュースの状態で行われている。

濃縮オレンジジュースと「濃縮還元オレンジジュース」

オレンジジュースを濃縮したものは濃縮オレンジジュースと言う。濃縮オレンジジュースは、液体輸送コンテナに詰められ、貿易用の物資として世界規模で流通している。古くは加熱によって水分を蒸発させたりもしたようだが、加熱濃縮では風味や栄養価が劣るため、今日では風味も栄養価も良い冷凍濃縮が主流である。

濃縮オレンジジュースの中でも、冷凍したものは冷凍濃縮オレンジジュースである。業界用語・流通業界用語・行政用語などではむしろ、短くFCOJと呼ぶことが一般的である。FCOJは大規模な工場で非常に大量に生産されるので、単価がかなり安い。世界規模で大量に流通しており、先物取引の市場でもオレンジジュース(FCOJ:冷凍濃縮オレンジジュース)は一定規模で扱われる商品である。

FCOJは果汁を凍結させ、その過程で結晶が不純物としてオレンジの水以外の成分を残して凍結する性質を利用したり、フリーズドライの要領で水分を90%以上取り除いたもので、見た目はオレンジ色のワックスに似た高い粘性を持つ液体である。このように濃縮してできた液体を密閉容器に収めるなど酸素を遮断したまま冷蔵保存することで長期間の保存や輸送に耐える。

今日、世界各地のコンビニエンスストアスーパーマーケットの店頭で紙パックペットボトルなどに充填された状態で販売されているオレンジジュースは、おおむねこのFCOJを濃縮還元したオレンジジュース(FCOJに水を加えて一定濃度に戻したもの)である。これら濃縮還元オレンジジュースは、FCOJが工業単位で生産されることから小売単価も安く、一般にビタミンCの簡便安価な供給源として親しまれている。

日本でも愛知県豊橋市三河港に日本最大級のジュース専用ターミナル「日本ジュース・ターミナル(NJT)」があり、ブラジルから専用タンカーで運ばれてきた濃縮オレンジジュースの受入れ、冷蔵保管、タンク間移送、在庫管理、品質管理、ブレンド、形態別充填作業および全国各地の飲料メーカー、ボトラー、パッカーへの出荷を行っている。

オレンジの重要な産地のひとつメキシコメキシコシティの街頭で、その場で果実を搾ったオレンジジュースを提供する人。こうしたオレンジジュースも非濃縮オレンジジュースにあたる。

非濃縮オレンジジュース

世界の生産量と主な原産国

オレンジジュースの世界生産量

世界全体のオレンジジュースの生産量は以下のとおり(単位:100万トン)[2]

  • 2014年-2015年 1.82
  • 2015年-2016年 1.57
  • 2016年-2017年、2.16
  • 2017年-2018年、1.59
  • 2018年-2019年、2.11
  • 2019年-2020年、1.62

(国や企業により統計の期間や会計年度にばらつきがあるので、しかたなく○○年-○△年と表記しているが、おおむね1年あたりの生産量の統計をとれている。)

ベースとなる果実生産量

世界各地でのオレンジジュースの生産量を説明するにあたり、オレンジ果実の主要な生産地とその生産量を説明しておくべきであろう。(オレンジ果実の生産量がオレンジジュースの生産量にほぼ直結している、という構造がある。ランキングで国名別で挙げられる場合でも、その具体的な産地も理解できるようになる。)

2000年時点で、オレンジ果実の世界生産量はおよそ6000万トンとされた。そのうちおよそ1800万トンがブラジルで生産され(世界第1位)、米国フロリダ州で1100万トン(世界第2位)、地中海盆地でおよそ1000万トンとなっていた。

国別のオレンジジュース生産量ランキング

(2020年時点。単位:百万トン)

さまざまな用途・提供法

ジュースバーによる提供や、飲食店や喫茶店におけるオレンジジュースの加工

ジュース・バー

その場でオレンジ果実を絞り提供する店舗もある。

ソーダ・ファウンテン装置向けの濃縮果汁シロップが業務用に提供されており、水でシロップを割り、オレンジジュースやオレンジ果汁入り飲料を提供している。

カクテルでの利用

カクテルには、しばしば柑橘系の果実が用いられる。オレンジも例外ではなく、しばしばその果汁(オレンジジュース)は材料(香り付けの役割もある)として使用され、オレンジジュースの独特の酸味甘み、また柑橘類の特徴的な香りを生かしたレシピが見られる。(なお、果皮果肉は、主に装飾や香り付けに利用される。)

カクテルに加える場合は、絞りたての果汁(いわゆるフレッシュジュース)を使う場合もあれば、工業単位で大量生産されているため安価な濃縮還元オレンジジュースが使われる場合もある。ただし、基本的に濃縮還元のものを含めて、オレンジジュースは果汁100%のものを用いる。カクテルには砂糖も使用されるため、甘味料などが添加されていてはあまり意味がない。と言うのも酒が使用される通常のカクテルの場合、オレンジジュースは副材料の扱いであり、あくまで脇役ではあるものの、カクテルにした以上、使用した全ての材料の風味が活きないと意味がないからである。このため、基本的にはフレッシュジュースの使用が推奨される。

