シンデレラ

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靴がピタリと合ったシーン。ギュスターヴ・ドレによるイラストレーション

シンデレラ (: Cinderella) は、童話の一つ。また、その主人公。『灰かぶり姫』や『灰かぶり』、『サンドリヨン (: Cendrillon)』ともいう。

グリム兄弟によるアシェンプテル (Aschenputtel) 、シャルル・ペローによるものが知られているが、より古い形態を残していると考えられている作品としてジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ』に採録されたチェネレントラ (Cenerentola) が挙げられる。中国にも楊貴妃がモデルと言われる掃灰娘や、民話に基づいていると思われる唐代の小説「葉限」などの類話があるなど、古くから広い地域に伝わる民間伝承である。日本ではペロー版が有名である。

児童向け作品として絵本アニメなど様々な形で公表されている。

なお、英語: cinderフランス語: cendreドイツ語: Ascheイタリア語: cenere などはいずれも「燃え殻」「灰」を意味し、上述の各作品名はこれらの派生形である。和訳名の『灰かぶり姫』もこれらを汲んだものである。

起源[編集]

世界中にシンデレラのバリエーションといえる話が残っている。 現在知られている中でもっとも古い記録の一つに、ギリシャの歴史家ストラボンが紀元前1世紀に記録したロードピスの話がある。それは以下のような話である。

エジプトのお屋敷に、美しい女奴隷ロードピスが住んでいた。主人は優しい人だったが多くの召使いに十分目が届かず、肌が白く外国人のロードピスはまわりの女召使いからよくいじめられていた。 あるとき、ロードピスが上手に踊るのを見た主人はロードピスに美しいバラの飾りのついたサンダルをプレゼントした。すると他の女召使いたちは、ロードピスに嫉妬していっそう彼女につらく当たるのだった。

その後、エジプトの王様が民衆を首都に招き、大きなお祭りを催した。女召使いたちはそのお祭りに出かけていったが、ロードピスにはそのお祭りに行けないようにたくさんの仕事を言いつけた。仕方なく言いつけどおりオルモク川で服を洗っていると、バラのサンダルを誤って濡らしてしまう。そこでそれを岩の上で乾かしているとハヤブサが持っていってしまい、それをメンフィスにいるファラオの足元に落とした。そのハヤブサがホルス神の使いだと考えた王様は、国中からそのサンダルに合う足の娘を探し、見つかったら結婚すると宣言した。

王様の船がロードピスの住むお屋敷にやってくると、ロードピスははじめ身を隠してしまったが、サンダルを履かせるとぴったりあった。またロードピスが残していたサンダルのかたわれも見つかり、王は宣言どおり、ロードピスと結婚した[1]

あらすじ[編集]

細部は異なるものの、大筋としては以下のとおりである。

  1. シンデレラは、継母とその連れ子である姉たちに日々いじめられていた。
  2. あるとき、で舞踏会が開かれ、姉たちは着飾って出ていくが、シンデレラにはドレスがなかった。
  3. 舞踏会に行きたがるシンデレラを、不可思議な力(魔法使い、仙女、ネズミ、母親の形見の木、白など)が助け、準備を整えるが、12時には魔法が解けるので帰ってくるようにと警告される。
  4. シンデレラは、城で王子に見初められる。
  5. 12時の鐘の音に焦ったシンデレラは階段を落としてしまう。
  6. 王子は、靴を手がかりにシンデレラを捜す。
  7. 姉2人も含め、シンデレラの落とした靴は、シンデレラ以外の誰にも合わなかった。
  8. シンデレラは王子に見出され、妃として迎えられる。

ペローによる『サンドリヨン』[編集]

原題は、「Cendrillon ou La Petite pantoufle de verre (サンドリヨン、または小さなガラスの靴)」。ガラスの靴を履かせ、カボチャ馬車に乗せるというモチーフを付け加えたのが、フランス文学者シャルル・ペローであるといわれている。

なお、「サンドリヨンは本来、毛皮の靴を履いていた」とする説があるが、ポール・ドラリュの研究によると「ガラスの靴」が原型であり、ペロー は説話を正確に記録したとされる。

グリムによる『灰かぶり姫』[編集]

アシェンプテル (Aschenputtel, KHM21) 。グリム童話はペローの影響を強く受けているといわれるが、この物語に関してはペローのものよりも原話により近いのではないかといわれている。

ペローとの違いとして主に

  1. 魔法使いが登場しない(当然カボチャの馬車も登場せず、代わりに白鳩が主人公を助ける)。
  2. 美しいドレスと靴を持ってくるのは、母親ののそばに生えたハシバミの木にくる白い小鳥。
  3. ガラスの靴ではなく、1晩目は、2晩目はの靴である。
  4. シンデレラが靴を階段に残したのは偶然脱げたのではなく、王子があらかじめピッチ(ヤニ)を塗って靴が絡め取られたから。
  5. 王子が靴を手がかりにシンデレラを捜す際、連れ子の姉たちは靴に合わせるためにナイフ(長女が爪先、次女は踵)を切り落とす。しかしストッキングに血が滲んで見抜かれる。
  6. 物語の終わり、シンデレラの結婚式で姉2人はへつらって両脇に座るが、シンデレラの両肩に止まった白鳩に両目ともくり貫かれ失明する。

などが挙げられる。

(これらの要素は初版から7つのヴァージョンを経る間に表れたり削られたりと一定ではないので、本格的に調べるうえでは注意が必要である)

バジーレによる『灰かぶり猫』[編集]

ペローやグリムよりも以前の17世紀の南イタリアでバジーレによって書かれた灰かぶり猫 (Cenerentola, 1日目第6話) は、ペローやグリムよりも古い形と考えられ、両者と異なる部分がある[2]

  1. 主人公のゼゾッラ(シンデレラにあたる)と継母(当初は裁縫の先生)は実は同志で、ゼゾッラと不仲であった最初の継母を殺害して、継母と父の大公を再婚させるが、後に継母が6人の実娘を迎えるとゼゾッラを裏切って冷遇する。
  2. その後、父の大公が旅行中に継母の娘には豪華なお土産の約束をするが、ゼゾッラはただ妖精の鳩がくれる物が欲しいとだけ答える。その後、大公が妖精から授かったナツメの木の苗を土産として与えられたゼゾッラはその木を大切に育てる。
  3. ナツメの木は実は魔法の木で、彼女は木の魔法によってきれいに着飾ってお祭りに参加して国王に注目される。
  4. 国王の従者に追いかけられたゼゾッラは履いていたピァネッレ(17世紀のイタリアで履かれていた木靴)を落としてしまう。
  5. 斎日に国王が国中すべての娘を召し出して靴を履かせた結果、ゼゾッラだけが靴に合致して王妃に迎えられる。継母の6人の娘たちがそのときの屈辱を母親に伝えたところで物語の幕を閉じる。

バジーレの作品の最大の特徴は最初にゼゾッラ(シンデレラ)が最初の継母を衣装箱に挟んで首を折って殺害する場面があることである。このシーンはグリム童話の1つである「ねずの木」と共通する側面を有している。

日本におけるシンデレラ[編集]

日本に「シンデレラ」が紹介されたのは1886年に「郵便報知新聞」が発表した「新貞羅」や翌1887年に菅了法翻訳による「西洋古事神仙叢話」にある「シンデレラの奇縁」がある。 1900年坪内逍遥が本名の坪内雄蔵名義で高等小学校の教科書用に「おしん物語」の題名で書いた。ここではシンデレラは名前を「おしん」とされ、登場人物や小道具なども日本風にアレンジされた。

二次作品[編集]

オペラ[編集]

バレエ[編集]

1940-41年、プロコフィエフ作曲のバレエ音楽。シンデレラ参照。

映画[編集]

この他にも作品は世界中で映画化、映像化されている。

作品でなくても、これをモチーフにしたいわゆる「シンデレラストーリー」(後述)も多い。

テレビ[編集]

テレビアニメーション[編集]

1996年(平成8年)にNHK衛星第2テレビで『シンデレラ物語』(全26話)が放映された。詳細は、シンデレラ物語を参照。

ミュージカル[編集]

1957年 CBSによって放映された、テレビによるミュージカルで、ロジャース&ハマースタインによってジュリー・アンドリュースの主演で製作された。 全米で一億人以上の人が観たと言われる大ヒットとなり、数度にわたるリメイクや舞台化も行われた。代表的な歌は 『イン・マイ・オウン・リトル・コーナー』 (In My Own Little Corner) 。

日本でも何度か上演されている。

1986年(昭和61年)3月-4月 シアターアプルにて上演 シンデレラ:伊藤つかさ、王子:乃生佳之

1995年(平成7年)8月 新宿コマ劇場にて上演 シンデレラ:酒井法子、王子:石井一孝、妖精:久野綾希子

1996年(平成8年)8月 新宿コマ劇場にて上演 シンデレラ:麻乃佳世、王子:石井一孝、妖精:久野綾希子

1997年(平成9年)8月 新宿コマ劇場にて上演 シンデレラ:麻乃佳世、王子:沖田浩之、妖精:久野綾希子

2002年(平成14年)8月 新宿コマ劇場にて上演 シンデレラ::遠野あすか宝塚歌劇団)、王子:樹里咲穂(宝塚歌劇団) 、妖精:鳳蘭

2003年(平成15年)12月 梅田コマ劇場にて上演 シンデレラ:遠野あすか(宝塚歌劇団)、王子:真飛聖(宝塚歌劇団)、妖精の女王:鳳蘭、王様:榛名由梨、女王様:初風諄、継母:瀬戸内美八、義姉:高汐巴峰さを理