オレンジジュースは様々なカクテルに使用されている。酒類にオレンジジュースを加えることは様々に試され、また飲用されているのである。

なお、副材料としてオレンジジュースを単独で用いる例だけはなく、他の果実の果汁と混合して用いられることもある。

名前に「オレンジ」と付かないカクテルの例

オレンジジュースが使用されたカクテルには、「オレンジ・**」と呼ばれるものが複数存在する。オレンジ・ブロッサムオレンジ・フィズなどがその例である。

また、何らかの酒をオレンジジュースで割ったものは「(酒の名前)・オレンジ」と呼ばれる場合が複数存在する。カシス・オレンジカンパリ・オレンジなどがその例である。

名称に「オレンジ」と付かないカクテルも存在するので、以下にその例を記載する。

ノンアルコールカクテル

オレンジジュースは、バーなどで雰囲気を壊さないためなどに飲まれるノンアルコールカクテルにも用いられる。以下にその例を挙げる。

工業的に作られるカクテル

焼酎をオレンジジュースで割ったチューハイもみられる。


流通品

各国

日本

日本国内事情と日本での価格

日本ではかつて、日本のみかん農家やオレンジ農家を保護するために関税が高く設定され、輸入量も制限されていた時代があった。その結果、日本国内では、オレンジジュースはかなり高価なものになってしまい、その時代では「高級品」扱いであった。その結果、100%オレンジジュースではないしろもの、オレンジ果汁をわずか10%〜30%程度配合したにすぎない安価な飲料、たとえばバヤリースオレンジ、HI-Cオレンジ、プラッシーなどの果汁入り飲料ばかりが店頭では選ばれ、100%オレンジジュースの流通量はあまり伸びなかった。対して国内産の柑橘類には関税がかけらていなかったわけで、価格競争力を持たされていたおかげで、たとえばポンジュースなどが、柑橘類の果汁100%ジュースとしては外国産よりも政策的に優遇されることになり、販売量を伸ばしていた。

オレンジ100%ジュースの味は、生産国やオレンジの種類や生産年により異なるのだが、日本に輸入されるものに関しては酸っぱく飲みづらいとの指摘もしばしばあり、配合物を工夫した高級オレンジ果汁入り飲料として、KIRINハイバー70が登場した。

1986年4月に、日本でオレンジの輸入が事実上自由化された。メーカーブランド商品のほか、ダイエージャスコ(当時)などが、プライベートブランド商品として、1リットルの紙パック入りオレンジジュースを手ごろな値段で販売し、オレンジ果汁系飲料は徐々に100%ジュースが主流となっていく。

日本のコカ・コーラ社の自動販売機でもミニッツメイドブランドの100%オレンジジュースがラインアップに加わる一方、オレンジ果汁入り飲料は飲みやすさを工夫し栄養面でも配慮したQooが発売され、本物志向と飲みやすさ重視双方の需要を満たす補完関係となっている。

ポンジュースは価格競争で厳しい状態に置かれたが、オレンジと温州みかん果汁をブレンドしたり、容器をペットボトルにするなど、差別化を計りつつ価格競争力をつけ、全国のコンビニエンスストアで取り扱われるメジャー商品に成長している。また、温州みかん100%のジュースを開発、販売している。

オレンジ果汁入り飲料の一部は、格安飲料として、ディスカウントストアや格安自動販売機などの主力商品として新たなマーケットを開拓している。

なお2000年代からの原油価格上昇に伴い、日本では2007年5月に飲料メーカー各社が一斉にオレンジジュース値上げに踏み切った。ただしこれは米国フロリダ州が2005年にハリケーン・カトリーナの被害に見舞われオレンジの生産が落ちていたことも関連しており、1割程度の値上げとなった。なお2007年度末には被災地域の回復にも伴いFCOJ市場価格が落ち着きを見せ、一般に販売されるオレンジジュースの価格も、一部では値上げ前の水準に近づいている。

日本国内の主な現行のオレンジジュース製品

オレンジジュースの消化への影響

果汁100%のオレンジジュースは、なんともない人も多いのだが、クエン酸の腸内への刺激が強いため、人によっては下痢を引き起こすことがある。

健康

ハーバード大学医学部によると、オレンジジュースにはフラボノイドが豊富に含まれており、果物や野菜と同様に記憶力の低下を防ぐ効果がある[4]

脚注

  1. ^ Braun, Adee. "Misunderstanding Orange Juice as a Health Drink." The Atlantic. Atlantic Media Company, 5 February 2014. Web. 12 December 2016.
  2. ^ [1]
  3. ^ a b c d e f g h [2]
  4. ^ Godman, Heidi (2021年9月17日). “Can flavonoids help fend off forgetfulness?” (英語). Harvard Health. 2022年1月8日閲覧。


関連項目