2008(平成20年)年8月 モーニング娘。が宝塚歌劇団の専科及び卒業生を共演に迎え、新宿コマ劇場にて上演。なお、モー娘。ファン及び宝塚サイドが「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」をやったことを機会に「面白かったのでまた別の話でやってみたい。」という熱烈な要望が出たことから実現した。

楽曲[編集]

  • 死の舞踏〜a romance of “Cendrillon”〜 MALICE MIZER インディーズ時代のアルバムVoyageに収録。歌詞にCendrillon、舞踏会、硝子の靴などシンデレラをイメージする言葉が含まれる。
  • Cendrillon Dios/シグナルPの楽曲。

カクテル[編集]

ノンアルコールカクテルの一つ。サンドリヨン、もしくはサンドリオンという別名もある (どちらも Cendrillon と表記する)[3]

標準的なレシピ
作り方
  1. シェイカーに材料をすべて入れる。
  2. シェイクし、丸底のカクテルグラスに注ぐ。
氷を入れ、パイン・スライス、オレンジ・スライス、レモン・スライスを飾ったり[4]、ソーダで割ってロング・カクテルのスタイルにする[5]場合もある。

派生語[編集]

シンデレラ・ストーリー[編集]

シンデレラの話を元に、惨めな境遇から、ちょっとしたことがきっかけで成功をつかんだ人(特に女性)を「シンデレラ」、出世譚を「シンデレラ・ストーリー」と呼ぶようになった。更に派生語として「シンデレラガール」「シンデレラボーイ」等がある。

シンデレラ・エクスプレス[編集]

松任谷由実の歌『シンデレラ・エクスプレス』は、遠距離恋愛のカップルが週末を共にすごした後、最終列車(特に、東海道新幹線東京駅21時0分発新大阪駅行の最終列車「ひかり289号」(1987年(昭和62年)当時)、2014年(平成26年)現在は21時20分発「のぞみ265号」)に乗って去る側と残る側に別れる様を、深夜24時までしかいられない華やかな舞踏会の場に例えたもの。1985年に『日立テレビシティ』(TBS)で放送されたドキュメンタリー番組(歌と同様、遠距離恋愛のカップルが「ひかり」で別れる模様を映した番組であり、後のCMの原型となる)のために制作された楽曲である。なおJR東海は発足直後からしばらくこれをキャンペーンで使用したが、本来同列車は旧型の0系車両が使われるところ、日曜夜の同列車だけはそのCM通り当時新型の100系車両を使うなど、用意周到な配慮がなされていた。シンデレラ・エクスプレス (CM)も参照。

シンデレラコンプレックス[編集]

シンデレラコンプレックスは、米国の女流作家コレット・ダウリング1981年に提唱した概念で、この童話を元に名付けられた。詳しくは該当項目を参照。

脚注[編集]

  1. ^ "The Egyptian Cinderella"
  2. ^ 杉山洋子・三宅忠明 訳『ペンタメローネ 五日物語 上』(ちくま文庫、2005年) P94-105。
  3. ^ 「カクテル大辞典800」成美堂出版編集部編、成美堂出版、2003年。 ISBN 4-415-02264-2 P265
  4. ^ 「TPO別 カクテルBOOK315」成美堂出版編集部編、成美堂出版、2002年。 ISBN 4-415-07124-4 P18
  5. ^ 『カクテルの事典 COCKTAIL BOOK』澤井慶明監修、成美堂出版、1998年。 ISBN 4-415-08348-x P158

参考文献[編集]

  • 今野一雄 訳『ペローの昔ばなし』(白水社 1984)ISBN 4-560-04225-X
  • 南方熊楠「西暦九世紀の支那書に載せたるシンダレラ物語」『東京人類学会雑誌』26巻300号(1911)。『南方熊楠全集』2巻(平凡社 1971)121-135頁
  • 山室静『世界のシンデレラ物語』(新潮選書 1979)
  • アラン・ダンダス『シンデレラ: 9世紀の中国から現代のディズニーまで』池上嘉彦ほか訳(紀伊国屋書店 1991)
  • 角山栄『シンデレラの時計 人びとの暮らしと時間』(ポプラ社 1992 のち平凡社ライブラリー)
  • 山田仁史「台湾のシンデレラ?」篠田知和基 編『愛の神話学』(楽瑯書院 2011)459-480頁

関連項目[編集]

  • 落窪物語 - 日本の古典文学。シンデレラに似た継子いじめの物語。
  • 葉限 - 中国唐代、段成式(803年 - 863年)の撰した「酉陽雑俎」所収。継子いじめと、無くした靴が王のもとに届いて王が国中の女性の履かせて調査させ、王に娶られる点などシンデレラとの類似点が多い。
  • 森は生きている - スラブの民話をもとにロシア人サムイル・ヤコヴレヴィチ・マルシャークの書いた戯曲。
  • 月光条例 - 現在よく知られているシンデレラのストーリーに対し、シンデレラ本人の口から不満が定義されている。

外部リンク[編集]